関西の精鋭演奏家が“響”演した 「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ 2023」 関西の精鋭演奏家が“響”演した 「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ 2023」
2023年6月21日、「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ 2023」の公演が、大阪・北区のザ・シンフォニーホールで開催されました。
関西を中心に活躍する実力派演奏家が楽団や団体の枠を超えて“夢の吹奏楽団”を結成。毎回一度限りのメンバーで演奏会を開催します。 今回の演奏会では、演奏学科の伊勢敏之教授の指揮で、酒井格客員教授が作曲した「夢の円舞曲」の世界初演など9曲を披露。圧巻の演奏で満席の観客を魅了しました。
第一線で活躍する実力派の演奏家たちが集結
第一線で活躍する実力派の演奏家たちが集結
関西クラシック音楽界の最前線で活躍する演奏家たちで結成された「大阪芸術大学ドリーム・ウインド・オーケストラ2023」。メンバーは、関西の主要オーケストラの団員やソリスト・室内楽奏者として活躍し、高い実力を誇る精鋭演奏家ばかり。それぞれの所属の壁を越え、これまでにない発想で、吹奏楽のための夢のオーケストラによる演奏会が行われました。
6月21日の演奏会に先立って、6月18日~20日の3日間にわたり、大阪芸術大学の14号館ホールでリハーサルが行われました。指揮を務める演奏学科の伊勢敏之教授がタクトを振った瞬間、初めての音合わせとは思えないほど息の合った美しい演奏が響き渡りました。
演奏学科の学生たちもリハーサルを間近で見学し、第一線のプロ演奏家たちの迫力あふれる音を体感。ふだん自分たちが練習しているホールで、圧倒的な演奏に感激しながら、様々な気づきと学びを得ていました。
演奏会当日の最終リハーサルでは、本番会場で音の響きを確認して細部を修正。作曲家の酒井格客員教授のアドバイスも加わって、演奏のクオリティがさらに高まっていきます。
今回の演奏会には、中学校や高等学校の吹奏楽部に所属して活動している生徒たちも多数来場。ロビーにも熱気があふれ、約1700席の会場は、期待に満ちた表情の観客でほぼ満席となりました。
いよいよ演奏会がスタート。幕開けを飾る『ジュビリー序曲』の華やかなファンファーレで、観客は一気に吹奏楽ならではの力強い音楽に惹きこまれます。続いて、2023年度全日本吹奏楽コンクール課題曲である『ポロネーズとアリア~吹奏楽のために~』と『マーチ「ペガサスの夢」』が演奏されました。
4・5曲目の『夢の円舞曲』と『たなばた』はいずれも酒井格客員教授の作品。『夢の円舞曲』は世界初演、『たなばた』は吹奏楽通にはおなじみの人気曲とあって、会場の空気はいっそう熱くなっていきます。
休憩を挟んで第2部では、『フェスティヴァル・ヴァリエーションズ』、『吹奏楽のための第一組曲』と、吹奏楽ファンなら誰もが知る名曲が続き、高度なテクニックと美しいハーモニーで観客を熱狂させます。最終曲の『エルサレム讃歌~アルメニアの復活祭の讃歌による変奏曲~』では、橋爪伴之教授が率いる「バンダ」が登場。トランペットやトロンボーンを学ぶ学生たちが3階席から演奏に加わって会場の視線を集め、さらなる迫力でクライマックスを彩りました。
アンコールの『行進曲「煌めきの朝」』も、今年度の吹奏楽コンクール課題曲。部活で練習に励む中高生たちは、熱いまなざしで舞台を見つめていました。
終演後は、鳴りやまない拍手に応えてカーテンコール。演奏家たちはソロやパートごとに立ち上がりあたたかい拍手を受け、満面の笑顔で観客に挨拶しました。メンバーが檀上で握手を交わし、一緒に写真を撮るなど、演奏家同士が演奏をたたえ合い、交流を深める姿も見られました。
中高生たちからは「かっこいい演奏に感動した」「超絶テクニックが素晴らしい」「いつか自分もあんなステージに立ってみたい」といった声も聞かれ、会場はいつまでも熱気と興奮に包まれていました。
