本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

石塚大介個展「Persistence」 ギャグ漫画と現代アートの境界を超えて活躍 石塚大介個展「Persistence」 ギャグ漫画と現代アートの境界を超えて活躍

キャラクター造形学科
2025/09/02

インスタグラムでフォロワー約15万人を誇るギャグ漫画家から現代アーティストへ。異色の経歴でアート界に新風を巻き起こしているキャラクター造形学科卒業生、石塚大介さん。数々のアートフェアで注目を集め、2025年7月26日~8月15日には東京・銀座GINZA SIXの「銀座 蔦屋書店」にて個展「Persistence」を開催するなど、その勢いはとどまるところを知りません。石塚さんの創作の原点やこれからのビジョン、大阪芸術大学での学びなどについてお聞きしました。

東京・銀座のアート発信地として知られるGINZA SIX「銀座 蔦屋書店」のアートウォールで個展を開催

――漫画家からアーティストの道を歩み始めたきっかけは?

もともと自分の漫画のキャラクターである「田中みのるくん」を世界で有名にしたいという夢がありました。でも日本のギャグ漫画が海外でウケるのは難しい。壁を感じていた時、大阪芸術大学からアートフェア「art stage OSAKA 2022」への出品の機会をいただき、今お世話になっているギャラリーのディレクターが足を運んでくれました。その出会いがきっかけになり、アート作品を一枚も描いたことがないまま、翌年の福岡の「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023」でデビューすることになったんです。無茶ぶりもいいところですが、ディレクターと一緒に絵の具を買いに行くところから始めて、「世界のトップになって田中みのるくんを広める」という思いだけで突っ走ってきました。それから東京、台北、香港などのアートフェアにも出品させていただき、大阪・関西万博でも展示を行いました。

国内最大級のアートフェア「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023」で個展「GIANT KILLING」を開催しデビュー。ライブペインティングも行った
大阪・関西万博で開催された「日本国際芸術祭」では、大阪芸術大学と「YUMEKOUBOU GALLERY」の2つのブースで出品

――今回の個展にはどんな思いでのぞみましたか。

GINZA SIXの蔦屋書店は、今日本で最も感度の高いアート発信地の一つ。個展のお話をいただいた時、自分のような、アートのルールを無視して、ただ情熱をぶつけてきた作品はそぐわないのではとも思いました。でも、銀座という上品な場所に合わせるのではなく、むしろ反発するくらいの気持ちで自分らしく勝負してやろうと。それが僕にできる唯一の戦い方なので。その結果、メインビジュアルにしていた80号の作品が真っ先に売れて、自分のスタイルを貫いて良かったと確信できました。

書店併設のオープンなギャラリー空間で開催された今回の個展では、通りがかる多くの人々が作品を鑑賞
個展のメインビジュアルとなった80号の作品『少年時代』

――漫画とアート、それぞれの位置づけは?

漫画は、どうすれば多くの人に見て楽しんでもらえるか、商業的な視点で描いています。一方アートは、人生や思想、感情をぶつける自己表現の場。SNSでの自由な発信が難しくなってきた今、自分を思いのままに表現できるアートは僕にとってなくてはならないものです。何十万円も出して作品を買ってくださる方たちに応えるには、どれだけ自分の思いを入れ込めるかが大事だなと。でもその二つは全くの別物というわけじゃない。アート作品の下地には必ず「田中みのるくん」を描き、その上に絵の具を塗り重ね、最後に削って仕上げています。今まで自分がやってきたことがすべて生きているんです。

――「田中みのるくん」を描き続ける理由は?

大学在学中になんとか漫画家デビューしたものの、連載が打ち切りに。インスタを始めて数年は全く人気が出ず、肉体労働のアルバイトをしながら、毎日漫画のことばかり考えていました。そんな中でふと「自分の分身のようなキャラクターを作ろう」と思って生まれたのが「田中みのるくん」です。それからひたすら投稿を続け、フォロワーさんが増えていった。こんな風にアートの道を進むとは思ってもみませんでしたが、壁にぶちあたるたびに「じゃあ自分には何ができるか」と考え、やり続けたことが今につながっていると思っています。

自身の内の感情やエネルギーを様々な色彩やモチーフに置き換えて幾重にも塗り重ね、最後に削り取る
制作プロセスをアーカイブした資料。どの作品にも下地に「田中みのるくん」が描かれている

