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OSAKA DESIGN FORUM 2022 デザイン時代 OSAKA DESIGN FORUM 2022 デザイン時代

デザイン学科
2022/12/22

「OSAKA DESIGN FORUM」は国内外で注目されるデザイナーや知識人を招いてこれまでに16回に渡り開催されてきた歴史あるイベントで、国の重要文化財であり文化の発信地でもある大阪市中央公会堂で開催されました。このフォーラムは大阪芸術大学デザイン学科の授業の一つであるハイパープロジェクトの一環として取り組んでいるもので、招聘するゲストスピーカーの人選や企画、そして運営に至るまで学生自ら手掛け、当日を迎えました。今年のテーマは「デザイン時代」。デザイナーの原研哉氏、プロダクトデザイナーの中坊壮介氏、大阪芸術大学藝術研究所所長の喜多俊之先生らが登壇して、講演とトークセッションが行われました。

エントランスには学生たちが制作したポスターを掲示
来場者をスムーズに会場内へと誘導するのも学生たちの役割のひとつ
MCを務めるのは放送学科アナウンスコース4年生の船引とわさん

伝統的な素材から発想するとSDGsへの手がかりが見つかる

50年以上ものプロダクトデザイナーとしてのキャリアを持つ喜多先生の講演から華々しく幕があがりました。「デザインは機能性や安全性、経済性やエコロジーといった多様なファクターを結びつける」としたうえで、「自然と人類の共生や暮らしのために、デザインが果たす役割は大変重要なものとして捉えられている」と喜多先生は今回の「デザイン時代」というテーマを位置づけていきました。さらに1970年代には早くも手漉き和紙を使った照明をデザインした喜多先生らしい提言が続きます。例に引いたのは芽を出してから数年で素材へと成長する竹でした。プラスチックに取って代わられ、加工技術が衰退してしまった竹材の新たな活用法を開発すれば、波及効果は大きなものになります。竹林の管理不足で悪者扱いになっている竹の価値は、善玉へと逆転するはず。デザインには、このような価値の転換を引き起こす力があると喜多先生は締めくくりました。

昔の器のカタチから発想された有田焼のHANAシリーズについて解説する喜多先生

簡素簡潔が素晴らしいと感じる日本文化を世界に

次に登壇したのは原研哉さん。20年ぶりに復活したミラノ・トリエンナーレ美術館のエキシビション「新・先史時代 100の動詞」展の話題から始まり、海洋プラスチックが海に与える深刻なダメージ、長年アートディレクションを手掛けている無印良品まで。実体験に基づいた多岐に渡るトピックが展開されていきました。さらに、コロナ渦後の日本社会にデザインでアプローチする可能性として、例示されたのは堀部安嗣氏により設計された瀬戸内海の客船旅館ガンツウ。「日本の豪華さというのは、キラキラ光るシャンデリアのようなものではない」と簡素で美しいデザインを追求してきた原さんならではの言葉が印象的でした。

原さんは「ルールを作るのは大変だけど、一度作ってしまうと合理的」と無印良品のタグラベルのシステム化を説明した

日常的なアイテムのなかに潜むデザインが発想の源

京都を拠点とするプロダクトデザイナーである中坊壮介さんは、今までに自らがデザインをしてきた製品を紹介。そのうえで、自身の発想の源となる日常のなかにある意識されないデザインへと話題を展開していきました。キーワードは「Design For The Mundane World」。どこにでもあるアイテムのなかにもデザインが潜んでいるという考え方です。例えば、紙ナプキンは1枚取ると次のナプキンが取りやすいように折り方が工夫されています。これもひとつの重要なデザイン。漫画も雑誌で読むことが支配的だった頃から、スマホで読む時代になってコマ割りが変わりつつあるということも指摘。無印良品のデザイン室長としてシンプルかつ本質を捉えたアプローチを心がけてきた中坊さんらしい日常に立脚した視点です。