この演奏会のために書き下ろした「夢の円舞曲」は、実は10年以上前からあたためていたワルツを、この機会に完成することができたものです。当初は別のタイトルも考えていましたが、本田耕一先生から指定されたこのタイトルがぴったりの曲に仕上がりました。英語タイトルは「Waltz full of Dreams」で、さらに“夢いっぱい”のイメージとなっています。また「たなばた」は、私が17歳の時に作曲し、「吹奏楽の曲を作って仲間と一緒に演奏したい」と思い描いた夢の第一歩となった作品。新旧の夢が詰まった曲を、まさに夢のようなメンバーの素晴らしい演奏で多くのお客様に届けることができたのは大変幸せで、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
作曲家にもいろいろなスタイルがありますが、私はどちらかというと、演奏する人自身に一番楽しんでもらえるような曲を作りたいと考えています。全日本吹奏楽連盟から委嘱された来年度の吹奏楽コンクール課題曲にも、そのような思いを込めました。小中高の吹奏楽部で楽器を始める人は多いですが、卒業を区切りにして離れてしまうケースが少なくありません。しかし、プロをめざす道を選ばなかったとしても、演奏を長く続けていってもらいたいですし、「いつかはこの曲を演奏してみたい」と思えるような曲に出会ってほしい。今回の演奏会も、皆さんがそのような曲と出会って演奏を続けていく一つのきっかけになれば幸いです。
大阪芸術大学は、さまざまな芸術を専攻する人たちが集う場所。音楽と多種多様なアートがつながり、新しい化学反応を起こしていく、そうした場をともに育んでいければと願っています。
今回参加したのは、みんなそれぞれの楽団や個人の仕事を抱えるプロの演奏家ばかり。それぞれに多忙なメンバーが、所属の壁を越えて一つになり、新しいものを創りあげていくのは素晴らしいことです。リハーサル初日の一音目、ポンと指揮が降りた瞬間にハーモニーがピタッと決まって、やっぱりすごいなと感じました。僕自身も中学生の時に「たなばた」を必死に練習した記憶があり、仕事というよりも部活動のような感覚で、純粋に楽しんで演奏できました。
吹奏楽は、息を音に変える管楽器を中心に構成されており、みんなが同じ方向に向かって息を出すパワーやエネルギーは、弦楽器も交えたオーケストラとはまた異なるものです。この演奏会では、オーケストラの管楽器セクションで演奏経験を積んだ奏者たちならではのアンサンブルの響きも、楽しんでもらえたのではないでしょうか。
後進の指導に当たっているメンバーも多く、中高生など若い観客の皆さんにとって、ふだん教わっている「先生」たちが本番で演奏する姿を見るのは、すごく刺激になったと思います。プロがどんなふうに舞台で演奏し、どのように音楽を楽しんでいるのか、実際にその場で観て、聴いて、音楽を共有してもらうことで、成長につなげてもらえたら嬉しいですね。
私は中学校から個人的にオーボエを始め、高校から吹奏楽部に入りました。今回の演奏会に向けてリハーサルを重ねながら、青春時代の楽しかったことやつらかったこと、先生や友人とのやりとりを思い出し、それが大きな活力になりました。他のメンバーからも、この機会を心から楽しみ、いきいきと演奏しているのが伝わってきましたね。
本田耕一先生のプロデュースで実現したこの楽団は、本当にクオリティの高い演奏家ばかりで、音程もバシッと合うし、それほど緻密に打合せをしなくてもアイコンタクトでパッと息が合う。良いオーケストラやバンドって、自分の出番ではない時や他の人のソロの時も、演奏者自身がお客様に向かって「この演奏いいでしょう」と自慢したくなるんです。誰かのソロに聴き惚れて、つい出るのを忘れてしまいそうになるほど。自分がその一員であることを幸せに感じました。
音楽に取り組む次世代の皆さんに伝えたいのは「音楽は自分を表現する手段だから、どんな形であっても続けてほしい」ということです。そして、楽しむことも大事だけれど、コンクールなどの厳しい舞台に挑戦するなら、やはり上をめざして真摯に努力してほしい。苦しい練習を乗り越えてこそ自分の殻を破って進化できるし、本番で演奏を楽しむこともできるのですから。
ふだん吹奏楽団で演奏している私にとって、あまり交流のないオーケストラの素晴らしい奏者の方々との共演は、緊張はしたものの、とても新鮮で貴重な経験でした。私の所属する「Shion」では、新しい曲の開拓に積極的に取り組んでいますが、今回の演奏会は、吹奏楽部の中高生にとっても憧れの人気曲を中心にしたラインナップ。酒井格先生の「たなばた」はサックスがフューチャーされていますし、各パートの超絶技巧が満載の曲もあり、演奏していても本当に楽しく、聴き所がたくさん詰まった演奏会になったと思います。オーケストラの演奏会というと少し敷居を高く感じる人でも入りやすく、管楽器主体の吹奏楽だからこその迫力や、オーケストラとは違う音色のパレットを楽しんでもらえたのではないでしょうか。
