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悩み多き舞台芸術学科の学生たちが勇気をもらったスペシャル3講義 悩み多き舞台芸術学科の学生たちが勇気をもらったスペシャル3講義

舞台芸術学科
2024/05/07

お芝居や歌、ダンスにダメ出しされたり、希望の役に選ばれなかったり…。「自分には才能がないのかな?」と、ときに悩みがちな舞台芸術学科の学生。そんな彼ら彼女らに希望を与える特別講義が俳優・声優・演出家として活躍する同学科教授の山本健翔先生企画のもと、12月13日に開催されました。人気俳優であり、演出家としても活躍する城田優氏をゲストにお招きした特別講義(2限)とワークショップ(3限)。さらには大阪芸術大学舞台芸術学科の いのうえひでのり教授×内藤裕敬教授×金谷かほり教授×山本健翔教授という豪華教授陣が一堂に会する座談会(4限)も実現。第一線で活躍する成功者たちのトークに大勢の学生が勇気づけられました。

【2限】城田優氏の特別講義には学生ら約300人が出席
【3限】俳優であり演出家でもある城田優氏による公開稽古
【4限】豪華教授陣が勢ぞろいし、トークセッションを展開

【2限】「選択肢を増やしてほしい」
城田優氏、特別講義で自身の経験を語る。 

最初の授業は、城田優氏が特別講師。俳優としてデビュー以降、テレビ、映画、舞台、音楽と幅広いジャンルで活躍し続ける城田氏の登場に学生は大興奮。立ち見が出るほど満員の教室に拍手と歓声が沸き起こりました。今回の3講義を企画した舞台芸術学科教授の山本健翔先生の司会進行のもと、城田氏が考えを語る形で授業が進行します。山本先生が「今回の登壇に至るきっかけは?」と問いかけると、日本人の父とスペイン人の母を持つ城田氏は、幼少期を過ごしたスペインでアジア人、戻った日本ではガイジンと線引きされた経験を明かし、「特殊なルーツや状況のなかでエンターテインメント業界をめざしてきた僕が大切にしてきたこと、苦しかったことをお話し、皆さんの未来に役立つことを共有できれば」と返答。「僕が話すことが唯一の正解ではない。皆さんの選択肢が増えるきっかけにしてほしい」と前置きしたうえで、エネルギッシュなトークを展開していきました。

恰好良すぎることが問題

彫りの深い表情、スラリと伸びた手足、誰もが羨むグッドルッキング。しかしながらオーディションを100回以上落ちまくり、自分の容姿が嫌で仕方がなかったという城田氏。意外な答えに学生から「えぇ~⁉」と驚きの声が上がります。学園ドラマのオーディションではプロデューサーから「恰好よすぎる。君みたいな子は実際にはいない」と全否定。芝居ではなく、自分の存在にダメ出しをされ、悔し涙を流したそう。だからこそ「コンプレックスと思うようなことも、大切な自分の個性と考える方が有意義という話をしたい」と続けます。自分は自分であって、自分を愛せないことには大事な人たちも大切にできない。表舞台に出て自分を応援してもらいたいならば、その人たちにとって素敵な存在になる。そのために「自分を認めてあげることが第一歩」と力を込めます。

演技演出コースとミュージカルコースの学生が出席。ゲストが誰か知らされていなかった1・2年生は感動もひとしお

悩む暇があれば、練習!

例えば、オーディションに落ちたとき、受かった人と比べて自分を卑下してしまう。しかし、城田氏は自分を否定し、悩んでいては何も解決しないと諭します。得意なこと、不得意なこと、全てが自分の色であり、個性。色がマッチしなかったから不合格だった。ならば次は自分の色をもっと輝かせる方法を考える。「私なんて僕なんて。劣等感を感じている暇があるのならば、努力しろ!」と激を飛ばす城田氏。エンターテインメントの世界では自分が商品となる。応援してくれる人たちに、歌や芝居やダンス、何かしらの芸術を通して生きる希望や心のエネルギーを届けたい。その感情を常に持ち、全力で努力し続けることが大事。頑張ってもダメならば、その原因や解決策を考えて動く。「皆に平等に与えられた時間を悩むことに使うよりも、手足を動かす方が成長できると思いませんか?」と熱弁をふるう城田氏に、学生たちのテンションもヒートアップしていきました。

「自分の色を認めてからポジティブな話ができるようになった」と種明かしする城田氏

人生全てがボーナスステージ

自分を取り巻くあらゆる経験が芝居の材料になる「僕たちはラッキーな職業なんです!」と笑う城田氏。「エンターテインメントのヒントとチャンスが隠れている人生全てがボーナスステージ。色々なことを吸収しながら、今に満足せず、ガソリンを燃やし続けてほしい」と学生の未来にエールを送ります。

