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初開催の国際的アートフェア「art stage OSAKA 2022」に出展 初開催の国際的アートフェア「art stage OSAKA 2022」に出展

美術学科, 工芸学科, キャラクター造形学科
2022/09/12

2022年6月3日~5日の3日間にわたり、大阪・中之島で国際的な現代美術のアートフェア「art stage OSAKA 2022」が開催されました。大学として唯一特別参加した大阪芸術大学からは、4人の卒業生が出展。多くのコレクターやアート愛好者と接し、作家として大きく羽ばたく機会に恵まれました。

会場となった「堂島リバーフォーラム」に現代アートが集結

現代美術のアート見本市で、本学出身の作家たちが躍動!

大阪の新しいアートフェアとして初めて開催された「art stage OSAKA 2022」。日本最大のアートフェアである「アートフェア東京」に続き、大阪ではこれまでにないスタイルの国際的なアート見本市として注目を集めました。

コロナ禍の影響により1年間の延期を経ての開催となった今回は、大阪や東京ほか国内外から28のギャラリーが出展。新進作家から巨匠まで多彩な現代アート作品が一堂に集い、多くの来場者で賑わいました。

今回、大阪芸術大学から出展したのは、美術学科を卒業した平面作家2名、工芸学科卒の鉄作家、キャラクター造形学科卒のギャグ漫画家の4名。作品の多くが売れ、他のギャラリーからも展示の申し出が来るなど、それぞれに大きな成果を上げ、今後の飛躍につながる貴重な経験となりました。

また本学ブースだけでなく、東京のギャラリーからも在学生や卒業生が出展。大阪芸大出身のアーティストたちの幅広い活躍が見られる場にもなりました。

100号の大作もゆったりと展示
長い通路での展示は会場外からも注目の的に
美術学科2年生 チカンチ・アナスタシアさんの展示(ギャラリー「ボヘミアンズ・ギルド」より出展)
美術学科卒業生 松本セイジさんの展示(ギャラリー「YUKIKOMIZUTANI」にて個展形式で実施)

フェア開催中に、本学主催の特別プログラムとして、高校生を対象にした見学ツアーも行われました。アートに関心をもつ高校生が、美術学科教員とともに会場を回って作品を鑑賞。本学出身の作家と直接話す機会もありました。

「アートフェアは初めでで、見たことのないような作品がたくさんあるのにびっくり。先生の説明で、色々な視点から鑑賞できました」「作家の方に画材の使い方や技法を教えてもらったり、自分の描いた絵を見てもらったりして、とても勉強になりました」「SNSで作品を発表することでポートフォリオになるというアドバイスに納得。自分もやってみたいです」など、参加した高校生の感想も様々。作品づくりのヒントや将来について考えるきっかけにもなったようです。

見学ツアーでは高校生たちが本学出身の作家と交流しながら作品を鑑賞

 

卒業生インタビュー

美術学科卒業生
矢野 茜 さん

本フェアへの出展が決まった時、販売しやすい小品よりも、できるだけ大きい絵で自分が描く世界を見せたいと思い、100号の作品制作を決意。コロナ禍で開催が1年間延期になったことで、あらためてじっくりと時間をかけ、100号2点を含め出展する作品を納得のいくクオリティで仕上げることができました。

多くの人に作品を知ってもらえるアートフェアは、個展やグループ展とはまた違う貴重な機会です。今までにホテル型アートフェアに出展したことはありますが、今回は会場の造りもお客様の雰囲気もがらりと違い、少し圧倒されました。いかにもアートを買い慣れた富裕層という方も多く、接客するのも緊張しましたね。それでも大勢の方と会話でき、作品を購入してもらえただけでなく、興味を持ってじっくり見てもらえて嬉しかったです。お客様のアドバイスからイメージがふくらんで、「早く次の制作に取り組みたい!」と意欲も高まりました。

私がテーマとしているのは、植物や種子、粘菌といった森の生物たちが織りなす世界。自然に囲まれ、広い空間でのびのびと制作できる大阪芸大で学べたことが、今の自分につながっています。良い作品を生むには、技術を磨くだけでなく、様々な出会いや経験を重ねて、本当に表現したいものを見つけることが大切。早い段階でそれを見いだせれば、その後の創作活動がさらに豊かなものになると思います。

美術学科卒業生
大塚 孝太郎 さん

大学を卒業して広告代理店に就職し、企画営業の仕事をしながら作家活動に取り組んでいます。仕事では情報収集や時間管理を大切にしていますが、時にはそんな日常から離れ、ひたすらボーっと過ごしたい。作品ではそうした何にもフォーカスされない空間や時間を表現しています。

今回は作家として出展するだけでなく、大阪芸大ブースの窓口となって、運営側との連絡や展示空間のレイアウト、搬入といった準備全般も担当しました。今までに自分が体験した展示とは違う点も多く、また有名作家も多く出展する国際的なアートフェアに僕たち若手4人で挑むということで、正直プレッシャーはかなり大きかったです。それだけに、作品が売れたりギャラリストから声を掛けていただいたりという個人としての収穫以上に、大阪芸大ブース全体として予想をはるかに上回る成果を上げられたのは、何よりも嬉しいことでした。作品配置の準備作業などでも苦労した分発見が多く、次につながる良い経験になりました。

各ギャラリーの展示から、作家ごとの個性の出し方や、現代アートのトレンドなどを体感して、自分の作品の方向性を客観的に見直すこともできました。これからも今の生活環境から生まれるものや、仕事を通じてできた人とのつながりをエネルギー源にしながら、新たなシリーズの制作にも挑戦していきたいです。

