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造形家・竹谷隆之先生によるフィギュアアーツコースの特別講義 造形家・竹谷隆之先生によるフィギュアアーツコースの特別講義

キャラクター造形学科 / 特別講義
2024/12/19

2024年10月30日、世界的に知られる造形家の竹谷隆之先生による特別講義が、大阪芸術大学8号館大教室にて行われました。キャラクター造形学科フィギュアアーツコースで学ぶ学生たちが受講。『シン・ゴジラ』や『仮面ライダー』シリーズ、ジブリシリーズなど様々な人気作品の造形やデザインを手がけた竹谷先生の制作裏話から、多くのことを吸収していました。

世界的なフィギュア造形家が語る創作秘話

キャラクター造形学科教授でフィギュア業界最大手「海洋堂」専務の宮脇修一先生から「世界一の造形作家でクリーチャーの第一人者です」と紹介されてスタートした竹谷隆之先生の特別講義。「まずはわかりやすいところから始めますね」と、映画『シン・ゴジラ』のラフスケッチがプロジェクターに投影されました。


「庵野秀明総監督や樋口真嗣監督らと打合せをしながら、前田真宏氏のイメージイラストをもとに描いたものです」と説明する竹谷先生。デザイン画や造形した雛形を見せながら、「要望にあわせて修正しやすいよう、最初の雛形は全身でなく、ステンレス板にオーブン粘土を付けて片側だけを作っています」「ボコボコした皮膚は、家に植えているゴーヤを型取りしたものをヒントに、自作したスタンプを押したもの」など制作の裏話が語られ、学生たちは真剣な表情で聞き入ります。

ラフ画や制作経過とともに、どんな素材でどう造形していくかをわかりやすく解説
皮膚の表情をつけるスタンプ、筋肉を造形するためのヘラなど、手製の道具を使った制作シーンも公開

続いて『巨神兵東京に現る』『進撃の巨人』の巨大キャラクターの造形工程を紹介。さらに、竹谷先生自ら執筆した小説『漁師の角度』がモチーフのフィギュアやジオラマ、『仮面ライダードライブ』の怪人デザイン、大阪芸術大学の図書館に展示されているブロンズ立像『マクタカムイ』など、様々な作品とともに、要所要所の制作プロセスや興味深い裏話が続きました。

『風の中のナウシカ』の王蟲や腐海の蟲を立体化した作品は、スタジオジブリ作品の展覧会のために制作されたもの。「大人数のチームで取り組みましたが、スタッフの皆さんの高い技術力で格段に完成度が上がりました。宮崎駿さんの作品世界で遊ばせてもらった楽しい仕事でしたね」と竹谷先生は振り返ります。


講義後の質疑応答では学生から様々な質問が寄せられました。「発想を広げる時に資料を参考にしますか?」「アイデアに行き詰まったら?」などの質問に対し、竹谷先生は「細部を調べるための情報収集はしますが、デザインの方向性を決める時は、自分の中に蓄積されたもので論理的に考える。それで詰まったら感覚的に切り替えて、行ったり来たりしながら進めます。悩んでもずっと考え続けていると、寝起きなどふとした時に意外といいアイデアが出てくるんです」と回答。イメージを具現化していくためのコツを伝授しました。

映画監督らのオーダーに応えながら、より良いものへブラッシュアップさせていくという竹谷先生
それぞれの作品の制作経緯やポイントを丁寧にレクチャー
講義後も学生たちと気さくにコミュニケーション

合同展示会で学生作品一つひとつ丁寧に講評

当日はキャラクター造形学科校舎の展示室で、「フィギュアヴィネット合同展示会」が行われていました。同学科をはじめ短大や専門学校など大阪芸術大学グループでフィギュアやヴィネット制作を学ぶ学生有志が作品を展示。講義後、竹谷先生が会場を訪れ、一つひとつの作品を講評してくださいました。


展示作品は美少女からクリーチャーまで多彩なラインナップ。一作品ずつじっくりと向き合った竹谷先生から、「ポージングがしっかりできている」「もう少し色で遊んでみたら、さらに面白い作品になりそう」など丁寧なアドバイスが贈られました。学生たちは「憧れの先生に作品を見ていただけて嬉しい」「モチベーションが上がります」と、制作意欲を高めていました。

展示会に出展された学生作品を一点一点じっくりと講評
キャラクター造形学科教授の宮脇修一先生(中央)とともに学生にアドバイス
細部までこだわり抜いたクリーチャーなど力作が並んだ
学生が持参した著書に先生がサインをしてくださる場面も
造形作家
竹谷 隆之 先生

