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現代アートチーム・目[mé]による講評会─学生たちが作品をプレゼンテーション 現代アートチーム・目[mé]による講評会─学生たちが作品をプレゼンテーション

美術学科
2023/04/19

1月20日、美術学科(油画・日本画・版画・彫刻コース)3〜4年生の学生を対象に、美術学科 客員教授の荒神明香先生、南川憲二先生( 現代アートチーム・目[mé])による授業が行われ、学生たちがプレゼンテーションする講評会が実施されました。

さいたま国際芸術祭2023でディレクターを務める
現代アートチームが学生1人ひとりにアドバイス

目[mé]は、アーティスト・荒神明香先生、ディレクター・南川憲二先生、インストーラー・増井宏文先生を中心とする現代アートチームです。手法やジャンルにこだわらず、展示空間や観客を含めた状況、導線を重視し、メンバー個々の特徴を生かしたチーム・クリエイションに取り組み、発想、判断、実現における連携の精度や、精神的な創作意識の共有を高める関係を模索しながら活動。2023年10月から12月に開催される「さいたま国際芸術祭2023」ではディレクターを務めます。南川先生は、「時に乱立していると言われるほど、国内で増え続けた芸術祭。もしこれから芸術祭がどんどん下火になってしまうと、芸術と人が出会う機会が減ってしまうので、私たちは何とかしたいと取り組んでいます。先輩方が築いてきた芸術祭や芸術表現の場を引き継ぎ、どうやって人に届けるのかが任務で、これまでとは異なる、新しい形の芸術祭を作りたいと思っています。そこで大切なのは“作家の本当の想い”です。さいたま国際芸術祭2023では、数十万人に届けたいこだわり抜いて選んだ作家の紹介と、芸術祭のあり方を自分たちなりに見直したかたちで展開したい思っています。何らかのかたちで、大阪芸術大学の学生の方々にも関わってもらえるような提案もできるかもしれません。」と話します。

2022年5月に行われた第1回目の授業では、荒神先生の作品紹介や芸術の実践、アート制作の現場紹介を通して、芸術に関わりそれを生業にすることや、クリエイティビティの分配をテーマに講義が行われ、第2回目となる今回の授業では、対話式での講評会を実施。学科内で選抜され希望した学生13名がそれぞれの制作活動や作品のプレゼンテーションを行いました。

観点は「プレゼンテーション」と「作家が表現したいものの本質」

南川先生は冒頭で、対話型の講評は初めての試みだと話し、「人前で自身の作品をプレゼンテーションするのは、とても勇気がいることだと思います。その大事な一歩をリスペクトしつつ、プレゼンター個人のために聞いていきますが、公開型なので聴講している方々の目線も意識しながら皆さんに向けて話していきたいです」と続けました。また、荒神先生は作品を見る上で、人間の本質的な部分を追求しているかどうか、そしてさまざまな情報に惑わされず、自分のビジョンを強く打ち出し、視野を守り続けそれを突き通す力を持っているかということに重点を置いていると話しました。南川先生は、「皆さんの表現の奥にある潜在性のようなものにたどり着けたら良いなと思っています」と続け、プレゼンテーションの重要性についても説明。「プロジェクトを立ち上げる際は、プレゼンテーションが不可欠で、そのアートワークが実現するかどうかはプレゼンテーションによって決まります。プレゼンテーションは場慣れだと思うので、学生の皆さんにも1度でも経験してもらいたいという意味も込め、『プレゼンテーション』と『作家が表現したいものの本質』2つの観点から分析していきたいと思います。皆さんもそういった観点でご覧ください」と話し、講評会がスタートしました。

作品に込めるそれぞれの想いを熱く語る学生たちと 目[mé]の2人によるディスカッション

油画・日本画・版画コースの学生たちが数名ずつプレゼンテーションを行い、「死や社会問題など答えのない疑問」や「社会と自分の差」「距離と位置関係」「愛情と人間」など、さまざまなテーマで、それぞれの手法により制作した作品をスライドで3〜5点紹介。明確なコンセプトや確固たるテーマはないけれど、「見ている人の記憶に残る作品を制作したい」「自分の好きなこと・興味のあるものをモチーフに作品を制作」「かわいいものを描くのが好き」「自分の感情を言語化するのが苦手なため作品に投影」「素材の質感を表現するのが好き」など、どのような想いで作品を制作しているかを語る学生の姿も見られました。テーマは三者三様で、日々の生活の中で感じることをどのように反映させているかなど、学生たちが作品に込めたそれぞれの想いを熱く語り、南川先生は、それらを見て受けた率直な感想を述べながら、実体験などを交えながらコメント。さまざまな角度で学生たちの潜在性に訴えかけるような質問を投げかけ、活発なディスカッションが行われました。

芸術活動を続ける上で重要なポイントは、 アウトプットの方法を“疑ってみること”