――アート界の“常識”についてどう考えていますか。

アートの世界ではコンセプトが重要とされ、「描きたいものだけ描いても通用しない」「今売れても先々まで残らない」と言われたこともあります。でも、アートを本格的に学び、高い技術でコンセプチュアルな作品を描く人は大勢いる。彼らと同じ土俵で戦うのではなく、やはり自分は自分の道を行こうと決めました。僕のテーマは「下剋上」。何もない弱者の代表のような僕が這い上がってトップを取る、世界中の人に僕の作品を知ってもらう、それが最終目的です。

――大阪芸術大学での学びはどんなものでしたか。

一番の財産は、ホラー漫画の巨匠である日野日出志先生との出会いです。僕が変なおじさんの絵ばかり描くのを見て、「ずっとこれを描けよ」と言ってくれた。その一言が支えになり、自分の信念を曲げずに来られました。ひたすら漫画を描き、「出張編集部」でプロ編集者にアドバイスをもらうなど、僕にとって芸大は本当に素晴らしい場所でしたね。ただ、せっかく芸大に来ても、ダラダラ過ごすだけではもったいない。覚悟を持って本気でやるなら、人生を変える出会いのある場所です。

来場者と積極的にコミュニケーションを図り、制作の背景や一枚一枚に込めた思いを語る石塚さん
10号のペインティングを壁一面に展示。既存のアートの枠に収まらない作品群が見る人に強く迫る

――これからの活動やビジョンを教えてください。

最近はアートに偏っていましたが、今後は漫画もまた大切にしていこうと思っています。自分が発信できる場所をしっかりと保ちながら、アーティストとしても世界に挑んでいきたい。9月には、横浜で開催される国際アートフェア「Tokyo Gendai 」で、韓国出身のセラミックアーティストの方との二人展を予定しています。


実は今後、バリ島への移住も考えています。税金問題など経済的な理由もありますが、バリの空気が自分に合っているなと。実際には大変なことも多いけれど、面倒くさいことの中にこそチャンスがあると信じているので、言葉や税制も一から学ぶ覚悟でいます。それに僕は、とにかく運だけはいいんです。だから、これからも信じた道に向かって行動し続けます!


石塚さんを見出した「YUMEKOUBOU GALLERY」のディレクター、中島章さんにお話をうかがいました。「石塚さんの作品を初めて見た時、すごく下手だけど面白いなと(笑)。渋めの作家を扱ってきた私たちにとっても大きな挑戦でしたが、常識を超えた、ある意味“イカれてる”取り組みに可能性を感じ、創作活動を伴走してきました。」今回の個展については「アートフェアとは異なり、GINZA SIXの蔦屋書店のような場での個展開催は、客観的な評価を得る大きなステップ。アートファン以外の人々にどう響くか、石塚さん自身も手応えを感じたのでは」とその意義を強調。中島さん自身も大阪芸大出身で、「クリエイターには、子どもの頃の“楽しい”という衝動をどれだけ持ち続けられるかが大切。大阪芸大は、卒業生同士の出会いやつながりが多いことも魅力ですね」と先輩からのアドバイスを贈ってくださいました。

来場したお客様に作品を解説する「YUMEKOUBOU GALLERY」ディレクターの中島章さん

石塚大介

奈良県出身。2016年、大阪芸術大学キャラクター造形学科卒業。在学中よりギャグ漫画を雑誌、SNSなどで発表し続けることで人気を博し、現在インスタグラムのフォロワーは約15万人。関西の有名FM局の番組にレギュラー出演するなど多方面で活躍。自身のインスタグラムで「がんばれ!田中みのるくん」を連載する一方、より自由な表現を求めてアーティストとしても活動している。


2023年

9月

ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023

石塚大介個展「GIANT KILLING」@YUMEKOUBOU GALLERYブース


12月「Study:大阪関西国際芸術祭vol.3」内のチーフ・フェアプログラム・ディレクターの沓名美和氏によるキュレーションプースにおいて個展開催


2024年

3月

ART FAIR TOKYO 2024

石塚大介個展「GIGANTEDRAP」@YUMEKOUBOU GALLERYブース


8月

ART021 HONG KONG(アート021香港)

「YUMEKOUBOU GALLERY」と「蔦星書店」とのコラボレーションブースにて新作発表


10月

 Fine Art Asia(香港)にて新作発表

OSAKA ART MARKET2024にて新作発表

会場のグランフロント大阪にて野生爆弾くっきー!氏とのARTトークショーを開催


2025年

5月

Taipei Dangdai(台湾)にて新作発表


7月

第3回日本国際芸術祭/大阪・関西万博展

 YUMEKOUBOU GALLERYブースと大阪芸術大学ブースにて新作発表