大阪芸術大学は、練習に集中できる環境が整っており、1年生からオーケストラやバンドに参加して大きな舞台に立つチャンスも多く、私から見てもうらやましいほどです。せっかく総合芸術大学に通うのであれば、技術を磨くだけでなく、他学科の人と交流して色々な感性や刺激にふれ、人間としての幅を広げてほしいですね。音楽に反映できるのはもちろん、ここで得た経験や人とのつながりを社会に出てどう役立てていくか、真剣に考える4年間にしてもらえたらと思っています。
今回集まったのは関西の第一線で活躍し、よく知っている演奏家ばかり。スペシャルな仲間と一緒に演奏できることがとても楽しく新鮮で、こうした場を実現してもらえたことに感謝しています。私自身“吹奏楽っ子”なので、久しぶりに取り組めたのは大変嬉しく、オーケストラ曲の編曲版ではなく吹奏楽のために作曲された大好きな曲を演奏することができて心が躍りました。
当日は中高生が大勢来てくれましたが、これをきっかけにして、演奏会にたくさん足を運んでもらいたいと思います。今は動画で音楽に接する人が多い時代だけれど、演奏家をめざすなら、演奏会に行かないのは本末転倒でしょう。また音楽はコミュニケーションですから、人とのコミュニケーションが取れなければ、ソロはできてもオーケストラや吹奏楽は難しい。生の音をダイレクトに自分の耳で聴き、人と直接関わりあうということを大切にしてほしいですね。
音楽家は、何のために音楽をやるのか、目標や目的を明確に持つことが重要です。私も常にそれを探し続け、この演奏会で受けた刺激も、さらなる高みをめざすための糧や起爆剤になっています。若いうちは失敗を恐れることなく積極的にチャレンジしましょう。失敗してもそれを次の成功に変えるために考え抜いて練習する、前向きな姿勢を持ち続けてください。
私の学生時代から音楽系の大学では「大阪芸大の金管はすごい」と評判が高く、憧れの存在でした。当時からの名プレイヤーも参加したこの楽団の一員としてステージに立つことができたのは、非常に光栄です。その一方で、色々な演奏者が集まって一から音を創りあげることに対する不安も感じていたのですが、合わせてみたら驚くほどの一体感がありました。一人ひとりがこれまで磨いてきた技術と経験、「いい音楽を作ろう」という気持ちが一つになり、伊勢先生のツボを押さえた指揮もあいまって、本当に質の高い演奏になったと思います。
メンバーの大半が、中学や高校の吹奏楽部時代から努力を積み重ねて今に至っているわけですから、演奏家を志す学生にとっても、将来の姿を思い描くチャンスになったのではないでしょうか。「プロになれるのは一握りの人だけ」と早々にあきらめてしまわず、夢に向かって突き進むのも一つの選択。私自身も、やりたいことを一生懸命やっていくうちに夢へ続く道が開けてきたのです。
そして今回のような機会に、演奏会の楽しさを知ってもらって、音楽のイメージをたくさん頭の中にインプットしてほしいと思います。それをアウトプットするために練習をすることで、良い循環が生まれ、練習や部活動がもっと楽しくなるはずです。
オファーをいただいた時は、名前の通りまさに「夢のウインド・オーケストラ」だと驚き、実際に蓋を開けてみたら、本当にすごい演奏家ばかり。リハーサル開始当初は自分の演奏で精いっぱいでしたが、だんだんと周りのゴージャスなサウンドをじっくり味わえるようになり、その中で演奏できる贅沢さに浸って、久しぶりに心からワクワクする体験ができました。
私も中学・高校と吹奏楽部で活動し、今回のプログラム「フェスティヴァル・ヴァリエーションズ」は、高校生の時にコンクールで演奏した曲。その時の記憶がよみがえって、とても楽しかったです。当時は他の人の演奏にふれる機会があまりなく、カセットテープを複製して聴いたりしたものですが、今はYouTubeで簡単に色々な演奏に出会うことがきます。でも動画で聴くのと会場で生の演奏を聴くのはまったく別ものですから、若い人には本物の音の魅力を肌で感じてもらいたい。今回の演奏会が「こういう演奏をやりたい」という目標になればいいですね。
私は大阪芸術大学の教員としてパーカッションの指導にも当たっていますが、ここには色々な学科が揃い、単科大学とは違う幅広い学びができます。大きなステージや他学科とのコラボなどいろいろな経験を積み、演奏家としての力に変えていってほしいと願っています。
