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多様な着眼点から発想された個性豊かな作品が一同に会した卒業制作展 多様な着眼点から発想された個性豊かな作品が一同に会した卒業制作展

イベント
2023/09/14

大阪芸術大学では、2023年2月12日から19日にかけた8日間にわたり卒業制作展を開催。広大なキャンパスを余すところなく使い、狭い領域にとらわれない総合芸術大学ならではの個性的な作品の数々が一堂に展示されました。舞台公演やコンサート、卒業論文の発表会と卒業制作展のコンテンツは多彩で、なかでも芸術情報センターの展示ホールで開催される優秀作品展は必見です。キャンパスを巡ることで、社会へ向けて発信する学生たちのデビュー作を会場で体感することができました。

学生たちを主役に卒業制作展が華々しく開幕
学生たちを主役に卒業制作展が華々しく開幕

くす玉開きとテープカットを合図にファンファーレが響き渡る

卒業制作展が開催された2月12日、芸術情報センター地下2階のAVホールでは、学長賞や学科賞に選ばれた優秀作品の表彰式が行われました。晴れ晴れとした表情で表彰を受けた受賞者たちが次に向かうのは、エントランスのオープニングセレモニー会場です。卒業制作展の開幕を彩るくす玉開きとテープカットが行われると、演奏学科の学生たちによるフェアウェル演奏「威風堂々」が華々しく響き渡りました。その晴れ姿を記念に収めようとカメラを構えた多くの人々が詰めかけていました。

表彰式とオープニングセレモニーの司会進行を務めたのは放送学科アナウンスコース3年生
オープニングセレモニーを華やかに演出した演奏学科の学生たち

キャンパス全体を使って芸術を学んだ成果を発表
キャンパス全体を使って芸術を学んだ成果を発表

約10万坪と広大なキャンパスの隅々までが卒業制作展の会場となりました。芸術情報センター1階では、学長賞や学科賞を受賞した優秀作品が展示されました。バスを降りるとすぐに見える有機的な外観をした30号館ではテクノロジーと芸術を融合させたアートサイエンス学科の卒業制作が披露され、キャンパスを南東に貫く天の川通りを辿っていくと建築学科、文芸学科、映像学科など、各学科の校舎内も展示会場として公開し、それぞれの分野で研鑽を積んだ個性豊かな作品が発表されました。芸術劇場では舞台芸術学科や演奏学科、放送学科による卒業公演が執り行われました。

芸術情報センターの優秀作品展会場には観覧者が大勢訪れました
美術学科と工芸学科の作品は総合体育館の大アリーナとホールに展示
写真学科は総合体育館ギャラリーのほか、実験ドームで映像作品を上映

多彩な催しを織り込んで会場全体を盛り上げていく
多彩な催しを織り込んで会場全体を盛り上げていく

卒業制作展をより盛り上げるため、様々なイベントの企画運営を手掛けたのは芸術計画学科の学生たち。企画のプレゼンテーションからゲストのブッキング・スタンプラリーの景品制作など数十名の学生で作業分担し、準備からイベントの開催まで約1年がかりのプロジェクトとなりました。

「今年は対談形式のトークショーといった新機軸や、3年ぶりの開催となる卒展マルシェを行うなど意欲的な内容になっています」と語るのはリーダーの3年生、海老名直翔さん。特にゲストトークショーでは第一線で活躍する教授陣を擁する大阪芸大ならではの持ち味を生かした企画を練っていきました。諏訪道彦客員教授と多くのアニメ作品をともに作り上げてきた亀垣一氏、数多くの舞台演出を手掛けてきた金谷かほり教授は同じ現場を一緒に踏んできたプロデューサーの依田謙一氏と登壇。一緒に仕事をしているプロフェッショナルを招き対談形式にすることで、普段はなかなか聞けない業界のリアルな声を引き出したいというのが海老名さんたちの狙いです。

12号棟のピロティで行われる卒展マルシェのルール作り、出店マニュアルの整備も学生たちの役割です。出店者の作品を花とイメージし、出店者の咲かせる花たちが多く咲き乱れ、来場者が集う賑やかな場所となるよう思いを込めて「百花繚乱」というテーマが付けられました。