今回初めて大阪芸術大学にお邪魔して、様々な学科が揃い、施設も整った広大なキャンパスに驚きました。いろんなことにチャレンジできる本当に素晴らしい場所ですね。芸大生の皆さんは、すでにやりたいことに出会い、進みたい道を選んで入学しているのですから、この環境をいかして自分のめざす方向へ突き進んでいってほしい。今日僕が描いたり作ったりするプロセスを紹介したことが、少しでも何かの役に立てばうれしいですね。

展示会で学生作品を見せてもらったのも楽しかったです。技術や方向性は人それぞれで、どこまで極めるかを決めるのは自分自身。まずは信念をもって、ここまで到達したいという目標を自ら設定することが大事かなと思います。それと同時に、その時々で自分が創りたいものを創り、描きたいものを描く柔軟さも持っておきたい。あまり「こうすべき」とか「今世の中で求められているもの」にしばられすぎると、作品もつまらなくなってしまいます。
デジタル化が進んで技術的な精度の差がつきにくくなった今、コンセプト作りがますます重要になってきています。好きなことだけじゃなく未知の分野のことを取り入れたり、作品制作とは一見関係ないような体験をしてみたり、そういうことも創作のヒントや財産になると思いますよ。

僕が制作で大切にしているのは、提示された条件を満たし、期待に応えつつ「このくらいのものができてくるだろう」という予想をいい意味で裏切ること。作品全てでそれが実現できているかわかりませんが、やはり人に見せたときに「すごい」と喜んでもらえると、やりがいを感じます。
今後はオファーを受ける仕事だけでなく、自分で一から創るオリジナル作品も作りたい。時間や予算などの課題もありますし、ごく狭い範疇の世界観になるかもしれませんが、楽しんでくれる人に向けて取り組んでいきたいですね。僕も頑張りますので、皆さんもぜひ頑張ってください。

キャラクター造形学科 フィギュアアーツコース 4年生
伊與部 祐己 さん

子どもの頃からクリーチャー造形に熱中し、ずっと生き物をメインに制作してきた僕にとって、竹谷先生はまさに神様のような存在です。この特別講義では、クリエイター目線で価値あるお話をたくさん聞くことができました。素材の使い方や発想の方法など一つひとつの内容が濃く、メモを取るのが追い付かないほど。蜘蛛の巣状のネバネバした造形がドールヘアと木工ボンドでできているとか、ヘビやタヌキなどの本物の骨が使われているといった想定外のアイデアに、「そうやって作るんだ!」と驚きの連続でした。身近な素材に着目することも有効だと気づかされて、今ちょうど取り組んでいる卒業制作にさっそく取り入れようと考えています。さらに合同展示会では、作品を直接見てもらって的確なアドバイスもいただき、本当にありがたい体験ができました。
キャラクター造形学科では、プロの先生方の指導はもちろん、最新の機器やソフトも学べますし、今回のように外部から素晴らしい先生を招いて特別講義も行われ、恵まれた環境が整っています。ただ本当に成長したいなら、受け身で授業を受けるだけでなく、積極的に自主制作に取り組まないとダメ。造形や3DCGのコンペも数多くあるので、どんどん作品を作って出展することが大切です。僕もそうやって力をつけたおかげで、中学時代から憧れていたゲーム会社にキャラクターモデラーとして内定をいただくことができました。卒業後は大学での学びをいかして思いきり活躍したいです。

キャラクター造形学科 フィギュアアーツコース 2年生
金沢 菜月 さん

もともと竹谷先生の大ファンで、著書や制作シーンの動画などもたくさん見てきたので、今回の特別講義でご本人にお会いすることができて、本当に嬉しかったです。私は巨神兵やジブリ系などの作品が特に好きなのですが、平面のアニメとはまた違う質感の表現方法など、とても勉強になりました。スケッチやデザイン画、制作中の雛形の画像などとともに、どんなふうに創作が進められていくのか詳しく説明していただき、なかなか見られない角度や細かい部分など、本ではわからないところまでしっかり見ることができて、講義中は「すごい、すごい!」と興奮しっぱなし。授業後に宛名入りでサインを書いていただけたのも感激でした。
私はもともとデザインの方にも興味があったのですが、立体造形をやり始めたらものすごく楽しくて、フィギュアアーツコースを選びました。キャラクター造形学科は「お城の校舎」で有名ですが、外観だけじゃなくて施設の充実度も圧倒的。アナログとデジタルの両方の設備が整っていて、授業以外の自分の作品制作にも使えます。何より魅力なのは、現役の原型師として活躍している先生方から直接教えてもらえること。先生が制作する様子を間近で見たり、自分の作品の手直しをしてもらったりしながら、しっかり技術を身につけられます。原型師になりたいという夢に向かって、ここでたくさんのことを吸収したいと思っています。