2025年7月2日~6日、大阪・関西万博で行われたお菓子のイベント「お菓子で世界にスマイルプロジェクト」に、デザイン学科の学生たちの作品が出展されました。このプロジェクトは、全国の菓子メーカーが集まり、日本のお菓子の魅力を世界へ発信することを目的に開催されたものです。その中で、産学連携プロジェクトとして学生たちがパッケージデザインを考案した「未来のお菓子」が展示され、多くの来場者の注目を集めました。
「お菓子で世界にスマイルプロジェクト」は、日本のお菓子を伝統文化の一つと捉え、お菓子の力で世界中の人々を笑顔にすることをテーマに実施されました。日本の大手菓子メーカー49社が参加し、過去・現在・未来の3つのゾーンで「お菓子を見る・触る・食べる」体験を来場者に提供。日本のお菓子の魅力や可能性を広くアピールしました。
大阪芸術大学デザイン学科の学生たちは、「未来ゾーン」に展示する未来のお菓子のパッケージデザインを考案。ユニークな発想やデザインで、これまでにない新しいお菓子の楽しみ方を提案しました。
このプロジェクトを企画したのは、「お菓子のデパートよしや」を展開する株式会社吉寿屋です。同社は2021年にもデザイン学科と連携して、コロナ禍の日本をデザインの力で元気にしようと「マスクケースデザインコンペティション」を実施。今回、デザイン学科は「未来ゾーン」に協賛する11社の企業とタッグを組み、産学連携プロジェクトに取り組むこととなりました。
デザイン学科教授の木村正彦先生の指導のもと、1年生から3年生まで28名のメンバーがプロジェクトに参加。まずは各企業のオリエンテーションを受け、それぞれのお菓子のテーマを理解した上で、アイデアをふくらませていきました。学生たちは「今までにないもの」を一から考える作業に苦戦しながらも、各自が自由な発想でデザインを考案。オンラインのプレゼンテーションで合計66のプランを提案し、結果として8社に学生作品が採用されました。
7月2日~6日に大阪・関西万博の「ギャラリーEAST」で開催された「お菓子で世界にスマイルプロジェクト」。初日のメディアツアーでは、イベントを運営する株式会社吉寿屋の神吉一寿社長、参加企業を代表して株式会社ブルボンの井手規秀常務、大阪芸術大学の塚本英邦副学長による挨拶が行われました。
約3000㎡の会場内は「過去」「現在」「未来」の3ゾーンに分けられ、お菓子にまつわる様々な展示が繰り広げられました。「過去ゾーン」では昔懐かしいポン菓子などの実演、「現在ゾーン」ではお菓子で作られたお城や街などのアート作品を紹介。そしてこれからのお菓子を扱う「未来ゾーン」では、学生たちがパッケージデザインを手がけたお菓子が、映像やパネルとともに展示されました。
シャボン玉を吹くと中に動物などの形が現れるビスケット、招き猫型のロボットから出てくるこんにゃくスイーツ、フレーバーによって記憶がよみがえりタイムトラベルができるキャンディなど、ユニークな作品がずらり。学生たちのアイデアが光る様々な「未来のお菓子」が、訪れた人の目を惹き付けていました。
今回の取り組みには、2024年度の「デザインプロジェクト」の授業を受講した3年生に加え、学科を横断して学ぶ「ハイパープロジェクト」の一環として有志の1年生が参加しました。国をあげたイベントである万博に産学連携プロジェクトという形で関わることができ、学生の皆さんにとって非常に良い経験になったと思います。ただし、「未来のお菓子」というテーマはなかなか難しく、ゼロから発想することに悩んで作業が停滞した人もいました。できれば3Dプリンターを活用したアウトプットまで目指したかったところですが、今回はプランニングのみを担当。最終的には8社にプランが採用され、いずれも良い作品に仕上がったと思います。 今回、アイデア面では1年生の方が面白い作品が多かったように感じました。学年が進むとデザインの知識や技術は向上していく一方で、逆に自分らしい独自の発想ができにくくなってしまうことがあります。