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特許庁と連携した地域応援カプセルトイで大阪・関西万博に参加 特許庁と連携した地域応援カプセルトイで大阪・関西万博に参加

デザイン学科 / プロジェクト, 産官学連携
2025/12/17

2025年10月2日~10日、大阪・関西万博のEXPOメッセ(WASSE)で開催された特許庁主催のイベント「明日を変える知財のチカラ~想いを届ける、世界をよくする~」に、大阪芸術大学「未来創造デザイン研究会」の学生たちが参加しました。企画から手がける地域応援カプセルトイ「aipon」がオリジナルノベルティとして活用され、学生たちがグッズや什器のデザインからキーホルダー制作まで担当。社会課題解決にも貢献できる取り組みとして高い評価を受ける「aipon」は、万博でも人気を博しました。

地域の魅力を詰めたカプセルトイ「aipon」でビジコンに優勝

デザイン学科などの有志メンバーが集うサークル「未来創造デザイン研究会(以下IDC)」は、同学科准教授の福武徹先生の運営のもと、デザインの力で個人・組織・社会のより良い未来を創造することを目的に、様々な活動に取り組んでいます。「aipon」は、コロナ禍で落ち込んだ地域を応援したいという学生のアイデアから始まったプロジェクト。カプセルトイを用いて地域や店舗などの魅力を広め、地域の活性化につなげようと企画し、UVプリンターやレーザーカッターなどの学内設備をいかしたアクリルキーホルダーを制作しています。



デザインの力をいかして幅広い活動に取り組む「未来創造デザイン研究会(IDC)」から生まれた「aipon」プロジェクト

当初は学内食堂の人気メニューのキーホルダーづくりからスタート。学生たちは自己資金を持ち寄り、食堂との交渉や文書作成、実制作まで担当。その後、大学の地元である河南町や奈良県明日香村と連携し、各地の観光資源などをテーマに「aipon」を展開していきました。


2023年度には、近畿経済産業局主催「知財ビジネスアイデア学生コンテスト」に参加。学生が社会課題解決をテーマに事業計画の発想力や企画力を競うこのコンテストで、「aipon」は地域ブランド部門の最優秀賞である近畿経済産業局長賞を受賞。「検証がしっかりしており実現性が高く、ちゃんとしたビジネスになる」と高く評価されました。


ビジネスコンテストで「aipon」開発の経緯や具体的な展開、今後の展望などについてプレゼンし、部門最優秀賞を受賞

特許庁との官学連携プロジェクトとして大阪・関西万博へ

この受賞がきっかけとなり、特許庁より大阪・関西万博イベントへの参加オファーが舞い込みました。10月2日~10日に開催される特許庁主催の、社会課題解決に知財が有用であることを知財に縁遠い層を含む多くの方々に発信する「明日を変える知財のチカラ~想いを届ける、世界をよくする~」で、近畿経済産業局が応援する関西12の地域ブランドをテーマとした特許庁オリジナルノベルティとして「aipon」が採用。会場内に「カプセルトイチャレンジ」のコーナーが設置され、知財のチカラを実感・体験し、“きづき”を集めて知財のタネを形にした後、アンケートに回答した来場者に楽しんでいただくことになりました。


EXPOメッセ(WASSE)で行われた特許庁主催「明日を変える知財のチカラ~想いを届ける、世界をよくする~」に参加
期間中、知財を活用して社会課題を解決した好事例や、その他知的財産に関する様々な展示や日替わりのステージイベントが行われ、大勢の来場者でにぎわった
知財のチカラを実感・体験し、来場者自身の知財のタネを可視化した後、アンケート回答を行った方に参加してもらえる「カプセルトイチャレンジ」
展示を締めくくる会場の最終ポイントに3m×3mの巨大カプセルトイマシンが設置された
「何が出るかな?」子どもから大人まで幅広い層に楽しんでもらえるアイテムは大好評

同イベントオリジナルのカプセルトイのためのオリジナルシールやキーホルダーに加え、マシン全体の外装デザインも学生メンバーが担当。特許庁や関係者との打ち合わせを重ね、近畿経済産業局が応援している関西12の地域ブランドと大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」をテーマとしたデザインを生み出しました。

またキーホルダーも学生たち自身が制作。期限内に目標数を仕上げるため、夏休み返上で作業に取り組みました。

シールやキーホルダーは、関西12の地域ブランドとミャクミャクをテーマにしたオリジナルデザイン
マシン外装デザインは、イベントのテーマを反映し、「来場者自身が明日をつくる人になる」という意味を込めて、光が未来を照らすイメージに
夏休みを費やしてのキーホルダー制作では、細かい部分までチェックして検品作業も徹底。メンバー同士の絆も深まった

特許庁総務部総務課広報室室長(当時)・富士春奈さんは、「『aipon』は、地域応援だけでなく、共感する方達に対して、既に登録された「『aipon』という商標のライセンスを検討しているという、知財活用の面においても素晴らしいプロジェクトです。最初はブース展示の形も考えましたが、アンケート回答者へのインセンティブという企画になり、学生さんの努力で素敵なデザインが集まりました。若い世代を含め来場者の方々が、知財活用や社会課題解決に興味を持つきっかけになってほしいですね」と語ります。9日間にわたるイベント開催中、会場は連日大盛況。カプセルトイチャレンジも大きな盛り上がりを見せました。


