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放送学科 声優学概論 声に恋する! 放送学科 声優学概論 声に恋する!

放送学科 声優学概論 声に恋する!
放送学科
2021/04/08

NHK大阪ホールにて朝日・大学シンポジウム 大阪芸術大学「声優学概論 声に恋する!」が開催されました。

学生たちの日々の学び・練習の成果を、自身の「声」にのせて発表するこのイベント。放送学科に声優コースが新設された2011年から行われており、今回で9回目となります。

大阪芸術大学では、NHK大阪ホールのように観客席が多く一流のアーティストたちがパフォーマンスを行う大きなホールを、学生たちの発表の「場」として意欲的に取り入れています。それは大きな「場」を経験すること自体が、学生たちにとって重要な学びとなるからです。

この「声優学概論 声に恋する!」には、放送学科声優コース3年生と短期大学部 メディア・芸術学科声優コースの学生たちが出演し、群読・朗読劇・アテレコ実習を披露しました。

「外郎売り」の長ゼリフに
オリジナル映像ストーリーをつけて

群読では「外郎売りパフォーマンス」が上演されました。「外郎売り」とは歌舞伎演目のひとつで、薬売りが「透頂香(とうちんこう)」(通称:ういろう)という薬の効能や、それにまつわる由来を語るお話です。飲めば胃・心・肺・肝がスッキリするうえに口がよく回るようになるということで、一粒飲んで実演する場面では、発音が難しいさまざまな言葉や早口言葉のようなものが登場します。


パフォーマンスは、「外郎売り」の長ゼリフにオリジナルのストーリー映像をつけて、ステージのスクリーンに映すかたちで発表されました。

映像は、男子学生が自室ベッドに横たわりながら、片手でスマートフォンを見ているところから始まります。スマホ画面には「十八番外郎座」による「全国統一祭二〇二〇」という催しの告知画像が表示されています。キャッチフレーズは「次代円斉(※「ういろう」づくりの本家本元の親方)は君だ」。その後テレビを観るも、さっき見た催しの告知が頭に残っていたため、まるで白昼夢を見ているかのような体験をする――。このようなストーリーでパフォーマンスを展開しました。

男子学生がテレビをつけると、子供向け番組や野球中継、クイズ番組、テレビショッピングなど、ザッピングをしているかのようにいろいろな番組が登場します。それぞれの番組で出演者に扮する学生たちは衣装をまとい、身体全体で演じながら、外郎売りのセリフをそれぞれの役の声に乗せて表現していました。


また、放送学科ならではの「伝える」ノウハウも随所にちりばめられていました。クイズ番組やテレビショッピングなどでは、番組らしいテロップを画面に表示したり、外郎売りのセリフをそれぞれの番組にマッチした方法で字幕スーパーとして流すなど、観る側を飽きさせない仕掛けが学生たちのパフォーマンスをいっそう引き立てました。

荒野の王子さま
荒野の王子さま

バラエティ豊かな役を
学生たちが好演

朗読劇では、短期大学部 メディア・芸術学科声優コースの学生たちによる「デューク」(作:江國香織)、放送学科声優コース3年生による「死神の名付け親」(グリム童話より)、そして「荒野の王子さま」(作:O.ヘンリー)がステージで実演されました。

朗読劇はスクリーンとステージ上の複数のマイクを使って行われました。それぞれの役の衣装を着た学生たちが、入れ替わりながらマイクの前に立ち、身体の動きを交えながら、情感豊かにそれぞれの役を声で表現していました。

演じられた朗読劇のひとつ、「荒野の王子さま」の主人公は、守銭奴の父親に採石場の飯場へ売り飛ばされた11歳の少女レナ。毎日朝から晩まで奴隷のように働かされますが、夜中にこっそり読むグリム童話が唯一の希望でした。しかし、意地悪なおかみさんに本を取り上げられます。絶望したレナは母親に、家に連れ戻してほしい気持ちを手紙に書き、郵便馬車に託しますが、馬車がレナの故郷に向かう途中、悪名高いボンド・ビル強盗団に襲われ……。


一日中こき使われるレナの疲労感や、唯一の希望であったグリム童話を取り上げられ、絶望から死をも意識してしまう切迫感、強盗団の親方・ビルの“悪いヤツだがどこか憎めない”人情深さなど、それぞれのキャラクターの境遇や感情が、声を通じて観る側に伝わってきました。また、楽しげな場面では明るく、悲しい場面ではレナに寄り添うようにメリハリのある声でお話を進めた進行役や、レトロな昭和歌謡を取り入れた演出など、ストーリーを過度に暗くさせない工夫が観る側をますます物語に引き込みました。

アテレコ実習
アテレコ実習

「声」だけで表現
アテレコ実習

アテレコ実習では、2回のオーディションを勝ち抜いた放送学科声優コース3年の学生たちが、「金田一少年の事件簿R」(©天樹征丸・さとうふみや・講談社/読売テレビ・東映アニメーション)“獄門塾殺人事件”ダイジェスト版のアテレコに挑戦しました。


スクリーンに映し出されるアニメ映像に、ステージ上の複数のマイクを使って学生たちが登場人物のセリフをアテていきます。アテレコ実習では衣装はもちろん、小道具も身体の動きもなく、自身の声だけで役を表現するため、より高い技術が求められます。

真相を突き止めるために考えをめぐらす場面や確信を得たその瞬間に出たことば、真実を隠しムキになって言いつくろうさま、さらには話をしているシーンで目を合わす、合わさないで表現を変えるなど、学生たちが細部にわたって声を使い分け、物語を完成させていきました。


