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3年生までの学びの集大成!シェイクスピア作『お気に召すまま』を芸術劇場で熱演 3年生までの学びの集大成!シェイクスピア作『お気に召すまま』を芸術劇場で熱演

舞台芸術学科
2025/01/10

大阪芸術大学舞台芸術学科演技演出コース3年生の、授業の一環として開催される学内公演。2024年は、ウィリアム・シェイクスピアの『お気に召すまま』が上演されました。上演日は、女性のみの「シャトー班」による11月19日と、男女混合の「フォレ班」による11月20日の2日間。11月18日には、学科長である山本健翔先生の演出指導のもと、公開舞台稽古が行われました。

「男女混合」「女性のみ」の2班がシェイクスピアを熱演

物語は、オーランドーと長兄オリヴァーが激しく言い争うシーンからスタート

『お気に召すまま(As You Like It)』は、シェイクスピアによって1600年頃に書かれた喜劇。父の遺産を相続した兄によって過酷な生活を課せられた三男・オーランド―と、公爵の兄の娘・ロザリンドの恋模様を中心とした、アーデンの森での出来事を明るく牧歌的に描いた作品です。山本先生は、シェイクスピアの作品は、兄弟の確執や激しい恋心など“心の振れ幅”が大きい描写が多く、その分セリフも難しく、長くなると言います。山本先生が公演の演目としてシェイクスピアの作品をよく取り上げるのは、「いわば食べやすいものばかりでなく、若いうちに、食べごたえのあるものを口にして、しっかりとした咀嚼力を身につけてほしい」という思いが込められているからです。

公爵の御前で行われたレスリングの試合で、オーランドーは勝利をおさめる。これをたまたま観戦していたロザリンドとの間に、すぐさま恋が芽生える

山本先生は、大阪芸術大学でシェイクスピアを上演する際、「男女混合」と「女性のみ」の2つの班に分けることが多いと言います。

「実はシェイクスピアの時代は、男性だけで舞台を上演していたのです。“全員男性が演じた作品を、女性だけで演じる”ということも、学生たちにとっては貴重な経験になるのではないかと思います」と山本先生。時代背景を知ることで、さらに作品への興味が深まります。


実習施設を兼ねた大舞台で堂々たる演技を披露

舞台は、追放されたロザリンドの父が暮らすアーデンの森へ

会場となった芸術劇場は、大阪芸術大学のキャンパス内にありながら、550人もの観客が収容できる大型実習施設。プロ仕様の本格的な設備を備えており、舞台芸術をより実践的に学ぶことができます。開場時間を迎えると、訪れた人たちで客席が埋めつくされ、期待感が高まる中で公演がスタート。学生たちが舞台に上るやいなや、熱のこもった演技に魅了され、シェイクスピアが描く物語の世界へと引き込まれていきました。

オーランドーがアーデンの森で出会ったのは、男装した姿のロザリンド。ギャニミードと名乗り、ロザリンドへの恋心を試す

演技演出コースの3年生39人全員は演者として舞台に立つだけでなく、スタッフとして裏方の仕事も担当。これには、俳優とは違う目線の学びを得る狙いがあり、演出班・舞台監督班・制作班・道具班・衣装班・音楽班に分かれて、おのおのの役割をこなします。また、舞台美術・音響・照明はそれぞれ、舞台美術コース・音響効果コース・舞台照明コースの学生たちが日ごろの成果を発揮。公開舞台稽古では教員陣とも連携を取り、舞台の成功に向けて尽力する姿が見られました。

学生と教員陣が一丸となって1つの舞台を作り上げる

アーデンの森では、新しい恋の始まりも

1つの公演を上演するまでの過程では、自分が望む役を演じることができなかったり、共演者やスタッフの間でも、意見の相違からぶつかり合ったりすることもあります。それでも“いい舞台を作る”という目標は同じ。舞台芸術学科では、日頃から学生と教員陣がコミュニケーションをとる機会も多く、公開舞台稽古のあとも、演技の改善点を尋ねるため、山本先生のもとを個人的に訪れる学生の姿が見られました。

