時代を切り開く映像クリエイターが集結!第19回オオサカデザインフォーラム 時代を切り開く映像クリエイターが集結!第19回オオサカデザインフォーラム
2025年11月24日、19回目を迎えた「オオサカデザインフォーラム」が、国の重要文化財・大阪市中央公会堂で開催されました。このフォーラムは、大阪芸術大学の学生が主体となって運営し、第一線で活躍するクリエイターを招いて行われる講演会です。今回は、映像演出やライブ制作で高い評価を得る山田健人氏、独自の感性でカルチャーを牽引するイラストレーター・WOOMA氏、数多くのMV・CMで注目を集める映像ディレクター・田中裕介氏の3名が登壇。それぞれの講演に加え、デザイン学科・東陰地正義准教授による進行のもと、3者によるトークセッションも実施されました。
学生企画実行委員としてデザイン学科1〜3年生57名が参加
オオサカデザインフォーラムは、2006年にデザイン学科教授であり藝術研究所所長を務める喜多俊之先生の考案によって始まりました。デザインを中心に、さまざまな分野で活躍するクリエイターを招いて開催されるフォーラムで、毎年、ジャンルを越えてデザインの魅力が発信されています。第19回となる今年は、映像系のクリエイターを招いて行われました。1年生から3年生までのデザイン学科7つの専門コースを横断して行われる授業「ハイパープロジェクト」の1つとして、デザイン学科プロダクトデザインコース准教授 道田健先生の指導のもと準備が進められ、舞台、会場、受付、アテンド、3階(懇親会)、記録、広報の7つの班に分かれてフォーラムを運営。ゲストの選定からポスターやパンフレットの制作、当日の進行・会場アナウンス、交流会の準備まで学生が中心となり手がけました。
11月7日には、会場となる大阪市中央公会堂で一部の学生が下見や当日に放映する映像の確認を行いました。同じ日、大学ではフォーラム直前の授業が行われ、学生全員が当日の服装チェックのため全身黒の装いで出席し、当日の段取りについて最終的な打ち合わせを実施しました。また、WOOMA氏の講演やトークセッションの際ステージに設置されたテーブルは、プロダクトデザインコース2年生の見賀理人さんが制作したものです。学生たちは、デザインイベントを自分たちの手で作り上げることを学びながら、協力し作業を進めて本番に備えました。
広報を担当したグラフィックデザインコース3年生の是枝新奈さんは、「日々の課題制作とは異なり、実際のイベント広報に携わることができるのは、このハイパープロジェクトならではの貴重な経験です。計画的に準備を進めることや、スケジュールを管理しながら行動する大切さを実感しました。メンバー全員で意見を出し合い協力することでプロジェクトがより良くなることを体感でき、先生方からのアドバイスを素直に生かす姿勢の重要性も強く感じました」と話します。また、グラフィックデザインコース3年生の村上穂ノ香さんは「学年を超えて関わり、講演会を成功させるという目標に向かって取り組めたことに、大きなやりがいと達成感を感じました。デザインや広報は“ただ見せる”だけでなく、目的を伝え、人の行動を促す力を持つことを実感しました。企画から運営まで学生主体で行った経験は、自ら考え判断して動く力の大切さを教えてくれました」と振り返ります。
学生とトップクリエイターが共振するフォーラムが開幕
フォーラム当日は、幅広い年代の来場者が多数訪れ、開演時間になると、学生が制作したゲストの山田健人氏、WOOMA氏、田中裕介氏を紹介する映像が上映されました。その後、大阪芸術大学副学長の塚本英邦先生による開会のあいさつで幕を開けました。塚本副学長は、デザイン学科で展開されるハイパープロジェクトの取り組みやこれまでの歩みを語り、「オオサカデザインフォーラムのコンセプトは、“学生とトップクリエイターとの共振”です」と語りました。
制作と挑戦の原点は“好奇心と計画力”
最初に登壇したのは、Suchmosや米津玄師、藤井風のMVやライブ演出などを手がけ、幅広く活躍する映像作家/演出家/ミュージシャンの山田健人氏です。「講演という名の“雑談”として、自分がどう考えてきたかを話したい」と語り、創作人生の歩みを振り返りました。子どもの頃から物づくりが好きだった山田氏は、中学生で独学でプログラミングを習得しゲームアプリを開発。改良を重ね全国20位のダウンロード数を記録しました。高校ではアメリカンフットボールに打ち込み、U-19日本代表にも選出。その傍ら、音楽の高音質再生に関心を持ち、電子工作でアンプ制作に没頭。大学入学後、アメフト引退を機に独学でモーショングラフィックスを学び、映像制作の道へ。「10年後にMV制作で食べていく」という計画を立てて挑戦を続ける中、宇多田ヒカル「忘却 featuring KOHH」のMV監督に抜擢され、大きな転機を迎えました。
