アーティスト&イラストレーターとして国内外で活躍の場を広げる美術学科卒業生の松本セイジさん。「ねずみのANDY」をはじめ愛らしい動物のキャラクターたちが織りなす独自の世界観が、多くの人々を魅了しています。
2025年7月26日~8月30日に、東京・天王洲にて個展「LIFE」を開催。2022年に大阪で行われた「Fun!」以来の大規模な個展となり、今回はデジタルアートなど新たな表現にも挑戦。作品の背景にある思いや、母校である大阪芸術大学との関わり、これからの活動などについて、お話をうかがいました。
タイトルの通り、日々の生活がテーマになっています。4年前に東京で初めて大きな個展を行った時は平面作品が中心でしたが、その後心斎橋PARCOで展示をさせていただいた時、会場全体をインスタレーションとして捉え、映像も使って表現するという経験が、すごく自分にしっくりきたんです。今回はそれをより発展させ、平面や立体をはじめ様々な作品を展開。かつて滞在したニューヨークでの生活と、現在の拠点である長野での暮らしを、二つの空間で表現しました。
ニューヨークのエリアには、大阪や東京での経験も重ね合わせて、物の豊かさや多くの出会い、技術の進歩に刺激を受ける都会の暮らし。長野のエリアでは、大自然に囲まれ、不便さもあるけれど穏やかで癒しに満ちた田舎の暮らし。対極にある生活を動物たちのキャラクターで表現しながら、そのどちらにも共通する普遍的なもの、何気なく過ぎていく日々の中の小さな喜びに気づいてもらえたら嬉しいなと、そんな思いを込めています。
初の試みとして、体験型のデジタルアートや子どもたちが遊べる遊具も展示しました。インタラクティブなデジタルアートは、大阪芸大の同級生たちと制作したものです。遊具については、専門会社のジャクエツさんと一緒に開発した製品がちょうど個展のタイミングで完成したので、子どもたちにアートを身近に感じてもらうきっかけになればと。またアトリエ風景を再現したインスタレーションにも、楽しい工夫を盛り込みました。ただし子ども向けのテーマパークではなく、あくまでも大人も子どもも楽しんでもらえる空間にしたいと考えて構成しています。
PARCOでの経験から、個人でやるよりチームで制作する方が想像を超えるものが生まれて面白いと実感し、在学中から仲が良かった仲間に声を掛けたんです。映像アニメーション担当の道満健生さんとシステム担当の久保田健二さんは、現在アートサイエンス学科の教員も務めており、立体物担当の明石隼さんは造形作家として活躍中。みんな快く引き受けてくれました。
制作中はまさに学園祭のノリで、設営時は夜遅くまで作業したことも。体力的には大変でしたが、とても楽しかったです。同級生だからこその「あうんの呼吸」で、難しいオーダーにも臨機応変に対応してくれる。これは仕事として出会ったチームではなかなか難しいことだと思います。
4年ぶりの東京での個展で、楽しみな反面、緊張や不安もありました。でも蓋を開けてみたら、初日から本当にたくさんの方が来てくださり、シンガポールなど遠方からいらした方もいて驚きました。お子さん連れのご家族も多く、笑顔で作品を見たり、遊んだりしている様子を見られたのは、嬉しかったですね。滞在時間も皆さん長くて、空間全体を楽しんでいただけたのかなと感じています。
移住してもう4~5年になりますが、自然の中の暮らしは、時間の流れも違います。草刈りをしないと庭がすぐ森になってしまうような環境で、自然のぬくもりや、一つとして同じもののない植物や生きものたちに心を動かされ、自分自身を見つめ直しています。そこからインスピレーションを受けて、油絵やパステル、貼り絵といった、手の動きや素材感が伝わる表現にも挑戦するようになりました。
両方とも自分にとってはすごく楽しくて、大切な活動です。どちらか一つに絞るのではなく、その時その時の状況にあわせて、バランスを取りながらやっていくのが自分には合っていると感じます。面白いお話があれば、いろんなことをやってみたい。最近ではディズニーやサントリーとのコラボレーションに取り組み、代官山のカフェ「ANDY COFFEE」のプロデュースも手がけました。一方で自分の作品でも、これまでの作風を突き詰めつつ、表現の幅をさらに広げていきたいと考えています。
本当にありがたいことに、通学バスや大学案内の表紙、壁画制作、特別講義、そして大阪・関西万博「日本国際芸術祭」への出展など、色々な形でお声掛けいただいています。こうして母校と関わらせていただくことで、芸大での経験が自分の礎になっていることをあらためて強く感じます。今後もそのつながりを大切に、卒業生として何か貢献できれば嬉しいですね。
未来や過去のことにとらわれすぎず、とにかく「今」を大切に、楽しんでほしいです。先の目標に向けて努力するのはもちろん素晴らしいことですが、その過程である「今」を犠牲にする必要はないと思うんです。今、目の前にあることに集中して楽しむ。それがきっと、次の道につながっていくはずです。僕自身もそうやって、その時々でやりたいことに全力で取り組んでいこうと思っています。
1986年、大阪府生まれ。大阪芸術大学美術学科版画コースを卒業後、デザイナーとしてキャリアをスタートし、東京、ニューヨークを経て、現在は長野県にアトリエを構えて活動。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、ソウルなどで個展やアートイベントに参加。New Balance、Nike、UNIQLO、The New York Timesなど国内外の様々なプロジェクトに携わる。
◆松本セイジ オフィシャルサイト
http://seijimatsumoto.com/
◆松本セイジ Instagram
https://www.instagram.com/seijimatsumoto_arts/