南川先生は、1人ひとりのプレゼンテーションに対し、作者の深層を探るような問いや、制作期間、作品の実寸などについて質問や感想を述べ、学生から求められたアドバイスに丁寧に回答。荒神先生は、作品を通して作者が抱える想いが伝わる部分についての感想や、型にはまらず、もう少し崩してみるなど表現方法を模索しても良いかもしないなどアドバイスしました。聴講している学生たちからの質問や感想も求められ、有意義な対話型の講評会となりました。最後に南川先生は、「皆さんの作品に対する姿勢がまっすぐでオリジナリティがあり、何かに縛られていない印象で、見せたいものが本当であるかという重要なポイントが感じられました。芸術活動を続ける上で、これから皆さんの課題になるのが、芸術を人にどのように伝え、出会わせるかだと思います。そこで1つアドバイスするとしたら、アウトプットの仕方を疑うべきだということです。考えていることはおもしろいのに、世の中のシステムの影響を受けていることによって、他と似たような作品になってしまいがちになります。打ち出し方や技法など、もう一度疑ってみて、見つめ直すことで、考えていることがより伝わりやすくなるポイントになると思います」と述べました。

美術学科 客員教授
荒神 明香 先生

これまで、さまざまな場所で講評してきましたが、大阪芸術大学の学生の皆さんは独自の世界観を持っていて、その点でレベルが高いと感じました。制作活動する上では、何か結果を求めて進んでいきがちですが、そこを求めていくと自分がやりたかった本質からずれていく方向になりかねません。これまで見てきた周りのアーティストもそうですが、自分たち自身の制作活動においても、評価にとらわれてしまうと作品が作品ではなくなるというか、どんどん本質からずれていってしまうことがあり、すごく微妙で難しい点です。そういったことを心配していましたが、今回の講評会では、学生たちがピュアで強い表現を根源的に持っていることが伝わり、それはすごいことだと思いました。そういった部分を信じ続け、貫き通すことの大切さがわかっていれば、いろんな場所で作品を発表する機会につながるきっかけになっていくのではないでしょうか。学生の皆さんと有意義なコミュニケーションが取れてよかったです。

美術学科 客員教授
南川 憲二 先生

インターネットの普及などにより、あまり情報に価値が見出せなくなった昨今、芸術活動をする先輩として学生たちに伝えられることは、対話などから生まれる “情報に落とし込まれ難い想い”です。そしてそれを実感していただく場を作ることが重要だと考えています。講義では、自身の経験も踏まえ、アーティストを目指すのか、デレクションの方が向いているのかなど、自分にとってのクリエイティビティとは何かを早いうちに自覚することが大切だということも伝えたいと思っていました。今回のように、自身の作品をプレゼンテーションし、講評の場を持つことで、学生たちが制作活動に対する気付きを得られたのであればうれしいです。技法によって細分化されている芸術大学が多いですが、大阪芸術大学は、いろんな素養を持った学生がコラボレーションがしやすい環境が整っているため、改革が進んでいると感じています。今後は、学生たちが制作現場を訪れ、見て学ぶ機会を設けられたら良いなと思っています。

美術学科 日本画コース専攻 3年
小西 羽音 さん

日本画コースからは、4人の選抜メンバーがプレゼンテーションし、そこに私も参加できたことを光栄に思います。自分の作品を、SNSを通して発信することはありますが、プロのアーティストや他コースの教授、同級生たちを前に、プレゼンテーションする形で作品を発表するのが初めてのことで、すごく緊張しましたが、とても良い経験になりました。これまで、自分の作品について身近な人とディスカッションしたりアドバイスをもらう機会はありましたが、私たちの大先輩である、第一線で活躍するプロのアーティストから感想をいただけるのはとても貴重な場だと感じました。南川先生と荒神先生から、ブレないコンセプトで作家として続けていく能力を感じられるという言葉をいただき、予想外の感想を聞くことができて、すごく驚いたのと同時にうれしかったです。作品と共に自分が前に出て話すというプレゼンテーションの難しさはもちろん、他の方々のプレゼンテーションを通して、それぞれの想いの強さを感じることができました。このような機会があれば、ぜひまた参加したいです。

美術学科 油画コース専攻 2年
チカンチ アナスタシア さん

私は7年前に来日し、中学3年生の時から日本で暮らしています。もともと油画を描くのが好きで、高校生の時に先生の勧めで訪れた大阪芸術大学のオープンキャンパスで、雰囲気の良さと教授の方々の顔ぶれに惹かれ進学を決めました。自由な時間が取りやすい学生のうちに、できるだけ時間を無駄にせず、思いきり絵を描いたり勉強したりして過ごしたいと思っています。教授から参加してみないかと声をかけられて行った今回のプレゼンテーションは、とても貴重な時間でした。自分の作品を説明するにあたり、何を伝えたいかを考えて書き出すなど事前準備に取り組み、プロのアーティストの方々の意見を伺ったのは初めての経験です。私だけでなく、他の学生たちもアドバイスをもらった方が早めに成長できると思うので、このような機会がもっとたくさんあればうれしいです。他の人のプレゼンテーションでは、作品を見るだけではわからない、その人の思考を垣間見ることができて、とても刺激を受けました。これからも絵を描きながら、いろいろなことを経験し、挑戦していきたいです。

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