<出演者紹介>
Piccolo
礒田 純子 [Osaka Shion Wind Orchestra]
Flute
上野 博昭 [京都市交響楽団・大阪芸術大学 講師]
永江 真由子 [日本センチュリー交響楽団]
椎名 朋美 [関西フィルハーモニー管弦楽団]
三原 萌 [大阪交響楽団]
Oboe & EnglishHorn
大島 弥州夫 [大阪フィルハーモニー交響楽団・大阪芸術大学 講師]
東口 佐和子 [アンサンブル神戸]
土井 恵美 [京都市交響楽団]
Bassoon
村中 宏 [京都市交響楽団]
常田 麻衣 [大阪芸術大学 講師]
E ♭ Clarinet
村西 俊之 [大阪芸術大学 講師]
1st Clarinet
篠原 猛浩 [大阪芸術大学 講師]
吉野 亜希菜 [東京交響楽団・桐朋学園大学 講師]
菅原 瑞紀 [フリーランス]
2nd Clarinet
上田 浩子 [大阪音楽大学特任准教授・大阪芸術大学 講師]
森 奈穗子 [フリーランス]
東山 梓 [ウインドアンサンブル奏]
3rd Clarinet
松尾 依子 [ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団・大阪芸術大学 講師]
船隈 慶 [大阪フィルハーモニー交響楽団・大阪芸術大学 講師(2024年度より)]
山下 真理奈 [兵庫芸術文化センター管弦楽団]
Alto Clarinet
新 竜馬 [フリーランス]
Bass Clarinet
仙䑓 玲 [Osaka Shion Wind Orchestra ・大阪芸術大学 講師]
Contrabass Clarinet
高橋 由有子 [ウインドアンサンブル奏]
Alto Saxophone
福田 亨 [Osaka Shion Wind Orchestra・大阪芸術大学講師]
崔 勝貴 [大阪芸術大学講師]
Tenor Saxophone
髙畑 次郎 [Osaka Shion Wind Orchestra]
Baritone Saxophone
小川 幸子 [ドルチェ大阪 ミュージックアカデミー講師]
Trumpet
篠崎 孝 [大阪フィルハーモニー交響楽団・大阪芸術大学 講師]
小畑 裕哉 [フリーランス]
髙見 信行 [大阪フィルハーモニー交響楽団]
中島 真 [大阪芸術大学 講師]
福中 明 [神戸女学院大学 講師]
横田 健徳 [岡山フィルハーモニック管弦楽団]
Horn
高橋 将純 [大阪フィルハーモニー交響楽団・大阪芸術大学 講師]
小椋 順二 [京都市交響楽団]
世古宗 優 [奈良フィルハーモニー管弦楽団]
水無瀬 一成 [京都市交響楽団]
Trombone
玉木 優 [ソリスト]
戸井田 晃和 [Osaka Shion Wind Orchestra]
福田 えりみ [大阪フィルハーモニー交響楽団]
Bass Trombone
小西 元司 [京都市交響楽団]
Euphonium
深川 雅美 [大阪芸術大学 講師]
安岡 やよい [神戸女学院大学 講師]
Tuba
潮見 裕章 [大阪交響楽団・大阪芸術大学 講師]
川浪 浩一 [大阪フィルハーモニー交響楽団]
String Bass
四戸 香那 [ブラスパラダイス大阪]
宮田 雄規 [関西室内楽協会]
Percussion
堀内 吉昌 [大阪フィルハーモニー交響楽団・大阪芸術大学客員教授]
井口 雅子 [大阪フィルハーモニー交響楽団]
奥田 有紀 [大阪教育大学講師]
角 武 [関西フィルハーモニー管弦楽団]
髙鍋 歩 [Osaka Shion Wind Orchestra]
田中 雅之 [奈良フィルハーモニー管弦楽団]
中村 拓美 [大阪フィルハーモニー交響楽団]
吉田 周平 [フリーランス]
Harp
松尾 徳子 [フィルハーモニック・ウインズ大阪]
Piano
初瀬川 未雪 [大阪芸術大学 講師]
Banda Trumpet
橋爪 伴之 [大阪芸術大学 教授]
泉谷 真衣 [大阪芸術大学 学生]
小禄 美奈 [大阪芸術大学 学生]
長尾 和香 [大阪芸術大学 学生]
中西 陽菜 [大阪芸術大学 学生]
山藤 留奈 [大阪芸術大学 学生]
Banda Trombone
加藤 陽介 [大阪芸術大学 演奏要員]
阪口真都 [大阪芸術大学 学生]
賓 健一 [大阪芸術大学 学生]
Conductor
伊勢 敏之 [大阪芸術大学 教授]