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デザイン・サウンド・プログラミングの精鋭が新しくなった実験ドームでコラボレーション! デザイン・サウンド・プログラミングの精鋭が新しくなった実験ドームでコラボレーション!

デザイン学科, 音楽学科
2023/01/13

2022年9月30日、芸術情報センターにある実験ドームで、デザイン学科 客員教授 古平正義先生、音楽学科 客員教授 evala先生、フロウプラトウ/ライゾマティクスのアートディレクタ ー木村浩康氏、プログラマー 塚本裕文氏が手がけたデザイン・音楽・テクノロジーを駆使した映像作品「ACROSS THE UNIVERSITY」が披露されました。作品の発表と共に、AVホールで「デザイン×プログラミング×サウンド」をテーマに、これからのクリエイティブやコラボレーションについて語る特別授業も実施。3Dデータとプログラミングを用いてデザインされたモーション・タイポグラフィの制作過程についても詳細が語られました。

3Dデータとプログラミングを用いて作品をデザイン

デザイン学科、音楽学科、アートサイエンス学科の学生を対象に開催されましたが、全学科聴講可能な特別講義として行われたため、会場には映像学科など、学科の枠を超え学生たちが集まりました。

 講義の冒頭、古平先生から、2019年に自身がアートディレクターを務めるアートマガジン『O Plus』の特別プロジェクトで、木村氏、塚本氏と共に手がけたインスタレーションについて紹介されました。大阪芸術大学のアートサイエンス学科棟を舞台に、たくさんの創造性のある言葉をバルーンで浮かべるというものです。今回のプロジェクトでは4つの校舎をモチーフに、各校舎や学科に関連するキーワードと3Dデータ/プログラミングを用いてデザインしたモーション・タイポグラフィ「ACROSS THE UNIVERSITY」を制作したことを説明。映像に合わせてevala先生がサウンドを制作しています。

最新設備の実験ドームでモーション・タイポグラフィを披露

今回、作品が披露されたのは、全天周映写や立体音響システムを備え、制作・実演・配信などの技術を総合的に学ぶことができる施設として今年リニューアルされた実験ドームです。実験ドームは、今後も映像や照明などがアップデートされ、最先端のクリエイションの場として活用されます。作品のサウンドを制作したevala先生は、実験ドームの改修の総合ディレクションを手がけました。

半球型サウンドシアターとしての機能を持つ実験ドームで披露された「ACROSS THE UNIVERSITY」は約2分間の作品です。校舎を流れるタイポグラフィが全天周映写され、アングルを変えつつ、カラフルな色面や鮮やかなグラデーションから、宇宙空間を感じさせるモノトーンの場面へと切り替わるなど、文字が流れながら映像が変化していきます。タイポグラフィが集合体になり、大阪芸術大学の校舎をかたどった造形も映し出されました。静かな浮遊音からエッジの効いたビートまで、タイポグラフィの動きに合ったサウンドがドーム内に響きわたります。

作品は、3回にわたり繰り返し上映され、学生たちはドーム内をゆっくりと歩き回り、体を移動することで天井に映し出される映像や音の感じ方の違いなどを体感しました。

デザインの第一線で活躍するプロが制作過程を解説

作品を体感した後、AVホールでは、実験ドームで上映された作品を平面スクリーンで映写し、実験ドームで目にした映像との見え方の違いを紹介。今回発表した作品は、古平先生がコロナ禍で学内での活動に制限がある中、大学の校舎をデザインに置き換え、そこを歩くというコンセプトのもとに制作した作品であると説明しました。使われている言葉は、学校案内や資料などから抜き出された各学科や校舎に関連のあるものです。例えば、芸術劇場のシーンでは「PERFORMING」や「DANCE」「STAGE SETTING」「SOUND MAKING」など。そのタイポグラフィをプログラミングで動かして映像になっていると解説しました。

校舎の3Dデータなどを用いて、実際にどのような作業が行われたのか、東京からリモートで参加したプログラマーの塚本氏が、制作ツールや3D CADデータなどを画面共有し説明しました。

塚本氏は、「立体として見せるモーション・グラフィックスにするため、校舎の形をさまざまなアングルから捉え、いろいろな角度やバリエーションを見て建物の輪郭が見えてくると面白いのではないかと思い、カメラアングルを含め、動くところと静止する部分の強弱をつけることを意識してプログラミングしました」と話します。木村氏が「フィックスした1枚の画を作るというより、出来上がったデータをもとに撮影を行うという感覚で制作しました」と付け加えました。

