第17回 高円宮殿下記念 根付コンペティション 第17回 高円宮殿下記念 根付コンペティション
大阪芸術大学グループの在学生を対象に毎年開催している「高円宮殿下記念 根付コンペティション」。17回目となる2025年度は、164名の学生から177点の応募があり、厳正な審査を経て17名の入賞者が選ばれました。
12月5日~20日、これを記念する展覧会を、大阪芸術大学芸術情報センターの展示ホールにて開催。展覧会初日には、高円宮妃久子殿下のご臨席を仰いで表彰式が執り行われました。
柔軟な発想や多彩な技法で、日本の伝統文化「根付」を創作
江戸時代に提げ物を帯から吊るす固定具として流行し、江戸の粋として広く愛されてきた「根付」。現代ではその芸術性が海外でも高く評価され、創作の場も国内外に広がっています。高円宮妃久子殿下は、高円宮憲仁親王殿下とともに世界有数の根付コレクターとして知られ、現代根付作家の育成にも尽力されています。本学の客員教授でもあられる妃殿下からご講義を賜り、学生たちも根付を通じた日本文化の継承に強い関心を持つようになりました。
大阪芸術大学グループでは2009年に「高円宮殿下記念 根付コンペティション」を創設し、大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校の在学生を対象として作品を募集。日本独自の極小工芸に、学生たちが創意と工夫を凝らして挑んでいます。今回は164名の学生から177点の応募があり、10月22日に審査が行われました。高円宮妃久子殿下と根付師の高木喜峰氏、塚本邦彦学長をはじめ本学教員らによる厳正な審査の結果、高円宮賞や学長賞など17名の入賞者が決定しました。
高円宮妃久子殿下ご臨席のもと表彰式を開催
コンペティションを記念する展覧会は、12月5日から20日まで、学内の芸術情報センター展示ホールで開催されました。会場には、177点すべての応募作品とともに、高円宮家よりお借りした根付130点と、高円宮妃久子殿下が撮影された「旅する根付」の写真パネル21点が特別展示されました。
12月5日には高円宮妃久子殿下ご臨席のもと、表彰式および記念内覧会が執り行われました。高円宮賞を受賞した大阪芸術大学工芸学科4年生の平松茜音さんをはじめ、入賞者に表彰状や記念品を贈呈。妃殿下からは「学生の皆さんがそれぞれの考え方で工夫をして、“今”を形にした根付を作り、江戸時代から続く日本の伝統を将来に繋げていっていただいていることに喜びを感じます」とのお言葉をいただきました。
続く内覧会では、妃殿下が入賞者の作品を前に一人ひとりとお話され、ご質問やご感想、励ましのお言葉をかけてくださいました。入賞者たちは、高円宮家の根付コレクションも間近で拝見し、妃殿下のお話を拝聴しながら、実際に手に取って精緻な造形や質感を確認。根付という美術工芸品の魅力を、目で見て手で触れ、心で感じる貴重な時間となりました。
今年の記念展は学内開催となり、入賞者だけでなく多くの学生や教員も作品を鑑賞しました。ガラス工芸作家で工芸学科長の山野宏先生は、長年の審査員経験から「粘土やデジタル系作品のレベルが向上している一方、素材感を大切にした手仕事の強さも再認識しました」と講評。また陶芸家で工芸学科教授の田嶋悦子先生は、高円宮賞受賞の平松さんを「根付という手元サイズから卒業制作の大きな人体まで取り組む、表現の振り幅の大きなチャレンジャー」と評し、「見た目の美しさだけでなく、手の中に包み込んで触覚を刺激し、手触り感を感じさせる作品」と、工芸の持つ本質的な価値を強調しました。
表彰式には入賞者の家族も出席し、会場は和やかな喜びに包まれました。平松さんのご家族は「大変光栄で、ご指導いただいた先生方と大学に深く感謝しています」と語り、制作を見守ってきた祖母への思いや感動を分かちあっていました。
第17回 高円宮殿下記念 根付コンペティション
