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Yoshimoto Art Project【上野公嗣】 Yoshimoto Art Project【上野公嗣】

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2022/10/24

「笑い」の才能をアートと結ぶ仕掛け人が語る、 100年後も残せる「笑い」+アートのスタイルとは?
「笑い」の才能をアートと結ぶ仕掛け人が語る、 100年後も残せる「笑い」+アートのスタイルとは?

「お笑いの本場」と呼ばれる大阪で、そのイメージの源泉となっているのが吉本興業(以下、吉本)だ。その吉本は今、アートにも積極的なアプローチを展開している。なんばグランド花月の近隣にある「LAUGH & PEACE ART GALLERY OSAKA」(以下、ラフピーアート)はその拠点である。その仕掛け人であり、今年春から大阪府立江之子島文化芸術創造センター(以下、江之子島)の館長を兼任している上野公嗣に、吉本とアート、お笑いとアートの親和性などを語ってもらった。


Interview Photo: Yoshikazu Nishiki

Text: Takafumi Kobuki

Yoshimoto Art Project

レイザーラモン作品
西武渋谷店で開催された、KAORUKO個展「Femina」会場風景
たいぞうのワークショップ

事の発端は10年前の吉本創立100周年にある。「弊社の大﨑洋会長がこれからの100年を見据えて3つの柱を立てました。地方、アジア、デジタルです。私は当時、エリア事業の一つ『住みます専務プロジェクト』の近畿代表を務めていて、様々な人と出会う中で宇治茶(映像作家。ゲキメーションという独自の映像表現で知られる)と知り合い、彼の才能やアートとサブカルチャーを横断する表現手

法に惚れ込みました。また、『京都国際映画祭』に携わり、2014年の第1回で美術部門のヤノベケンジ、石橋義正、明和電機と仕事をした経験も手伝って、自分自身や社内的にもアートを扱う機運が高まって行きました。そして2019年にラフピーアートを開設することになったのです」。


こけら落としはレイザーラモンの展覧会。その後もプラスマイナス岩橋、モンスターエンジン西森、アキナ秋山、吉田ヒロなど多くのお笑い芸人がラフピーアートで個展を行っている。これまでの展覧会総数は54件、うち芸人の展覧会は33件。来場者数は約3.7万人に及ぶ。「芸人は元々クリエイティビティの高い人が多く、物作りをしている人が結構多いです。その傾向は、新型コロナ禍で舞台に上がれない期間があったことで拍車がかかりました。漫才だけでは表現し切れないという人が増えているのだと思います」。また、「元アイドルでニューヨークを拠点に活躍する現代アーティストKAORUKO、障害者と共にアート活動を行うSatory、大阪府障害者芸術文化大使を務めるたいぞうなど、アーティストとして吉本に所属しているケースや、障害者アートに熱心な作家も所属しています」。


こうしたラフピーアートの活動に加え、上野は今年春からは江之子島の館長にも就任している。実は吉本は吹田市の万博記念公園やリビエホール(柏原市民文化会館)など公的施設の指定管理も積極的に行っているのだ。「館長就任にあたり、プロデューサーの立川直樹さんを名誉館長に招聘し、相談やプロデュースをお願いしています」。


「江之子島の近所には小学校があって、子供たちが団体で来てくれます。ここでの経験はその子たちにとってのマイ・ファースト・アート。そんな形でお役に立てればと思っています」。


デジタルトランスフォーメーションをはじめ社会全般が未曽有の変革期にある今、お笑いという文化を主軸にしつつ、だからこそアートのメインストリームとは異なる動きが取れる吉本のアート事業。ギャラリー未経験者を柔軟に取り込み、アート初体験へと誘うそのスタイルは、ひょっとしたら21世紀のアートを先取りしているのかもしれない。

●上野公嗣(うえのきみつぐ) 1952年、大阪市生まれ。甲南大学を卒業後、1975年にラジオ大阪入社。大阪府警や国会記者クラブの担当を経て、制作部で「OBCブンブンリクエスト」「ラジオ2丁目劇場」などの番組を担当。定年退職をきっかけに2008年、吉本興業入社。現在、大阪府立江之子島文化芸術創造センターの館長を兼任。