最後の質疑応答の時間では、城田氏の「やらない後悔よりもやる後悔」という言葉に刺激を受けた学生が芝居と歌を披露。ほかにも「止まっている自分に焦る心持ちを切り替えるには?」「素の自分とよく似た役なので演じにくい」と相談する学生に丁寧にアドバイス。「人生一度切りです。やりたいことを全うできるように、やりたくないことも一生懸命に頑張って、自分にしかないものを育ててください」とメッセージを送り、講義を締めくくりました。

様々に演技をしながら、どう行動することで、どう見えるかを示す城田氏に、皆、強く心を揺さぶられたようでした

【3限】城田優氏を目前にミュージカル演習。
「0.1をキャッチする」 

3限はミュージカルコースの3・4年生を対象に、城田氏と国際的なショークリエイターで舞台芸術学科教授の金谷かほり先生によるワークショップが行われました。金谷先生は、城田氏がプロデュースするオリジナルエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」の演出でもタッグを組んでいらっしゃる間柄。今回の授業では、金谷先生の指導のもと、11月に学内公演されたミュージカル『FAME』の上演後稽古をする中、「ファントム」や「ロミオ&ジュリエット」など20年以上、舞台に立ち、近年は演出家としても活躍する城田氏に、演じる側&演出する側、両方をこなしてこられたからこそ、わかるご意見を伺いました。

新しい気づきを探そう

『FAME』は、舞台芸術を学ぶ芸術高校の生徒たちの物語。前半は演劇専攻のニックとセリナ、後半は音楽専攻のシュロモやダンス専攻のカルメンたちが登場。夢と期待と不安を胸にショービジネスの世界へと歩み始める様を台詞と歌で表現します。最初に城田氏は「僕が演じ方の良し悪しをジャッジするのではなく、僕や皆にはこう見えていたという事実を通して、新しい気づきや新たな選択肢をシェアしたいと思います」と説明。「エンターテインメントには正解も不正解もありません。恥をかいても、そこから生まれる経験値があります。楽しんでやりましょう!」と学生の緊張をほぐします。さらに観客席にいる学生たちには「芝居をしている本人は自分がどう見えているかはわからないけれど、君達は演者も演出家も両方が見えている。人の芝居を見ることは何よりのヒント」と観る人もしっかり学びとってほしいと伝えました。

「人が演出されているところは宝の宝庫」と聞き、観客席の学生も真剣

感情をビルドアップしていく

前半チームは、役柄と演じる感情を発表、台本の読み合わせをしてから、動きを入れた演技を披露。その後、城田氏自らが各役柄を様々なパターンで演じながらどう見えていたかを説明します。とくに学生が興味を示していたのは2限の講義でも出てきた「台詞1と台詞2の間にある1.1、1.2、1.3…という感情の移り変わり」の検証です。例えば、セレナが人気子役のニックに出会う場面。憧れのニックと出会った衝撃、興奮、緊張、話しかける勇気、台詞と台詞の間に起きていることを背景に発する城田氏の台詞や身体の動きはとてもリアルです。「なぜ、このシーンでこの台詞を言っているのか。なぜ、このタイミングでしゃべり始めるのか。解釈は人それぞれ。自分で考えて、1から2へ、次の台詞、次のシーンへビルドアップしていきましょう」。城田氏の実演で理解を深めた学生の演技は、どんどん変化。観ていた学生たちも違いをしっかりと感じ取っていました。

ニック役とセレナ役の学生

同じエネルギーで台詞から歌へ

後半チームは前半で得た気づきを踏まえて別のシーンスタディを。皆の憧れのカルメンが夢を追いかけ旅立ったはずのLAから戻ってくる。挫折したカルメンの強がり、気まずい仲間や何とかしてあげたいシュロモの愛。各々の感情が絡みあって話が進みます。城田氏は役柄の性格や関係性と台詞を照らし合わせながら、よりリアルに観客が感情移入できる演技を検証。カルメンが唯一心を許していたシュロモと出会うシーンは「終始、負のオーラに包まれているように見えましたが(自ら情けないカルメンを演じながら)、皆さんはどうでしたか」と学生に問いかけます。ポジティブやネガティブ、感情の変化があるからこそ観客は面白いのであって、「にじみ出てくる感情に人は共感するし、その子の内情をもっと知りたいと思う。最初から全部出してしまうのはもったいない」と説明します。ラストのカルメンの歌には、歌う直前の台詞のエネルギーを歌へのせること、特にLAと繰り返す場面は、例えば夢だったLA、幻となったLAなど、カルメンならではのLAへの感情の変化を出すと言葉以上の表現になるとアドバイス。城田氏の指摘を意識した最後の通し演技には、教室から割れんばかりの拍手が送られました。