オープニングセレモニーの準備に余念がない芸術計画学科の学生たち
観覧者が必ず通る11号館のレセプションではガイドマップなどを配布
ゲストトークショーでは普段なかなか聞けない裏話も飛び出して大いに盛り上がりました
2月18・19日に行われた卒展マルシェは大盛況となりました

あべのハルカスのスカイキャンパスにて大阪芸術大学グループ合同での卒業制作選抜展を開催
あべのハルカスのスカイキャンパスにて大阪芸術大学グループ合同での卒業制作選抜展を開催

日本一の高層ビル、あべのハルカスの24階に設置されたスカイキャンパスでは、2023年2月24日〜3月5日まで大阪芸術大学グループの大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部と大阪美術専門学校の卒業制作で高く評価された作品が多数出展されました。大阪環状線のターミナル天王寺駅至近というアクセス至便な環境も幸いし、学外からの観覧者も多数来場し賑わっていました。

副理事長のあいさつとともに粛々と幕を開けた選抜展
副理事長のあいさつとともに粛々と幕を開けた選抜展

来賓によるテープカットとともに「大阪芸術大学グループ 卒業制作選抜展」が開幕。塚本英邦副理事長の「卒業おめでとうございます。今は学生時代と社会に出るまでの端境期。この好機に様々なことを吸収してください。また選抜展では普段はなかなか交流できないグループ校の学生が顔を揃えます。ぜひコミュニケーションをとって、各々の芸術性を高めていって欲しいと考えています」という挨拶でオープニングセレモニーは締めくくられました。スカイキャンパスのスペースいっぱいに作品が展示されました。あべのハルカスで選抜展を開くことで、学外からの人々の評価を受けとめた若きアーティストたちは、持てる発想や創作意欲を花開かせていくでしょう。

数多くの観覧者が会場を訪れました

大阪芸術大学から選抜された作品は意欲作ぞろい
大阪芸術大学から選抜された作品は意欲作ぞろい

15学科を擁する大阪芸術大学から学長賞や学科賞を受賞した34作品が出展されました。アートのあらゆる側面をフォローしている芸術の総合大学らしい充実したラインナップです。2017年に新設されたアートサイエンス学科からは認知バイアスや機械学習といった最新の知見をアートに取り入れた意欲的な作品が出展されました。デザイン学科ではグラフィックデザインで3Dプリンタを駆使した作品が出品されたり、プロダクトデザインでプロダクトとともにプロモーション映像が制作されていたりと、コースの垣根を越えた学びが得られる総合芸術大学ならではの作品が見られました。工芸学科 陶芸コースからは、リアルな蛸の生態から発想した作品や、美術学科日本画コースでは岩絵具や和紙といった画材まで自ら作ったという作品が学長賞の栄誉に輝きました。

デザイン学科の作品は会場最奥部に展示
写真学科からは映像やイラストレーションと組み合わせた作品が選抜された

グループ校から選抜されたレベルの高い作品に刺激を受ける
グループ校から選抜されたレベルの高い作品に刺激を受ける

短期大学部からは8つの作品が出展されました。学長賞に選ばれたのは、自然の造形を活写した絵画版画コースの学生の作品。実際に目の前にあるかのような優れた描写力が高く評価されました。金賞とミネアポリス美術デザイン大学学長賞をともに受賞したのは故郷の漁業を再生するためのプランを考案した空間演出デザインコースの学生。アートサイエンスコースで金賞を受賞した光と影が様々に変化する空間インスタレーション「繭」も見事でした。

大阪美術専門学校からの出展は6作品。塚本英世賞を獲得したのは総合デザイン学科グラフィックデザインコースの学生の「宇宙の旅 ひまつぶし箱」です。多彩なグッズをポップなテイストで商品化できるレベルにまで緻密にデザイン。打って変わって「百鬼夜行」というタイトルで独特な世界観を巨大なキャンバスに白と黒だけでパワフルに描き出していったのがコミック・アート学科の美術・工芸コースから出品された作品。各グループ校で育まれた若き才能の爆発を目の当たりにするような刺激的な展覧会でした。

