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「OSAKA ART MARKET 2025」に大阪芸大出身の作家が出展 「OSAKA ART MARKET 2025」に大阪芸大出身の作家が出展

美術学科, デザイン学科
2025/11/19

大阪国際文化芸術プロジェクトの一環である「OSAKA ART MAKET 2025」が、2025年10月22日~27日、大阪・梅田の阪急うめだ本店にて開催されました。3回目となる今回のイベントには57組の作家が出展し、大阪芸術大学出身のアーティストも多数参加。百貨店では初めての開催とあって、年代や国籍を超えた幅広い来場者が訪れ、多彩なアートとの出会いを楽しんでいました。

美術やデザインを学んだアーティストたちの多様な表現が響き合う

「OSAKA ART MAKET 2025」は、大阪で活躍する現代美術アーティストを中心に、多様なジャンルの個性豊かな作品が展示・販売されるイベントです。今回の会場は阪急うめだ本店の9階祝祭広場。開かれた百貨店空間での開催によって、よりアートに親しみやすい雰囲気となりました。


出展作家は、大阪を中心に関西にゆかりのある57組。出身地や在住地、大学時代を関西で過ごすなど、様々な背景を持つアーティストが集結しました。大阪芸術大学グループ出身の作家も11名参加し、個性豊かな作品が会場を彩りました。


美術学科出身のAiko Kunoさん、朝井颯志さん、岡本博紀さん、笠原彰人さん、﨑新谷萌夏さん、ハッピーモンスター横岑竜之さんの展示は、まさに表現の多様性を体感できるラインナップ。鮮やかな色彩に木炭などでドローイングのニュアンスを添えた絵画、幻想的な世界に誘われる緻密な銅版画、伝統的な文様で「風景と記憶」を描いたペン画、様々な花など数多くのモチーフが絶妙に調和する作品、無数の点がヴェールのように画面を覆う抽象画、強烈なオリジナルキャラクター作品など、それぞれの探求の成果が息づいていました。

Aiko Kunoさん

朝井 颯志 さん

岡本 博紀 さん

笠原 彰人 さん

﨑新谷 萌夏 さん

ハッピーモンスター横岑竜之 さん

また、井下彩乃さん、イユダエマさん、ピトさん、MINAMI MIYAJIMAさんはデザイン学科、山田紗世さんは大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科出身。動物の半立体アート、可愛いポップな作風の中にダークさがひそむ作品、ラメやアクリル絵の具でリズミカルに描いたカラフルなアート、四角形が密集する幾何学的なモノトーン作品、手彩色を加えたシルクスクリーンなど、多彩な技法が会場に華やぎを添えていました。

井下 彩乃 さん

イユダエマ さん

ピト さん

MINAMI MIYAJIMAさん

山田 紗世 さん

会場となった祝祭広場は、両サイドにカフェが面し、大階段で休憩もできる、ゆったりとした空間設計が特徴です。来場者は作品をじっくりと鑑賞しながら、休憩を挟んでまた回遊するなど、自由なスタイルでアートを楽しんでいました。週末はもちろん、平日昼間にも多くのお客様が来場。「ギャラリーは敷居が高いけれど、こうした場所でのイベントなら気軽に見られる」といった声も聞かれ、初めてアート作品を購入した方もいたようです。


運営を担当した吉本興業株式会社マネジメント部の安達千花子さんは、「関西の若手アーティストの活躍を後押ししたいという思いでラインナップを組みました」と語ります。「大阪芸術大学は府内で唯一の芸大。『面白ければ何でもあり』と受け止めてくれる大阪らしい懐の深さが、アートシーンにも息づいていると感じます。大学で培った知識と自身の経験を融合させながら、どんどん作品を発信していってほしいですね」と大阪芸大出身作家たちの今後の活躍に期待を込めたメッセージが贈られました。


百貨店での出展は、作家としてのキャリアを築く上で大きな一歩に。大阪芸大出身のアーティストたちにとっても、これまで出会う機会のなかった新しい層のお客様と交流し、多くの刺激と新たな縁を得られる場となりました。

美術学科 版画コース 卒業生

朝井 颯志 さん


百貨店での初めての展示、しかも今回の出展作家の中で最年少という立場で緊張しましたが、多くのお客様と直接お話できて嬉しかったです。熱心に鑑賞してくださる方や、何度も足を運んでくださる方など、関心の高さを肌で感じました。今回出展した作品は、大阪・関西万博で目にした人工心臓などの先端医療技術から着想し、「生と死」についての思いを表現したもの。白と黒のみの銅版画に対して、これまでは「力強い」「不思議」などの感想が多かったのですが、今回は「あたたかい」「優しい」といった声もいただき、意外さとともに新しい可能性を感じました。

僕は高校時代から作家を志し、コンペ応募や自主的な発表にも力を入れてきました。大阪芸大の学生作品オークションへの参加をきっかけに、クラシカルな書斎に飾りたくなるような作品づくりを意識するようになり、現在は、父が木工技術をいかして手作りしてくれるオリジナルの額縁とともに販売しています。版画というジャンルの商業的な側面も考え、学生の頃から作品を販売する経験を積んだことで、市場や客層に対する視点も養うことができました。

大学では版画だけでなく幅広い美術を学び、「ドキュメンタリー論」「情報論」など社会と向き合う授業は、感じたことを作品に昇華する助けにもなりました。お世話になった先生方とのつながりが今も続いていることも、心強い支えとなっています。また卒業制作で学長賞を受賞したことで台湾のギャラリストの目に留まり、作品を購入・展示していただく機会に恵まれました。来年には再び海外での展覧会や東京都美術館での展示も予定しています。今後も制作と人との関わりの両方を大切にしながら、活動の幅を広げていきたいです。

デザイン学科 グラフィックデザインコース 卒業生

イユダ エマ さん


今回の出展で「いつか百貨店で展示したい」という夢が叶いました。私自身もよく訪れるうめだ阪急で作品を発表できて、本当に感慨深いです。私の作品は、ネガティブな感情をテーマにしながらも、見る人が明るい気持ちになれるようなポップな色彩を追求しており、今回は女の子やモンスターをモチーフに、平面作品と立体作品を展示しました。立体作品には3Dプリンターを活用。技術的な調整が難しく、何度も失敗しながら試行錯誤して制作したものです。絵はシンプルな線と色で構成していますが、外壁のようなテクスチャーの下地を塗り、デジタル表現とは異なる質感や存在感を表現するなど、一点もの作品としての付加価値を高める工夫も取り入れました。

大阪芸大では、自由度の高い環境のもとで、3D技術にもゼロから挑戦。他学科の先生方にも教えていただいたり、学内の展示スペースを活用したりと、今の活動につながる貴重な経験を数多く積むことができました。現在は広告代理店に勤務してWEBプロモーションをメインにビジュアル制作などの仕事に携わりながら、作家活動を続けています。アーティストとしては、作品を購入してくださったお客様からの声が、大きな励みに。AIでも絵が描ける時代だからこそ、「この人の作品が欲しい」と言っていただけることが、何よりのやりがいになっています。

芸術一本で進むのは不安という人や、就職後に制作から離れてしまう人も多いと思いますが、続けることで思いがけないご縁が生まれることもあります。実際に私も、職場でのアピールから大規模イベントのビジュアルという仕事につながりました。会社員と作家の兼業で多忙な毎日ですが、さらに広いマーケットでの活躍をめざして挑戦を続けたいと思っています。