カルメン役の西森梅香さんほか、個性的な役が揃う後半チーム
「動作表現は最小限に。動きすぎると感情や状況を壊してしまう」と城田氏

好きという気持ちの数だけ努力する

全ての演技を見終えた城田氏は、演じ方や解釈は皆、違っていていい、人との違いに取り組んでいくことがエンターテインメントの世界を目指すあなたたちに求められていると話しながら、「違うからこそ悩んだり、苦しんだりするかもしれませんが、演劇が好きという気持ちの数だけ努力をすることをやってみましょう」と提案します。自分で考え、努力する。わからなければ、友達に聞き、先生に相談する。「こんな恵まれた環境はない」と舞台芸術学科での学びを称賛。「今日の出来事が皆さんの人生のプラスになれば嬉しいし、成長した皆さんのお芝居や歌、ダンス、作品を見ることを楽しみにしています」と学生たちにエールを送りました。

1時間半の授業はあっという間。「時間がなくてもやろう。僕は新幹線の時間をずらします」という城田氏の心意気に学生たちは大感動!

【4限】いのうえひでのり教授×内藤裕敬教授×金谷かほり教授×山本健翔教授 特別座談会

左から山本健翔教授、金谷かほり教授、いのうえひでのり教授、内藤裕敬教授

4限は、舞台芸術学科の名物教授4人による特別座談会が行われました。「劇団☆新感線」主宰 いのうえひでのり教授と、劇団「南河内万歳一座」座長 内藤裕敬教授、国内外のテーマパークのショー演出などを手掛ける金谷かほり教授、演出家としてはもちろん俳優や声優としても活躍する山本健翔教授という豪華メンバーが集結。この特別対談を企画した山本先生をファシリテーターに、個性炸裂のトークが展開されました。

今や第一線でバリバリ活躍しているが若い頃は…

まずは若かりし頃の思い出話から。「いのうえ先生と内藤先生は舞台芸術学科の同期生なんです」という山本先生の紹介を受け、いのうえ先生が二人の師事した秋浜悟史教授の授業で取り組んだエチュードの話を始めます。ゴキブリになってグルグルと教室をまわる内藤先生の横で、いのうえ先生はアイスクリームとなってドロドロと溶けていたと語り、その姿を想像した学生は大笑い。在学中すでに、いのうえ先生は「劇団☆新感線」を、内藤先生は南河内万歳一座」を旗揚げし、学生演劇ブームを巻き起こしていた二人。「その頃からお金を稼いでいましたか」と山本先生が問うと、「芝居ではお金にならなかった」と各自のアルバイト話に移行。「にいちゃん、水くれ」との関西弁にカチンときて接客業を諦め、肉体労働に勤しんだ内藤先生、劇場のチラシづくりで稼いでいた いのうえ先生、山本先生はテレビショッピングのMCほかバーでも働いていたと告白。さらにはダンサーとして所属していた東京ディズニーランドで渋谷森久さん(元劇団四季の音楽監督)と出会い、24歳からショーの演出を担当していた金谷先生も同施設に入るまでの貧乏話を披露。成功を極めた先生たちにも苦労した時代があった!と学生たちも驚いた様子でした。

舞台は“生”。表現する身体性が求められる

高校演劇をしていた時からドタバタとヘビメタが好きだった いのうえ先生、大学時代は暴れたい一心で世界観を創りだしていたという内藤先生。「二人とも暴れるのが共通項」と山本先生が指摘すると、「舞台は“生”。生きている人間が観客の目の前で、生身の身体で表現することが面白い」と内藤先生は舞台の魅力を語ります。「人は驚異的!と思える人間を見るのが大好き。だから人間がその場でやってみせる舞台はなくならないと思う」と語る金谷先生は、いのうえ先生の作品や歌舞伎にも出掛け、舞台から様々な学びを得てきたそう。いのうえ先生は早乙女太一氏の美しく迫力ある立ち回りや、「IHIステージアラウンド東京」で演者も自分も走り回ったことを例にあげ、「その息遣いを目のあたりにしてお客さんは感動する」と断言。山本先生はAIの活用に期待が高まる時代だからこそ、「人間がいて初めて成立する舞台ではますます身体性が大事になる」と学生に語り掛けました。

同期の2人が当時のお互いの印象を語る。「内藤君は学年のリーダー」といのうえ先生
「劇団☆新感線」で つかこうへい作品を演じ、在学中から2000人の観客を集めていた
大学2年生で「南河内万歳一座」を結成。他の学生劇団と共に小劇場演劇ブームを巻き起こす

