人気企画「出張編集部」が開催、小学館の漫画編集者が学生の作品を添削 人気企画「出張編集部」が開催、小学館の漫画編集者が学生の作品を添削
2026年2月9日・10日、大阪芸術大学短期大学部大阪学舎にて「出張編集部」が実施されました。「出張編集部」は、漫画雑誌の編集者を招いて、大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪美術専門学校の学生らの作品を添削してもらう人気企画。大阪芸大からはキャラクター造形学科の学生が参加し、小学館が発行する漫画誌「週刊少年サンデー」「ゲッサン(月刊少年サンデー)」「スピリッツ」「Sho-Comi」の編集者の方々からのアドバイスに耳を傾けました。
この漫画の主人公は誰? 読者に認識させる描き方の工夫
プロの漫画家をめざす学生たちが多数在籍し、魅力的なキャラクター作りの基礎などを学ぶことができるキャラクター造形学科。そんな学生たちにとって「出張編集部」は、あらためて自分の作品と向き合い、ブラッシュアップに努めることができる貴重な機会。小学館4誌の編集者の方々とマンツーマンで約30分間、じっくりと話し込むことができます。
用紙やタブレットに描いた完成原稿を開いて、編集者に見せる学生たち。少し前かがみになって原稿に視線を落とす編集者を、緊張の面持ちで見つめます。「少年サンデー」のスペースでは、漫画を読み終えた編集者が「絵の線に温かみを感じるのですが、キャラクターの個性が弱いと思います。背景をもっと描き込まないと、温かみのあるキャラクターの線が伝わりません」と忌憚(きたん)なく意見を投げかけます。
また「ゲッサン」のスペースでは「アタマとオチがしっかりしている分、途中が設定っぽくなっているのがもったいない」とストーリー面の改善点が指摘され、「スピリッツ」では「サラッと読めすぎてしまうので、もっと絵に変化があった方がいい」と1コマ、1コマに動きをつけた方が読者を惹きつけることができるという助言がありました。一方「Sho-Comi」では、新人漫画家によくあることとして「(持ち込まれた原稿の)この先を読ませて欲しいのに、と思うんです」と、物語の結末のポイントがやや早い傾向があるというユニークな意見も見られました。
中でも膝を打ったのが、「少年サンデー」のスペースで話題にあがっていた「誰が物語の主人公なのか、読者に認識させる見せ方」について。主人公は初登場時「他のキャラクターよりも大きく描くなど工夫した方がいい」とアドバイス。そうすることで読者は無意識的に、物語の主人公だという認識が持てるのだと言います。また表情のアップばかり描くのではなく、「人間の情報は表情以外の部分で分かることがたくさんあります。腕を組んでいるのか、手をモジモジさせているのか。その仕草だけでもその人物が何を思っているのか、読者に伝わります」と様々な角度から人物描写を行う必要性を説明しました。
編集者の方々からは、各作品の良い部分もたくさん挙がりました。ただ編集者の方に話を聞くと、学生たち自身が「厳しめに指摘してほしい」と遠慮のない感想を求めていたこともあり、踏み込んだ目線で今回の「出張編集部」に臨んだと言います。そうした参加した学生たちからは、「漫画家になりたい」という意欲や気持ちの強さが感じられたそう。
卒業生の中には、過去に開催された「出張編集部」への参加経験も生かし、プロの現場で活躍する漫画家もいます。「出張編集部」は、学生たちにとって「自分では気付きづらかった課題」を見つけ出す大切な場でもあります。今回の参加経験が、日頃の創作の大きな糧になるのではないでしょうか。
今回、かわいいあざらしを主人公にした日常系の4コマ漫画を編集者のみなさんに見ていただきました。あざらしが実は社長だったり、人間味があったりするところがポイントなのですが、編集者の方からは「あざらしがこういう立ち回りをすると、かわいさが際立つのではないか」などのアドバイスをいただきました。私の漫画にじっくりと向き合い、キャラクターの立て方を一緒に突き詰めてくださいました。以前からキャラクターの特徴をどういう風に見せるかを課題にしていたので、お話を聞いて「そういうやりかたもあるのか」と幅が広がりました。
私は前から絵を描くのが好きで、高校生になってからはイラストに吹き出しの台詞を付けたりしていました。ただストーリーを意識するなど、ちゃんと漫画を意識するようになったのは大阪芸大に入学してから。それまでは、漫画を描くことに興味はあっても、書き方が分かりませんでした。大学で学ぶようになって「漫画ってこうやって描くんだ」と気づき、描くことがどんどん楽しくなっていきました。
水彩イラストを描くことも好きなので、絵を描く仕事に就きたいです。漫画も機会があれば取り組み、賞などに送りたいと思っています。
「出張編集部」では、編集者さんから「場面転換や設定が分かりづらいので、キャラクターの見た目をこうしたらいいんじゃないか」とアドバイスをいただきました。学生の作品にしっかり向き合い、ストーリーを読み込んだ上で、的確な指摘をしてくださるので「さすがプロだな」と感じました。ただ、そういう指摘の中に優しさもあり、こちらの疑問にもきっちり答えてくださるので、安心感がありました。
私は小さいときから絵を描くことが好きで、高校生くらいのときに「オリジナル漫画を作ってみよう」と描き始めました。まず1ページ漫画を描いて、そこに台詞をつけるようになってから、徐々に漫画らしくなっていきました。「出張編集部」に持ってきた作品は兄弟愛を感動的に描いたものなのですが、以前からそういうテーマが好きでした。大阪芸大での学びを通して、自分が描きたいことをあらわす技術力は向上したように思います。
大学卒業後も漫画はずっと描き続けるつもりです。今回の出張編集部を通して自分に自信がつき、改善点も見えたので、漫画をもっと上手に描けるように今後も益々努力していきたいです。
私はSNSに作品を投稿したことをきっかけに、出版社の方からダイレクトメッセージをいただいて、企画を進めたりはしています。ただそう言った場合、編集者さんから感想が聞けるのは、担当者の一人だけ。ですので「出張編集部」のようにいろんな雑誌の編集者さんからたくさんの意見を聞くことができる機会は、とても貴重です。
今回、いただいた指摘の中で特に印象に残っているのが「台詞などの文字量が多いからもう少し削ってみても良いかもしれない」ということ。私も以前よりそれが課題に思えていましたが、その直し方が分からないでいました。ただ、編集者さんの商業的な目でアドバイスをいただくことができ、すぐにでも実践したいです。
そのように編集者のみなさんは、私たち学生の作品を読んですぐに批評してくださるなど、漫画を読み取る力がダントツに違うように感じました。漫画家が抱える課題と解決方法をしっかり見抜いている印象で、そこがすごかったです。
今後は、在学中に雑誌でデビューできればそのまま漫画家の道を進みたいと考えています。ただ、もしそれが叶わなければ、絵の仕事や出版関係をめざしたいです。編集者の仕事も選択肢に入れたいと思います。