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アフリカの息吹を感じる展示に注目「芸大Zoo」開館 アフリカの息吹を感じる展示に注目「芸大Zoo」開館

アフリカの息吹を感じる展示に注目「芸大Zoo」開館
美術学科, 教養科目・専門関連科目 / その他
2025/12/08

2025年10月1日、キャンパス内31号館にアフリカや北アメリカの動物たちの剥製を展示した「大阪芸術大学 動物ジオラマ館『芸大Zoo』」が開館しました。館内はアフリカの野生動物の生息地を再現したジオラマをはじめとする3つのエリアで構成され、剥製58体、頭部35体、毛皮9点、角や骨9組などを展示。多様な動物の暮らしを間近で見られる展示館となっています。開館日には同館の展示・デザインを手掛けた教養課程主任教授・若生謙二先生や剥製を寄贈した「滋賀サファリ博物館」の元館長・近藤幸久さんが駆けつけ、内覧会も行われました。

偶然の出会いから始まった「芸大Zoo」開館までの道のり

「芸大Zoo」は、滋賀県甲賀市にて「滋賀サファリ博物館」を営んでいた近藤幸久さんが教養課程主任教授・若生謙二先生と運命的な出会いを果たし、交流を温めたことで開館に至りました。

「滋賀サファリ博物館」は近藤さんの父親で初代館長を務めた近藤幸彦さんが、長年、世界各地で狩猟した動物の剥製を展示する私設博物館として1995年に開館。幸彦さん亡き後は幸久さんが館長を務め、約30年にわたって親しまれてきましたが、2025年5月に惜しまれつつ閉館となりました。


若生先生は2020年、ドライブ中に偶然「滋賀サファリ博物館」を目にし、近づくとその日は土曜日で休館であったが、館長の奥様が館の前の清掃をしておられ、特別に入館させてもらった。展示されている剥製の質の高さに驚き、近藤さん夫妻と話しているうちに閉館後の剥製の行先を相談されることになる。その後、若生先生と大学が協議し、大学への寄贈が決定。展示施設として「芸大Zoo」が設立されることとなり、剥製は2025年7月に学内へと移設されました。

10月1日、開館に先立って行われたオープニングセレモニーでは、塚本学院副理事長・大阪芸術大学副学長の塚本英邦先生、若生謙二先生、近藤幸久さんらが登壇。塚本先生は、近藤さんによる剥製の寄贈に感謝を述べ、今後はデッサンのモチーフや物語創作の題材など、教育目的で「芸大Zoo」を活用していきたいと語りました。


近藤さんは、個人で博物館の維持が困難になったところに若生先生と出会い、大阪芸術大学で父親のコレクションが保管・展示されることに感謝を述べました。若生先生も近藤さんから譲り受けた剥製を有効に活用したいという思い、そして開館に向けてアフリカでジオラマ用の写真撮影を行ったという逸話を披露しました。

3名の挨拶が終了すると、塚本学院の専務理事である亀谷眞一先生、理事の工藤皇先生、後藤治文先生も加わりテープカットセレモニーを実施。高らかにファンファーレが鳴り響く中、「芸大Zoo」は正式にオープンを迎えました。

アフリカの大地を再現したジオラマ、多様な剥製で動物の暮らしを学ぶ

オープニングセレモニーの終了後は内覧会が行われ、開館を待ちわびていた学生や職員、報道関係社が次々と館内へ足を運んでいきました。来場者は一様に剥製のリアルさに驚きを見せ、スマートフォンで撮影する様子が数多く見られました。


若生先生によるギャラリートークでは、ジオラマ製作についてのエピソードが語られました。特に注力したのが、アフリカで撮影された背景写真の撮影とその継ぎ目を自然に見せるための工夫です。より正確に表現するために、絵ではなく写真を用いることにし、アフリカの生息地まで撮影に行き、これらの写真を用いて背景をつくりました。また写真の背景との継ぎ目を一体化させるために、地盤の高さを何度も調整し、草や岩場など細部にわたってこだわりを貫いたジオラマはまったく違和感を感じさせず、見ているだけでアフリカの地にいるかのような感覚に浸ることができます。中でも苦労したというキリンは、高さの問題から段丘から上がってくるような展示方法を考案したとのこと。ボンゴなど、現在、日本では見ることができない希少な動物が展示されている重要性についても触れられました。