“好き”のエネルギーの使い方

身体の次はメンタルの話へ。「若者に強化してもらいたいことは?」との問いかけに、「好奇心」をあげた金谷先生は最近、自身が好奇心をもったラスベガスのショーについて語ります。センシュアルな演出の説明に、内藤先生が前のめりで合いの手を入れ、教室中が大爆笑に。山本先生は「話題にしづらいパーツに演劇的な要素を見出し、真剣に語りあっています」と笑いながら、それがエンターテインメントの世界であり、好きという感覚や好奇心を持ち続けることが大事なのだと言います。内藤先生は夢を持って入学した学生のなかには演劇の厳しさに失望する人が少なくないけれども、基礎の学びを面白がり、その先にあるワクワクを想像できるかどうかで、未来がふるいにかけられると言い、「とにかく好きなことをやるべき。失敗を積み重ねることで見えてくるものがある」と学生を励まします。金谷先生は「夢を大切に。自分を貴重な存在だと思ってやっていくことが重要」、いのうえ先生は「色々な経験則を持つことができるのが若い皆さんの特権。自分が好きなことを信じてチャンスを逃さないようにしてほしい」とエンターテインメント界の先輩としてメッセージ。第一線を走る4人の教授の“舞台が好き”という情熱が、学生たちにもしっかり燃え移った特別対談となりました。

金谷先生が観たラスベガスのショーの話に皆、大盛り上がり
先生たちの今につながるエピソードに真剣に聞き入る学生たち
舞台芸術学科 教授
山本 健翔 先生

今回の特別講義は私の著書『俳優になるには(第二弾)』のコンテンツ案として企画したもので、本の記事としても紹介する予定です。本学出身のいのうえ先生と内藤先生は、大学での学びを発展させて独自の世界観をつくりあげ、成功された演劇界の第一人者。金谷先生はダンスの世界から演出の仕事をはじめ、国内外のエンターテイメント作品を数多く手掛けておられます。ワクワクするメンバーが揃い、思わぬ話題が学問的に昇華する楽しい対談となりました。各教授の授業を履修している学生も4人揃う授業は初めて。プロの言葉の掛け合いに多くの発見があったことでしょう。また金谷先生から推薦いただいた城田優氏は当初、インタビューを予定していましたが、学生たちに直に話しかけたいということからご本人による特別講義とワークショップが実現。インターナショナルなルーツでご苦労をされている城田氏の経験談は、学生たちに説得力をもって伝わったと思います。公開稽古では演じた学生はもちろん、観ていた学生もそれぞれの学びやヒントを得て、今後の稽古の姿勢がさらに前向きになると期待しています。憧れの成功者が自分たちのために語ってくれた体験が、将来を悩む学生たちの背中を押してくれる機会となったと思います。

舞台芸術学科 ポピュラーダンスコース 教授
金谷 かほり 先生

城田優さんとは、彼がプロデュースする「TOKYO〜the city of music and love〜」を共同演出していることもあり、めざすエンターテインメントについて話し合う間柄。彼の舞台への情熱と妥協のない姿勢にあふれた講義は、学生たちに大きな刺激となったと思います。特に3限のワークショップでは本の読み方や歌、表現方法など、様々な気づきを得て、学生たちの演技も2回目、3回目と回を重ねるごとに変化。城田さんが伝えたいことをきちんと理解して自分のものにしていると感じました。また4限の座談会では、ファンである いのうえ先生をはじめ、先生たちのレアなお話を聞けて私自身がとても楽しかったです。学生も第一線で活躍する先生方のお話を聞き、授業を履修できていることに改めて誇りを持てたのではないでしょうか。本日の貴重な体験を活かして成長できるかどうかは自分次第です。好きなことを止まらないでやり続け、ぜひ夢を叶えてほしいと思います。

舞台芸術学科 ミュージカルコース
西森 梅香 さん

3限のワークショップでは、城田さんに直接、アドバイスをいただくという人生最高の機会をいただきました。学内公演で完成させた自分のなかのカルメンをいったん壊して課題を抽出、新しいカルメンが発見できたと思います。最後のLAへの想いを表現する歌では、城田さんの指摘を受け、音程や発声よりもカルメンの想いの変化を意識しました。一生懸命すぎて歌っていたときの記憶が全くないものの(笑)、やりきった達成感は大きいです。城田さんの「自分自身が商品になる世界で、皆から応援したいと思ってもらえる人になってください」という言葉を胸に刻んで、自分磨きに精を出し、いつかは城田さんと同じ舞台に立つことを目標に頑張りたいと思います。