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【卒業生の活躍】松本セイジ展「Fun!」
癒しを与える動物モチーフの作品でグローバルに活躍
【卒業生の活躍】松本セイジ展「Fun!」癒しを与える動物モチーフの作品でグローバルに活躍

美術学科
2023/03/01

大阪芸術大学美術学科の卒業生で、動物をモチーフにした作品を中心に描き、国内外で活躍するアーティストの松本セイジさん。The New York Timesやユニクロなど世界的企業とのコラボレーションや海外での展示も行っています。

2022年11月18日~12月5日に、心斎橋PARCOにて、大阪では初の大規模な個展「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION “Fun!”」を開催。その会場で、個展や作品への思い、学生時代の思い出、これまでの歩みなどをお聞きしました。

ジャンルを超えた活動を「全部盛り」にした大規模個展を開催

今回の個展は、どのようなコンセプトで組み立てられたのですか。

僕はこれまで、アート、イラストレーション、グラフィックや子供服のデザインなど色々なことに取り組んできました。今回、出身地の大阪で初めて個展を行うにあたって、そうした活動を“全部盛り”した展覧会にしたいと考えました。

心斎橋PARCO14階「SPACE14」ではすべて新作を、4階「SkiiMa Gallery」では過去の作品からセレクトして展示したんです。自分自身も原点に立ち返って楽しんで制作し、作品にふれる人にも楽しんでほしいという思いで「Fun!」というタイトルを付けました。

シンプルでポップな中にも洗練された松本さんの世界観が伝わるフライヤー
心斎橋PARCO開業2周年記念フェアのメインビジュアルにも起用された

動物のキャラクターが誕生したきっかけを教えてください。

「ねずみのANDY」は、アーティスト活動を始めたニューヨーク時代に地下鉄の駅で見かけたねずみから、「DOG & DUCK」は、今住んでいる長野県の自然や愛犬との生活から生まれました。どちらも動物たちの何気ない暮らしを描き、「日常の中にある幸せ」を感じてほしいという思いがコンセプトになっています。

ニューヨークで生まれたキャラクター「ねずみのANDY」
自然豊かな長野での暮らしから着想した「DOG & DUCK」

ペインティング以外にどんな見所がありますか。

会場を回廊型にしつらえ、平面作品だけでなく、映像や立体作品も含め空間全体をインスタレーションとして展示を行いました。キャラクターたちが走り回ったり、空を飛んだりしているアニメーション映像を制作し、プロジェクターで投影。その場にいるかのように動く動物たちと、キャンバス作品との調和も意識しています。舞台裏をそのまま見られるような造りにして、ANDYのドローイングをあちこちに配置するなど、色々な楽しみ方ができるよう工夫しました。

また、「同じ空の下で」と題して、ハガキを送るプロジェクトも考案しました。来場してくださった方に絵ハガキを1枚配り、会場内にハガキを書くコーナーを用意して、大切な人に送ってもらおうというものです。ハガキを送る人も送られる人も、幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいですね。

アニメーションで命を吹き込まれたキャラクターたちが、会場のあちこちを動き回る
会場内のステージ上に、大人の腰の高さほどの大きな立体作品が登場
舞台裏で宝探しのように見つかるドローイングや描き込み

個展全体を通じて印象に残っていることは?

今回の展覧会は、空間構成や設営、映像、照明など、色々な分野のプロフェッショナルの方々と一緒につくりあげました。僕の名前で開催する個展ではありますが、自分だけの作品ではありません。ふだんは一人で制作しているので、今回周りの人たちの力や情熱を実感しながら仕上げるのが楽しかったし、自分にとっても特別な経験になりました。

空間構成を担当したのは、grafの設立メンバーの一人で、奈良美智との共同制作など幅広い表現活動で知られる豊嶋秀樹さん

木版画の制作に打ち込んだ学生時代

大阪芸大時代は、どのような作品に取り組んでいたのですか。

美術学科の版画コースで、木版画を専攻していました。初めて専門的に版画を学んでとても新鮮に感じ、木版画独特の表現や、透明水彩で刷る時の色の表情に惹かれて選んだんです。授業はあまり真面目に出る方ではなかったですが、制作にはけっこう熱心に打ち込んでいました。技法は違いますが、当時からコミカルな動物の作品もつくっていましたね。

当時の学びで今につながっていることはありますか。

自分ではあまり意識していないけれど、版画の経験は作品に影響しているでしょうね。版画は何色かのレイヤー(層)を重ねて作りますが、僕の作品もけっこう色を絞って描いています。また版画は真っすぐ引いても味わいが出るし、版ズレとか、パソコンではできない表現もあるのも特徴。そこから思いついて、黒のアウトラインをはみ出して色を塗ったりもしています。

 版画コースで師事した一圓達夫先生(元美術学科客員教授)からは「多くの量をつくりなさい」と言われました。僕は描くよりも案を考えるのに時間がかかり、悩みすぎて描けなくなることも多いんです。「考えるよりも手を動かして、つくっていく中から見えてくる」という意味だと受け止め、今も大事にしている言葉です。

大阪芸大で学んで良かったと思うことは?

