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大阪芸術大学×URアートプロジェクト「うみかぜ団地」 大阪芸術大学×URアートプロジェクト「うみかぜ団地」

芸術計画学科
2022/05/24

芸術計画学科では2014年度より、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)と協働したアートプロジェクトに取り組んでいます。国連が推進するSDGs(持続可能な開発目標)達成に向け、17ゴールのうち11番目の「住み続けられるまちづくりを」の実現をめざす活動としても力を注いできました。

2021年度は大阪府阪南市のUR泉南尾崎団地をフィールドに、「うみかぜ団地」と題したプロジェクトを展開。学生たちは、アートをいかして地域の魅力の発信や町との交流に取り組みました。

海辺の団地を舞台に、アートで人と地域をむすぶ

芸術計画学科の基幹授業「プロジェクト演習」の一つとして、UR都市機構と連携し、団地や周辺地域の活性化に取り組む本プロジェクト。これまで大阪府内の団地を巡りながら、パブリックアートの調査、インスタレーション、イマーシブシアター(体験型演劇作品)など、多彩な企画を実施してきました。

UR泉南尾崎団地での今回のプロジェクトは、現地のフィールドワークからスタート。構想を練り、大阪湾を臨むロケーションを生かした映像作品や写真作品の制作と展示、ワークショップやコンサートなどのイベントを企画しました。


学生たちはイベントに向けて、海辺の風景や町の様子などを撮影し、Vlog(動画ブログ)や写真パネル、会場に設置する屋台などを制作。一方で、プロジェクトの内容や進捗を伝える定期広報媒体「うみかぜ通信」を作成して団地各戸のポストに投函し、団地の人々の考えやニーズを知るためのアンケートも行います。

こうした時間をかけた地道な活動を通して、地域の人々と交流。関係性を築きながら、コミュニティデザインや地域プロデュースへの理解を深めていきました。

月に一度の「うみかぜ通信」で、地域との関係性を構築

2022年1月30日のイベントでは、団地自治会など関係者のみ招待という形で、写真パネルの展示やVlog作品の上映、プロアーティストによるミニコンサートなどを実施しました。当日のワークショップは中止になったものの、事前準備中に学生たちが地域の子どもたちとふれあって作ってもらった紙粘土アートも会場に展示。地元のおすすめスポットにシールを貼ってもらう手描きマップのアンケートなども行い、小規模ながらも人と地域の関わりが深まる催しとなりました。

会場内でVlog作品を上映し、写真パネルや手描きマップなどを展示
会場内外の展示や装飾にもこだわり、アイデアを凝らした
「461モンブラン」による蛇腹楽器のコンサートも好評

当日は泉南尾崎団地自治会役員の方々が来場。自治会長の前岩隆さんは、「この団地は老後をのんびり暮らすために移住してきた人も多く、ふだんあまり交流がないのですが、若い学生さんたちが来てくれたおかげで活気が出ました。こうした催しをきっかけに、住民同士のつながりが深まるといいですね。私たちも色々な形で協力していきたいと思います」と笑顔で語ってくださいました。

メンバーそれぞれの役割を果たしながら、地域の方々と交流

UR都市機構側の担当者であるUR都市機構西日本支社技術監理部の渡邊舞子さんにもお話を伺いました。「海辺の雰囲気をいかした作品や、ちょっとした工夫で会場の雰囲気を一変させる装飾に目を見張りました。さすが芸大生ですね。団地と継続的に関わっていただいた今回の活動を“種まき”として、来年以降も同じ場所で引き続きプロジェクトを進めていけば、さらに新しい展開が広がるのでは。大阪芸大ならではの感性やアプローチに期待しています」。

担当者の渡邊さん(左)らUR都市機構側とも協力してプロジェクトを展開
イベントの感想など生の声を聞いて次回に活用
芸術計画学科 准教授
中脇 健児 先生

今回のURプロジェクトは、私の専門分野であるコミュニティデザインの考え方やノウハウを取り入れて、地域の暮らしや生活の理解、関係性づくりにアプローチしました。イベント自体ももちろんですが、それ以上に重視したのが、当日までのプロセスを「見える化」すること。月に一度の広報物を住民の皆さんに見てもらって、学生たちがどんな活動をしているか理解や関心を持っていただき、アンケートで地域に対する思いをお聞きして、関係性を育むことを大切にしました。

