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大阪・関西万博を機にオーストリアの現代アートが大阪芸大に! 大阪・関西万博を機にオーストリアの現代アートが大阪芸大に!

美術学科 / その他, PickUPトピックス
2025/07/30

2025年6月19日、大阪・関西万博のオーストリアパビリオンで、同国の世界遺産エッゲンベルク城に眠っていた日本の屏風絵「豊臣期大坂図屏風」に着想を得た2点の現代アート作品が紹介されました。これらは万博のための特別アートプロジェクトとして制作されたものです。その一つである「The Styrian Paravent(シュタイヤーマルク屏風)」が、大阪芸術大学に寄贈されることになり、作者のトム・ローナー氏から塚本英邦副学長への贈呈式が行われました。

またこれに先立つ6月18日、ローナー氏が大阪芸術大学を訪問。キャンパス内を見学し、芸術を志す学生たちにエールを贈りました。

6月19日、大阪・関西万博のオーストリアパビリオンにて贈呈式が開催された

日本とオーストリアの架け橋となる特別な現代アート作品の贈呈式

大阪・関西万博に向けて企画された「Paravent History(s)(屏風のヒストリー)」は、オーストリア・シュタイヤーマルク州の世界遺産、エッゲンベルク城に所蔵されている「豊臣期大坂図屏風」を起点とする現代アートプロジェクトです。この屏風は、1600年代前半の豊臣時代の大坂城下が描かれた貴重な史料で、エッゲンベルク城と大阪城が友好城郭提携を結ぶきっかけにもなっています。

このプロジェクトで、シュタイヤーマルク州出身の2組のアーティストが「屏風との対話」をテーマに作品を制作。トム・ローナー氏の「The Styrian Paravent(シュタイヤーマルク屏風)」は、幅4mの屏風にシュタイヤーマルクの建物や自然が色鮮やかに描かれた作品。スタジオ・アシンクロームの「PIXEL PARAVENT(ピクセル屏風絵)」には、「豊臣期大坂図屏風」の主なモチーフがインタラクティブなピクセルアートによって表現されています。

「豊臣期大坂図屏風」のレプリカが常設展示されたオーストラリアパビリオン3階レストラン。イベントでは最新技術を取り入れた作品「PIXEL PARAVENT(ピクセル屏風絵)」も展示された
トム・ローナー氏の「The Styrian Paravent(シュタイヤーマルク屏風)」。シュタイヤーマルク産のウォールナット材を用いた8曲の屏風の表裏両面に、現地の名物が現代風に描かれている

このたび日本とオーストリアの友好の証として、ローナー氏の作品「The Styrian Paravent(シュタイヤーマルク屏風)」が大阪芸術大学に寄贈されることとなりました。これはオーストリア大使館からの「大阪とシュタイヤーマルク、日本とオーストリアの芸術文化交流の架け橋となるよう、大阪の学術組織に寄贈したい」との申し出により実現したものです。6月19日に万博オーストリアパビリオンでプロジェクトを紹介するイベントが催され、その中でローナー氏から塚本英邦副学長への贈呈式が行われました。

作品を前にしたトム・ローナー氏と塚本英邦 大阪芸術大学副学長

このイベントには、シュタイヤーマルク州の政治・経済・芸術・学術・観光ほか様々な分野のメンバーからなる同州代表団や日本の関係者などが参加。ミヒャエル・レンディ駐日オーストリア大使をはじめとする来賓のスピーチに続き、エッゲンベルク城と大阪城の交流についての講演や、アートプロジェクト2作品の解説が行われました。

セレモニーにはオーストリア大使やシュタイヤーマルク州代表団など多くの人が参加した

セレモニーの最後に実施された贈呈式では、作者のローナー氏がスピーチ。「この作品が大阪芸術大学に居場所を見出したのは大変名誉なことです。日本の芸術文化に深く根ざし、私のふるさとや私の心の一部でもある作品が、異文化間の橋渡しになれば嬉しいです」と語りました。これを受け、大阪芸術大学の塚本英邦副学長は「本学には約半世紀前の大阪万博で展示されたアートも所蔵されています。この作品もレガシーとしてずっと大切にしていきたいと考えています」と感謝の言葉を述べました。