その後、THE YELLOW MONKEY再結成ライブの演出を東京ドームで担当。300人のスタッフが関わる大規模なライブ演出を経験し、「専門性を持つ人たちと力を合わせ、1つの作品を作り上げることの素晴らしさ」を強く実感したと言います。山田氏は「作ることだけがデザインではない。人とコミュニケーションを取りながら関わることもデザイン」と語り、チームとの信頼関係を最も大切にしていると強調。「もらったものに対して、必ず同じ熱量で返したい」と、現場での姿勢を明かしました。さらに、良いアウトプットのために「インプットの時期と制作の時期を分ける」ことや、目標を持ち、とにかく行動する重要性を伝えました。「自分ひとりでやっているのではなく、人に支えられながら作り上げている感覚がある」と語り、創作の根底にある“人への敬意”を力強く示しました。
ライブペイントを通して“創作の現場”を共有
続いて、イラストレーターのWOOMA氏が登壇。WOOMA氏は、Adoや柊キライのMVで知られ、鋭いまなざしとクールな印象を持つ人物イラストで高く評価されています。今回は会場のスクリーンに制作過程を映し出しながら、学生の質問に答えつつライブペイントを行うという特別なステージとなりました。進行役を務めたのはデザイン学科3年生の亀山泰希さんです。制作ツールとして普段使用しているのはiPadというWOOMA氏は、厚塗り技法は本来1週間ほどかけて仕上げると言いますが、今回は50分で挑戦。「今回のフォーラムのイメージカラーである黄色を意識して描いています」と、ライブならではの視点を添えながら手を動かしました。また、「高校時代に大阪芸術大学のオープンキャンパスに来たことがある」と話し、会場を和ませる場面も見られました。
質問に対しても、創作への向き合い方を率直に語りました。WOOMA氏がイラストを仕事にしようと意識したのは美大入学の頃。「影響を受けた作品は?」という問いには、少年誌、特に『週刊少年ジャンプ』が好きで、中でも『BLEACH』のシンプルで鋭いデザインや余白の使い方から大きな影響を受けたと話ました。MV制作では、楽曲を受け取ったあとに絵コンテでキャラクターを固め、音から色や世界観を拾い上げて形にしていくプロセスを紹介。オリジナル制作では自由に、依頼作品ではアーティストのイメージを大切にしつつ「基本的には任せてもらっている」という信頼関係を重視する姿勢も示しました。動画制作では「冒頭30秒を特に大切にする」「最初の勢いで“見たい”と思わせることが重要」と発言。完成までの期間はオリジナルで1〜2週間、MV制作では約2ヶ月程度と語り、一番楽しい瞬間は「キャラクターの顔、特に目を描くとき」と言います。「美大時代からクロッキーが大好きで、ずっと人を描いていたい」と語り、表情へのこだわりを深く感じさせました。「学生時代に戻れるとしたら?」という問いには、「美大を中退して映像の学校に移ったので、卒業したかったかも」と振り返りました。最後に50分で書き上げたイラストにサインを添えて披露し「厚塗りの実践をしたので、参考になればうれしいです」と締めくくりました。
映像づくりの“核心”を解剖する基調講演
次に登壇したのは、サカナクションやPerfumeをはじめ数々のアーティストのMVを演出する映像ディレクター・田中裕介さんです。ユニークな発想と遊び心のある世界観を強みに、国内外で高い評価を受ける作品を生み出しているクリエイターです。今回の講演は「公式解剖」と題し、MVがどのように企画され、形になっていくのかを具体的に解説しながら進行しました。
まず紹介されたのは、サカナクション「怪獣」のMV制作のプロセスです。ヴォーカルの山口一郎氏から歌詞と共に依頼を受け、ディスカッションを重ねながら企画書を作成。アイデアの変遷、どのような経緯で最終的に「壁の男」というコンセプトへと絞り込まれたかを説明しました。「怪獣(モンスター)」と「懐柔(従わせること)」という2つの意味を物語として展開させ、映像表現へ落とし込む発想法についても、コンテ資料やセット構図のアイデアをスクリーンに映しながら丁寧に解説。登場人物の細かな設定やキャストの決定過程など、舞台裏に迫る内容に会場は引き込まれました。田中氏は、重要なポイントとして「タイトルをつけること、そして核心をブレさせないことが企画の土台になる」と強調。企画から演出へと構造を組み立てるワークフローの大切さを語り、完成した「怪獣」の映像を上映しました。続いてPerfume「Cosmic treat」の制作についても、架空のSF映画の世界観を構築するための企画書、ムードボード、衣装提案、コンテ資料を公開。レトロフューチャーをテーマに、ジャケットビジュアルを含む全体のディレクションを担当した経緯を紹介し、最後に⾃ら⼿がけた絵コンテをもとに作品を解説しながら、完成したMVを上映して講演を終えました。
