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大阪・関西万博で米国カンザス大学との合同吹奏楽コンサートを開催 大阪・関西万博で米国カンザス大学との合同吹奏楽コンサートを開催

演奏学科
2025/09/08

2025年6月29日・7月1日の両日、大阪・関西万博会場で、「大阪芸術大学 ウインド・オーケストラ」とアメリカ・カンザス大学の「カンザス大学 ウインド・アンサンブル」による合同コンサートが行われました。

 両大学の学生たちが一つの吹奏楽バンドとなって、日米それぞれの音楽の魅力を伝える楽曲を演奏。万博という特別な舞台で、音楽を通じて国境を超えた交流を図り、事前練習も含めて心を通わせ合うひとときを過ごしました。

日米の学生たちが言葉の壁を超え、音楽でコミュニケーション

「カンザス大学 ウインド・アンサンブル」は、米国屈指の大学吹奏楽団として知られ、アルバムも多数リリースするなど多くの実績と伝統を持つ楽団です。今回、アメリカ国務省の依頼を受け、国を代表する文化公演として大阪・関西万博で演奏するために来日。大阪芸術大学との共演に加え、7月4日の米国独立記念日には単独公演も行いました。

この合同コンサートは、カンザス大学音楽学部長のポール・ポピエル先生と本学演奏学科教授の橋爪伴之先生の縁から実現したものです。2023年のオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラの演奏会「バーンズ・チクルス」で、ポピエル先生は指揮者、橋爪先生はトランペット演奏者として招かれ共演。お二人はかつてアメリカで同じ先生に師事していた経緯もあり、今回の企画につながりました。

「カンザス大学が万博でコンサートを行うにあたり、大阪芸術大学と共演したいとお話をいただきました。大変光栄なことですし、学生にとっても海外の方々と演奏できる貴重な機会になると思い、喜んでお受けしました」と橋爪先生。開催決定後、本学では主に演奏学科教授の伊勢敏之先生が指揮・指導とプログラム構成を担当し、両大学間で何度も打合せを重ねて準備が進められました。

橋爪先生とポピエル先生は、トランペット奏者で名指導者として知られるV.チコヴィッツ氏の門下生同士。師から受け継ぐ音楽への思いを学生たちに伝える

本番に先立って、6月27・28日にカンザス大学吹奏楽団のメンバーが大阪芸術大学を訪れ、合同練習が行われました。それぞれ事前練習を積んできただけあって、最初から意外なほど息の合った演奏が実現。ポピエル先生、伊勢先生、カンザス大学バンドディレクターのマシュー・スミス先生、カンザス大学大学院出身で洗足学園音楽大学講師の滝澤尚哉先生ら指揮を担当する教員陣が、細かいニュアンスまで指導して楽曲を仕上げていきました。

本学14号館での合同練習。事前練習の成果が発揮され、初めての音合わせから見事なハーモニーが実現

指揮とともに通訳も務めた滝澤先生は、「初日は細かく通訳しましたが、2日目は様子を見ながら、大丈夫そうな箇所はなるべく控えめにしました。それは、通訳者の言葉ではなく、マエストロが話す内容に集中してほしいから。プロになれば外国人マエストロに指揮をしてもらうこともあるでしょう。学生の皆さんにそんな現場の雰囲気も体験しておいてほしいと思いました」とコメント。学生たちは指揮者の先生方の指示や身振りにしっかりと集中し、2日間のわずかな時間ながらも、充実した練習を重ねました。また初日の練習後には懇親会も行われ、日米の学生同士が楽しく語らって交流を深めました。

同じパートのメンバー同士で
言葉や文化を超えたコミュニケーションで音楽をつくりあげていく

万博のステージで両国の名曲を演奏し、大勢の来場者を魅了

6月29日と7月1日の合同コンサートは、万博会場の屋外ステージ「ポップアップステージ 東外」で行われました。日本とアメリカの総勢約60名のメンバーが、気持ちを一つにして演奏。両日とも厳しい暑さの中、大勢の来場者がステージ前に集まり、熱心に聴き入っていました。

