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「笑い」の送り手と受け手のぶっちゃけ座談会【ニッポンの社長】 「笑い」の送り手と受け手のぶっちゃけ座談会【ニッポンの社長】

放送学科
2022/10/24

今後主体となる「笑い」の発信・新メディアとは!?
今後主体となる「笑い」の発信・新メディアとは!?

長い間、「笑い」の発信の場として劇場やテレビが主流となっていた。だが、近年、YouTubeや、Instagram、TikTokなどのSNSも、「笑い」のアウトプットツールとして不可欠となっている。時代と共に変化する伝達方法における未来の「笑い」とは。吉本興業が主催するピン芸人コンクール『R-1グランプリ』のPR動画なども手がけるクリエイター・日座裕介氏と、氏の下で先端メディアコミュニケーションを学ぶ大阪芸術大学放送学科の学生4人、若手お笑いコンビ・ニッポンの社長(辻とケツ)を迎え、新しいメディアで「笑い」というエンターテイメントの発信について語り合ってもらった。


Photographs: Akira Kitajima
Text: Yuriko Ishii

YouTubeが主流? 若者のテレビ離れ

日座「芸人の発信の場として、テレビや劇場と並び、最近は、YouTubeやTikTokなどを活用する人が増えてきました。ニッポンの社長のお二人はいかがですか?」


「今は、ネタを上げるくらいしかしてないです。本当に面白いことができるならもっと活用していきたいと思っています。やるなら新しい企画を取り入れたいですね」


日座「学生のみんなは、YouTubeで芸人のネタを見たりしますか?」


宇佐美「初めはテレビを見て芸人のことを知り、面白いと思ったら、その芸人について調べ、ネタはほとんどYouTubeで見ます。レコメンド機能を活用して関連動画を見ることもあります」


日座「最近、テレビは見ますか?」


佐伯「家にテレビはありますが、見ないですね」


「僕も、本当にたまにしか見ないです」


「本当に見たいものは、見逃し配信とかもあるし、録画するという概念もなくなってきて、テレビを見ない時代になってきていますね」


日座「昔は、テレビで活躍して人気者になっていくのが王道というか、お笑い芸人の成り上がり方だったと思いますが、今はテレビ以外の所から人気が出てくる芸人も増えてきました」


「今は、芸人がテレビで冠番組を持つためにわざわざ下積みをする必要がなく、YouTubeなどを通して一発でMCになれてしまうというか、それで人気が出る可能性もあるので、無理しないでいい感じになってきていると思います」


日座「芸人として、これからテレビとインターネットを通じたYouTubeやSNSをどう使い分けていきたいですか?」


「僕は、テレビとYouTubeはどちらも『宣伝』のツールとしての感覚で活用し、最終的には、お客さんに単独で行っているライブに来てほしいと思っています」


日座「ある種、ミュージシャンにおけるミュージックビデオの役割がYouTubeでのネタ披露といった感じでしょうか」


「そうですね。自ら発信の場として活用するのであれば、すごく独特な企画を思いついたら、YouTubeでやりたいという思いはあります」


日座「もし、インターネット上という縛りがある中でネタをするとしたら、どのようなことが考えられますか」


「毎週短いドラマ仕立ての動画を発信するとか面白いかもしれないですね。例えば、ケツは死ぬ役が得意なので、『2分後に死ぬ男』と題して、どのようなシチュエーションや流れであっても、最後に死んでしまうというシリーズものとか」


ケツ「死ぬ役が得意な自覚はなかったですけど、僕は同情されないキャラですからね」

注目度が高まるメタバース上で「笑い」を展開

日座「今後、エンターテイメント業界の発信の場としてより主流となっていくと注目されているのが、メタバースと呼ばれるインターネット上の仮想空間です。例えば、オンラインゲーム『フォートナイト』では、世界中のアーティストを招いてバーチャルライブを開催しています」


戸谷「日本のミュージシャンも参加していますよね」


日座「全世界の人がリアルタイムで参加できるという点がすごいところです。おそらく、そういった仮想空間でネタをやる芸人も出てくるのではないでしょうか。日本は特に『笑い』においてのポテンシャルが高く、今後より一層、自動翻訳機能の精度も上がるだろうし、メタバース上で言語の壁を超えた芸人たちが『笑い』のバトルを繰り広げるとすれば、すごく面白いことが起きるような気がします」


「僕たちのネタは、ほぼ言語を使っていないので、翻訳なしで開催してほしいですね」


日座「仮想空間だとかなり自由度も高いですし、アバターを作ることもできるので、ネタの幅も広がるのではないでしょうか」


ケツ「世界に届けられるというのは、すごいですね」


佐伯「僕は、仮想空間が主流になったとしても、アバターより生身の方に人気が出るのではないかと思います」


「メタバース専門の芸人も出てくるのではないでしょうか。仮想空間とリアルの舞台が両立できれば、すごいですね」


佐伯「芸人ではないですが、CGクリエーターが巧みに画面を切り替えて、モノマネを披露するというYouTubeを見たことがあるので、メタバースではそういった手法を取り入れたコンテンツの発信も加速するような気がします」


日座「メタバース上であれば、実態がなくても成立するので、例えば、みんなで知恵を出しながらケツさんというキャラクターを作り上げていくことができ、メタバースで人気者になる可能性もあります」


ケツ「僕が、僕のものでなくなっていくということですか。ニッポンの社長として壮大なネタになりますね」


戸谷「ケツさん自身が所有権を持つことができますよ」


日座「ケツさんが、コピーが容易なデジタルデータに対して資産的価値を付与し、新たな売買市場を生み出す技術として注目を浴びている『NFT(Non-Fungible Token)』の人体盤第一号になるのはどうでしょう? ケツさんは、操作したい欲を満たしてくれるキャラという意味で適任だと思います」


「ケツの価値をみんなで高めていくことができますね」


日座「10年後に向けて、ケツ、デジタル化いかがでしょう?」


ケツ「バーチャル芸人、まだ存在しませんもんね。やりましょうか!」

●ニッポンの社長(にっぽんのしゃちょう)

吉本興業所属のお笑いコンビ。辻とケツにより2013年に結成。2020年M-1グランプリ2020準決勝進出、2021年第51回NHK上方漫才コンテスト準優勝、キングオブコント2020・2021ファイナリスト、NHK新人お笑い大賞優勝。2022年第57回上方漫才大賞新人賞を受賞。


●日座裕介(ひざ ゆうすけ)

クリエイティブスタジオDADAN代表。大阪芸術大学放送学科客員准教授。早稲田大学在学中より広告写真家 吉村則人氏・橋本祐治氏に師事。映画監督・原一男氏の下で映像を学ぶ。CM制作会社TYO入社後、大手自動車メーカーCMを多数制作。日本医師会CMが2年連続ACCゴールド、ギャラクシー賞受賞。2012年より大阪発平均年齢70.5歳のご当地アイドル「オバチャーン」をプロデュース。


大阪芸術大学放送学科

広告コース専攻4年

●佐伯貴裕(さえき たかひろ)

●榊貫太(さかき かんた)

●宇佐美凛(うさみ りん)

●戸谷陸人(とや りくと)