本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

理想のキャラをつくろう!漫画家・中武士竜先生の特別講義 理想のキャラをつくろう!漫画家・中武士竜先生の特別講義

キャラクター造形学科
2025/01/14

累計部数450万部突破の人気漫画『十字架のろくにん』の作者、中武士竜先生による特別講義が2024年11月に行われました。大阪芸術大学キャラクター造形学科漫画コースの卒業生でもある中武先生が、週刊漫画連載で多忙な合間をぬって、3時間にわたる白熱授業を実施。キャラクターづくりのレクチャーから課題制作、執筆作業公開まで、漫画への熱い思いを伝える授業となりました。

大好評連載中のヒット漫画が生まれるまで

魅力的なキャラクターづくりを軸として、1年次に漫画・アニメーション・ゲーム・フィギュアアーツの4ジャンルすべてを学修できるキャラクター造形学科。今回の中武士竜先生の特別講義は、同学科1年生が受講。全ジャンルの基盤となる「キャラクターづくり」に焦点を当てながら、第一線で活躍するプロ漫画家ならではの実践的な内容が詰まったスペシャルな授業が行われました。

まずは自身の経歴を年表で振り返った中武先生。大学1年生の時に漫画誌月例賞の奨励賞を受賞して担当編集者が付き、卒業前にデビュー。上京後の苦労話も交え、現在『マガジンポケット』で好評連載中のヒット作『十字架のろくにん』が生まれるまでの経緯を語りました。

授業開始前から学生たちの熱気にあふれ、特別な授業への期待が高まる
週刊連載で活躍する人気漫画家の経験談から、様々なことを吸収

続いてキャラクターづくりの考え方についてレクチャー。読み切り漫画は「主人公の抱える問題や悩み、弱点」、連載漫画は「自分が理想とする要素」を核としていることを、先生自身の作品に落とし込んで詳しく解説していきます。

「『十字架のろくにん』の主人公は僕の憧れ。復讐する時に躊躇しない強さを持つ一方で優しさも兼ね備えている。モテるけど女性が苦手。心に傷がある…と、僕が理想と考える要素を盛り込みました」とキャラクター設定の秘訣を明かしました。


質問タイムには多くの学生が挙手。「影響を受けた作品は?」「コマ割りが苦手。解決策はありますか」「画力を高める方法を教えてください」「描くスピードを速くするには?」など、次々に質問が上がります。中武先生の実体験をふまえた具体的な回答に、学生たちは真剣に耳を傾け、熱心にメモを取る姿も見られました。

作画技術や構成からアイデア出しの方法まで、幅広い質問が寄せられた
どの質問にも真摯に向き合って、的確な答えやアドバイスを返す中武先生

理想のキャラづくりに挑戦!驚きの作画作業も公開

授業後半では「理想とするキャラを考えよう」という課題にチャレンジ。学生たちは各自の理想を絵に込め、強みや魅力などの設定も考えました。それぞれの個性やこだわりが詰まったキャラクターを中武先生が講評。「めちゃカッコいいね」「このキャラだったらすぐストーリーができそう」「可愛い、強いとかだけでなく、なぜそうなのか具体的な理由やエピソードも考えて」など、長所を引き出しながら次につながるアドバイスを行いました。


最後に、中武先生の実際の作品制作の流れや作画シーンを大公開。ネーム前の構成を考えて小さなノートにまとめ、セリフやカメラアングルを描き込んだラフネームを作成。次に本ネームをiPad、さらに下描きを「CLIP STUDIO PAINT」でデジタル制作し、下描きを原稿用紙に取り込んでからアナログでペン入れするのが中武先生のスタイルです。
驚異的なスピードで作業を進めつつ、編集者との打合せ、愛用の画材、アシスタントとの作業区分、毎週のスケジュールなど、仕事現場の様子も説明。長期にわたって週刊連載を続ける人気漫画家の生の仕事ぶりにふれて、学生たちは大いに触発されていました。

ゲームやアニメなど漫画以外のコースを希望する学生にも役立つ課題制作
学生たちは細部までこだわった造形や設定で魅力的なキャラクターを生み出した
講評では中武先生が一つひとつの作品にリアクションしながらアドバイス
ペン入れをライブで実施。アタリを取っただけの大まかなラフに迷いなくペンを走らせるプロの筆さばきに、学生たちの熱い視線が注がれた
授業後、学生が持参した色紙にサインとともにイラストも描き、エールを贈った中武先生
漫画家
中武 士竜 先生