2013年にグッドデザイン賞を受賞したサーキュレーターを例に自身のデザインスタンスを披露する中坊さん

デザイナーとはどんな仕事をする存在なのか

講演が終わると少しの休憩を挟んで、パネルディスカッションに移行。喜多先生のモデレーションで、原さんと中坊さんから様々な意見を引き出していきます。そのなかで、喜多先生の「デザインとはハッピーを作る仕事なのでは」という問いかけに対して、「未来を今日よりよくするのがデザイン」だから、海洋プラスチックなど環境問題にもデザインは何か答えを出していかなければならないと原さんは語っていました。中坊さんは「デザインが価値を転換させる力になると信じている」と発言。例えば、椅子は世の中に十分すぎるほどあるから、もう新しいものは不要かと言えばそうではない。「座り方そのものも100年前と今では違う」から、そこに「デザインの意味はある」と言葉を繋いでいきました。闊達な議論が終わると、司会を務める放送学科の船引とわさんのコーディネートで質疑応答に移り、パネルディスカッションは幕を閉じました。

喜多先生がデザインした椅子「ウィンク」でくつろぎながら、自由な議論が交わされました
学生企画実行委員会の代表、藤井琉斗さんのあいさつで「OSAKA DESIGN FORUM」は幕を閉じました
デザイン学科 プロダクトデザインコース 准教授
道田 健 先生

「OSAKA DESIGN FORUM」はデザイン学科の7つの専門コースを横断して行われるハイパープロジェクトのひとつです。コロナ渦により2年間オンラインでの実施を余儀なくされていて、今回は久しぶりのリアル開催。リモートではなかなか学生全員に活躍する場を与えられないため、リアル開催は待ち望んだことでした。学生たちが、「デザインとは何か」という課題により主体的に取り組むことを目的に実施されているのがハイパープロジェクト。なので、全員が積極的に関わることが理想なんです。さらに、指揮系統と役割分担を明確にして一つのゴールをめざすことも重要。共同作業をスムーズにこなすことはデザインを仕事にしていくうえで大切なことですから。プロジェクトがキックオフした当初は及び腰だった学生たちも開催日が近づくにつれ、顔つきが頼もしくなっていったのがうれしいですね。取り組む姿勢に成長が表れていました。

デザイン学科 デザインプロデュースコース 3年生
藤井 琉斗 さん(代表)

2021年のオンライン開催でも「OSAKA DESIGN FORUM」に参画しました。同じプロジェクトに「オンラインとリアル両方で参加するのも面白い」のではと、昨年度の代表を勤めた先輩からアドバイスを頂いたことが参画の決め手です。大阪市中央公会堂でのフォーラムは3年ぶりの開催。トップクリエイターが登壇し、大学の先生方も大勢来場される大きなイベントを成し遂げた達成感は他に代えがたいものがあります。代表として最後のスピーチをしたときには、ちょっと緊張して言葉に詰まってしまいましたけれど、非常に満足しています。将来はイベント企画や地域プロデュースの仕事をしたいと考えているので、イベントを最初から立ち上げていく面白さを実感できたのは、私にとっても大きなプラスです。

デザイン学科 グラフィックデザインコース 2年生
亀田 夏輝 さん(舞台班)

3年ぶりのリアル開催と知って、ぜひこのフォーラムに関わりたいと思っていました。舞台班を選んだのは、イベントスタッフがテキパキと仕事をこなしている姿に憧れたから。でも、今回の舞台班の仕事は舞台上で流される動画作成がほとんどでした。動画作成の経験がないスタッフが多く、ソフトの使い方から覚えなければならなかったのが大変でしたね。そんな苦労を経て自分たちで作った動画やスライドが大きなスクリーンに映し出されたときは感動しました。反省点はゲストの方からカンペが見にくいと指摘を頂いたこと。来年の舞台班スタッフはゲストの方とのカンペの位置確認を忘れないように。それが私たちからのアドバイスです。今回、舞台班に関わって舞台美術や企画運営に興味がわきました。将来は美術教師になるか、舞台美術や企画運営の仕事に就こうかと悩んでいるところです。

デザイン学科 グラフィックデザインコース 2年生
佐古 博紀 さん(広報班)

「OSAKA DESIGN FORUM」はゲストの選定から学生が中心になって考えるイベント。自分の提案が大きなイベントの企画に繋がっていくのは魅力です。広報班を選んだのは、学外のアートイベントで広報を担当したことがあるので、その経験を活かせるだろうと考えたからです。今回、私はメインビジュアルの制作を担当。自分が作ったビジュアルが採用されたポスターが大きく印刷されて、あちこちに貼られているのを目にするのはうれしいものですね。大規模イベントの企画に関わるというのは、とても価値のある体験だと思います。自分が今できることは何かと常に考え、自主的に動くことが大切。最後には大きな達成感が得られるので、このプロジェクトはすごくおすすめです。

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