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<取材日:2017年3月>
Tシャツ屋じゃなくてバンドです!
通称“ヤバT”の名で親しまれているバンド・ヤバイTシャツ屋さん。メンバーはこやまたくや(ギター・ヴォーカル)、しばたありぼぼ(ベース・ヴォーカル)、もりもりもと(ドラム・コーラス)の3人。大阪芸大の軽音サークルで結成され、身内をネタに楽曲をつくってきたわけだが、あれよあれよと階段を駆け上がり、その知名度は全国レベルに。まさかの大ブレイクを果たしたヤバTの今を探る!
撮影:名越 啓介、オイケカオリ
ヤバTに聞きたいことその1
『どうぶつえんツアー』の手応えはどうですか?
メロディと歌詞で織りなすボケの美学
—2017年4月に4枚目のシングル『どうぶつえんツアー』が発売されました。1曲目の『ヤバみ』は重厚なイントロからはじまり、英詞で歌い出したので驚きました。
こやま「あれは『ヤバTがこんなかっこいいのもやんねや!』っていうボケなんですよ。お客さんに『これ、ほんまにヤバTなん?』って思わせておいて、サビで『なんやいつものヤバTやん』っていう、そのギャップを楽しんでもらえたらいいなと」
—とはいえ、〈「歌詞に意味がないと!」「説得力がない!」もうそんな時代じゃない?〉っていう歌詞もそうですけど、そういったメッセージが随所に込められていますよね。なんか日本の音楽シーンを皮肉っているような気もしました。
こやま「そうですね。僕らカウンターカルチャー側の人間なんで」
しばた「大阪芸大っていう時点でそれはね。どちらかというと、メインストリームにいる人たちとは違う形で何かしようと考えている人ばっかりやと思う」
—続く『寝んでもいける』は『ヤバみ』とは違って、落ち着くというか、いつものヤバT感が出ていますね。
こやま「『どうぶつえんツアー』はメジャーデビューしてからはじめて出すシングルだったのでプレッシャーもすごかったんですけど、一発目だからこそ、お約束とかも無視してなんでもできるなと思って『ヤバみ』でAメロを英詞にしたり、ふざけた歌詞に見せかけてメッセージを込めたりしたんですね。とはいえ、今までどおりのヤバTらしい曲も入れておきたくて」
—制作に携わる人のあるあるネタですよね。
こやま「よくあるやつ」
もりもと「だから、歌詞の最後に早く寝ろってメッセージが込められてるんですよ」
しばた「大阪芸大生は無茶する人が多くて。徹夜大好き!」
もりもと「でも、結局は寝てしまうけどな」
ヤバTに聞きたいことその2
ヤバTの歌詞に込められた理由とは?
かっこつけるだけじゃおもしろくない
—ヤバTといえば、おもしろい歌詞が特徴ですよね。実際のところ、なんでいつもふざけてしまうんですか?
こやま「ただ、かっこつけるのが恥ずかしいからどうしてもふざけちゃうんですよね。根っからの関西人なんです」
—大阪をテーマにした楽曲が多いのも、関西人だからですかね。
こやま「とくに大阪のことを絶対歌おうとは思ってなくて、身の回りのことを歌ってたら、自然と大阪のことになったというか」
—ふざけた歌詞とは裏腹に、メロディが本格的なこともヤバTの強みですよね。『どうぶつえんツアー』3曲目の『肩 have a good day』はバラード調の楽曲ですが、メロディが非常にすばらしいなと。
こやま「これ、外人が聴いたらすごく響くんじゃないですかね。歌詞わからへんから」
しばた「have a good dayのところだけわかると、すごくいい曲みたい」
こやま「そこがおもしろいんやん。これで普通の歌詞だったら全然おもしろくない」
—この歌詞はどうやってできあがったんですか?
こやま「僕、肩幅が狭いことがコンプレックスなんですよ。肩幅が広い人のほうが説得力があるじゃないですか。僕が好きなバンドの先輩たちは、みんな肩幅が広くて、ライブ中にいいことを言っているんですよ。でも、僕みたいなひょろひょろしたヤツがいいことを言ってもなんの説得力もないんやろなって」
ヤバTに聞きたいことその3
ヤバT、これから先どうするんですか?
無茶をできるうちに無茶をしていく
—こやまさんはヤバTの活動とは別に、岡崎体育さんのPVを制作したり、アイドルに楽曲提供したりと、裏方の仕事もけっこうされていますよね。
こやま「僕、本業は裏方やと思ってるんですよ。映像つくったり、編集したり。岡崎体育のPVとかも大学のスタジオ借りてやることが多かったですね。でも、今は完全にバンドに夢中」
—しばたさんともりもとさんは大学生の頃は何学科にいたんですか?
しばた「私は映像学科にいて、就職活動とかもしたんですけど、結局バンドのほうが好きで今に至ってますね」
もりもと「僕は裏方の人になりたくて芸術計画学科を選んだんですけど、気づいたらこうなったみたいなところはあります」
—今後も今のスタイルは変わらずに続けていくんですか?
こやま「もう流れに身をまかせるしかないですよね、それは。どっちもうまいことやるっていうのは若さゆえの……」
もりもと「ゆえのなに?」
こやま「若いんで頑張らんと」
しばた「無茶できるうちにな!」
こやま「正直言うと、今このバンドは過大評価されてるなって思うときがあるんですよ。だからこそ、その評価に追いつけるように頑張らなあかんなって。ちょうど昨日ライブがあって、先輩に相談したんですけど、『自分たちもなんでこんなにお客さんが来てんねやろって思いながらやってたけど、続けているうちに自分の気持ちが追いついてきたからそのまま続ければ大丈夫』って言われたんで、先輩の言うとおりに頑張ろうかなと」
しばた「先輩のありがたいお言葉をそのままお借りしてな」
もりもと「結成当時からそうですけど、今のこのローカルな感じがしっくりきてるんですよ」
こやま「そこがヤバTの売りでもあるしな。僕ら学生ノリを忘れたら終わりだし、かっこつけたいなんて今のところ思ってないので、これからもやりたいことをやっていきたいですね」