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声優学概論 声はアートだ!! 声優学概論 声はアートだ!!

放送学科 / イベント
2020/03/03

2019年10月14日、日本を代表する著名な声優として現役で活躍する放送学科声優コースの教員、ゲスト声優、放送学科声優コースの3年生や短期大学部生、卒業生が集い、「声はアートだ!!」をテーマにしたシンポジウムをNHK大阪ホールで開催しました。

2011年に国内で初めて4年制大学で声による表現を学ぶコースとして大阪芸術大学に開設した「放送学科 声優コース」。プロの声優として活躍し、現場経験豊富な教員たちのもと日々訓練を積む声優の卵たちの舞台に、多くの観客が集まりました。

日頃の成果を大舞台で披露

第一部では、短期大学部生による『いのちのはな』(さく:のぶみ 演出:三田ゆう子)、放送学科声優コースの3年生たちによる『怖がることを覚える為に旅に出た男の話』(脚本・演出:佐藤正治)、『遙かなるアメリカ~モンロビアサナトリウム篇~』(脚本・演技指導・構成:平野正人)の朗読劇が行われました。

 セリフだけでなく、効果音も学生が声で演じ、舞台奥に映し出されるスクリーン映像も学生が制作。舞台衣装もそれぞれの演目のイメージにふさわしいものを身に着けるなど、朗読劇といえど、視覚的にも世界観を感じられるこだわりがあちこちに見られました。舞台上のすべてを学生たちでプロデュースした朗読劇は、日頃から様々な芸術分野の表現を学び、この日の為に練習を積み重ねた結果として表れ、見ごたえ十分の演目となりました。

続いて、プログラムは実際に放送されたアニメーション映像を使った「アテレコ実習」へ。今回のアテレコ実習で使われたアニメ『金田一少年の事件簿R』は、松野太紀先生が主人公・金田一一の声を担当した人気作。オーディションに勝ち抜き、各登場人物の声優を担当する学生たちの顔には緊張の色が見えましたが、いざ実習が始まると一転、堂々とした顔つきに。個性豊かなキャラクターの特徴を捉え、コミカルなシーンから緊迫感あるシーンまで様々な声色を使い分け『金田一少年の事件簿R』の魅力を演出し、アテレコ実習は大成功を収めました。


アテレコ実習の後に行われた群読の『外郎売り(ういろううり)』では、俳優養成所やアナウンサーの研修などで発声練習や滑舌の練習に使われている歌舞伎演目『外郎売り』を、歌とダンスを交えて演じます。本来の群読とは異なり、ラップのような群読とダイナミックなダンスを組み合わせ新しくアレンジした群読スタイルはエネルギーに満ち溢れており、毎年人気の演目となっています。

今年は『ウィ・ウィル・ロックユー』(QUEEN)、『前前前世』(RADWIPS)、『ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem-』(ヒプノシスマイク Division All Stars)、『じょいふる』(いきものがかり)の計4曲にダンスをのせ、歌舞伎演目である外郎売りに近年のカルチャーを掛け合わせた大胆なアレンジを披露。オタ芸やフラッグダンスなども取り入れ全身を大きく動かしながらも、難しい単語の組み合わせも途切れず最後までしっかり発声していました。

花形声優から学ぶ、声優の魅力と極意

第二部では、ベテラン声優の教員たちと豪華ゲスト声優、放送学科声優コースの卒業生たちを交えたシンポジウムを開催。杉山佳寿子先生(アルプスの少女ハイジ/ハイジ役など)、真地勇志先生(秘密のケンミンSHOW/ナレーションなど)、伊倉一恵先生(CITY HUNTER/槇村香役など)、松野太紀先生(金田一少年の事件簿R/金田一一役など)、渡辺菜生子先生(ちびまる子ちゃん/たまちゃん役など)の5名が登壇し、それぞれの代表キャラクターの声色を用いた自己紹介に、会場からは歓声があがります。ゲストには田中秀幸さん(ONE PIECE/ドンキホーテ・ドフラミンゴ役、サザエさん/マスオ役など)、卒業生からは現在プロとして活躍する祖山桃子さん、奥谷楓さん、清水健佑さん、小泉萌香さん、櫻井慎也さんが参加しました。

杉山先生が進行役を務め、これまで演じてきた作品にまつわる話や、今回のテーマに沿った「芸術家」としての声優のあり方など、長年第一線で活躍されてきた先生方ならではの貴重なトークが続きました。


「演技というものは、表現する人とそれを見る観客がいないと成立しない。声優の仕事は、観客の方々に鑑賞していただいているという側面があるので、『芸術家』といっても差し支えないのでは」と語るのは真地先生。技術的な面を生かす職人としては40%、あとの60%は表現力を意識した芸術家として仕事をすることを心がけているそう。


 杉山先生からは「キャラクターの声は、一つの芸術品として成立している」とコメントが。作品内にとどまらず、国境も飛び越え海外でも愛されるアニメのキャラクターたちは、そのキャラの色を決める「声」も芸術品であると話してくださいました。

トークテーマは、「プロとして、どのようにキャラクターの声を模索しているか」へ。ベテランであっても、今でも現場で試行錯誤を繰り返し、よりキャラクターに寄り添った演技を模索しブラッシュアップを重ねているというエピソードから、「声優」という仕事の奥深さがうかがえました。