今年も「声に恋した」学生たちによって、ことば・感情・心の揺れ・息づかいなど、多種多様な声の表現が繰り広げられた、熱のこもった声優学概論となりました。

アテレコ実習
アテレコ実習
松野太紀先生よりいただいたメッセージ動画
松野太紀先生よりいただいたメッセージ動画

担当教員

●群読「外郎売りパフォーマンス」

 指導:放送学科 客員教授・伊倉一恵先生(CITY HUNTER/槇村香役など)

 監修:放送学科 教授・杉山佳寿子先生(アルプスの少女ハイジ/ハイジ役など)


●朗読劇「デューク」

 演出:短期大学部 メディア・芸術学科 教授、放送学科 非常勤講師・渡辺菜生子先生  (ちびまるこちゃん/たまちゃん役など)


●朗読劇「死神の名付け親」

 構成・演出:放送学科 非常勤講師・佐藤正治先生(ドラゴンボール超/亀仙人役など)

 監修:杉山佳寿子先生


●朗読劇「荒野の王子さま」

 脚色・演出:放送学科 非常勤講師・田中亮一先生(ドラえもん/先生役など)

 監修:杉山佳寿子先生


●アテレコ実習「金田一少年の事件簿R」

 指導:放送学科 客員教授・松野太紀先生(金田一少年の事件簿/金田一一役など)

声優コース/教授
杉山佳寿子 先生

大きなホールで観客の前で演じるということに、この声優学概論をNHK大阪ホールで行う意義があります。
習い事のピアノやダンスでも、発表会になるとウンと力がつきますよね。緊張もしますが、人前で、しかも大きなホールで実演することが大事で、度胸もつくこの経験は学生たちにとってすごくいいものになると思います。
毎年、多くの学生を指導しますが、「私は個性がないんですよ」という人が多いです。本当はみんな、すごい才能があって、個性を持っているのですが、なかなかそこに気付けていないようです。声も声紋といって、指紋同様、誰一人同じ人はいないので、この時点で立派な個性ですよね。
普段、学生と接するときは、服装ひとつでも「すごく格好いいね」とか「その色よく似合うよ」なんて、冗談っぽく言ったりしますけど、ちょっと自信を持たせてあげたりしますね。そうすると、それをひとつの土台にして、もっとよくなろうと、よい方向に向かっていったりします。これをきっかけに、自分のなかでの気付きや才能の芽みたいなものが見えてくればいいと思いますし、実際、そこに気づいた学生は伸びますね。
大阪芸術大学は放送学科だけではなく、さまざまな学科を有する総合芸術大学です。演じるというところでは舞台芸術学科と共通するところがありますし、授業を聴講できたりもします。自分で囲いを作らなければ、いろいろな分野のことを吸収できると思いますね。
また、放送学科の先生方は東京などの第一線で活躍されている方ばかりで、そのみなさんが授業を受け持っています。マスコミ業界や芸能界の現場の風を直接、大阪芸術大学の授業に持ってこられるというところが、ほかの学校と大きく異なるところではないでしょうか。

放送学科 声優コース3年
幸翼(こうすけ)さん

今日の本番に向けて準備をしてきましたが、心に残っているのは「アテレコ実習」での練習です。20人近い人数でひとつの作品を作るわけですが、参加した人たちそれぞれの意見の調整が難しかったです。
「僕はこうしたい。私はこうしたい」。それぞれの思いが入り混じり、気持ちのすれ違いみたいなものもありました。しかし、みんな「いいものを作りたい」という気持ちは一緒です。そうすると、みんなの気持ちをくみ取るならこうすべきじゃないか、という話し合う場ができ、わだかまりをなくしたうえで、みんなで前に進めたことが印象深いです。
声優コースの先生は、絶対にどこかでその声を聞いたことがある方ばかりです。現場に出ている先生に教えてもらえるというのはどこの学校にもあると思いますが、大阪芸術大学では声優事務所の老舗「青二プロダクション」から多くの先生がいらして、しかもベテランにあたる先生方の指導を受けることができます。同じことを教えてもらったとしても、その「色の濃さ」はほかではなかなかないと思います。
声優コースのほとんどの先生は、「身体を使った表現(演技)ができないと声だけでの表現は難しい」とおっしゃいます。まだまだ練習していかなければなりませんが、将来は声優になりたいと思っています。知らない誰かの会話で、「大阪芸術大学で思いつく声優はだれ?」という問いに自分の名前があがればうれしいですね。

放送学科 声優コース3年
三澤さくらさん

今日の声優学概論では、群読と朗読劇に出演します。朗読劇では、本番のために授業以外でもみんなで自主稽古をしました。
クラスが2つの班に分かれているのですが、一方の班がステージに上がるときはもう一方の班が照明や音響などの裏方を務めます。自主稽古には、今日は裏方を務める班の子が付き合ってくれて「ここはもっとこうした方がいいよ」とか、客観的な立場で指摘してくれました。みんなでいろいろ意見を出し合いながら切磋琢磨できたことが印象に残っています。
NHK大阪ホールのように、ものすごく大きなホールでの本番は初めてです。とても緊張しますが、この場所に立てることがまずうれしいです。ステージ上の立ち居振る舞いだったり、声の出し方だったり、この経験は絶対自分の糧になると思います。
声優コースの授業はどれもおもしろいのですが、あえてひとつをあげるとしたら、松野太紀先生のアテレコの授業がとても楽しかったです。私は男性キャラが大好きなのですが、普段は女性の役の方が多いです。授業では男性キャラのアテレコができたことに胸が弾みました。
声優の魅力は、声だけでいろいろなことを表現し、人に伝えらえるところにあると思います。将来は、子どもから大人まで、幅広い世代の人たちに元気や笑顔を届けられるような声優になりたいと思います。

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