そして、完成したモーション・グラフィックスに音を付ける段階で参加したevala先生は、無音状態の映像に、どのように音をはめていくか、いわゆる“サウンドデザイン”について説明しました。「キーとなるカメラのカットや角度が大胆に変わる場面などを時間軸上にマーキングすることで、その映像が持っているリズムや拍が見えてきます。そこで大体の構造を浮かべ制作します。今回の作品の場合、当初効果音的なものを想像していましたが、実際に使用したのは、古来からあるアフリカンビートを現代風にアレンジしたものです。サウンドデザインとは、映像やグラフィックスに生命的なもの、空間的なものを吹き込む作業で、制作過程では常に面白い発見があります。一方、音楽制作の現場では、完成された楽曲に対してミュージックビデオなど、ダンスや映像が肉付けされていくのがほとんどです」。evala先生は、「音に縛られずに無音でかっこいい映像をあげてもらい、そこに生命を吹き込むのが、サウンドデザインの醍醐味であり、腕の見せ所ではないでしょうか」と続けました。

また、evala先生がサウンドデザインしたSEGAのコーポレートアイデンティティ「Amazing SEGA」の映像や、古平先生及び木村氏が手がけた、日本ペイントが主催している国際学生デザインコンペティション「AYDA(Asia Young Designer Awards)」のプロジェクトについても紹介されました。AYDAのデザインに関しては、ウェブサイトのために作ったプログラミングをポスターなどグラフィックのデザインに生かすことを想定し制作されたと言います。古平先生と木村氏から、形や色の動きをプログラミングするなど、デザインにおいてコンピュータを活用する醍醐味について語られました。

古平先生は、特にグラフィックデザインの領域においてはコンピュータがまだ絵を描く道具として使われるにとどまり、コンピュータ本来の良さが活用しきれていないように感じていると話します。「データを解析して形にしたりプログラミングで動かすことで、自分だけでは思いつかないビジュアルや、色や形の思いがけない組み合せが見れたりします。色・形やフォント、印刷物であれば紙やインキ、撮影のディレクションにしても写真のトーンやシチュエーションなど、デザインは元々“選ぶ”という局面が重要です。選択肢は当然多い方が良く、コンピュータはその幅を大きく広げてくれると思います。しかし、その出発点を作ったり、どういう手法を使うのか、最後にどう着地させるのかなどを選ぶのは当然人間で、そこを選び抜くことが大切なため、根本のアイデアや各プロセスに関わる知識がこれまで以上に重要になってきていると感じています」と語りました。

evala先生は、サウンドを制作する上でもプログラミングを活用することが多く、人間が選択する音とAIが選択する音のバランスや、新しい組み合わせを生み出していくことで大切なのがセンスだと言います。そして、evala先生が手がけた映画『ホリック xxxHOLiC』の“アヤカシ”のサウンドデザインを披露。音が加わる前と後の映像を比較し、その制作の背景を紹介しました。さらに、薬師寺で開催された歌舞伎公演で作曲を手がけたプロジェクションマッピング映像も上映されました。

講義の最後には、質疑応答の時間が設けられ、学生から「デザインを制作する上で、プログラミングなどコンピュータにどこまで任せるのか」「映画の効果音など、音のインスピレーションはどこから来るのか」という質問に、先生方が1つひとつ丁寧に回答する場面が見られました。

デザイン学科 客員教授
古平 正義 先生

今回披露した作品は、アングルを決めて撮影・編集する通常の映像と違い、3Dモデルに対して文字の配置を決めた後で動かしながらアングルを探ったため、想像していなかった形が見える面白さがありました。出来上がった映像に対してevala先生に音をつけてもらったのですが、こちらも音に合わせて映像を編集・調整する手法にはない新鮮さがありました。木村氏、塚本氏、evala先生3者のちょっとした感覚の違いから生まれる発見があって楽しかったです。
また、タイポグラフィが映し出された実験ドームに人が立っている状況がSF的で、画として面白いと思いました。ドーム映像は海や星空などの印象が強かったのですが、デザインを持ち込むこと、そこに人がいることで新しい風景ができる可能性を感じました。
6月にカンヌライオンズ(国際クリエイティビティ・フェスティバル)で審査員を務めたのですが、世界ではグラフィックや映像などメディアの垣根は取り払われ、プロジェクトごとに新しい表現の場やメディアを生み出すことが当たり前になっています。コラボレーションも分業での共同制作にとどまらず、お互いに影響し合って新しい物をつくり出すようになっていくと思います。デザインに限らず、音楽や映画など何でもそういう傾向があるのですが、日本はドメスティックで成り立ってしまっているが故に、小さな枠の中に収まってしまいがちです。学生たちには、世界中にあるの無数の良い物を見て、本当に好きになれる物を見つけて、各自それぞれのクリエイティブに生かして欲しいです。

