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清川あさみ美術監修・世界配信ドラマに学生のアート作品が登場! 清川あさみ美術監修・世界配信ドラマに学生のアート作品が登場!

美術学科
2025/12/22

2025年12月19日からPrime Videoで世界配信された、湊かなえ氏の衝撃作『人間標本』の実写ドラマに登場する作品制作に、美術学科の学生6名が携わりました。第一線で活躍するアーティストで、美術学科の客員教授である清川あさみ先生が本ドラマの美術監修およびキービジュアルのアートディレクターを務め、2024年に劇中アート制作のメンバーとして学生の作品が募集・選抜されるプロジェクトが始動しました。

清川先生との対話方式で行われた学生のプレゼンテーション

学生が作品をプレゼンし清川先生が対話形式で講評

2024年11月29日、清川先生による特別講義が実施され、美術学科の学生約100名が参加。劇中アート制作のメンバーとして募集・選抜されるプロジェクトが進行されました。このプロジェクトでは、劇中で使用されるアートを学生から募集。テーマは「シャガールのような青の世界」「薔薇の美しさ」「ボールペンアート」「独創的な表現」など自由で個性的な作品が求められました。事前に提出された学生作品の中から11作品が清川先生によって選出され、9名の学生が講義内でプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションでは、作品のコンセプト制作や背景と思い、技法、サイズ、制作期間、タイトルの意図などについて、清川先生と学生が対話形式で深く掘り下げました。

プレゼンテーションの後に質疑応答の時間が設けられ、学生から清川先生へ「アイデアはどこから生まれるか」「20歳の頃、何を考えていたか」 「コンプレックスとの向き合い方」など質問が寄せられました。清川先生は、自身の経験を交えながら1つひとつ丁寧に回答。「作品を作り続ける原動力はなんですか」という質問に対しては、「原動力は好奇心です」と答え、創作に向き合う姿勢と情熱を学生へ惜しみなく共有しました。

清川先生が選考した学生の作品

今回の講義の中で清川先生は、プレゼンテーションをする学生の作品を選考した理由と、本プロジェクトに込めた思いについて「劇中に登場する男の子たちの年齢が、皆さんとほとんど変わりません。悩んだり葛藤したりする気持ちが重なる分、リアリティのある表現ができるのではないかと感じました。きっとこの中に素晴らしい才能を持った人がいるはずだと思い、ぜひ学生の皆さんと一緒に作品をつくりたいと思いました。これは大きなチャンスですし、同じ美術を志す仲間の作品を知り合う良い刺激にもなるはずです」と語りました。

劇中用に制作された学生の作品

選ばれた6名の作品が劇中に登場する作品へ

厳正な選考の結果、6名の学生が選抜され、彼らの作品が劇中で使用されることが決定。学生たちは、プロジェクトへの参加を通じてプロの制作現場に関わることで、作品をどのように世の中に発信するかという視点を養い、プロとしての自信を培うことができました。また、学生は制作にかかる費用の整理や必要な手続きを進めるなど、創作以外の実務経験を行い、仕事として作品が評価されるプロセスを体験。今後のキャリアにおける貴重なステップとなりました。この経験を通じて学生たちは、アートの社会的役割や商業的価値をはじめ、プロとしての責任感と自信を身につけました。清川先生は、「今回のプロジェクトは世界配信されるプロジェクトです。物語を通して人の『見えない部分』や『心の奥にある感情』をどう表現するかという課題は、アートの本質でもあります。学生たちにもそれに参加し自分自身の感覚で“生と死、美と恐怖のあわい”にある人間像を考えてもらいたいという思いから、参加をお願いしました。実際のお仕事を通して、“作品が社会とどうつながるか”を体験してほしいと考えていました」と語ります。

劇中用に制作された学生の作品

学生作品が登場する『人間標本』はPrime Videoで配信

学生が手がけた劇中アートが登場する新ドラマシリーズ『人間標本』は、Amazon MGMスタジオ製作による最新作として、Prime Videoで世界同時配信されました。原作は、『告白』『母性』『ユートピア』など数々の衝撃作を発表してきたベストセラー作家・湊かなえ氏による同名小説です。物語は、蝶の研究者である榊史朗教授が、息子を含む6人の少年たちを「人間標本」にしたと自ら告白する衝撃的なシーンから始まります。「親の子殺し」を巡る禁断のテーマに切り込み、想像を超える結末へと観る者を導くミステリーサスペンスです。出演は、西島秀俊、市川染五郎、宮沢りえ、伊東蒼ほか、実力派俳優が名を連ねます。