男装を解いたロザリンドが現れ、物語はハッピーエンドを迎える

「大学でさまざまな思いを味わった者たちが、1つになってここまでやれたということは、私にとってもうれしいことです」と、山本先生も感慨深い様子。また、2025年の3月15日・16日は、3年生の演技演出コース・ミュージカルコース・ポピュラーダンスコースの希望者のオーディションによる学外公演『真田風雲録』が「SkyシアターMBS」で公演される予定です。春休みを返上して作り上げるという作品に、早くも注目が集まります。

舞台芸術学科 学科長
山本 健翔 先生

今回の公演の『お気に召すまま』は、シェイクスピアの戯曲を、私と学生たちで上演台本に仕立て上げました。男女混合の班と女性のみの班とでは、同じ物語でも、ストーリーの見え方が違ってくるので、そういった部分においても、学生を2つの班に分けた面白さが感じられると思います。学生の中には、希望の役になることができず、涙を飲んだという人もたくさんいますが、そんな気持ちを振り切って、舞台の上で生き生きとした姿を見るのは、とてもうれしいものです。私はよく、学生たちに「コンプレックスこそ自分の魅力の源泉になる」と話しているのですが、自分にとって辛かったことや苦しかった経験は、全てその人の糧になります。特に舞台の世界では、出演者もスタッフも、それをダイレクトに生かすことができ、お客様の心に届ける力にもなっていくので、そういう意味で舞台芸術は、それまでの人生が1つもむだにならない仕事だと言えます。将来、社会のほとんどがAIにとって代わられることがあっても、生身の人間による舞台芸術は、AIが代わりを務めることはできません。いわば、舞台は人間社会の最後の砦。今回の公演も、学生たちの熱量が会場中に伝わる、すばらしい作品になったのではないでしょうか。

舞台芸術学科 演技演出コース 3年生
山下 康太 さん

入学してからしばらくは、ひたすらやるべきことに一生懸命でした。正直、周りを見る余裕がなかったのですが、大学生活にも慣れてきた2年生の学内公演で、「演劇をするのが楽しい」と感じる劇に出会い、舞台にはまってしまいました。今回の配役を決める際は、本人の希望と学生内での投票に基づいて、先生方が決定したのですが、僕がオーランドーの役をやりたいと思ったのは恋に対する熱量です。自分自身がそこまで感情を表に出すタイプではなく、日ごろから少し制限しているような窮屈さを感じていたので、それを取っ払うような熱量に惹かれ、オーランドー役を希望しました。このような大きな劇場で芝居をさせていただける機会はなかなかないことですが、舞台の上では、やはりリアクションを大切に、その場で起きた出来事に反応することを心がけながら演じていました。また自分の声のキャパシティーや、動きの小ささなどが、明確に見えた舞台でもあったので、自分の体について探っていくきっかけとしても、この経験を今後に生かしていきたいです。4年生では卒業制作に取りかかるので、気持ちをしっかりと入れ替えるつもりで過ごしたいと思います。

舞台芸術学科 演技演出コース 3年生
吉岡 杏莉 さん

2年生の授業で、「日常と同じように舞台の上で生きる」という意識に気づかされたことがありました。私が『お気に召すまま』の舞台の上で、生きたいと思ったのがオーランドーです。彼の自分の信じたものを疑わない、勇敢な部分に心惹かれました。既存の長い戯曲を、1時間半の上演台本にするところから始まった今回の公演は、芸術劇場という大きな舞台で演じることから「声」という壁にもぶつかりました。声を出すことが周りを巻き込み、さらにお客様をも巻き込む力になることを、稽古をするたびに身をもって知ることができました。公演当日は、物語の主要人物を演じさせていただいたこともあり、緊張も不安も今までとは比べものにならないものでした。でも、このような経験ができた私は本当に幸せ者です。プロの道ではもっと背負うものが重たく、大きなものになっていくと思いますが、私はもっとビッグになるので、これからの私にご期待を!また、何もかも自分1人で背負いすぎず、隣にいる仲間たちを信じることの大切さも、今回の公演で学んだことです。同年代の仲間と1つの舞台を作り上げる機会は、これからの人生の中でそうそうないと思うので、他の大学では体験できない、刺激ある学生生活が過ごせていると思います。