大阪芸大Art lab. 「芸大Zoo」とコラボした特別美術セミナー 大阪芸大Art lab. 「芸大Zoo」とコラボした特別美術セミナー
アートに関心を持つ高校生や大阪芸術大学グループの学生を対象に、美術館や博物館、ギャラリーなどと連携して創作の楽しさを伝える「大阪芸大Art lab.」。2025年12月13日に開催した「第14回特別美術セミナー」では、学内に誕生したばかりの「大阪芸術大学 動物ジオラマ館『芸大Zoo』」とコラボレート。“リアル”を取材し“創造”に生かすワークショップを行いました。
「リアル」を見つめ、「未知の生き物」を創造
今回行われた特別美術セミナーのテーマは「リアルを見つめて、不思議を描こう!」。2025年10月に本学キャンパスにオープンした動物ジオラマ館「芸大Zoo」と連動して、「未知の生き物をつくりだす」というユニークな課題に挑戦。美術学科の学生に加え高校生も参加し、館内見学を含むワークショップを行いました。
最初のステップは、自由な発想でクロッキー帳に「誰も見たことがない生き物」を描くこと。冒頭に教員が「想像(イマジネーション)」と「創造(クリエイション)」の違いをレクチャー。心の中で思い描く「想像」を、形ある「創造」に昇華させる過程では、悩みや壁がつきものです。その上で「自分の感性に合った表現は必ず見つかる」「ものづくりの世界では、年齢を重ねるほど深みが増し、一生成長できる」と、創造の楽しさや可能性を伝えました。
あいまいな形から描き始める人、まず目だけを描いてみる人、最初に動物を決めて描く人など、アプローチはさまざま。描いた作品を互いに見せ合って意見を交わす場面もあり、同じテーマでも表現が一人ひとり異なるおもしろさや、デジタルやAIではなく手描きならではの味わいを実感できる場となりました。
「芸大Zoo」で希少な動物たちの剥製をスケッチ
続いてフィールドワークとして「芸大Zoo」を見学。館内には、世界の希少な野生動物の剥製100点余が展示されています。ガラスなどの仕切りもなく間近で動物たちを眺めることができ、動物の生息地を再現したジオラマなど、リアルな展示が特徴です。参加者たちはじっくりと剥製を観察してスケッチ。「すごい迫力!」「こんなに近くで見ていいのかな?」と驚きや興奮の声をあげる人も多く、夢中になって鉛筆を走らせていました。
大学施設としては世界でも他に類を見ない「芸大Zoo」は、貴重な歴史的資料であり、芸術表現の教材として創作の糧やヒントともなるものです。教員は、リアルな実物を「取材」することの重要性を強調。クロッキー帳を持ち歩いて「創造のタネ」を収集する習慣が5年後、10年後に大きな差を生む、才能に頼らず目の前の対象を愚直に観察し続ける精神が大切、といった現役アーティストならではのアドバイスを贈りました。
光と影の表現で、想像上の生き物にリアリティを加える
後半の制作では、「芸大Zoo」での取材・観察をもとに、グレーの紙に鉛筆と白のコンテを使って、新たな生き物を描くワークに取り組みました。コンテを面で使って大胆に光を捉えたり、鉛筆で緻密な影を落としたりと、剥製の観察で感じた質感やリアリティの反映にチャレンジ。明と暗の両方の方向から描く課題は、光と影を新たな感覚で捉える試みにもなり、参加者は新鮮な取り組みに試行錯誤しながら制作を進めました。
最後の合評会では、教員やスタッフが気になる作品を選んでコメント。作者の意図や努力に寄り添った講評が行われ、「描き手の実感が質感に現れている」「自分と同じ視点を感じた」「描きたいものは明確なのにどこか曖昧なのがおもしろい」など、多様な魅力が語られました。
参加者からは「命の迫力を感じて、絵に反映できた」「ふだん考えないことを考えるきっかけになった」「他の人の作品や考え方に刺激を受けた」などの感想が寄せられ、創作と取材について探究する実り多い一日となりました。
今回「未知の生き物」を描くにあたり、私は大好きな「鳥」をモチーフに選びました。事前制作では生命力あふれるキジをモチーフにしたのですが、「芸大Zoo」で剥製を観察したことで、新たな発想が生まれました。私は自宅で5羽の文鳥を飼っており、ふだんから鳥のいきいきとした瞳に触れています。そのため、剥製の無機質なガラス玉の目を見て「生き物ではない」という落差を実感。肉体はあっても魂がない、そんな剥製ならではの不思議な孤立感を表現したいと考え、身体の造形や瞳のリアリティにこだわって制作しました。
実は私はクロッキーに苦手意識があって、パッと見て心惹かれたものをスマホで撮影し、後から「どこが好きなのか」を掘り下げながら描くのが好きです。でも今回セミナーに参加した高校生たちが夢中でスケッチする姿を見て、刺激をもらいました。また、グレーの紙に鉛筆とコンテを組み合わせる手法にも初めて挑戦。質感の異なる画材をなじませるのには苦労したものの、その違いが表現のおもしろさにつながるのが新鮮で、楽しみながら描くことができました。
私は京都出身ですが、大阪芸術大学の自由でのびのびとした雰囲気に惹かれて入学しました。好きなアーティストが本学出身だったこともあり、コロナ禍で多くの制限を強いられた高校時代を経て、憧れの場所で自由を謳歌したいと考えたのです。授業の課題では、自分自身への期待値の高さに苦しむことも多いのですが、自由制作の時間は心から楽しめています。今回のセミナーで得た経験も生かして、より自分らしい表現を追求していきたいです。
「芸大Zoo」で見た動物の剥製は、想像以上に強烈でした。毛並みが線ではなく矢印のように見えたり、骨格の迫力に圧倒されたり。そうしたリアルな質感や印象を一度自分の中に取り込み、あえて形を崩しながらも、動物の存在感が伝わる表現をめざしました。また、以前夜道でイノシシのような動物に遭遇した経験があり、その時に感じた驚きや暗闇に浮かぶシルエットの記憶も、光と影の描写に込めたつもりです。事前の制作では「幻獣」を描き、細かいキャラクター設定まで考えたのですが、先生からの「具象に寄り過ぎず少し崩してみたら」というアドバイスや実物の観察を経て、形の揺らぎが生むおもしろさに気づくことができました。
僕は言葉から着想を得ることが多い一方で、作品について言語化するのはあまり得意ではありません。ただそうした迷いや揺れも、自分の表現の一部なのだと思っています。今回のセミナーは、絵にする前の構想段階で「こうしたらやりたいことに近づく」という感覚を実践できる貴重な機会でした。高校生たちのまっすぐな姿勢にも触発され、自分の殻を少し破れたような気がします。
大阪芸大を選んだ理由のひとつは、1年次に油画・日本画・版画・彫刻の4分野を基礎から学ぶことができるという点でした。実際に体験した上で油画の具象という専攻を決められたことは大きな財産で、その経験が今後の制作にも生きていくと感じます。これからも多様な分野の人と関わる中で、さまざまな方向へ伸びていきたいと思っています。