本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

大阪・関西万博の日本国際芸術祭に大阪芸大が出展 大阪・関西万博の日本国際芸術祭に大阪芸大が出展

美術学科, デザイン学科, キャラクター造形学科
2025/08/07

大阪・関西万博会場内のEXPOメッセ「WASSE」で開催された、日本の美と心が世界をつなぐ「第3回日本国際芸術祭/大阪・関西万博展」に大阪芸大が気鋭の卒業生アーティストを招いて出展。7月2日~4日の3日間はアートユニットTHRREEによるライブペイント、7月5日には卒業生で本学の客員教授の茂本ヒデキチ先生による墨絵のライブパフォーマンス。「ねずみのANDY」で様々なコラボレーション作品を生み出してきた松本セイジさんやギャグ漫画家から一躍アーティストへと転身した石塚大介さんによる新作。大阪芸大の卒業生が生み出した多彩なアートが、数多くの来場者を魅了しました。

数多くの来場者で賑わった「第3回日本国際芸術祭/大阪・関西万博展」
ミャクミャクをデザインした絵本作家でデザイナーの山下浩平さんも大阪芸大の卒業生

アートユニットTHRREEによるライブペインティング

EXPOメッセ「WASSE」で7月2日〜6日に開催された「第3回日本国際芸術祭/大阪・関西万博展」。初日から3日間にわたって、繊細かつ精緻な筆致でライブペイントをしたのはアートユニットTHRREEの和田諒也さんと中野龍治さん。メインモチーフの女性を描くのが中野さん、そして草花で画面をシンボリックに彩るのが和田さんと明確に役割分担し、画面作りをしていくのが2人のスタイル。今回の作品タイトルは大阪・関西万博のテーマに寄り添った「Future Lights」、未来への光です。

2人で大まかに想定した画面構成に沿って、中野さんは強い意志が感じられる眼差しで未来を見つめる女性を描き出します。その横で和田さんは、はかなげでありながらも生命力あふれる花々を繊細な筆致で描いていきます。2人が描いていた大阪芸大ブース中央の壁面は、最奥のステージからエントランスへと向かうメイン通路の突き当たりと、会場内でも一際目立つ場所。2人の制作する様子に数多くの人々が足を止めました。

メインモチーフとなる女性の顔に丁寧に筆を入れていく中野さん
THRREEの作品はアクリル絵の具で透明感を表現することで、独特の空気感を生み出す
3日間のライブペインティングで生み出されたTHRREEのFuture Lights

4人の多彩なアーティストが大阪芸大ブースに集結

動物をモチーフにした作品を中心に描き、国内外で活躍するアーティストの松本セイジさん。動物たちの何気ない暮らしを描き、「日常の中にある幸せ」を感じてほしいという思いをコンセプトに「ねずみのANDY」らしさあふれるシンボリックな作品が出展されました。松本さんは7月26日〜8月30日まで東京・天王洲のギャラリーYUKIKOMIZUTANIで個展が行われます。

アイコニックなANDYの前で一緒に写真を撮る人が多数
ANDYの独特な目は、作品に親しみやすさや愛嬌を与える重要な要素となっている

個展「GIANT KILLING」でギャグ漫画家からアーティストへと転身した石塚大介さんは、所属するYUMEKOUBOU GALLERYのスペースと合わせて4作品を出展。画面を幾重にも塗り重ね、火で炙り、削ることで生み出された破壊的なタッチは、石塚さんらしい力強さとエネルギーにあふれる作品です。

絵画のベースにあるのは10年間描き続けてきたギャグ漫画の主人公「田中みのるくん」
YUMEKOUBOU GALLERYに展示された大阪芸大ブース向かいの壁一面の大作

そして、大阪芸大の客員教授でもある茂本ヒデキチ先生。墨絵でアスリートやミュージシャンを描いた今までにない墨絵は国内外で高く評価されています。会期中も大阪芸大ブースの壁面をキャンバスにスピーディな筆致で仁王や武将を描き、来館者の目をひいていました。

何度も描いてきたスキルの積み重ねがあるからこそ、即興的なペインティングが生み出される
1つのテーマで描くのは100枚以上。そのなかから選りすぐりの作品を発表

茂本ヒデキチ先生による墨絵のライブパフォーマンス

7月5日には茂本ヒデキチ先生の墨絵のライブパフォーマンスが行われました。ステージの壁面に貼られたのは高さ1.8mの3枚の和紙。黒装束でステージに立った茂本先生は3つの作品に同時進行でダイナミックに筆を入れていきます。

一度に1つのモチーフを描くのは数秒ほどで、1つの作品に少し筆を入れると次へと移るというかたちでステージ上を自由に動きまわりながら、作品が少しずつ出来上がっていきます。墨の散らしや軌道線を入れ、薄墨で表情をつけると完成です。最初は何が描かれているのか分からなかった観客のみなさんも、魔法のように空手家、ピッチャー、力士が勇壮な姿を表すに連れ、感嘆の声と拍手があがりました。

