メディアの発達や多様化で、いつの間にか主義や好みで、簡単に分断化され、敵が生まれやすい世の中。だからこそ、さまざまな分野で花開く「笑い」の才能と、その活躍が大切だと感じる。早くからコミュニケーション分野において「笑い」に注目し、自身の表現取り込んできたクリエイティブ・ディレクターの杉山恒太郎氏に、「笑い」の今と、その本質を聞いてみた。
Text: Wakako Takou
「笑い」を作るのは、一番難しいですよね。実は笑いは鋭い洞察力や時代を読むセンスが要求されるため、知的ハードルが最も高いものです。なぜなら、笑いは人を観察することであり、その前に自分を客観的に見ることが必要だから。ギャグは他人を笑うことだけど、ユーモアは、自分を笑うことなんですよ。その人の理解度の深さや広さが、笑いにつながるんです。
それに、笑いは、コミュニケーションを円滑に行うための潤滑油でもあるでしょう。特に今、SNSで誰もが発信でき、人と人が簡単につながることができる一方で、SNSには光と影の部分があって、影の部分はまさに笑いのない、ギスギスした世界ですよね。だからこそ、今は笑いが最も必要な時代だと思うし、笑いがなさ過ぎるとも言えるんじゃないかな。
現代は情報過多で、我々の1日浴びている情報量は、平安時代の人の一生分、江戸時代の人1年分と言われています。にもかかわらず、検索サイトのアルゴリズムが決めつけてしまう「この人はこういう人」「こういうものが好きな人」といった「フィルターバブル」の中にいると、寄り道もできなければ、冒険もできない。もともと検索エンジンは、世界の知の再構成と富の再分配という美しい言葉でスタートしたのに、気づいたらその中に「他人」がいなくなっている。他人がいなくなると、自分を映す鏡がなくなってしまうから、他人のことも自分自身のこともわからなくなり、笑いがなくなるばかりですね。
そんな中、僕たちが手掛けるのは、2025年の大阪・関西万博開催に向けた「Warai Mirai Fes2022~Road to EXPO2025~」。SDGsの目標達成を旗印に大阪の笑いや食や文化の力でムーブメントを日本中、さらには世界へ広げようというFesですが、僕が提案したテーマ「Warai Mirai(ワライミライ)」には、語呂としての楽しさや、WとMをひっくり返した文字の遊ぴもあるんです。それに、WとMの文字にはSDG'sの17色を入れたところが肝。笑いと未来を見つめ、SDGsを考える機会にしてほしいですね。