卒業生から教員たちへの質問コーナーでは、ベテラン声優である教員たちが、卒業生たちからのさまざまな質問に答えました。笑いを交えながらも、真摯に質問に回答する教員たちの言葉を受け取る卒業生の顔も真剣そのもの。同じくプロとして活躍する教員たちと卒業生たちの様子から、放送学科声優コースで育まれた信頼関係も垣間見えました。


二部の最後には急に台本が渡され、登壇者全員参加のサプライズ企画、リハーサルなしの即興劇「6号館スタジオ殺人事件」がスタート。「いつもの仕事現場より緊張する!」と真地先生が話すほどの豪華メンバーによる即興劇では、教員たちがおなじみのキャラクターの声色でアドリブも交えながら見事な演技を披露。通常のアテレコでは見ることができない、作品を超えたキャラクターたちのコラボレーションに観客からも歓声が起こりました。

最後は出演した全員が舞台に集まりフィナーレへ。この日のために準備を重ねてきた学生たちの、やり遂げた晴れやかな笑顔が印象的でした。


杉山佳寿子先生、松野太紀先生、放送学科声優コースの卒業生である祖山桃子さん、清水健佑さんの4名から、本シンポジウムにかける思いや、「声優」という職業についてのメッセージをお届けします。

2017年卒業
清水 建佑さん

声優コースでは、発声を用いるアテレコ授業だけでなく、舞台芸術で要となる立ち演技など、多岐にわたるジャンルのご指導をいただきました。そのすべてが今の仕事に繋がっていると感じます。大学では演技はもちろん、社会での人付き合いに関して等、人間としての学びもたくさん頂いたと実感することが日々あります。
自分の「やってみたい」という原動力は誰にとっても一番の強みです。学生の皆さんも、自分の「やってみたい」と思った初心を忘れないで、頑張り続けてほしいです。

青二プロダクション所属。大阪芸術大学放送学科声優コース2017年卒。
出演作▶︎世界まる見え!テレビ特捜部(VO)、世界くらべてみたら(VO)
2015年卒業
祖山 桃子さん

放送学科声優コースに在籍していたとき、メソッド演技やスタニスラフスキー※をご指導いただけたことで、ただ上手いだけのマニュアル芝居ではなく、演技の基礎を押さえつつも自分のオリジナリティが発揮できていると思います。
「守破離」という言葉があるように、基本をしっかり押さえて自分のオリジナリティを突出させることは「型破り」として評価されますが、基本がおろそかなまま突飛なことに挑むと「形無し」で終わってしまいます。しっかりと基本を身につけ、その上で個性を伸ばすことができるよう、声優を志す学生さんたちと一緒に頑張っていきたいですね。

※ロシア(旧ソ連)の演劇人コンスタンチン・スタニスラフスキーが提唱した、人の心理面に働きかける演技法

青二プロダクション所属。大阪芸術大学放送学科声優コース2015年卒。
出演作▶︎キラキラ☆プリキュアアラモード(浅香さら)、おはよう日本(VO)
大阪芸術大学 放送学科教授
杉山 佳寿子先生

2012年から毎年行われている「大阪芸術大学 声優学概論」ですが、学生たちに学校内の授業だけでなく、お客様の前で演じる機会を与えるために行っています。観客の皆さんには、日々練習を重ねた学生のパワーを感じていただけたら嬉しいですね。
自分が生涯を通してやってみたい「将来の夢」が見つかるのは、とても素晴らしいことです。その夢に向かって、突き進んでもらいたい。ですが、今の学生さんは真面目で、集団の輪からはみださない方が多いように感じます。役者というのは品行方正だけでは成り立たない仕事なので、力をつける前に「これは正解じゃないかも」と二の足を踏んでしまっては、成長できません。間違いを恐れず、一歩踏み出す力をつけてほしいと思っています。

青二プロダクション所属。小学4年生の時にNHK名古屋放送児童劇団に入団。18歳で劇団テアトル・エコーに研究生として入団し、声の仕事を始める。2010年に第4回声優アワード功労賞を受賞。
代表作▶︎アルプスの少女ハイジ(ハイジ)、キテレツ大百科(コロ助)
大阪芸術大学 放送学科客員教授
松野 太紀先生

このシンポジウムで、人前に出て対面で演じることにより「人に想いを伝える」という体験をしてほしいと思っています。通常、テレビや舞台で活躍する役者さんと違い、声優は表に出ない職業なので、これだけの大舞台で演技ができるこの貴重な機会に、さらに声優として成長してほしいですね。若いんだから、出し惜しみせず声がかれるまで、全力を出し切りなさいと思いながら、僕は見守っています(笑) もし、この舞台で失敗してしまっても、「失敗」という経験でしか得られないこともあるので、それも成長のカギになるはずです。青春は何があっても面白いものなので、この舞台で感じたすべてのことを声優としての成長に生かしてほしいですね。

青二プロダクション所属。幼少時代に劇団ひまわりに入団し、10歳で声優デビュー。2019年12月公開、「男はつらいよ50お帰り寅さん」出演。
代表作▶︎金田一少年の事件簿R(金田一一)、スポンジ・ボブ(スポンジ・ボブ)