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2021 大阪芸術大学 特別演奏会 2021 大阪芸術大学 特別演奏会

演奏学科
2022/03/10

2021年12月8日、フェスティバルホール(大阪市北区中之島)にて「2021 大阪芸術大学 特別演奏会」が行われ、学生を中心に構成される大阪芸術大学管弦楽団と大阪芸術大学混声合唱団が出演しました。


演目は、モーツァルト作曲 歌劇「皇帝ティートの慈悲」K.621より序曲と、ベートーヴェン作曲 交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付」で、指揮は世界的に活躍する演奏学科教授・大友直人先生が務めました。

数々の名演が行われているフェスティバルホールで開催

会場となったフェスティバルホールは座席数2700席を有し、日本のアーティストだけではなく、海外の一流アーティストの公演も行われる関西を代表するホールのひとつです。会場には、男女を問わず、幅広い年齢層のクラシックファンが訪れていました。

指揮は世界レベルで活躍する大友直人先生

NHK交響楽団での指揮者デビュー以来、国内の主要オーケストラと常々協演している大友先生の指揮で、1曲目の歌劇「皇帝ティートの慈悲」の序曲が演奏されました。このオペラは、1791年、神聖ローマ帝国レオポルト2世のボヘミア王(現在のチェコ)としての戴冠式のために書かれたオペラ・セリア(正歌劇)です。

ヴァイオリンなどの弦楽器を中心に始まり、優雅で心地よいハーモニーが全体を盛り上げていました。続く交響曲第9番では緊張感あふれる演奏が繰り広げられ、聴く者をどんどん楽曲の世界へ引き込んでいきました。

ソリストは表現者としての追及を続ける先生方が出演 そして、歓びに満ちたフィナーレへ

第九の第4楽章では東野亜弥子先生(ソプラノ)、永松圭子先生(アルト)、秋本靖仁先生(テノール)、三原剛先生(バリトン)の4人の教員がソリストとして出演しました。

三原先生(バリトン)による独唱に続き、秋本先生(テノール)、永松先生(アルト)が加わり、最後に東野先生(ソプラノ)が入り4重唱へ。異なる4つの歌声は調和し、互いを響かせ合いながら会場に広がっていきました。そこに、声楽コースの学生を中心に編成された134人編成の大合唱団が加わり、オーケストラと一体となって、喜びに満ちた感動のフィナーレを迎えました。


終曲後、長時間にわたる熱演に対して、観客席から拍手が沸き起こりました。第一線で活躍する先生たちから直接学び、本番に向けて練習を重ねて来た学生たちは、フェスティバルホールという大舞台で、プロとの共演という貴重な経験を得ることができました。ステージ上の学生たちのなかには、拍手をかみしめるように観客席を見渡す者や本番を無事終えた安堵感から笑顔がこぼれる者、近くに座る奏者とアイコンタクトを行う者など、その表情から大きな達成感が伝わってくる、感動的な演奏会となりました。

演奏学科 客員教授
永松 圭子 先生

本番では学生たちに、「調和」のすばらしさを実感してほしいです。合唱は自分以外の人との調和が必要になります。相手の声や気配を意識したり、呼吸を信頼するなど、相手を受け入れ、理解したうえで自分とのつりあいをとって、つながっていきます。1人では決してできることではなく、それぞれが力を合わせることで、お互いのエネルギーが重なり合ってものすごい力が発揮できる、ということを経験してほしいですね。
授業では、器楽専攻の学生が副科でとる声楽も担当しています。呼吸と楽器の関係はとても密接で、ピアノでフレーズを弾くにしても息を止めていたら、聴く方も息苦しくなってしまいます。息を吹き込む管楽器ですと、息をしっかり音に乗せていくために腹式呼吸が重要になってきます。音の表現方法を指示する発想記号のなかに「歌うように、表情豊かに」という意味のカンタービレ(伊:cantabile)があるように、音楽において「歌う」ことは基本中の基本ですので、自身が専攻する器楽の演奏に声楽を生かしてほしいと思います。
演奏学科は、三原学科長をはじめ、非常に柔軟な考えを持っておられる先生が多いと感じています。私が担当する宗教曲の授業で、器楽のオブリガート※がつく曲を普段はピアノと練習し、公開演奏会ではパイプオルガンと歌うことになったんです。もちろん学生にとっては、これはこれでいい経験なのですが、その曲の器楽のオブリガートをつけたいと学科長に相談したところ、「それはいい考え」と容認していただき、管楽器の先生にお話をしてくださいました。その先生も「学生にとっていい経験になります」と、快く引き受けていただけました。「やりたい」という能動的な意欲をもってやれば、どんどん何か応えてくれる。演奏学科のこういうところが刺激的でおもしろいところですね。