ヒントを探して常に画像検索に頼ってしまうのは考えもの。最近はスマホしか見ない人も多いのですが、新聞やテレビ、映画や読書はもちろんのこと、色々な場所に足を運び、自分の目や耳で実際に見聞きして体験することが大切です。スキルは後からいくらでも磨けるので、学生のうちに積極的に多くのことを経験してほしいですね。 産学連携プロジェクトは、企業や地域などと協働して、実社会と密接につながりながら学べる貴重なチャンスです。通常の授業の課題とは違う実践的な学びを通じて成長することができますし、企業などに提出したプランは自分自身の実績となり、ポートフォリオを充実させて就職活動で強みにすることもできます。本学には様々な産学連携プロジェクトが展開されているので、こうした機会も大いに活用して、自分ならではのデザイン力を育んでいってほしいと思います。
僕はギンビス様の「シャボン玉ビスケット」を担当しました。プロジェクト参加時は1年生で、産学連携の取り組みも初めて。「今までにない、ぶっ飛んだものを作ってほしい」という企業側の希望を聞いて、すごく悩みました。シャボン玉からタンポポの綿毛を連想し、ビスケットの素が「種」になっていろんな形になったら楽しいだろうと考えたのが発想の源。形にするまでに時間がかかりましたが、シャボン玉を吹く息と、芽吹いて成長するというコンセプトを「息吹く芽」という言葉に集約し、それが自分の中でカチッとはまってから、スムーズに進めることができました。 自分の作品が選ばれたと知った時も嬉しかったのですが、万博の会場で作品が展示されているのを見た時は、めちゃくちゃ感動しました。大勢の方が作品を見たり写真を撮ったりして楽しんでくださり、万博に少しでも貢献できたと思って感慨深かったです。この万博が歴史の一こまになる先々の時代のことも思い描いて、これからの未来への期待もふくらみました。 僕がデザインの道に進もうと決めたのは高校3年の時。1年次にデザインの基礎を幅広く学んで2年次からコースを選択できる仕組みは、進路決定が遅く美術の基礎も身についていなかった自分にはありがたかったです。これまで色々な悩みに苦しむことが多かったのですが、今回の作品は、そうした葛藤の中で身につけた考え方から生み出せたもの。悩んだ経験を肯定できたことも、自分にとって大きな出来事でした。これをステップに、今後もさらに頑張りたいと思います。
今回のプロジェクトでは「未来のお菓子」というスケールの大きなテーマを受け、私自身が「未来にこんなものがあったらワクワクしそう」と思える作品にしたいと思いました。担当したのはマンナンライフ様のこんにゃくスイーツ。「日々の笑顔を引き出すパーソナライズドスイーツ」「あなたのライフスタイルに寄り添うお菓子の革命」というテーマに基づいて、人々の日常に寄り添って笑顔を招く招き猫のロボットを考案しました。こだわったのは、誰からも可愛く親しみやすいと思ってもらえるデザインです。未来のお菓子というとハイテクノロジーなイメージですが、逆に温かみがあってシンプルなデザインの方が、どんな人にも楽しんでもらえると考えました。 万博会場の様子は見られなかったのですが、大勢の来場者の方でにぎわい、メディアの取材も多かったと聞きました。自分の作品が新聞やニュースサイトに載ったのも感激です。これほど多くの人に作品を見てもらえたのは初めてですし、万博に携われたことは、後々まで自分にとって自慢と励みになると思います。この経験を、今取り組んでいる卒業制作にもいかしたいです。 デザイン学科には多種多彩なカリキュラムがあって、幅広いデザインを学ぶことができ、自分の引き出しがすごく増えます。一緒に学んでいる仲間もみんな自分の好きなものに熱中していて、周りからたくさんの刺激をもらえる毎日は、すごく楽しいですね。ここで培ってきたことをいかして、将来はものづくりに関わる仕事ができたらいいなと考えています。