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大阪芸術大学ウィンド・オーケストラ 第42回定期演奏会 大阪芸術大学ウィンド・オーケストラ 第42回定期演奏会

演奏学科 / PickUP
2022/01/24

2021年10月20日、ザ・シンフォニーホール(大阪市北区大淀南)にて「大阪芸術大学ウィンド・オーケストラ 第42回定期演奏会」が行われました。

大阪芸術大学ウィンド・オーケストラは学生を中心に構成されている吹奏楽団で、おもに木管楽器と金管楽器、打楽器で編成されています。今年は2人の偉大なる作曲家のメモリアルイヤーで、生誕100周年のアルフレッド・リード(アメリカ)と、没後50周年のイーゴリ・ストラヴィンスキー(ロシア)の楽曲が演奏されました。

指揮は、A.リードの作品を演奏学科教授・伊勢敏之先生が、I.ストラヴィンスキーの作品を演奏学科客員教授・牧村邦彦先生が、それぞれ務めました。

数々の名演が生まれた
同じステージで演奏

会場となったザ・シンフォニーホールは、1982年に誕生した日本初のクラシック専用ホールです。先進音響技術を導入することにより、クラシックコンサートホールにおける最も良い響きとなる音響学上の数値「満席時残響2秒」を実現したこのホールには、国内外を問わず、プロの音楽家や演奏者が多数出演しています。客席(1704席)はステージを取り囲む、アリーナ(円形)形式で配置されており、ステージ背後の壁面にはスイス・クーン社製の本格的なパイプオルガン(パイプ総数3732本、3段鍵盤+足鍵盤、54ストップ)がそびえ立ちます。

会場には幅広い年代の吹奏楽ファンが集まり、そのなかには、さまざまな学校の制服を着た中高生の姿も多く見られました。

楽器を手に楽団員たちがステージ上に現れ、学生たちの様子は、これまでの練習に自信のある顔つき、やや緊張ぎみの表情、一流の舞台からの眺めを楽しんでいるような面持ちなどさまざまでした。

聴く者を曲の世界に引き込む
ウインド・オーケストラの迫力

一曲目の「アレルヤ!ラウダムス・テ(邦題:我ら汝を誉め称えん)」では、冒頭の分厚く響くファンファーレ風のフレーズが会場の空気を一気に変え、力強い響きながらも厳かな楽曲の世界へ、聴く側をいざないます。

悠々と流れる大河や、あらゆる生命を生み出す大地のようなダイナミズムを感じさせる、ゆったりとした伴奏。その上をさまざまなフレーズで、幾重にも音が重なり合いながら展開していきます。

後半からはパイプオルガンが加わり、オーケストラが発する音をさらに下から押し上げ、響きに奥行きをもたらします。さまざまな楽器による追いかけ合うようなフレーズの応酬からクライマックスに向けて、全楽器がひとつになって楽曲のテーマを奏でていきます。その響きは壮大なスケールで語られる叙事詩のように力強く、楽曲が終わった後も観客席には高揚感が漂っていました。

第一部では、A.リードの4作品が演奏されました。


●アレルヤ!ラウダムス・テ

●「春の猟犬」序曲

●シンフォニック・プレリュード

●アルメニアン・ダンス パートⅠ


「シンフォニック・プレリュード」が静かに、そしてゆったりとした響きで始まりました。この曲は、アメリカ南部のアパラチア地方の民謡「黒色は私の真の恋人の髪の色」のメロディーをもとに書かれたものです。それぞれの楽器の、抑制が効きながらも芯のある音が、一つのフレーズを少しずつ変化させながら、重なっては離れていきます。その響きは、聴く側の遠い記憶に結びついていくような、ノスタルジーを感じさせる、少し切ない旋律となって観客を魅了しました。

物語が聴こえる吹奏楽

第二部では、I.ストラヴィンスキーの2作品が演奏されました。


●管楽器のための交響曲 1947年版

●組曲「火の鳥」1919年版



組曲「火の鳥」は、ロシアの民話を題材にした、バレエ作品につける曲として作曲されました。


バレエ作品「火の鳥」のあらすじ

主人公は火の鳥を追っているイワン王子。追っているうちに魔王カスチェイの庭園に迷い込みます。そこで庭園にある黄金の林檎を食べに来た火の鳥を捕らえることに成功します。すると、火の鳥が「私を解放してくれたら、その引き換えに、あなたの危機のときに呼ばれれば、必ず助けに行きます」と懇願。その証しに羽を1枚ぬき、王子に渡しました。王子はこの願いを聞き入れ、火の鳥を放しました。

 庭園の先には魔王の城があり、城門から13人の乙女たちが現れます。黄金の林檎がなる「魔法の木」のもとで舞を踊る彼女たち。その様子を物陰からみていた王子は、そのうちの一人、ツァレヴナ王女に恋をし、近づきます。しかし彼女たちは魔王の魔法によって囚われの身になっていたのです。夜が明けると、彼女たちは再び城へと閉じ込められました。

王女たちを助けようと城に乗り込む王子。しかし、魔王の手下に捕らえられます。魔王が王子を石に変える魔法をかけようとしたそのとき、王子が火の鳥の羽を振りかざすと……。