※オブリガート……(バロック音楽においては)主旋律と同等の重要性を持つ、必要不可欠な伴奏パート。

演奏学科 管弦打コース4年生 フルート担当
佐藤 袖月さん

オーケストラで演奏するには、そのオーケストラが表現しようとする音に合わせる必要があります。同じ「ラ」でも、優しい「ラ」なのか、寂しくつめたい「ラ」なのか。判断を間違えると、不協和音のようになってしまいます。以前の私は自分勝手に吹いてしまう方だったので、自分の音がほかの楽器と合ってないのではないか、と悩んでいました。そのときに先生から「自分が入るときの直前に流れている演奏に乗って入るといい」とアドバイスをいただきました。実際にオーケストラでの演奏で意識してみると、音楽的に同じ方向に進むことができ、より立体的な演奏ができると実感しました。先生の助言で、まわりの音を聴いたうえで音を出す、ということはよく考えるようになりましたね。
演奏学科の良いところは、名のあるホールでの発表の場が多いことです。私自身、大学に入って初めてオーケストラに参加したのが1年生のときの、この特別演奏会でした。場所も今日と同じフェスティバルホールで、3階席まで満員でした。ソロを吹く機会もいただいたのですが、自分の音がとても伸びていって、その音がちゃんと自分の耳に返ってくるのがすごく気持ちよくて。音楽をやっていてよかったと、心から思いました。これをきっかけに「また発表の場に出たい!」と思うようになりましたし、場数を踏むごとに自信につながっていったと思います。
オーケストラでは、数えきれないくらい勉強させていただきました。例えば、どんな音楽を演奏するのか、一緒に吹くのが木管楽器なのか、ヴァイオリンなどの弦楽器なのかで、自分のフルートのアプローチが変わってきます。卒業後はこれまで学んだことを生かして、プロの世界で頑張りたいです。

演奏学科 声楽コース4年生 ソプラノ担当
杉本 詩歩さん

本格的に声楽を始めたのは大学に入ってからです。最初は一対一のレッスンでしたので、練習も含めて歌うときは1人でした。そんななか、1年生のときのオペラ公演「氷山ルリの大航海」では、4人での星座役のうちの1つをいただきました。一人ひとりが異なるメロディーを歌う4重唱があって、私は真ん中だったのですが、上の旋律にも下の旋律にもつられてしまって、周りにすごく迷惑をかけてしまったことがあります。本番はうまくいったのですが、そこから歌うことに自信をなくしてしまいました。
2年生でオペラの授業をとるか悩みましたが、楽しかった思い出もありましたので授業はとっていました。しかし、いざオーディションとなると急にまた怖くなってしまって。先生に自信がないことを告げると、「できないからやめるの?」と正面から向き合って私の迷っていることを聞いてくださり、そのうえでいろいろなお話をしていただきました。このときに「迷惑をかけるとかではなく、自分自身が成長しなくては」と思い、役をとるつもりでオーディションに挑戦しました。その年の演目はモーツァルトの「魔笛」だったのですが、結果、物語上での重要なキャストであるパパゲーノの恋人・パパゲーナ役をいただくことができました。不安な気持ちで舞台に出ても観に来てくださった方に申し訳ないので、セリフも演技も、もちろん歌もたくさん練習しました。役柄上、最初はおばあさんとして劇中に出ていくのも面白かったですね。自分が楽しめていることに気がついたことで、歌うことに自信を持つことができました。
今年はコロナの関係で歌えない期間がありましたが、このときに今日の本番で歌う「第九」の歌詞を研究していました。この期間があったので、歌の背景とか意味をより深く理解できました。歌っている最中も、歌詞で何を言っているのか分かるので、すごく表現しやすくなりました。言葉で言い表すことは難しいのですが、本番ではステージ上からすごくいい景色が見えました。