今回は一度限りのイベントだけではなく、来年以降も継続して同じ団地でプロジェクトを行うことを見据えて、住民の方々の反応や地域の可能性を探り、今後の方向性を考えていくためのリサーチでもあります。プロデュース力や学生たちのフレッシュなパワーという大阪芸大の強みをいかして、UR都市機構さんと住民の方々の間をつなぎ、これから多様な世代がこの団地や地域で生き生きと暮らし続けるためには何が必要かを提案していければと考えています。

芸術計画学科の「プロジェクト演習」では、さまざまな現場体験を通してプロデュースを学びますが、こうした地域密着型の小規模なプロジェクトでは、お客様一人ひとりの反応をじっくりと細かく観察できるのが醍醐味。どこが良かったのか、なぜそう感じたのかと深い部分までコミュニケーションすることで、手ごたえも感じられるし、新たな課題が見えたりアイデアが生まれたりします。社会に出ると、自分の仕事の成果を具体的に実感できる機会は少なくなるもの。この演習で色々な人と直接関わり、自分たちの活動がどう作用し、どう役立つのかをしっかりと体感して、将来につなげてほしいですね。

芸術計画学科3年生
秦 茉紗 さん

2年生の時に、中脇先生の「コミュニティデザイン論」の授業で地域の人々がつながるコミュニティづくりやイベントについて学習。現場でもっと深く体感してみたいと思ったのが、このプロジェクトに参加した理由です。現地に足を運び、実際に見た海の美しさや地域情報、現地で感じたイメージをふくらませて、「うみかぜ団地」というコンセプトを考案。映像・広報・アンケート・展示と各チームで役割を分担して準備を進めました。私はリーダーとして全体の進行を管理しながら、広報班の一員に。「うみかぜ通信」を制作して活動内容やイベント情報、自分たちが体感した泉南尾崎の魅力などを発信し、地元の皆さんとのつながりを深めました。

リーダーの立場で不安だったのは、企画それぞれがバラバラにならず、全体で一つのまとまったプロジェクトに見えるかどうか。コロナ禍で直前の仕上げ作業が思うように進まず、大変なことも多かったです。でも考えたことをしっかり形にすることができ、思った以上に統一感のあるイベントになって、頑張ったかいがありました。一般公開できなかったのは残念ですが、自治会の方々も「ふだん見慣れた景色なのに、全然違って見えた」「この写真を家に飾りたい」「コンサートが楽しかった」と喜んでくださって、うれしかったですね。

私の故郷は香川県の小さな街なのですが、いま日本では、人口減少や少子高齢化、過疎化など、どの地域でも同じような問題を抱えています。今回、地域に根差したプロジェクトを実践してみて、見えてきたことがたくさんありました。いずれ地元に帰って、ここでの学びをいかした仕事に取り組みたいと考えています。

芸術計画学科2年生
高升 梨帆 さん

広島・尾道出身の私は、地元の小さな映画館でボランティアをするなど、以前から地域活性化の活動に興味がありました。UR都市機構と連携したこのプロジェクトなら、地域の課題を解決する方法を実践的に学べるだろうと考えて挑戦。今回は、映像班としてVlog作品の制作とともに、イベント会場の機材設営も担当。さらに2年生のリーダーとして、情報の共有やメンバーのサポートも務めました。

Vlogは、アーティストの思いを汲み、見る人にそれをしっかりと伝えることを意識して制作。映像班メンバーの一人が撮影を、また元音楽学科生がBGMを担当したのですが、その制作意図を反映させつつ、地域の皆さんがどう感じるかと気持ちを考えながら仕上げました。撮影で現地を訪れた時、漁港で釣りをしていた地元の方とお話する機会があり、釣った魚をいただいた時はうれしかったですね。自分の目や耳で確かめ、人と接する中で多くの発見があり、実際にフィールドに出かけることの大切さを感じました。イベント自体が住民の方々に煙たがられるのではないかという心配もあったので、当日は皆さんに喜んでもらえてほっとしました。

「プロジェクト演習」は、ものをつくる人、それを支える人など、一つの目標に向けて各自が役割を果たしながら成長できる授業。芸術に対して自分がどう関わっていくか、自分で判断して自分の行きたい方向に進んでいけるのが芸術計画学科の魅力だと思います。在学中に色々な現場を体験して、じっくりと地道に力をつけ、これからの進路を考えていきたいです。