塚本副理事長に作品について解説する大阪美術専門学校コミック・アート学科の美術・工芸コースの卒業生
アートサイエンス学科 卒業生
内山 愛理 さん

「いま見ているもの以外は存在していないのかも」と子どもの頃に、ふと抱いた不思議な感覚に答えることが「影の真実」という作品の出発点。自分の認識を思わず疑ってしまう状況を作ることで、別の可能性に思考を巡らせる楽しさを共有していきたいと考えました。アイデアのキーは人形が突然動き出す大道芸のパフォーマンスと映像の混合トリックです。裏面に等身大の人形が置いてあり、表面には私が演じた影の映像が投影されています。表面を見ると影絵のパフォーマンスに見えますが、裏面に回ってみると置いてあるのは人形。鑑賞者がどっちなんだろうと疑問を抱くように様々な工夫を凝らしました。影の映像と人形が同じ体型になるように、ポーズをとった自分の身体にラップとガムテープを巻きつけ型をとり、詰め物をして人形を作っています。さらに幕の下部に隙間を作り、人形の足が少し見えるようにすることで影と人形は同一のものだと見せかけています。単純な仕組みではありますが、等身大にしたことで印象的な作品になりました。構想段階から作品の表現手法は何度も変わりました。でも基本的な考え方を揺るがせずに完成までこぎつけることができ、さらに学長賞を頂けたことは大きな喜びです。

人かも知れないと思ってもらえるように顔のメイクアップにも工夫を凝らしました
術学科日本画コース 卒業生
鈴江 龍雅 さん

数百年前までは科学と美術は補完しあう存在でした。美術のなかには科学の側面があり、その逆も真だったと私は考えています。その考え方を具体的にトレースするために、岩絵具や和紙といった画材まで自ら作っているんです。原石を小さく砕き、乳鉢でさらに磨りつぶして粒度を細かくしていきます。粉々になった鉱物粉を顕微鏡で観察すると、どのように岩絵具が発色するのかというメカニズムが理解できるんです。大学に入ってからは媒体となる和紙づくりも手掛けてきました。コウゾという植物を加工するのがデフォルトの和紙の製造方法。でも既製品と同じものを作っても新たな発見はありません。だから手近に生えている雑草を使って、どんなマチエールになるのかと実験を繰り返しているところです。美術のなかに科学的な視点が必要だと考えているのは、こういった方法論から導き出された実感に根ざしています。卒業後は進学するのですが、大学院では岩絵具を紙に定着させるニカワ作りも手掛けていきたいですね。ただ絵を描くだけでなく、幅広い方向から美術の真髄に迫っていきたいと考えています。

エジプト神話から題材をとった「イアルノムクロカラ」で学長賞を受賞
様々な鉱物を収集し、砕き磨りつぶして岩絵具に加工
デザイン学科グラフィックデザインコース 2年生
山田 哲也 さん

デザイン学科の授業の一つである「ハイパープロジェクト」の一環として卒業制作展に取り組みました。告知ポスターやフライヤー、垂れ幕やフラッグ、モニュメントなど制作物は多岐にわたります。スケジュールの進捗を見ながら、まとめていくのがリーダーとしての私の役割でした。リーダーといっても、ぐいぐい引っ張っていくというより、進行が遅れているパートのサポートに入ったり、困っている人の相談にのったり全体を見ながら調整する仕事がほとんどですね。卒業制作展のメインビジュアルを手掛けてみたいと思って、この授業をとりました。だから、私が提案したデザインが採用していただけたのは本当に嬉しかったですね。今回、メインビジュアルにマゼンタとイエローの2パターンを提案。しかし、1回目の校正刷りではマゼンタ版の方が断然インパクトがあったんです。そこでイエローの色相を調整してイメージの差を解消しました。プロは、こういった微妙なことに配慮しながら仕事をしているんだな、とすごく勉強になりました。

山田さんが手掛けたメインビジュアルは恒例の階段装飾にも採用
立体モニュメントを制作したのは今回が初の試み