工芸学科卒業生(大阪芸術大学大学院 修士課程 工芸領域修了)
髙松 威 さん

大学院を含め6年間工芸を学び、鉄を用いた立体造形作品を制作してきました。今春から兵庫県加東市に移り住み、山深い地域を巡って自然や季節の移ろいを肌で感じるうちに、作風も変化。鉄が錆びて土へ還る有機的な現象を手がかりに、シンプルな造形の中にも自然の癒しを感じさせる作品をめざしています。

アートフェアへの参加は今回が初めて。思いがけず大阪芸大ブースに展示できることになり、いつか出展してみたいという憧れが叶いました。新しい取り組みを披露し、大作も含めて完売できたのは大きな喜びです。その一方で、ただ販売するのではなくしっかりと作品を見せるための反省点も見つかり、自分がどんな作家でありたいか、あらためて考える機会にもなりました。

美術の世界では、撤退戦のように逃げ込むのも一つの生き方。勝ち負けや良い悪いではなく、互いの違いを認めて励まし合えるのが、この世界の良さだと思います。

大学時代には、作家としての野性やパッション、自立心も養われました。それらを力にして、いずれは制作で生計を立て、さらに広い市場へ出たいですね。お世話になった先輩方から受け継いだバトンを後輩たちに繋げていくのも目標の一つです。

キャラクター造形学科卒業生
石塚 大介 さん

大学在学中にギャグ漫画家としてデビューしたものの、わずか1年で連載が終了。そこからインスタグラムで漫画の投稿を始め、地道な努力が実って、現在フォロワー数は16万人を超えました。認知度が高まるにつれて、PR案件、個展やオリジナルグッズ展開、大阪芸大での特別講義など、活動の幅が広がってきました。

そうした流れで、今回アートフェアに出展できることに。長い廊下全面が自分の展示スペースに割り当てられて、嬉しい反面、広い空間をちゃんと埋められるのか、作品が売れるのかと不安にもなりました。フェア初日、ファンの方やインスタで知ってくれた方だけでなく、この会場で初めて僕のことを知ったというお客様も作品を購入してくださって、ほっとしましたね。

実は、芸大出身にもかかわらず美術館に行ったことがなく、アートをじっくり鑑賞したのも今回が初めて。会場内の展示を見て回って、現代アートというものの多彩さや自由さに驚き、とても刺激を受けました。

これからもっと広く認知され、将来的には自分の作品が海外の美術館のコレクションになるようなアーティストをめざしたい。インスタなどのSNSを駆使して影響力を高めていけば、決して夢ではないと思います。ギャグ漫画家を代表する存在になって、自分のアートを世界に発信していきたいですね。

他ギャラリーから出展した在学生・卒業生

美術学科2年生
チカンチ・アナスタシア さん

ロシアで生まれ育って15歳で来日し大阪芸大へ進学。異文化にふれて感じた思いや自分の目を通して見た今の世界を表現したくて、制作に打ち込んでいます。

友人に紹介されたギャラリー「ボヘミアンズ・ギルド」で、昨年秋に初の個展を開き、今回のアートフェアにも同ギャラリーから出展しました。作品を見てもらえる機会をいただけて感謝の気持ちでいっぱいです。作品の見方は人によって様々で、自分のビジョンとはまったく違うこともあり、こうした場で色々な人と出会う中から新しい気づきを得られるのが楽しいですね。

大阪芸大は、創りたいという気持ちがあれば何でもできる場所。先生や仲間など周囲の人に手伝ってもらうこともできます。だからこそ、まずは自分自身を確立して、自分から動くことが大切。アートの世界で食べていくのは簡単ではないですが、今後も自分から積極的に働きかけ、チャンスを開拓していきたいです。

美術学科卒業生
松本 セイジ さん

大学卒業後、デザインの仕事を経てニューヨークに渡り、本格的な作家活動を始めました。ユニクロやNIKEなど企業とのコラボも多数手がけ、現在は長野県を拠点に制作しています。目的が明確なクライアントワークとは違って、アート作品は自分を見つめ、自分と対話する中から生まれるもの。僕の場合は動物をモチーフに、日常の中のささいな幸せを見出す喜びを落とし込んだ作品が中心です。今回のフェアは、お世話になっているギャラリー「YUKIKOMIZUTANI」から個展形式で出展し、立体アートも展示して世界観を表現できました。

大学時代の専攻は版画。「多くの量を創ることで見えるものがある」という先生の言葉が印象に残っています。芸大出身の作家仲間から受ける刺激も大きいですね。制作を続けると悩みや迷いも出てきますが、その時々で好きなものに打ち込めばいい。どんな経験もプラスになって、活動も視野も広がっていくと思います。

運営者からのメッセージ

「art stage OSAKA 2022」エグゼクティブ・ディレクター
北島 輝一 氏

初開催となった今回のフェアは、入場者数約2千人、売上総額約1億5千万円と好調な結果で閉幕し、大阪のアート市場のさらなる活性化という狙いの上でも手応えがありました。大阪芸大ブースのように若手作家が卒業した美術大学から出展することは、フェアの多様性の面でも意義があり、作家の方々にとっても躍進のチャンスになったのではないでしょうか。
僕自身も大阪芸大ブースで作品1点を購入したのですが、アートを買うことは、ベンチャー企業の株を買うのと似ていて、その将来性に投資することでもあります。僕が考えるアーティストとは、作品を通じて自分の考えを表現し、エネルギッシュに生きる人。他とは違う新しい価値を生み出して世の中に主張するという意味で、アーティストは起業家と同じ存在だと思うのです。
アートを介したコミュニケーションの可能性はさらに広がりを見せており、私たちは今後も様々な都市でアートマーケットの魅力を発信していく予定です。若き作家たちの活躍にも期待したいですね。