技術的なことよりも、一番大きいのはやはり人とのつながりでしょうか。今でも連絡を取り合っている仲間もいますし、卒業してから芸大つながりで出会いが広がることもよくあります。僕はニューヨークで知り合った画家や美容師、カメラマンなど異業種のメンバーと「コペルズ」というチームを組み、展示やワークショップなどの活動をしているんですが、実はそのうちの一人が大阪芸大の卒業生だったのが仲良くなったきっかけ。今回の展覧会のスタッフにも大阪芸大に縁がある人や卒業生がいて、嬉しかったですね。

東京からニューヨークへ。動き続けることで道は開ける

卒業後はどのようにキャリアを重ねてこられたのでしょうか。

子ども服のアパレルデザイナーとして働いた後、実家で2年ほど家業の植木屋の修行をしたのですが、ずっと作品は描き続けていました。やはりこの世界でやっていきたいと思って、「それなら東京へ行こう」と上京。デザインやイラストなどの仕事に5年ほど取り組みました。30歳で独立し、本格的にアートで食べて行こうと決心。「アートと言えばニューヨークだろう」と渡米しました。東京もニューヨークも、漠然とただ行きたいという気持ちで行動したんです。

ニューヨーク・タイムズなどの大きな仕事を手がけるようになったきっかけは?

ニューヨークでは何の当てもなく、言葉でも苦労しましたが、それ以上にとても刺激的で面白かったです。とにかく自分の作品を見てほしくて、小さなカフェに「絵を飾らせてくれ」と交渉して回ったり、アートイベントに片っ端から出たり。そうして地道に活動し続けているうちに、いろんなオファーが来るようになりました。ひたすら動き続け、小さな活動でも少しずつ積み重ねていくことで、大きな成果につながっていったのかなと思います。

現在はどんな思いで制作活動に取り組んでいますか。

帰国してから東京や福島などを拠点にしていましたが、長野の自然の豊かさに感動して、家族で移住しました。今は朝早く起きて庭や畑で土仕事もする健康的な生活を送っています。その時々に住んでいる環境や自分の経験をキャラクターに託して表現するのが僕のスタイル。この土地で暮らすからこそ見られるもの、感じられることを作品に込めていこうと思っています。

来場者にポストカードを渡して送ってもらう企画も、自身の思い出から生まれたもの
4階「SkiiMa Gallery」ではこれまでの作品からセレクトして展示

今後の目標を教えてください。

今回の展覧会で、チームで制作する楽しさをあらためて実感できたので、それはこれからも続けていきたいです。グローバルな活動を広げたいという思いももちろんあります。今後も停滞することなく、新しいことにチャレンジしたいですね。

後輩たちにメッセージをお願いします。

周りの目や意見を気にせず、自分が本当に好きなこと、やりたいことをやってほしいですね。やりたいことを貫いていけば、結局はいい方向に進んでいくと思います。シンプルだけど、それが意外に難しい。怖いのは、失敗するより何も行動しないこと。僕自身もそうでしたが、やりたいことが変わったらまた新しく取り組めばいいし、もし失敗したとしても、体験が多いほど視野も広がります。止まらずに動き続けることで、きっと道が開けてくると思います。

松本セイジ

 1986年、大阪府生まれ。大阪芸術大学美術学科版画コースを卒業後、デザイナーとしてキャリアをスタートし、東京、ニューヨークを経て、現在は長野県にアトリエを構えて活動。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、ソウルなどで個展やアートイベントに参加。New Balance、Nike、UNIQLO、The New York Timesなど国内外の様々なプロジェクトに携わる。


◆松本セイジ オフィシャルサイト

http://seijimatsumoto.com/

◆松本セイジ Instagram

https://www.instagram.com/seijimatsumoto_arts/

SOLO EXHIBITION 「Fun!」PV