万博での官学連携プロジェクトは学生たちにとって、「デザインの力による地域応援」をさらに大きなスケールで実践する場となりました。それと同時に、商標登録などの知財が、デザインや芸術を学ぶ人を含めて誰にでも関係すること、社会課題の解決にも活用できることも認識。芸術大学の学生が関わったからこそ、共感しやすく創造性にあふれる展示となり、万博を訪れた多くの人に、知財の新しい可能性を伝えることができました。


デザイン学科 准教授
福武 徹 先生

IDCの「aipon」は、2021年から地道に取り組んできたプロジェクトです。学生の経験になればと参加した知財ビジネスアイデア学生コンテストで受賞したのを機に、近畿経済産業局とご縁ができ、商標登録も行って、さらに本格化。今回の特許庁主催イベントという大きな仕事とつながることになったのです。正式に決まったのは今年5月で、そこからデザインに取り組み、怒涛のスケジュールで制作を進めました。キーホルダーも、いつも我々が制作しているものと基本的には同じなのですが、今回は万博で披露するとあって規模が違います。短納期で高いクオリティを維持する作業は、学生にとって苦手な分野なのですが、モチベーションを高く保ちながらやり遂げてくれました。

この活動で重視したのは、学生に「サービスデザイン」という新しいデザインの概念を学んでほしいということです。デザインとは絵を描くことやものづくりだけではありません。営業・試作・原価計算・量産のためのシフト組みといった、一見クリエイティブとは無縁のビジネスの側面も、全てデザインの仕事であることを体験してほしいのです。また、自分の名刺を持ち、企業や自治体、行政機関など様々な人と連携・交流する中で、コミュニケーション能力が養われ人脈も広がります。「aipon」を始めた頃にはここまで大きく進展するとは思ってもみませんでしたが、これも学生たちが地道な努力と泥臭い作業を積み重ねてきた結果にほかなりません。

この研究会は、授業ではできない実体験を通して、優秀な人材をより良い未来につなげることを目的としています。まずは個人が成長し、それを研究会や大学などの組織に還元し、そして社会全体のより良い未来に貢献できるよう、今後も様々な活動を続けていきたいと考えています。現在も、就労継続支援事業所や、耕作放棄地を活用したさつまいも栽培事業などと連携した取り組みをはじめ、常に10以上のプロジェクトが稼働中。最近では、活動の成果が数字として現れてきており、研究会を法人化するという次のステップも視野に入れています。

デザイン学科 グラフィックコース 2年生
柿本 偉琉 さん

僕は今回のプロジェクトリーダーを務めるとともに、関西12地域ブランドのうち4種類のデザインを担当し、全体の雰囲気の統一や調整も行いました。最も苦労したのは、公式キャラクターのミャクミャクを使用するためのガイドラインを守りながら、学生メンバーのデザインの個性も残して全体を調和させること。厳しい規定と自由な発想のバランスを取るのは本当に大変でしたが、大きな経験になりました。キーホルダー制作では作業手順書の作成や指導にあたり、連日制作のかたわら検品も徹底。完成した時は達成感のあまり、みんなで打ち上げに繰り出したほどです。
イベント開催中もリーダーとして毎日会場を訪れ、様子を見守りました。最終日までお客様の長蛇の列ができ、人気になっているのを実感。不良品もなく無事に終了できて、本当に良かったと安心しました。IDCの小さな取り組みから万博という特別な舞台にまで発展した「aipon」の、奇跡のような歴史の一端を担えたことを誇りに感じています。
この取り組みから、知財が社会問題解決や地域応援の手段になることも知りました。今後はIDCに依頼が来た案件だけでなく、自分から社会問題や応援すべき地域を見つけ、今回培った提案力やプロジェクト管理能力をいかして、積極的に企画を提案し活動していきたいと考えています。卒業後に進みたいゲーム業界でも、そうした力は必ず役立つと思います。大阪芸大は行動すれば出会いやチャンスが広がる場所。後輩たちにも、ぜひ多くのことに挑戦してほしいです。

デザイン学科 1年生
山地 結月 さん

入学前から先輩方の作品などを見て、レベルの高さに圧倒され、自分から積極的に動かないと追いつけないと感じてIDCに入りました。このプロジェクトに参加したのは、日本での万博という一生に一度あるかないかの大きなイベントに絶対関わりたいという思いから。1年生ながらマシン外装と京都・和束茶ブランドのデザインを担当することになり、プレッシャーを感じつつも頑張りました。大学の課題とは違って、クライアントの希望に沿ってアイデアを広げ、クオリティも上げる必要があり、制作者の意図をぶつけるだけではダメだと痛感。特許庁や関係者の方とも何度もやり取りを重ね、今後デザイナーをめざす上で不可欠な意識を実践的に学ぶことができました。
制作期間が短く、夏休み返上でPCに向き合う毎日でしたが、IDCの仲間のサポートが大きな支えに。またみんなで大学に集まり心を一つにしてキーホルダーを制作したことも、大切な思い出になっています。万博会場で自分のデザインしたマシンが設置されているのを見た時は、PCの中で描いていたイメージが実物になったことに感動。お客様が「可愛い」と声を上げ、グッズを手に喜んでくださって、課題制作では得られない大きな喜びを味わうことができました。IDCでは意欲旺盛な仲間の存在が刺激となり、自分を高めてくれます。今回得た学びをいかして、たくさんの人に届くデザインを生み出せるよう、これからも挑戦を続けていきたいです。