総勢100名を超える過去最大規模で開催された「工芸のちから2025」 総勢100名を超える過去最大規模で開催された「工芸のちから2025」
5月28日から6月2日にあべのハルカス近鉄本店 ウイング館9階 催会場にて、工芸のちから2025を開催。会場の規模も大幅に拡大し、卒業生有志の作品だけでなく、工芸学科の教員による洗練された作品や学生たちの思いのこもった力作など100名以上もの作品が展示されました。今回は大阪で展覧会やアートイベントを繰り広げるOsaka Art & Design 2025の一環としての開催。隣接会場の「こだわりストたちの世界」のアーティストと工芸のちから2025の出展作家とのトークイベントもおこなわれ、工芸とアートが互いに刺激しあう創造性に満ちた6日間となりました。
卒業生有志が自主的に運営する「工芸のちから」
工芸のちからは会場となるあべのハルカス近鉄本店サイドと折衝し、工芸学科の卒業生有志が運営まで手掛けてきた展覧会です。会場のレイアウトや出展者への連絡やレギュレーション設定まで、実行委員としての仕事を卒業生有志が担っています。
今年の「工芸のちから」は大阪の街を巡りながら、未知のアートやデザインに出会う周遊型エリアイベント「Osaka Art & Design 2025」の一環として、開催されることになりました。金属、土、ガラス、繊維とそれぞれの素材を通して様々な技法を駆使し、日常に寄り添う器からアート作品まで幅広い作品を生みだす作家たちが、それぞれの工芸の魅力を発信していく取り組みになりました。
今までにない規模で開催された6回目
2025年の「工芸のちから」は6回目を迎えて会場規模を大幅に拡大しました。そこで、あべのハルカス近鉄本店での開催に先だつ5月12日から23日まで大阪芸術大学の芸術情報センターで開催されていた「工芸のちから ‐教員・スタッフ展‐」と学生たちによる「工芸のたまご展」に出展された作品も合流し総勢100名を越える出展者を数える最大規模での開催となりました。先生方の作品が並ぶエリアには、山野宏学科長の静謐な世界観が感じられるDrawing on the Vesselなど素晴らしい作品が並びます。工芸作家のたまごである3・4年生たちも今までの学びを生かした思い思いの作品を展示。学生たちは時間が許す限り在廊し、来場者のみなさんからいただいた感想や意見を自分の作品へフィードバックしていきます。
そして、工芸のちからを主体となっている卒業生の展示販売スペースには、工芸作家あるいはアーティストとして蓄積した技術やノウハウを余すところなく表現した作品が並びます。
芸人たいぞうさんをMCにトークセッション
工芸のちから2025の隣接会場では、障がいのあるアーティストによる合同展「こだわりストたちの世界」が開催されていました。大阪府障害者芸術文化大使である吉本芸人のたいぞうさんは、ビビッドな画風で評価されているアーティストでもあります。「工芸のちから」と「こだわりストたちの世界」の作家たちがたいぞうさんをMCにトークセッション。
「工芸のちから」から参加したのは2005年卒業で陶芸家の玉山弘季さんとガラス工芸コース4年生の吉村晴哉さん。「こだわりストたちの世界」からは油彩画の長谷川良夫さんと水彩画の飛鳥さんが参加しました。
自身も発達障がいであることを公言して活動するたいぞうさんと、障がいのある方に陶芸を指南する玉山さんが中心になってトークは盛り上がりました。アートに打ち込むきっかけやプロセスはそれぞれ違いますが、相通ずるところがあり、お互いに得るものの大きいトークセッションでした。
卒業以来、ずっと大型商業施設開発のプランニングやテキスタイルデザインを仕事にしてきました。以前から、ずっと自分のうちから湧き出てくるアイデアを、布をモチーフにカタチにしたいと考えていたんです。今回、出展した「白のはじまり」は2022年に作家活動をはじめたときに発表した作品で、生命のはじまりと私自身の作家活動のスタートを象徴しています。作品はオリジナル技法の <襲ね>(かさね)を用いて造形していま す。 この<襲ね>とは、平安時代の王朝の女房の装束である十二単に象徴され るように、平安時代の貴族が衣を何枚も重ね着した 「襲色目(かさねのいろめ)」から引用しています。 布を襲ねあわせることで、無限に増殖していく生命、その力強さと はかなさを表現しています。また、作品づくりのなかで切ったり抜いたりした切れ端を再利用したブランド「upcycle art box®」」のオリジナルグッズの販売も行っています。
屈折したり、透過したり、揺らいだりというガラスという素材の見え方を追求する作品づくりをしています。例えば、ガラスに金属を付加することで現れる還元色、光が折れ曲がり あらわれる色など、ガラスという素材だからこそ表現できる現象を見てもらいたいと思っています。そういったイメージをカタチにしたのが、例えばpuddle plate、みずたまりのお皿は高台にガラスを巻いてぽってりとした厚みを出すことで光が屈折し、見る角度で色合いが変化していきます。虹袋はガラス工芸体験で使う色を再利用して虹色を出しているのですが、色がやさしく見えるように表には淡い白をのせています。この作品を照明として発展させていきたいな、と考えています。実は卒業してから少し一般企業で働いていたのですが、離れている間に ものづくりの魅力に気づき、ガラスに携わった仕事がしたいと制作を再開しまし た。
高校時代から美術部で自分の感情をそのまま表すような立体作品に打ち込んでいました。入学してからは自分の手で色々なカタチをダイレクトに表現できる土の魅力にひかれて陶芸コースを選びました。今の課題は釉薬を使って、自分が意図した色をいかに表現していくかということ。焼成温度や釉薬の組成によって発色が異なるので、使う釉薬ごとに経験値を積んでいかないとイメージ通りにいかないんです。今回は天使をモチーフにしたエンジェルティーカップを出品したのですが、パールラスター釉という鮮やかなターコイズブルーに発色するよう調整した釉薬がうまく反応しなくて、ちょっと残念でした。釉薬で狙い通りの色を出すことは今後の作品づくりへの課題です。
3年生の課題で出展した「第16回高円宮殿下記念根付コンペティション」で「火火着 (ほほつき)」という作品で学長賞をいただきました。 今回は出展したのは「ナイナイツムリ」と名付けた作品は、カタツムリの殻をモデルに1枚の銅板から打ち出して制作した一品です。カタツムリはマイマイと読んだりしますよね、そこに中身が入ってない空っぽの殻で「無い無い」と組み合わせて「ナイナイツムリ」という名前になりました。
そうしたカタチと掛け合わせた言葉遊びの感覚も江戸時代の生活文化のなかで装飾品として発展してきた根付ならではの面白さだと思っています。 卒業制作ではものづくりにハマったきっかけの模造刀作りと人体構造を組み合わせて 迫力のある作品を作りたいと考えています。