墨絵パフォーマンスの後は、引き続きセミナー会場で今回出展した4組のアーティストをゲストに迎えた、大阪芸術大学副学長 塚本英邦先生、映像学科長 田中光敏先生によるラジオ大阪「大阪芸大スカイキャンパス」の公開収録が行われました。

大胆にダイナミックに、流れる音楽ともシンクロしながら、舞うように墨絵を描いていく
絵姿が徐々にあらわになるにつれ、観客の皆さんから感嘆の声が上がる
生き生きと躍動感のある3つのアスリートの姿はわずか20分足らずで描き出された
公開収録では各アーティストの学生時代や作品の制作秘話など貴重な裏話も

参加アーティスト紹介

デザイン学科 1980年卒業
茂本 ヒデキチ 客員教授

卒業後、東京でイラストレーターとして活動していたなかでいつも思っていたのは、茂本ヒデキチに描いて欲しいと言われる表現を見つけたいということ。そのなかで再発見したのが子どものころに習っていた書道で使っていた墨でした。墨絵の教本も読まずに、遊ぶように筆を使って、いつも好きで聞いているジャズミュージシャンを描いたときに、自分なりのスタイルをつかんだように思います。それから、ほどなくして音楽雑誌ミュージック・マガジンの表紙を担当したり、ミュージシャン久保田利伸氏と親交を持ちロゴやファンクラブ会報誌の表紙をクリエーションすることで、自分なりのスタイルが確立していったんです。東京2020オリンピック・パラリンピックや世界陸上を描くチャンスが巡ってきて、墨を散らしたり、さっと円弧を描くような軌道線を入れて躍動感を表現するスタイルは茂本ヒデキチならではの画法といえるようになったと思います。同じような技法を使う作家がでてきているのは自分のスタイルが認められた証だとポジティブに受け止めています。

美術学科 2008年卒業
松本 セイジ さん

7月26日〜8月30日に東京では4年ぶりの個展「LIFE」を開催します。今回の万博出展には、過去作品の中からANDYらしいアイコニックな作品を選びました。個展では今まで自分が経てきた大阪や東京、NYの都会での暮らし、そして今住んでいる長野の田舎の暮らしを対比した作品を発表していきます。都会の生活、自然のなかでの生活、どちらの「LIFE」も僕の今にとってかけがえのないもの。それが少しでも体感してもらえると嬉しいです。新たな挑戦として、鑑賞者の動きに反応して変化が生まれるインタラクティブな作品にも取り組んでいます。例えば、鏡越しに「ねずみのANDY」が自分と同じ服装に着替えて触れ合える作品などがあります。このインタラクティブな要素をサポートしてくれたのが、大阪芸術大学の同級生で、現在アートサイエンス学科で教えている仲間たちです。

キャラクター造形学科 2016年卒業
石塚 大介 さん

2022年にネットの企画で1000人のなかから選ばれて初めての海外旅行に行きました。それがなんと夏の北極圏へのクルージングツアーでした。氷点下の世界だと思いがちな北極圏ですが、意外にも夏はシャツで過ごせるときもあるほどの気候なんです。夏の北極は太陽が沈まない白夜が続きます。セイウチが数百頭も群れ集うコロニー、陸上最大の肉食獣である北極熊の美しい姿、乗っていた船と遊ぶように一緒に泳ぐ海獣たち。日本では考えらないほどに雄大な自然の姿に感動しました。この景色をもう一度見たい、ここにもう一度帰ってきたい、という思いが僕をアートの世界に足を踏み入れさせたのかもしれません。ですが、ギャグ漫画家という自分のルーツを忘れたわけではないんです。実は今回発表した作品の下地にはギャグ漫画のメインキャラクター「田中みのるくん」の姿を描いています。

デザイン学科 2020年卒業
Ryoji Nakanoさん(中野龍治・左)

ユニット名のTHRREEは、それぞれのソロでの活動と2人のアーティストユニットとして発表する作品、この3つが相互作用しながら完成度を高めていくことをイメージして名付けました。RyojiとRyoyaとどちらもRで始まる名前なので、THRREEにはRを2つ綴った言葉遊びを入れています。THRREEで描く絵では僕がメインとなる人物を描いています。でも、今回の作品では、普段は描かない静物、右目の前に掲げられたFuture Lightsを象徴する光る石を描いたのですが、すごく描きごたえがあり楽しかったです。

デザイン学科 2020年卒業
Ryoya Wadaさん(和田諒也・右)

Ryojiが描く人物像のまわりを彩る静物を担当して、THRREEの世界観を担当しているのが僕です。これは大学3年生の終わりにTHRREEを結成してから、変わらないスタイル。2019年の結成から6年が経ち、それぞれ個人での発表の場も増えてきた中でこの安定したスタイルを変え、お互いの意表を突くようなわがまま合戦をしてもいい時期に来ているのかもしれないと感じるようになってきました。いつも人物を描いているRyojiが、今回の作品Future Lightsで象徴的な光り輝く石を描いたのは、その表れかもしれません。