トップクリエイターが語る“自分らしさ”と制作スタイル
デザイン学科・東陰地先生の進行のもと行われたトークセッションでは、関心の高いテーマについて、登壇した3名がそれぞれの視点で回答しました。「依頼企業」と「ライブやMVを見る視聴者」、どちらを意識して制作するかという質問に対して、田中氏は「視聴者を意識する」と回答。WOOMA氏は「自分が描きたいものを軸に、必要に応じて調整する」と語りました。山田氏は「どちらか一方ではなく、自身のスタイルを保ちながら双方にとっての最適な着地点を探す」とコメントしました。続いて、綿密な絵コンテによる計画性と、その場の発想による即興性、どのように使い分けるかについて、田中氏は「ケースバイケースだが、最終的には計画的に整理していく」と回答。山田氏は「絵コンテはほとんど描かないが、事前準備は必ず行い、ビデオコンテでは自ら演じてシミュレーションする」と話し、ライブ演出でも即興性を重視するスタンスを明かしました。チームでの制作体制やリーダーとして心掛けている点について、田中氏は「自分の想像を超える提案が生まれる瞬間がうれしい。チームとして作品を育てることを大切にしたい」と語り、全員で作り上げる過程の魅力を強調。WOOMA氏は「基本は1人で制作しているので、現場の回し方をぜひ聞きたい」とコメントし、山田さんは「同じスタッフでも馴れ合いにならず、常に新しいアイデアを出し合える関係性を大切にしている」と話しました。
音楽との関係性についての質問では、田中氏が「映像の8割は音楽で決まる」と語り、WOOMA氏も映像の重要さを認めつつ、イラストやタイポグラフィーの世界では役割が逆転する場合があると話しました。山田氏は「音楽と映像が合わさって100が120になる感覚。深く考えたことはない」と付け加え、自然体な姿勢を示しました。最後に若い世代へ向けたメッセージとして、田中氏は「心を込めて一生懸命取り組むこと。妥協せず芯を貫く強さを持ってほしい」とエールを送り、WOOMA氏は「好きなことを貫けば、必ず見てくれる人がいる」と話し、山田さんは「良いことも悪いこともあるけれど、自分のやれることをやる仲間がここにもいると思ってほしい。一緒に頑張りましょう」と笑顔で締めくくりました。
トークセッション後、学生企画実行委員がステージに並び、代表を務めたプロダクトデザインコース3年生の渡野とも佳さんが「オオサカデザインフォーラムは、学生が主体となり企画から広報・運営まで取り組んできました。本日のセッションを通して、デザインに対する新しい価値観やヒントを持ち帰っていただければうれしく思います。ご協力くださった皆様に心より感謝申し上げます」とあいさつの言葉を述べました。
最後にデザイン学科長の高橋善丸先生が登壇し、「とてもエンターテイメント性に富んだ、有意義で楽しいイベントであったと感じています。登壇いただいたゲストの皆様が時間を正確に守り、1分のズレもなく進行された姿勢には大変感銘を受けました。まさに時間を刻むお仕事をされているプロフェッショナルならではの姿だと思います。かつて、デザインは映像とは別領域であり、時間軸のないものでしたが、本日拝見した作品から、現代のデザインは映像が主流となり、その表現は大きく広がっていることを実感しました。根底にあるのは常に“何のために、何をどうするのか”。その問いこそがデザインの本質であると改めて感じています。世代の異なる私でさえ、心が大きく揺さぶられる素晴らしい1日となりました。登壇者の皆様、そしてご来場くださった皆様に心より感謝申し上げます」とコメント。会場に訪れた観客は、クリエイティブの最前線に触れ、デザインへの関心をより一層深める機会となり、大盛況のうちに幕を閉じました。フォーラム終了後に行われた交流会では、基調講演を行った3名のゲストをはじめ、学生や教員陣が対話する姿が見られました。