音楽学科 音楽・音響デザインコース 客員教授
evala先生

今回のように、学科を横断した授業というのは、総合芸術大学であるからこそできる、大阪芸術大学の強みであり、これからの芸術大学においてあるべき姿だと思います。現在、改修を行っている実験ドームでも、音楽家である私が音響部分だけでなく映像や照明なども手がけているように、アートサイエンスやデザイン、映像など、より一層ジャンルの垣根を超えてオープンにしていきながら、学科単位での活用だけでなく、共通して創作できる場にしたいという思いがあります。
近年、音楽・デザイン・映像など、どの分野においても、どこかの工程でプログラミングやコンピュータを用いることが多くなってきています。例えば、昔は五線譜の楽譜を勉強することと、油絵を描くために絵筆の使い方を勉強することは全く違うことで、異なる技術や能力が必要でしたが、現在では 共通するOSのコンピュータ上で、音楽もデザインも写真も映画も製作しています。そのため、これからの大学は学科でくっきりと分けるのではなく、ジャンルを横断しながら学べる環境が整うことが求められるでしょう。
デザイン学科の学生からの質問が多く、普段接している音楽学科の学生とは違う系統の質問があり、新鮮でした。今回のような授業は、これからもどんどんやっていくべきだと思います。12月には集中講義として、音楽学科の学生たちと一緒に実験ドームで作品を制作・披露する予定です。

フロウプラトウ ライゾマティクス アートディレクター
木村 浩康 氏

アートマガジン『O Plus』のプロジェクトで、古平先生と共にグラフィックスを制作した延長で、今回、モーション・グラフィックス制作及び作品を披露することになりました。
ある一定の美しさは、人間がコントロールしますが、ある程度コンピュータに委ねて制作した作品です。このような、機械が描画して生まれたものをグラフィックに落とし込む作品を、古平先生とコラボレーションすることも多いです。
普段はアートディレクター/デザイナーとして制作を手がけていますが、古平先生とコラボレーションする際は、古平先生がデザインしたものをエンジニアに繋ぎ、プログラミングできるようディレクターとして再現できる形に整える役割を担っています。何かを表現する上で、1人でできることは限られてきます。また、コンピュータを使ってどれだけのものを表現できるかという時代になっているので、今後必要になってくる能力は、エンジニアとコミュニケーションがとれることだと思います。私は、昔からそういったデザイナー/アートディレクターになることを目標に掲げていました。
今回の特別授業では、ライゾマティクスが手がけたプロジェクトについて学生から質問があり、その内容で自分たちのことを客観的に見れたというか、良い意味でライゾマティクスの実態が見えた気がしました。大阪芸術大学は、第一線で活躍する方々が教授陣として揃い、学生たちがプロの現場の話を聞く機会が豊富なため、とても恵まれた環境だと思います。

デザイン学科 空間デザインコース専攻 2年
塩見 慶太 さん

4月に実験ドームのリニューアルお披露目会があった際、evala先生のことを知りました。その時は、その場に行くことはできなかったけれど、今回、evala先生による特別授業が行われるという情報を得て、尊敬するグラフィックデザイナーの古平先生とのコラボレーションということもあり、素晴らしい作品が見れるのではないかと思い、参加しました。
実験ドームで作品を見た時、身体的な衝撃を受けた感覚に陥りました。普段、空間デザインを勉強する上では、実際に形としてある物や素材を扱いますが、その時の肌感覚とは違う、目に見えない音や光など、体の五感を揺さぶられるような感じがしました。実験ドーム内では、360度どこにいても均一に音を感じることができ、片耳を塞いでみたり、目を閉じて音を聞いてみたり自分なりにいろいろ試して作品を体感しました。
今回のように、他の学科の客員教授の方々の話を聞ける、ジャンルを横断した特別授業に参加することで、とても良い刺激を受けることができます。このような機会をもっと積極的に活用し、これからの創作活動に生かしていきたいです。

映像学科 2年
橋本 怜知 さん

以前から、リニューアルされた実験ドームに興味があり、今回、そこで作品が披露されるという情報を聞いたので、特別授業に参加しました。360度、音が均等に聞こえるというドーム内で、映像と音を組み合わせた作品を動き回りながら、感じることができて面白かったです。
普段、映像学科の授業では、映画などの撮影に関するプロフェッショナルの講師陣の方々から講義を受ける機会が多いですが、今回の特別授業では、自分が興味を持っている、映像と音の組み合わせや関連性について学ぶことができました。
また、evala先生から映画音楽のサウンドデザインについて話を聞くことができ、これまで知れなかったことを学ぶことができたのはもちろん、参考になることが多く、とても貴重な経験になりました。
大学生活において、音楽業界をはじめ、デザインや映像などさまざまな芸術分野の第一線で活躍するプロフェッショナルの方々の講義を受けられるのはもちろん、サークル活動などを通して、異なる学科の学生と仲良くなり、意見交流したりするのもすごく良い刺激になっています。

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