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キャンパス内にアーティスト 松本セイジ氏の巨大壁画が出現! キャンパス内にアーティスト 松本セイジ氏の巨大壁画が出現!

美術学科
2024/12/16

美術など主にファインアート系の学び舎となっている20号館の壁に美術学科の卒業生で、アーティストの松本セイジさんが巨大壁画を手掛けました。描かれたのは、「EVERYONE IS DIFFERENT」というメッセージとともに、絵筆を持ち、カメラを構え、楽器を演奏する楽しそうなねずみのANDYたち。様々な姿でアートに打ち込むANDYたちには、みんなが違うテーマを抱え、それぞれ異なる手法で表現していくことを肯定するイメージが表現されています。

 ライブペインティング中は、第一線で活躍するアーティストの制作風景を一目見ようと多くの学生たちが訪れました。卒業生という気安さもあって制作の合間に作品について質問したり、サインを求めたりする姿も見られました。

NYでの暮らしのなかで生まれた、ねずみのANDY

松本セイジさんが描いたのは、やはり一番思い入れのある、ねずみのANDY。ニューヨークタイムズにも掲載され、NYでの初個展で一躍注目を浴びるきっかけになった作品です。

卒業後、紆余曲折を経て東京でデザインやアートディレクションの仕事をしていた松本さんは思い立ってNYでの暮らしを選びました。ほとんど予備知識のなかった海外、それも世界のアートマーケットの中枢ともいえるNY。なんでもない道を歩くにも、見るもの、食べるもの、触れるもの、すべてが刺激に満ちた日々だったそうです。

NYでの暮らしのなか、ある日、見かけたのがANDYのモチーフとなった地下鉄のホームで暮らすネズミたち。NYにやってきたものの、途方に暮れている自分の気持ちと線路の脇をあてどなく走り抜けていくネズミの姿が重なって、ねずみのANDYが生まれました。

厳密な色配合を繰り返すことがイメージ通りの仕上がりになるキーポイント
第一線で活躍するアーティストが壁画を描く姿に学生たちも興味津々
イメージを再現するために丁寧に塗り込んでいく

壁画に込めたメッセージは「EVERYONE IS DIFFERENT」

NY時代に松本さんが住んでいたのは、ブルックリンとクイーンズ。飛び交う聞いたこともない言葉、歩いていると聞こえてくる音楽、嗅いだこともないスパイスの香りが漂い、様々な文化が混じり合いながら共存していて、ヒトとヒトが違うのは当たり前というエリアでした。

そんな環境のなかで松本さんは「ヒトと違ったっていいんだ」というメッセージを込めてねずみのANDYを造形していきました。だから、ANDYはしっぽがない普通とは違うネズミなのです。

壁画を構想するにあたって松本さんが伝えたかったのは、それぞれが独自の表現を見つけるために日々学び続ける学生たちへのエール。だからこそ「EVERYONE IS DIFFERENT」というワードとねずみのANDYが壁画のメインモチーフになったのです。

松本セイジさんが着ているのはもう一つの代表作「DOG&DUCK」シリーズのTシャツ
サインを求められ、ANDYと大好物のチーズを描いてにこやかに手渡す松本さん

カラフルな色を組み合わせ晴々と前向きな気持ちに

壁画を色彩設計していくにあたって、松本さんが重視したのは学生たちに「晴れた気持ちになってもらうこと」でした。パソコン上でいくつものシミュレーションを繰り返し、楽しいカラフルなイメージを組み上げていきました。そのイメージを壁面に再現できるよう個々のエレメントの色彩はカラーチップに置き換えて管理し、現場で忠実に色彩を再現していきます。入念な準備もあって、壁画は下描きも含めて4日と短期間で仕上ったのです。

壁画の完成も間近という10月30日の午後からは、NY時代に出会った同じく大阪芸大美術学科の卒業生、中山誠弥さんとともに特別講義を開催。NYを活動拠点とする中山さんは和歌山の白浜で開催された「JAPAN WALLS 2024 in SHIRAHAMA」での壁画制作のために日本へ帰ってきていました。

教室から漏れる明かりをたよりに制作を進める松本さん
なにげない日常のなかでみかけたネズミが、今や多くの人に愛されるキャラクターに
松本セイジさんと特別講義をした中山誠弥さんとはNY時代からの旧知の仲

旧知の2人だからこその飾り気のない特別講義

特別講義は、それぞれの活動の紹介から始まり、NYでの2人の出会い、大阪芸大での学生生活、アーティストとして大切にしていること、と多岐に渡りました。共通していたのは、2人ともNYには漠然と行ったこと、そこでの経験が不思議と作用して今の制作スタイルに結びついていること。例えば、松本さんはNYでの暮らしのなかでANDYの造形を見出し、中山さんは現在の制作スタイルにたどり着きました。

大学で日本画専攻だった中山さんは、NYでもその制作スタイルを貫いてきました。しかし、ある時出会ったギャラリーのオーナーが発した言葉がアートマーケットのなかで生きる1人のアーティストとしての自分に気づかせ、今のスタイルにたどり着くきっかけになったと言います。松本さんもカフェで絵を飾らせてもらう地道な活動のなかで、ニューヨークタイムズのスタッフが見かけた作品がきっかけとなって注目を集めるようになりました。

アーティストとして大事にしていることはという学生からの問いかけに、制作する自分だけではなく、作品を販売してくれるギャラリーと購入してくれるコレクター、色々な分野で協力しあえる仲間を、チームを大切にして欲しいというメッセージは学生たちの心に響いたようです。

その言葉通り、松本さんと中山さんは、あと2人の仲間とともに「コペルズ」というアーティストコレクティブを組んでいます。11月には松本さんがプロデュースする代官山のカフェ「ANDY COFFEE」でイベント「We Are All Alien in Tokyo!」を開くなど、定期的に「コペルズ」の仲間たちの活動も展開しています。

2人は学生たちからのストレートな質問にも真摯に答えてくれました
NYでの暮らしという共通体験を持つ2人ならではの親密な空気が漂い、終始和やかな特別講義でした
段ボールや布切れなどを使って自分だけのお面を子どもたちと作るコペルズのワークショップ「We Are All Alien in Tokyo!」

松本セイジ

1986年、大阪府生まれ。

大阪芸術大学美術学科卒業。後、デザイナーとしてキャリアをスタートさせました。東京、ニューヨークでの活動を経て、現在は長野県の山麓にアトリエを構えて活動しています。

アート、イラスト、グラフィックデザインの垣根を越えて様々なフィールドで自身の世界観を表現。

これまでに東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、ミラノなどの都市で個展やアートイベントへ参加。New Balance、NIKE、UNIQLO、The New York Timesなど国内外の様々なプロジェクトにも携わる。

中山誠弥

1983年、大阪府生まれ。

大阪芸術大学美術学科卒業。大阪の公立中学校で美術教員として勤務した後、2012年に渡米。 2019年、クラフトビールのパイオニア「Brooklyn Brewery」のミューラルを手掛けたことで、一躍注目を浴び、現在はブルックリンを拠点にコンテンポラリーアーティストとして活動。

国内外のギャラリーや美術館、アートフェアで作品を発表するほか、企業のグッズやノベルティのデザイン、社屋やオフィスのミューラル、タイアップイベントでのライブペインティングなど幅広いジャンルで活躍。