◆高円宮賞
平松 茜音 大阪芸術大学工芸学科陶芸コース4年 「咲蘭鋳(さくらんちゅう)」
◆学長賞
王 翀昊 大阪芸術大学附属大阪美術専門学校コミック・アート学科フィギュアコース2年 「蜷木(とぐろぎ)」
◆審査員特別賞
安田 百香 大阪芸術大学工芸学科金属工芸コース3年 「櫻」
◆優秀賞
北川 暁子 大阪芸術大学大学院芸術研究科博士課程(前期)芸術制作専攻工芸領域 2年 「今日のぼくのおやつ」
栗林 花 大阪芸術大学美術学科(コース配属前)1年 「子守熊(こあら)」
掛川 颯太 大阪芸術大学附属大阪美術専門学校コミック・アート学科フィギュアコース2年 「分福茶釜」
山口 すみれ 大阪芸術大学附属大阪美術専門学校コミック・アート学科フィギュアコース 1年 「着飾る(聞か猿)」
高円宮賞
工芸学科 陶芸コース 4年生
平松 茜音 さん
大学最後の年に後悔のないよう、初めて根付制作に挑みました。モチーフは、どこから見ても丸く愛らしい金魚・ランチュウです。360度から愛でる根付にふさわしい題材だと考え、その美しい姿が創作の源になりました。特にこだわったのは、光を当てると透ける透光性磁器を素材に用いた点です。この特性をいかすため、中を空洞にする「透かし彫り」に初めて取り組み、白地に藍色が映える「染め付け」を組み合わせました。焼成の結果に不安を感じながら思いのほか良い仕上がりになって喜んだものの、まさかこのように素晴らしい賞をいただけるとは夢にも思いませんでした。同時期に卒業制作では人体がテーマの大きな作品を作っており、全く違うものを並行して進めるのは大変でしたが、どちらもかけがえのない経験になっています。
表彰式では、高円宮妃久子殿下から直接お言葉をかけていただき、深く感激しました。作品の隅々まで見てくださり、技法やモチーフについて触れていただいた上、「桜蘭鋳(さくらんちゅう)という作品名も可愛らしくて良いですね」とおっしゃっていただけたことが心に残っています。根付の世界的権威でいらっしゃる妃殿下のあたたかなお言葉が胸に響き、創作への意欲がさらに高まりました。
卒業後の進路はまだ模索中ですが、今回いただいた評価を励みに、「陶芸に関わる仕事がしたい」という思いを強くしています。根付についても、今回表現しきれなかった可能性を、今後も個人的に探究していきたいと考えています。
審査員特別賞
工芸学科 金属工芸コース 3年生
安田 百香 さん
私が制作した「櫻(さくら)」は、和室の円窓から見える夕暮れの桜景色をイメージした作品です。マジックアワーの柔らかな光に透ける花を表現するため、黄色い真鍮と白銅を組み合わせ、色合いの異なる金属素材の美しさを引き出しました。技法面では、これまで好んで取り組んできた象嵌の中でも「切りばめ象嵌」や、ジュエリー制作の石留めなどに用いる「覆輪」といった身近な技法を応用できないかと考え、さらに「透かし彫り」も取り入れました。遠近感を表現するため、手前の花びらほど繊細に表情を出すよう工夫しましたが、細部を彫り、叩き、形を整える作業は加減が難しく、試行錯誤の連続でした。
表彰式は大変緊張しましたが、高円宮妃久子殿下の品格ある佇まいと、学生一人ひとりに丁寧に向き合ってくださる姿に感銘を受けました。さらに「手に取った時の引っかかりがなく、軽量化も工夫されている」「商品としても通用する完成度」というお言葉をいただいて、頑張って良かったと自信になりました。
高校時代に金属工芸と出会って「自分でもこんな作品が作れるんだ」とその魅力に惹かれ、創作に没頭してきました。大阪芸術大学で鍛金や溶接など幅広い技法を学べたことは、私の大きな財産になっています。今回の受賞を通じて、金属工芸作家として歩みたいという気持ちが一層強まりました。背中を押していただいたこの体験を大切にしながら、今後も作品づくりに取り組んでいきたいと思います。