人前でトークをするのも授業をするのも初体験で心配でしたが、すごく楽しかったです。受講してくれた1年生の皆さんは、僕とはちょうど一回り下の世代。自分の学生時代とは違って、みんなとても真面目で反応が良く、質の高い質問がたくさん来ましたし、しかも絵も上手なのに驚きました。このペースで追って来られたら危ないぞ、自分ももっと頑張らなきゃと思いましたね(笑)。

僕自身が大阪芸大で学んで一番良かったと思うのは、先生や仲間の存在。先生方にはどこまでも親身になって熱心に教えていただきました。心からほめて応援し、卒業後も気にかけていただいたおかげで、「自分はできるんだ」という自信や自分への期待が養われ、つらい時期も乗り越える原動力になりました。友人も入学当初はなかなか作れなかったのですが、学科の自習室で先輩や同級生と親しくなってから、居場所と仲間ができたんです。作品を見せ合って励まし合い、一緒に頑張り続け、今も漫画家仲間として仲良くしている大切な存在ですね。

キャラクター造形学科は立派な校舎ができて、デジタルなどの設備も充実し、僕たちの頃より本当に恵まれた環境が整っていると思います。でも授業の課題だけやって漫然と過ごしていたら、なかなか先には進めません。投稿でも編集部への持ち込みでも、締め切りを自主的に設定して、定期的に作品を完成させること。それが上達やデビューにつながると思います。それから、大学にいる間に同じ目標を持つ友達を絶対に作ってほしい。卒業してからも何よりの財産になりますから。

キャラクター造形学科 1年生
小谷 夢香 さん

今回の特別講義で一番驚いたのが、中武先生の作画作業のスピードです。ざっくりとしたラフな下描きの上に迷いなくどんどんペンを入れていく様子に圧倒されました。1時間の砂時計を使って1ページを1時間でペン入れし、終わらなくても次のページに進む、というスピードアップの練習方法にもびっくり。私は作業が遅いのが悩みで、1ページに1日かけてしまうこともあるほどなので、絶対に試してみようと思いました。
理想のキャラクターを考える課題は思ったより難しくて悩みました。作業中、中武先生が会場を回って学生たちに気さくに話しかけてくださり、プロの先生と直接コミュニケーションできたのが嬉しかったです。自分の将来についてもあらためて考える機会にもなり、とても有意義な時間を過ごせました。サインをお願いした時には思いがけず似顔絵まで描いていただけて、感激しました。
私がこの学科を選んだのは、絵だけでなくストーリーの作り方も学べるから。漫画原作者の先生からプロット作りを学ぶ授業などもあるので、知識や技術をしっかりと修得して一歩ずつ作家に近づきたいです。同じ夢をめざす友人たちと切磋琢磨しながら、「自分の描きたい漫画を描いて、漫画雑誌に連載を持つ」という将来の夢に向かって、実力をつけていこうと思っています。

キャラクター造形学科 1年生
渡邊 侑耶 さん

漫画作品のハードなイメージとは違って、中武先生は明るく優しい雰囲気の方で、授業もすごく楽しかったです。特に印象に残ったのは、キャラクターが持つ弱点や悩みを通じて、人間味や親しみやすさ、作者のメッセージを表現でき、物語のインパクトも生み出せるというお話。また「キャラクターの顔が似てしまう」と質問した時には、「顔の輪郭や目の形を記号化し、組み合わせて差をつける」とアドバイスもいただいて、とてもためになる学びがたくさんありました。
クロッキーや時間配分のトレーニング、ペン入れの練習などのお話にも刺激を受け、様々な努力に裏打ちされて今の中武先生があると知って、自分も頑張ろうと強く思いました。サインに描いていただいたイラストの力強さにも感動!部屋の高い所に飾ってモチベーションを高めています。
キャラクター造形学科は、色々な人の考え方や作品観にふれられる刺激的な環境です。どんな作品でも誰か一人は話の合う人がいるし、世間では少数派でもここではメジャーということもよくあって、面白いですよ。目標は、自分の思いを表現し、地元の新潟県の魅力を発信できるような漫画を描くこと。漫画雑誌の現役編集者の方に作品を見てもらえる出張編集部や、今回の特別講義のように創作の現場にふれられる機会もいかして、成長したいです。