日米合同の60名超の大編成バンドとして迫力あふれるパフォーマンスを披露

初日のオープニングを飾ったのは『海を越える握手』。1900年のパリ万博のために作曲され、国際的な友情をたたえるマーチで、力強く幕を開けました。続く『吹奏楽のための抒情的「祭」』は、津軽三味線や青森県の民謡をモチーフに、日本の伝統的なメロディを取り入れた曲。そしてカンザス大学のバーンズ先生が作曲した壮大な作品『マジェスティック』で、コンサートはさらに盛り上がります。

日米の伝統やスタイルをいかした様々な楽曲を演奏

『アイルランドの曲によるクラリネット協奏曲』では、リチャード・ギャルブレスさんがクラリネットソロを務め、どこか郷愁を誘う美しいメロディを奏でました。『あの日聞いた歌』は、日本の唱歌のメドレー。『ふるさと』などのなじみ深い調べに来場者も聴き入ります。『大河ドラマ「秀吉」メインテーマ』では、橋爪伴之先生によるピッコロトランペットソロが高らかに響き渡り、戦国時代の世界観がドラマティックに描かれました。フィナーレは、アメリカ第二の国歌とも呼ばれる『星条旗よ永遠なれ』。来場者も手拍子で盛り上がり、最後には大きな拍手と「ブラボー!」という歓声が上がりました。

リチャード・ギャルブレスさんのクラリネットソロが美しい『アイルランドの曲によるクラリネット協奏曲』
『大河ドラマ「秀吉」メインテーマ』では、橋爪伴之先生のソロによる力強いメロディが聴く人を魅了
ラストの『星条旗よ永遠なれ』はポピエル先生が指揮を担当。観客の手拍子が沸き起こって会場が一体に

初日のコンサート後には、アメリカパビリオンの見学ツアーにも参加。アメリカを象徴する風景や文化が迫力映像で映し出されるゾーンや、宇宙開発について紹介するゾーン、ロケット打ち上げの疑似体験ゾーンなど、様々な展示を楽しみました。

人気の高いアメリカパビリオンを特別に見学。万博に初めて訪れた学生も多く、興味津々で展示に見入った

コンサート2日目は、『マーチ「わかくさ」』など、プログラムを一部入れ替えて演奏。カンザス州が舞台の映画「オズの魔法使い」の主題歌として知られる『虹の彼方に』では、スティーブン・ライスリングさんがトランペットソロを披露しました。後半には、カンザス大学を拠点とする金管五重奏団「ミッドウェイ・ブラス」が登場して『ウェイサイド・フェスティバル』を演奏。そしてガーシュウィンの名曲をバーンズ先生が編曲した『ポギーとベス』では、グルーブ感が際立つアメリカらしい演奏を繰り広げました。

ソリストのスティーブン・ライスリングさんが、名曲『虹の彼方に』のおなじみのメロディを情感豊かに演奏
名手揃いの金管クインテット「ミッドウェイ・ブラス」による『ウェイサイド・フェスティバル』

コンサートを終えたメンバーたちは、観客から贈られる拍手に応えて、最高の笑顔で挨拶。両大学の学生同士が握手を交わし、一緒に写真を撮り合うなど、達成感に満ちた表情でお互いをたたえ合いました。

阪・関西万博「ポップアップステージ 東外」でのコンサートは2日とも盛況。多くの観客が足を止めて学生たちの演奏を満喫した
演奏学科 教授
伊勢 敏之 先生

今回このような形で海外の大学との共同コンサートが実現できたことは、学生たちにとっても私たち教員にとっても本当に素晴らしい経験になりました。カンザス大学は、作曲家・指揮者として世界的に知られるジェームズ・バーンズ先生や、世界各地でコンサートの指揮を行い幅広く活躍されているポール・ポピエル先生が、バンドディレクターを務めてこられた大学です。大阪芸大でもウインド・オーケストラの演奏会でバーンズ先生の作品を演奏したことがありました。そのような一流音楽家が導く名門大学バンドと共演できるのは、大変貴重でありがたいこと。万博という特別なシチュエーションを体験できたのも有意義でした。酷暑の下でのハードな演奏環境ではありましたが、学生たちは一丸となってよく頑張り、見事な演奏をしてくれたと思います。

事前の合同練習で思いがけなかったのは、両大学の学生たちがすぐに仲良くなったことです。一緒に合わせたとたんに息がぴったり合って、初めて合奏したとは思えないほど一体感のある演奏ができました。ポピエル先生も「事前にたくさん練習したんですね」と驚いておられたほど。できる限りの準備をしてアメリカから来られる皆さんをお迎えしようと、学生たちも一生懸命頑張った甲斐がありました。音楽は言葉を超えて人をつなぐ。その力の大きさを、あらためて感じました。

