トランプ旋風が激しく吹きまくり、世界中が慄然とし、戸惑っていますが、じつは言及していることは至極もっともな(真っ当ではないが)ことばかり。国だって個人だって基本は己ファースト、本音を吐けば保護主義に落ち着く。それを言っちゃお終いよってなもんで、21世紀的共生とかダイバーシティとか呟きながらグローバリズムを旨としてせっかく積み上げてきた利他的な(?)物語に、トランプはリアルなビジネスセンスを強引に持ち込もうとしています。ゆえに世界は悲鳴を上げているかのようです。
僕が40年余り生業にしてきた広告クリエイティブというかコミュニケーションビジネスから見ていると、彼の手法はアメリカンなハードセル広告の典型。かつてアメリカでTVをつければどのチャンネルでもやっていた、中古車並べて仁王立ち、言いたいことをところ構わず吠えまくる、問答無用、即物即効型のアプローチです。
そもそもこの欧米型広告は多民族国家型で、言語もカルチャーも超えて、人々が理解し合うのって容易なことではない、が前提の発想です。一方、日本型広告は、この国の極端な均一社会を背景に、人は大体同じようなことを考えているはずだし、理解し合えるものである、とかなり牧歌的な考え方が基本。広告賞を競う世界の舞台では、こうした日本の考え方の甘さが原因で大賞を逃すこともしばしば見られました。
世界でこんな悔しい体験を味わったことを糧にして、僕は西洋的なアレゴリーやメタファー、アナロジーなどをちりばめて世界中どこでも通用する物語づくりを広告コミュニケーションの柱にすべく挑戦してきました。だから、今この瞬間のアンチ物語、没物語の世界的潮流は次に何を産もうとしているのか、興味津々、目が離せないのです。