劇中用に制作された学生の作品

そして、本作の世界観を構築する上で重要な役割を担ったのが、美術監修・アートディレクションを務める清川あさみ先生です。写真の上に刺繍を施す独自の表現で注目され、NHKドラマ『大奥』のビジュアルでも高い評価を得た清川先生の指導のもと、厳正な選考で選ばれた学生6名の作品が劇中アートとして登場します。プロとして作品を作り、実際の映像作品の中で世界に向けて発信されるという機会は、学生にとって大きな成長と確かな自信につながる経験となりました。

美術学科/客員教授
清川 あさみ 先生

学生の皆さんのプレゼンテーションより普段からどう作品に向き合ってるか知ることができました。自由で、何より「他人ではなく自分の感覚から出てくる表現」をしようとしていたことが印象的でした。また、コンテキストを通してどのように“自分という存在”を形にできるかという部分に、それぞれの個性が表れていました。そして、与えられたテーマを“表面的に理解する”のではなく、自分なりの視点で“見えない世界”をどう捉えているか、その誠実さや深さを感じられる作品を選びました。劇中に、登場人物として等身大のフレッシュな感性が入ることで、現場に新しい“揺らぎ”や“生命力”が生まれたと思います。学生たちの率直な反応や純粋な作品群が本編にも自然に反映されていると思います。学生と一緒にプロジェクトに取り組む中で、細かく確認しながら、作業する工程が印象的でした。登場人物ごとに“痕跡”を形にしていくその静かな集中力が素晴らしいと思いました。アートは「正解」よりも「問い」を生み出すことだと思いますが、今回の経験を通して得た緊張感や感動を自分の中に蓄積し、今後も自分自身の問いを表現できるクリエイターとして成長してほしいです。人の心を動かす表現とは何か、それを探し続ける姿勢を大切にしてほしいと願っています。

美術学科/版画コース専攻 3年
藤本 毬緒 さん

 今回のプロジェクトには、「こういった企画に応募してみること自体が経験になる」と思い、選ばれたらいいなという気持ちで応募しました。自分の作品が周囲からどう評価されるのかを知りたいという思いも少しありました。選出が決まったときは嬉しさと同時に、「本当に?」という驚きもありました。他の応募作品はどれも素晴らしく、自分の作風では選ばれないかもと思っていたので、その中で選ばれたことは正直とても誇らしかったです。線で表現するスタイルが評価されたのかなと感じています。ボールペンアートを採用した作品が他に少なかったことや、作品が持つ少しダークな雰囲気が今回の作品テーマに合っていたのではないかと思います。制作後、役者の方から「実際に使用していたボールペンを教えてほしい」と言われた時は、映るかどうかわからない細部にまでこだわるプロの姿勢に感動しました。一方、現場の方々とのやり取りでは多くのミスもあり、コミュニケーションの重要さを痛感し反省点も多く残りました。ボールペンアートは初めての挑戦でしたが、細かな線で虫の模様や毛の質感を表現する作業はとても楽しく、やりがいがありました。ただ、私は虫が大の苦手なので、資料の画像や動画を観察しながら描く工程はかなり根気のいる時間でもありました。それでも、思い切って応募したことで得られた学びは非常に大きく、挑戦することの大切さを実感しました。新しい表現に積極的にトライし、自分の作品を広く見てもらえる機会を逃さずつかんでいきたいと思います。

美術学科/油画・非具象コース専攻 3年
平井 伯 さん

応募した理由は、単純に「面白そうだ」と感じたこと、そして以前からこういったプロジェクトに関わってみたいという思いがあったからです。参加が決まったときは、不安と期待が入り混じった不思議な感覚でした。プレゼンでは「どんな作品なら印象に残るか」を意識し、普段から大切にしている“第一印象の強さ”と、テーマや内容を丁寧に掘り下げる自分の制作スタイルが伝わるよう工夫しました。その点を評価していただけたのかなと感じています。依頼を受けて描く経験はこれまでなく、自分の表現と相手の意図のバランスを探りながら進めることは大変でありながら、とても新鮮でした。今回担当したのは「血のような赤いバラ」という印象的なテーマ。普段、暗めの作品を制作すると明るくするよう求められることが多いので、むしろ濃く深い赤を求められたことが刺激的でした。F120号の大きなキャンバスに向かったとき、全体像をつかむのに苦労しましたが、絵具を重ねる感触や質感に集中する時間は非常に楽しく、原作からイメージを膨らませるプロセスも充実した瞬間でした。この経験を通じて、大きな画面に挑戦することへのハードルが下がり、より大きな作品づくりにも意欲が湧きました。また、さまざまな人と関わりながら制作することの楽しさを実感したため、今後も学内外問わずこうした企画に積極的に参加し、いつか自分発信のプロジェクトも実現したいと思っています。

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