プログラムは、日本とアメリカの音楽の伝統的なスタイルや魅力を象徴し、また一般のお客様にも気軽に楽しんでもらえる曲目で構成しました。民謡を取り入れた『吹奏楽のための抒情的「祭」』、唱歌メドレーの『あの日聞いた歌』など、日本らしい曲を一緒に演奏。『大河ドラマ「秀吉」メインテーマ』は、米国の時代劇ドラマ「SHOGUN 将軍」が世界的にヒットしたこともあり、カンザス大メンバーも盛り上がっていました。一方でガーシュウィン作曲の『ポギーとベス』では、アメリカらしいフィーリングやグルーブ感を日本の学生たちも実感できたようです。互いの音を聴きながら演奏することで様々な刺激を受け合い、得たものは大きかったと思います。学生たちには、この経験をぜひ今後にいかしてほしいですね。

演奏学科 4年生(管弦打コース/サクソフォン)
知念 志央里 さん

コンサート当日は2日間とも猛暑日で、屋外での演奏はなかなか大変でした。でもカンザス大学の皆さんと一緒に演奏でき、万博という大きなイベントでステージに立てて、とても嬉しかったです。厳しい暑さの中でも大勢の方が演奏を聴いてくださり、音楽に合わせて体を動かしたり手拍子をしたりと楽しんでくださっている様子に、テンションが上がりました。
カンザス大メンバーと合奏して感じたのは、リズムの取り方や音の感じ方の違いです。特に『星条旗よ永遠なれ』は何度も演奏したことのある曲なのに、本場の人の演奏にハッとしました。私は沖縄出身で、以前に米軍基地の方と一緒に演奏させてもらったことがあります。当時はあまりわからなかった感覚を明確につかんで自分なりに深く理解できたのは、大学で4年間音楽を学んできた成果。今回のコラボレーションからも多くのことを吸収できたと感じています。
懇親会で色々な話ができたのも楽しかったです。スマホの翻訳アプリも使って、お互いの国についての印象など様々な話題で盛り上がりました。翌日はさらに良い演奏ができたので、コミュニケーションが深まるとやはり音楽にも違いが出るんだなと腑に落ちました。
管弦打コースはクラシックが基本ですが、ポップスやジャズにもふれることができ、オーケストラや吹奏楽だけでなく少人数のアンサンブルの授業もあります。幅広いジャンルの音楽をそれぞれの専門家の先生方から学べる毎日は、とても充実しています。

演奏学科3年生(管弦打コース/テューバ)
葉山 紫月 さん

海外の大学生と演奏するにあたって、最初は言葉の壁があると連携を取るのも難しいのではと思っていました。でも練習しながらだんだんと意思疎通が図れるようになってきて、「音楽にはやっぱり壁がない!」と実感。カンザス大学の皆さんはとてもフレンドリーで、わずかな単語からもこちらの意図を汲み取ろうとしてくれるんです。良い所を積極的にほめ、「今の音、良かったよ」と声をかけあって、みんなで音楽を楽しもうという姿勢がすごい。日米の音楽の違いを感じるだけでなく、彼らのポジティブさにも大いに影響を受けました。
演奏学科では学外での演奏機会も多いけれど、今回のコンサートはまた特別でした。万博については地元の大阪にも関わらず今一つ実感が薄かったんですが、初めて万博会場を訪れてみて、スケール感に驚きました。ここで国際的な音楽交流ができたのは、すごく良い経験になりました。
僕が大阪芸大に入学したのは、自宅から近く通いやすいことと、総合芸術大学という点に惹かれたから。一つのキャンパスに色々な学科が集まっており、他の学科とのコラボレーションなど、この大学でしかできないようなことをたくさん経験できるんです。将来は教員になって音楽を教えながら、自分自身の演奏活動も続けていきたい。生徒たちに音楽っていいな、楽しいなと思ってもらうことが目標です。今回カンザス大学の皆さんと一緒に演奏し、音楽を楽しむ前向きな姿勢を体感できたことは、その夢の実現にもきっと役立つと思います。

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