過去の大阪芸術大学卒業制作展で優秀な成績を収め、現在大阪芸術大学の副手として働いている方々に当時の卒展の思い出や作品制作の秘話などをじっくりと語って頂きました。

第1回インタビュー:正元嶺至(しょうげんりょうじ)さん

2016年度工芸学科金属工芸コース卒業生。
同年の卒業制作展で作品「CURIOSITY」が学長賞を受賞。

現在工芸学科金属工芸コース 非常勤副手として勤務。


「CURIOSITY」


[聞き手]賞を取った時の感想や思ったことは?

[正元]純粋に嬉しかった、と同時に、選ばれることの無かった友人たちの分まで自分が頑張らなくてはならない…と、気の引き締まる思いでした。
 そして、この作品が果たして提出期限までに完成できるのか?という焦りを感じながら、朝から晩まで作業に没頭した日々が報われてほっとした気持ちもありました。
  …それと、この学校に4年間通い続けたからには何としても学長賞が取りたい!という気持ち、この学校に通わせてくれた親への恩返しがしたい!という願いも叶い、非常に感慨深い思いを噛み締めましたね。

[聞き手]制作作品に込めた思い、 コンセプトを教えてください。

 [正元]私自身の好みとして、壮大な世界観のあるSFモノが好きなんです。没入感ある不思議な世界に自分が入り込みたい…そういった思いのもと、物語も作品の一部、背景となるような作品を生み出したかったんです。

[聞き手]作品制作において苦労した所はどこですか?

[正元]そうですね…作品のサイズが大きいためそれ相応に作品を構成するパーツも多く、ひたすら鉄板を切っては嵌め込み、削って調整し…を延々と繰り返す作業は純粋に体力的にしんどかったですね。そして鉄板加工の際に生じるスパーク(火花)は、何度も見ていると頭痛がしてくるほど強烈でつらかったです。

[聞き手]作品制作において楽しいと思えたところや力を入れて取り組めたと思える部分はどこでしょうか?

[正元]うーん…正直言っちゃうと、しんどかった思い出が一番です(笑)
けれど、作品を組み立てていくほどに作品のビジョンが明確に見えるようになり、自分の思っていた世界に近づいていく実感が湧いていく過程は面白かったですね。
 力を入れたところは…そうですね、作品そのものをキチンと自立させ、展示台を無くしたかったんです。それに加え、生物の体重移動をちゃんと表現したかったのでそこを作品に反映させるところは苦労しました。

[聞き手]当時の卒業制作展の思い出はなんですか?

[正元]自分の在籍する金属工芸コースだけでなく、他コースとの合同合評をした際、先生の顔がより怖かったことを覚えています(笑)
 そして何より他コースも含めて卒業制作に打ち込み、言い方がちょっとカッコつけた感じなんですけど、切磋琢磨し合う、良いものを作ろう!という空気に満たされていたことは今でも覚えています。

[聞き手]卒制前と後とで生まれた発見や変化はありますか?

[正元]選ばれてすぐの頃は「4年間の努力がやっと認められた!」という気持ちでいっぱいなんですけど、時間が経つにつれて「もっとここは良くできたんじゃないか?」とか、不十分と思う部分が気になってしまったため「はたして工芸学科の代表として本当に自分が選ばれていいのか?」という不安が募りました。

[聞き手]副手として勤務し始め、学生の頃より成長したと思う部分はありますか?

[正元]成長というか何というか、学生の頃は決められた枠の中、決められた期限の中といったような様々な制約の中で作品制作をする訳ですけど、今はそのような制約が無いので学生の頃では「アレやってみたらどうかな」「こういうのはどうだろう」といった考えを持っても実行しにくかった実験やチャレンジをやりやすくなって、色々な考えを持つ時間が増えたことは大きな変化ですね。

[聞き手]現在の目標はなんですか?

[正元]難しいですね(笑)
 第1に今の仕事をより効率的にこなしたいですね。効率的に仕事をこなせば、その分自分の作品作りに充てる時間も増やせるでしょうし。
 あとは何といっても学生たちと共に過ごす時間の多い現場ですから、やはり学生たちにとって「負けたくない!」「流石だなあ」と思わせられるような作品造りをしていきたいですね。

[聞き手]将来の夢を教えてください。

[正元]私自身、昔からコレがやりたい!という明確でおおきな夢は持っていませんでした。ですがそれ故に学生時代は目の前の課題に熱心に打ち込み、卒業制作もやってやるぞ!という意気込みでした。
 将来の進路を考えた際、先生の道や大学院進学なども考えましたが、先生は教えることに全振りであり、制作との両立が難しい…大学院進学は、莫大なお金をかけるほどの大きな夢が自分にない…などの理由で少し違うな、と感じたんです。そこで副手なら学びと制作と教えることを上手く両立できるのではと考え、この道を選びました。
 明確な夢こそ無いものの、学生たちの手助けをしたりアドバイスすることは好きで、今の副手の仕事は気に入っています。
 副手なら様々な授業をサポートすると共に、新たな発見や改めて学び直す機会も多く、自らの反復練習のような感覚で過ごす一面もあり毎日刺激のある日々です。
 自分は今「夢探し中」で、日々の中でいつか大きな夢を抱いた時は大学院進学も視野に入りますね。

[最後に]正元さんより、これは伝えておきたいとのメッセージを頂きました。

[正元]”在学中の学生さん達へ”

 1回生から4回生、大学院生の人たちまで、殆どの人たちが"遠慮しているな"と、感じるんです。
 大学を卒業し働き始めてから、学生は色々と守られていて、失敗しても大丈夫な世界だったんだなと痛感します。
 だからこそ、生徒として守られている世界にいられる内に思いっきり自分のやりたいことを思い切りやればいい!先生や他の学生など、周りの顔色を窺わず、失敗を恐れず、ガンガン制作にチャレンジしたらいい!と、本当に思いますね。本当にもったいないです。これだけは全学生に伝えたいですね。

[聞き手]確かに私たち(インタビュー班)も制作において遠慮しがちになったりしますね…今回は非常に勉強になるお話をありがとうございました。