館内はジオラマ展示と剥製展示のスペースがあり、ジオラマは、シマウマやキリン、シロサイなどが暮らす「アフリカの草原」、高地や丘陵地の森林でボンゴ、オリビなどの生態を再現した「アフリカの森林」、ジャイアントエランドやコーブ、オリックスらのすみかが見られる「岩場のある草原:アフリカ」という3つのゾーンで構成。リアルなジオラマと、まるで生きているかのような動物たちの躍動感が没入感を高めます。


 剥製の展示室では角を突き合わせるワピチが中央に陣取り迫力満点。多様な動物が種ごとに展示され、壁面には頭部や毛皮も飾られています。中心となるのはアルタイアリガリ、シベリアアイベックスといったヤギの仲間、ヘラジカ、トナカイなどのシカの仲間ですが、アメリカクロクマやホッキョクグマ、ナイルワニといった捕食者の動物も見ることができます。ジオラマとこの展示には一部の展示物を除いて柵が設けられておらず、動物たちの毛並みや筋肉を間近に見られることが大きな特徴となっています。

大阪芸術大学の新たな学びの場として開館した「芸大Zoo」。個人が収集した希少動物の剥製をジオラマとして展示するという大学施設としては異例の展示内容は、今後、さらに注目を集めることとなるでしょう。学生たちにとっても創作の源として活用されることが期待されます。


入館について、通常授業期間中は火~金曜日の12:00~13:30が開館時間となり、学内関係者であれば学生証・教職員証を提示することで見学することができます。卒業生を含む学外の見学者は、庶務課で見学申込書を記入し、許可を受けると入館できます。

教養課程主任教授
若生 謙二 先生

「芸大Zoo」誕生のきっかけは2020年初頭、私と「滋賀サファリ博物館」の元館長・近藤さんご夫妻との偶然の出会いにまで遡ります。滋賀県をドライブしていた私は、まさかこのような博物館が甲賀市にあるとは夢にも思わず、館内では展示されている剥製の質の高さに驚きました。その時、対応してくださった近藤さんの奥様に、私が大阪芸術大学で教鞭をとっていることや、天王寺動物園のサバンナや上野動物園のパンダの展示もてがけた動物園デザイナーであることを話したところ、「剥製を大学で引き取って活用していただけないか」と、予想もしていなかった申し出をいただいたので、塚本副学長に報告し、改めて一緒に見学に伺いました。その後、剥製の引き取りが決定し、舞台芸術学科の旧練習場所を博物館に転用するための工事が進められることとなり、私は動物園デザイナーとして、この剥製を最大限に活かす展示方法を考えてジオラマを設計にとりくみました。通常、剥製のジオラマでは背景には透視画法で絵を描くのですが、より正確に制作するために、写真で表現することにしました。背景写真の撮影には写真学科の高解像度カメラを持参してケニアのマサイマラ保護区、ウガンダのブウィンディ原生国立公園で撮影するなど、これまでにない方法で取り組みました。また、動物を観客の視線よりも少し高い位置に配しており、迫力を感じるようにしています。
こうしてでき上がった「芸大Zoo」には、現在は日本の動物園では見られない多くの希少動物を展示しています。このような展示館のある大学は世界でも例がありません。今後は、美術学科のデッサンモチーフや写真学科の撮影練習、生き物のキャラクター構想など、さまざまな学科の学生が活用し、芸術表現を培い、感性が刺激される場になることを願っています。

滋賀サファリ博物館 元館長
近藤 幸久 さん

このたびは「芸大Zoo」の開館、まことにおめでとうございます。館内に展示されている動物の剥製は、私が館長を務めていた「滋賀サファリ博物館」に収蔵していたものを大阪芸術大学に寄贈し、移設したものですが、若生先生とのご縁をいただいたことで閉館後もみなさんに見ていただけるようになったことを心から嬉しく思っております。最初に若生先生と話した私の妻は、残念ながら2025年6月に亡くなってしまったのですが、同じく今回の開館を喜んでいると思われます。
剥製の野生動物たちは私の父親が狩猟で収集したもので、1970年代からは世界各国で政府の許可を得ながら捕獲を行っていました。現在では希少となっているものも多く、世界四大珍獣の一つであるボンゴや「世界三大シープ」と呼ばれる羊の種類が一か所揃っているのはたいへん珍しいと言われています。父が大事に守り続けてきた剥製が場所を変え、適切に保管されるようになったことは、まさに奇跡であり、すべてを引き取ってくださった若生先生、大阪芸術大学のみなさまには感謝の想いが尽きません。
今後は学生や一般の方々に広く見ていただけるとのことで、教育の面で貢献できることにも期待を寄せています。アフリカの景色を忠実に再現したジオラマで、ぜひ、動物たちの暮らしを間近で感じてください。