2025年8月4日〜23日、大阪・関西万博のよしもと waraii myraii館・アシタ広場で「アートのアシタ 大笑展」が開催されました。これは、デザイン学科の3年生対象のデザインプロジェクトで、デザイン学科客員教授の杉山恒太郎先生のもと、2022年より実施されてきた吉本興業との「waraii myraiiプロジェクト」の1つです。万博会場では、2024年度の学生のアイデアが形になった盆踊りステージも、「盆踊りのアシタ」で使用されました。
waraii myraiiプロジェクトは、過去4年、大阪・関西万博での実現をめざして取り組まれてきました。数々のアイデアの中から、2022年度の学生がネーミングを提案した「大笑展(だいしょうてん)」が採用され、2025年度の学生を中心に実現化。大阪・関西万博 よしもと waraii myraii館にて、大阪芸術大学の学生と卒業生、吉本芸人による「笑い」をテーマにしたポスター40点が展示されました。
このプロジェクトを指導したのは、カンヌ国際広告祭ゴールドなど国内外で多数の賞を受賞してきたクリエイティブ・ディレクターであり、エグゼクティブプロデューサーの杉山先生、アートディレクター/デザイナーの古平正義先生(デザイン学科 客員教授)、プロデューサーの藤川陽先生(デザイン学科 客員准教授)です。2024年度および2025年度の3年生は、授業の一環として大笑展に展示する作品を制作。先生と1対1のディスカッションや、クラス全体での講評を経て作品をブラッシュアップしていきました。学生からは「先生のアドバイスを生かす中で、最初のアイデアから大きく変化し、他の学生の作品の進化にも刺激を受けました」という声が聞かれました。
また、授業で制作された作品だけでなく、学科や学年を問わず公募も行われ、最終的に、その中から展示される作品が選抜されました。会場では、在校生22人、デザイナー・前田高志氏、アーティスト・石塚大介氏ら活躍中の卒業生に加え、くっきー氏(野性爆弾)、酒井藍氏、中野周平氏(蛙亭)など吉本興業の芸人12名など、40点の作品が展示されました。
大笑展初日の8月4日には、大阪芸術大学副学長の塚本英邦先生、杉山先生、古平先生、藤川先生と共に、展示されたポスターを手がけた学生と卒業生22人が万博会場を訪れました。杉山先生は、「2022年からスタートしたプロジェクトである大笑展が開催され、感無量です。ちょうど万博開催の年に3年生になった学生は本当に幸運だと思います。『大笑展』という言葉は2022年度の学生から生まれ、吉本興業にも非常に気に入っていただき、ここまで大きな形になったことは素晴らしいことです。選抜され会場に作品が展示された学生は一生の思い出になるでしょうし、私自身もうらやましいです」と話します。学生たちの挑戦と成長の証となった大笑展は、笑いとデザインの力で人と人をつなぎ、多くの来場者を魅了しました。
2024年度と2025年度の3年生については、授業の中でポスター制作を行い、学生たちのアイデアにプロとしてさまざまなアドバイスを加え、完成度を高めていきました。その制作過程も含め、思い入れの深いプロジェクトとなりました。今回は学生だけでなく、卒業生や吉本興業の芸人による作品も並び、異なる立場やバックグラウンドが交わることで、ねらい通りの“良い化学反応”が生まれたと感じています。大阪は「笑いの街」と呼ばれ、万博における吉本興業のパビリオン名も「よしもと waraii myraii館(笑いが未来を作る)」。まさに「笑い」がテーマになっています。「笑い=笑顔」であり、世界情勢が不安定な今こそ、笑いは人と人をつなぐ潤滑油であり、平和を生み出す大切なコミュニケーションの技術だと思います。また、大阪という街には、他にはない笑いの知恵があります。たとえば何か失敗しても落ち込まず、「笑いをとるネタができた」と前向きにとらえる心の転換力。これは知恵であり、賢さです。大阪芸術大学の学生たちにも、そのたくましさを感じ、うらやましく思うことがあります。
授業でのポスター制作を通じて、自分の怠けがちな部分が鍛え直され、とても刺激的な経験になりました。テーマが「笑い」だったこともあり、明るいイメージで楽しく制作できました。私は「温かい笑い」をコンセプトに、人と人がハグをしているモチーフの作品を制作しました。デジタルで描くことが苦手だったため、最初は手描きから始めましたが、それをベースにトレースしたり、先生方と相談したりしながらブラッシュアップを重ねました。やがて「一からデジタルで描いてみよう」と挑戦した結果、意外に良い仕上がりとなり、そこから何度もチャレンジを重ねて完成に至りました。その作品が大阪・関西万博の会場で展示され、多くの人に見てもらえたことは、本当にうれしい出来事でした。このプロジェクトを通して学んだのは、「思い切って挑戦することの大切さ」です。これまでは小さな修正にとどまっていましたが、初めて大きく方向転換をして成功体験を得られたことが、最大の学びでした。また、第一線で活躍するプロのデザイナーの先生方から直接アドバイスをいただける機会は非常に貴重であり、自分から積極的にコミュニケーションをとることの重要性も実感しました。
今回制作した作品は、近くで見ると斑点のように見えるものが、遠目では「だるま」に見えるという視覚的な面白さをテーマにしました。特に挑戦したのは、コードを使ったグラフィック制作です。プログラミングから生まれる美しさや、その手法の新しさに惹かれて実践しましたが、プログラミングは初めてで、何も分からない状態からグラフィックとして形にしていくのはとても難しく、時間もかかり、焦りを感じることもありました。それでも、大阪・関西万博という大きな舞台で、1人のクリエイターとして自分の作品が展示されたことには大きな誇りがあります。授業の一環でこうした貴重な機会をいただけたことは本当に幸運でした。他の作品を見る中で、自分と同じ手法を使っていても全く異なるビジュアルに仕上がっている例があり、とても参考になりました。また、芸人さんの作品はユーモアにあふれていて大きな刺激を受けました。将来について明確なビジョンはまだありませんが、デザインを仕事として続けていきたいという思いがあります。今回の経験を通して、コードとデザインを組み合わせた手法を、また別の形でも試してみたいと考えています。私はデザインが心から好きで、好奇心も旺盛です。だからこそ、自分の「好き」に忠実になり、たくさん行動することが何より大切だと感じています。