関西の精鋭音楽家が紡ぐ夢の”響”演 「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ2026」 関西の精鋭音楽家が紡ぐ夢の”響”演 「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ2026」
2026年5月27日、大阪市北区のザ・シンフォニーホールにて「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ2026」が開催されました。第4回目を数える今年も、関西クラシック音楽界のトッププレイヤーが集まり、所属団体の垣根を超えて夢のコンサートを実現。吹奏楽部で活動する中高生など多くの観客が訪れ、演奏学科の酒井格客員教授が作曲した『カタツムリの夢』の世界初演をはじめ、数々の名曲の圧倒的な演奏に酔いしれました。
一夜限りの「夢の吹奏楽団」が生み出す豪華なサウンド
「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ」は、関西を中心に第一線で活躍するプロ奏者が集結し、この日のために特別編成される「夢の吹奏楽団」です。オーケストラや吹奏楽団、ソリストなど、日頃は異なる現場で活躍する演奏家たちが、吹奏楽への情熱を共有しながら音を紡ぎ、毎年ここならではの響きを生み出しています。
本番を目前に控えた5月24~26日、大阪芸術大学キャンパスでのリハーサルが行われました。指揮を担当する演奏学科の伊勢敏之教授、酒井格客員教授、潮見裕章先生が、それぞれの求める音づくりを追求。ホールには本番さながらの音が響き渡り、見学に訪れた演奏学科の学生たちも、プロの音色と音楽に向き合う姿勢を肌で感じ取っていました。
演奏会当日は雨模様の天気にも関わらず、会場のザ・シンフォニーホールには早い時間帯から多くの来場者が集まりました。開場すると、ロビーは関西一円から訪れた吹奏楽部の中高生たちの活気でいっぱいに。ほぼ満席となったホールに、トッププロ集団の演奏への期待と高揚感で熱く満たされました。
圧巻の響きがザ・シンフォニーホールを包む
潮見裕章先生の指揮によるオープニングは、ライニキー作曲『セドナ』。コンクールの自由曲として演奏されることも多く、中高生にもなじみのある一曲です。ザ・シンフォニーホール特有の美しい残響もあいまって、一音目から「ドリーム・ウインド・オーケストラ」ならではの輝かしいサウンドが響き渡り、客席は一瞬でその世界観に惹き込まれました。
2曲目は、現代吹奏楽を代表する作曲家、スパークが東日本大震災の復興支援への祈りを込めて書いた『陽はまた昇る』。祈りのような静けさから明るい希望へと向かっていく生命力を、豊かな音色で描き出しました。
3曲目の『カタツムリの夢』では、作曲者である酒井格先生自らタクトを執りました。吹奏楽の数ある楽器の中からホルンにスポットを当て、クラシックの名曲から15もの旋律を散りばめた遊び心のある作品です。4人のホルンセクションによる息の合ったアンサンブルと吹奏楽のコラボレーションが、会場を温かく包みました。
第2部では伊勢敏之先生の指揮で、2026年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲『夕映えの丘』『ザ・ガーズ』『あつまれ おもちゃのマルチャ!』『管楽器のためのフィナーレ』の4曲を披露。プロフェッショナルならではの完成度の高い模範演奏が繰り広げられ、中高生たちもいっそう真剣な表情に。座席から身を乗り出したり、リズムを取ったりしながら熱心に聴き入る姿が見られました。
続くJ.ウィリアムズ作曲『サモン・ザ・ヒーロー』では、大阪フィルハーモニー交響楽団の首席トランペット奏者で演奏学科講師の篠﨑孝先生がソロを務めました。トランぺッター憧れの名フレーズが高らかに鳴り響くと、会場の空気が一変。華やかなサウンドで奏でられる壮大なメロディーが、客席を興奮と感動の渦へと導きました。
プログラム最後の曲は、スパークの代表作『ドラゴンの年(2017年版)』です。疾走感あふれる第1楽章、静寂と神秘が漂う第2楽章、そして全楽器が絡み合う迫力の第3楽章へと展開し、重厚なブラスと繊細な木管が融合したダイナミックな演奏が会場を震わせました。
アンコールは、同じくスパーク作曲の『メリーゴーランド』。各セクションがかわるがわる主役となって立ち上がるスタイルに会場中が盛り上がり、後半では伊勢先生の合図とともに手拍子が広がる楽しいステージとなりました。
終演後も熱気は冷めやらず、惜しみない拍手がいつまでも続きました。客席では中高生たちが「すごすぎて驚きました」「興奮が止まらない!」などと声を弾ませる姿も。本物の音色に生でふれた貴重な経験は、未来の音楽家たちの夢をさらに大きくふくらませる刺激となったようです。
終演してまず感じたのは、「本当に素晴らしく盛り上がった」という大きな喜びです。アンコールでは会場全体から手拍子が起こり、浮き立つような熱気を感じて、演奏しながらゾクゾクしました。あの一体感はなかなか経験できない特別なものです。
今回私が指揮を担当したのは、制作統括の本田耕一先生と相談しながら選曲した2曲です。中高生にもなじみ深い『セドナ』と、震災復興の祈りが込められた『陽はまた昇る』。いずれも若い皆さんにいま聴いてもらいたい作品だと考えました。私はプロの指揮者ではありませんが、年に一度、こうして第一線のプロフェッショナルが集う楽団の前に立たせていただけることは本当に貴重な経験で、深く感謝しています。回を重ねるごとに、メンバーが私の意図を先回りして読み取り、素晴らしい音へと昇華してくれているのがわかり、さすがだなと感動することの連続です。