セレモニー後のレセプションに続いて、オーストリアパビリオンの見学ツアーが行われました。同館は「未来を作曲」をテーマにしており、楽譜をイメージした外観が印象的です。葛飾北斎の浮世絵をモチーフにしたベーゼンドルファー社の限定ピアノや、日本とオーストリアのつながりをテーマにした映像、オーストリアの様々なプロジェクトを紹介するゾーン、AIを使って作曲を体験できるコーナーなど、趣向を凝らした多彩な展示が参加者を楽しませていました。

パビリオン内では様々な展示でオーストリアの魅力を体感。大スクリーンの迫力映像と、タッチ画面で即興作曲した音楽との融合が楽しめるゾーンも
らせんの音符が特徴のオーストリアパビリオン。イベントに参加したシュタイヤーマルク州代表団や関係者一同が州旗を手に記念撮影

作者の国際的アーティスト、トム・ローナー氏が大阪芸大を来訪

この贈呈式に先立つ6月18日、トム・ローナー氏が大阪芸術大学キャンパスを来訪されました。ローナー氏は、ポップカルチャーを想像力豊かに描いた作品で知られ、欧米やアジアの国際的なギャラリーや美術館での展示、ハリウッドスターや有名ブランドとのコラボレーションなど、幅広く活躍されています。

ローナー氏は本学国際部職員の案内を受けながらキャンパス内を巡り、各学科の施設や展示、授業風景などを見て回られました。アートサイエンス学科やキャラクター造形学科のユニークな校舎、美術学科の広々としたアトリエ、工芸学科の本格的な設備、アートホールや芸術劇場など、スタッフの説明に熱心に聴き入りながらじっくりと各施設を見学。充実した環境で若者たちが真剣にアートを学んでいる姿に、感銘を受けられていました。

キャラクター造形学科のお城の校舎に「アメイジング!」と感嘆の声をあげたローナー氏
日本の漫画やアニメ、ゲームなどからもインスピレーションを受けることが多いそう
美術学科の学生作品にもアーティストならではのまなざしを向ける
ドイツ・クライス社製のパイプオルガンも見学。自身にとっても音楽など多様な芸術が創作の糧になっているとのこと

トム・ローナーさん(アーティスト)

このたび大阪芸術大学で私の作品「The Styrian Paravent(シュタイヤーマルク屏風)」を所蔵していただけることになり、大変光栄に思い、深く感謝しています。この作品には、私の故郷であるオーストリア・シュタイヤーマルク州の名所や風景をたくさん描き込みました。全体をパッと見るだけでもインパクトがあって面白いのですが、それだけにとどまらず、細かいディテールの一つひとつがオーストリアを表現しており、その組合せも楽しんでいただける作品になっています。

今回の寄贈をきっかけに大阪芸術大学を訪問させていただいて、素晴らしい環境に感銘を受けました。絵画や工芸、音楽、舞台芸術、アートサイエンスなど幅広いジャンルの芸術や多くの作品にあふれていて、まさに一つの創造的な芸術の街のようです。アートを学ぶだけでなく、アートを実社会でどのように機能させていくかを実践的に学べるところも素晴らしいですね。アーティストにとってクリエイティビティは欠かせませんが、それを社会につなぐビジネス面の取り組みも重要です。大阪芸術大学では、その両方にバランス良く力を入れていると感じました。

現在は各国で様々な活動に取り組んでいる私自身も、最初は単なる一学生としてアーティストへの道を歩み始めました。でも当時から創作への思いは人一倍強く、自分が描きたいものややりたいことに対する情熱が、常に私を駆り立ててきたのです。今芸術を学んでいる皆さんも、きっと私と同じように強いパッションを持っていることでしょう。その情熱を燃やし続けながら頑張ってほしいと思います。大学に所蔵される私の作品からもインスピレーションを受けてもらい、皆さんの芸術活動に役立つことができれば、本当に嬉しいですね。


 ※トム・ローナー氏の作品「The Styrian Paravent(シュタイヤーマルク屏風)」は、大阪芸術大学図書館3階に展示されています。