昔から歴史的建造物が好きで、その魅力を深く理解したいという思いと、イベント運営への関心からオオサカデザインフォーラムに参加しました。2年生ではパーティー会場を担当、3年生では学生代表として参加し、今年は運営により深く携わりました。著名なゲストを迎え、多くの役割が関わるイベントを支える責任の重さを実感しながら、無事終えられた時には大きな達成感があり、非常に貴重な経験になりました。毎年メンバーが変わる中で、どのように伝えると理解しやすいかを常に考えました。昨年通りに進めるだけでなく、内容によってはメンバーに考えてもらうことで主体性を育てることを意識しました。特に中央公会堂という建物ならではの注意点は初参加のメンバーには分かりづらいため、過去の経験を生かして丁寧に共有し、迷いや不安が生まれないようサポートしました。伝えるべき点は明確に、考える部分は任せることで、チーム全体の理解と成長につなげることができたと思います。今年のゲストは映像分野で活躍する方々で、方向性や表現方法もそれぞれ異なり、大きな刺激を受けました。講演内容もライブドローイングから生い立ちの紹介まで幅広く、映像表現の多様さを実感しました。また、運営を通して、コミュニケーション力とチーム連携の重要性を強く学びました。イベントの成功には担当を越えて協力し合う姿勢が不可欠で、全員が同じ情報を共有し、自発的に動くことの大切さを実感しました。足りない点に気づいたらすぐ改善し、次に生かす姿勢も身につきました。この経験で得た「主体的に動き、周りと協力して成果をつくる力」を今後のキャリアにも活かし、チームに貢献できる人材をめざしたいです。
昨年はハイパープロジェクトでデザイン学科のオープンキャンパス運営に参加しましたが、常に新しいことへ挑戦したい気持ちがあり、今年は大学外で動く企画に関わりたいと考えました。そして候補の中で最も規模が大きいと感じたオオサカデザインフォーラムを選びました。実際に参加して、普段当たり前に享受していたイベントや講演の裏に、多くの人の努力と大変な作業があることを知り、常識が覆されました。経験に勝る学びはないと強く実感しました。舞台グループ配属前は、経験者に頼りながら進めるつもりでしたが、メンバーは全員2年生で初参加だったため、私がチーフとして引っ張る立場になりました。OP映像制作も全員ほぼ未経験からのスタートでしたが、毎週の試作や過去映像の研究、技術共有を積み重ね、おしゃれな映像を完成させました。当日は舞台セット転換も担当し、大きなミスなく終えられました。学生だからという甘えに頼らず、クオリティには強いこだわりを持って臨みました。舞台グループはイベントの完成度に直結する重要な役割で、責任感を持って全員で取り組みました。メンバーには自由に動いてほしいと思い細かい指示は控えましたが、それぞれが主体的に行動し、多くを助けてもらえたことに感謝しています。ゲストの方々は異なるスタイルを持ちながらも、自分の方法に責任を持ち、結果に裏打ちされた自信を感じました。「この人なら任せられる」と思われる存在であることの大切さを学びました。グループ全員初参加の中、先の見えない状況で走り切った経験は大きな成功体験となり、最後に仲間と喜びを分かち合えた瞬間は忘れられません。今回の学びを力に、これからも挑戦を重ね、自信を積み上げていきたいです。
私がオオサカデザインフォーラムへの参加を決めた理由は、第一線で活躍される方々をゲストに迎え、中央公会堂という歴史ある場所で学外に向けてイベントを行う経験は極めて貴重だと感じたからです。本番に向けてチケットサービスの検証を進める中で、次々と新たな問題が生まれました。未知の領域に対処していく過程は、自分の力を試し鍛える機会になりました。一人では解決できない課題も多く、誠意を持って運営チームに協力をお願いし、助けてもらった分は行動で返すことを心がけました。誠実に向き合う姿勢の大切さを学んだ時間でもありました。ゲストの方々は三者三様で、仕事の姿勢や技術、考え方はそれぞれ異なっていましたが、共通して感じたのは、第一線で活躍する自負と、それを支える高い能力でした。私自身、将来は自分の技量で生計を立てたいと考えており、その強い姿勢に大きく刺激を受けました。イベント運営は、これまでの学生生活では経験のない領域でした。企画から本番までを間近で見て携われたことは、非常に大きな学びでした。未知の状況に対して、自分がこれまで培ってきた能力を応用して乗り越える経験は、自信と成長につながりました。多くの人と関わり、協力して価値を外へ発信した今回の経験は、変動が大きい社会の中で自分がどのようにその一員として進んでいくのかを考える重要な機会になりました。将来の進路や働き方を考える上で、確かな糧となる経験だったと感じています。