演奏において、私が何より大切にしているのは「音色」です。聴き手の耳と心に残り続けるのは音の響きそのものだからです。私自身も毎日ロングトーンを欠かさず音色を磨き、教え子たちにもその大切さを説き続けています。通常プロの演奏会はクールに進むことが多いですが、このコンサートは全員が心から音楽を楽しみ、時に舞台上でガッツポーズが飛び出したり握手を交わしたりもします。学生の皆さんにとって、かつて同じ立場だった私たちが情熱を爆発させている姿が、少しでも未来の夢や明日の練習への活力になってくれたら、これほど嬉しいことはありません。
今回ソロを務めたジョン・ウィリアムズの『サモン・ザ・ヒーロー』は、世界的トランぺッターのティム・モリソン氏に捧げられた作品で、私たちトランペット吹きにとっては誰もが憧れる名曲です。自分がこの舞台で演奏できるとは思ってもみなかったので、気持ちが高まりました。立って吹くために暗譜は徹底しましたが、いつも心がけているのは、どんな難曲でも身構えすぎず、自然体で向き合うこと。それでも本番では満場の熱い拍手をいただき、テンションが上がりました。
この演奏会も今年で4年目ですが、年々、互いの音の特徴や方向性がより鮮明に感じられるようになってきました。ふだんは別の現場で活動している素晴らしいプレイヤーたちと「今年もよろしく」と言葉を交わし、音を合わせる時間は、音楽をやっていて一番楽しい瞬間です。
今の中高生の皆さんは非常に熱心ですが、コンクールだけが全てではないですし、生の演奏会に足を運ぶ機会が少ないのはもったいないと感じます。今回の演奏会をきっかけに、もっと多くの生の演奏にふれ、音楽そのものの楽しさや感動を体感してもらいたいですね。音楽を続ける中では壁にぶつかることもありますが、知識を増やし、演奏会に行き、経験を積み重ねて練習すれば必ず前に進めます。大阪芸術大学には、高い情熱を持つ教員と、音楽に集中し仲間と切磋琢磨しあえる素晴らしい環境が揃っています。少しでも興味を感じたら、ぜひオープンキャンパスや体験入学に参加してみてください。この熱い現場で、皆さんと出会えるのを楽しみにしています。
初演から毎年参加していますが、今回はコンサートマスターの大役をいただき、身の引き締まる思いで臨みました。ここに集まるのは、一人ひとりが卓越した音楽家ばかり。互いをリスペクトし、全員が気持ちよく演奏できる空気感を保つことを大切にしました。舞台上では客席との距離がひときわ近かったのも新鮮で、心地よい緊張感の中で演奏できました。メンバーの多くがそうであるように、私の音楽の原点も吹奏楽です。この舞台に立つと、まるで中高生の頃に戻ったかのようなワクワク感を仲間と共有でき、当時の熱い記憶がプロの豪華なサウンドで鮮やかに塗り替えられていくような時間を味わいました。中高生がひと夏をかけて取り組むコンクール課題曲を、私たちプロはわずか数日のリハーサルで最高レベルに仕上げる。その力強さと加速感を感じ、それを今の中高生の皆さんに届けられるという貴重な経験にも、感謝しています。
そして今年も3名の指揮者陣が、それぞれの個性を存分に発揮してくださいました。プレイヤー目線が生きた潮見先生、作曲家としての想いが詰まった言葉をくださる酒井先生、豊かな経験に裏打ちされたアプローチの伊勢先生。指揮者によって同じバンドからまったく違うサウンドが立ち上がるのも、この演奏会の醍醐味のひとつです。
理想の音を奏でるための近道は、頭の中にどれだけ素晴らしい音のイメージを持てるかです。手軽に音源を聴ける時代だからこそ、生の音から何を感じるかという実体験が大切になります。若いうちに格安の学生席などの特権を大いに利用して本物の演奏をたくさん聴き、人と音が重なり合う瞬間の純粋な喜びを、ぜひ全身で味わってほしいと思います。
「ドリーム・ウインド・オーケストラ」は、私にとってすっかり「毎年帰ってくる場所」になっています。ここでしか出せない響きは、私の音のパレットの大切な一片です。ホルンセクションの4名は、日頃カルテットとしても活動する気心の知れた仲間同士。音のイメージも呼吸もぴたりと揃う4人ならではの濃密な会話を、今回も客席に届けたいと思いながらステージに立ちました。
酒井先生の新作『カタツムリの夢』の楽譜を開いた時は、ほぼ全編がホルンのソロやアンサンブルで驚きました。オーケストラでは張り詰めた緊張感の中で演奏する名曲の数々、たとえばR.シュトラウス『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』の主題がマーチ風に姿を変えたり、チャイコフスキー『交響曲第5番』の哀愁漂う旋律が軽快なワルツになったりと趣向が満載で、肩の力を抜いてのびのびと楽しく演奏することができました。酒井先生は、私たちがふだん背負っている重圧を「楽しんでいいんだよ」と解放し、夢を叶えてくださったのだと感じます。
私自身、かつてはいろいろなプロ奏者への憧れが原動力でした。だからこそ、中高生の皆さんが「こんな音を出したい」と思える一つの答えを、この舞台で示せたらと願っています。上達のコツをひとつあげるなら、まずは楽器を大切にすること。楽器は小さなへこみでも音色に影響するほど繊細ですから、愛情を持って丁寧に扱ってほしいですね。そして、今の自分が出す音を受け止め、良い音に近づける過程そのものを楽しんでほしい。時に冷や汗をかくようなホルン独特の難しさも含めて、生のステージの美しさを、五感で味わってもらえたら嬉しいです。