組曲「火の鳥」1919年版は、次の7曲で構成されます。

●序奏

●火の鳥とその踊り

●火の鳥のヴァリアシオン

●王女たちのロンド

●魔王カスチェイの凶悪な踊り

●子守唄

●終曲

「序奏」は2台のコントラバスの演奏から始まります。1台は弓を用いて弾き、もう1台は弦を指ではじいています。これらの低音が、体にまとわりつくような重い空気、じわじわと広がってくる闇、刻一刻と過ぎていく時間を感じさせながら、聴く側を異質な世界へといざなっていきます。


「火の鳥のヴァリアシオン」では、木管楽器の高音域の音がステージ上のあちこちから鳴り、まったく予想のつかないかけ合いが始まります。音が発せられた方向へ目を向けると別のところで音が出ます。音を目で追いかけても捉えられないさまは、まるで火の鳥が俊敏かつ自由に飛び回っているかのようでした。


「王女たちのロンド」では、ハープの伴奏にのせて、オーボエによる旋律が会場に朗々と響きわたります。その音はしなやかで美しく、スリリングな曲調が続いていたなか、観客席にくつろぎのひとときをもたらしていました。

すると突然、短い前打音とともに、一斉に各楽器による爆発するような大きな音が出され、再び会場に緊張が走ります。「魔王カスチェイの凶悪な踊り」です。地を這うような金管楽器の低音域の伴奏によってますます空気が張り詰めていき、中音域の骨太な旋律は魔王カスチェイの強烈な破壊力を表現しているようでした。


「終曲」は、ホルンによるすべてを包み込むような温かい音色の旋律で始まります。夜がだんだんと明け、朝日が昇っていくようなメロディーは、観客席に安堵と希望を与えていました。そのメロディーはオーケストラ全体へと引き継がれ、さまざまな響きを繰り返してクライマックスを迎えます。下から押し上げるような力強い伴奏に加え、金管楽器の存在感あふれる旋律が会場内に響きわたり、きらきらと輝くように楽曲は締めくくられました。


 拍手のなか、指揮者が順番に、演奏した楽曲で活躍した奏者に合図を送り、立つように促します。立ち上がり、一礼したあとの学生たちの表情は、「演奏をやり切った」という高揚感を抑えつつも、達成感からか、ときおり笑みがこぼれていました。

演奏学科/教授
伊勢 敏之 先生

学生たちと向き合うときの私のこだわりは、彼・彼女たちのなかにあるものを引き出したい、ということです。
私が今まで感じたなかで、ものすごく良い演奏でも2種類あります。一つは「こうしなさい」と指揮者や指導者が言って、そのようにしている演奏。もう一つは、楽譜を読み、感じ取って、自分がどういう風にやりたいかをイメージしたうえでの、心の発露でやっているのびのびとした演奏です。言われた通りにすることが最高の答えになって、みんながそこへ向かって一つになれば、素晴らしいものが出来上がるのですが、私個人としては、後者の「のびのび」としている演奏の方を好ましく思います。ですので、学生が自分で感じて、そのように演奏したくなるにはどうすればいいのか、ということを常に考えています。
本番のステージで学生たちに分かってほしいのは、観客の前で演奏ができるのは当たり前ではない、ということです。一連のコロナのこともあり、ステージ立つこと自体が、ほんとうに感謝すべきことであることを心に留めていてほしいです。また、自分たちはステージ上でスポットライトを浴びるわけですが、裏方では学生たちの演奏を成功させるために、いろいろな方が見えないところで支えてくださっている。これにもぜひ、学生たちには気づいてほしいです。そのような感謝の気持ちをもって演奏すれば、音楽を聴きにいらした観客のみなさんに伝わるものが変わってくるのではないかと思います。
一つの本番があるということは大きな目標となります。学生たちが本番に向かって真剣に取り組んできたなかで、出来ていなかったことが出来るようになっていたりするなど、多くの学生が急速に成長しました。やはり学生たちは可能性を秘めていると思います。一つの目標を終えても、これを糧にして、次の本番に向けてさらなる高みに臨んでいってほしいです。

演奏学科/管弦打コース4年/トランペット担当
篠﨑 唯奈 さん

トランペットという楽器は息の使い方が大事で、これで音の良し悪しが決まります。本番に向けての練習では、先生から、もっと響く音で遠くに鳴る息の入れ方を教わりました。練習中はあまり実感できなかったのですが、ザ・シンフォニーホールで実際に意識しながら吹いてみると、自分の音がすごく遠くまで届いていることが分かりました。「あ、この音だ」と思いましたね。みんなで一斉に音を出しても、自分の音が聞こえてきましたので、良い音が響いて鳴っていたと思います。
大阪芸術大学演奏学科でトランペットを勉強してきましたが、楽器を学ぶことへの思いがより強くなったのは、2年生のときの冬の定期演奏会です。「メサイア※」という曲にピッコロトランペットで出演しました。その曲中でオーケストラの伴奏が鳴るなか、学科長 三原剛先生(バリトン)の歌と私が吹くトランペットの掛け合いがありました。会場はフェスティバルホールと決まっていたのですが、本番では千何百人もの観客の前で吹くことにすごくプレッシャーを感じ、練習中はうまく吹けませんでした。トランペット担当の先生のバックアップを受けながら何度も練習を重ねたものの、本番前日でも全然できなくて、とても悔しかったです。しかしそれまでの練習の日々が私の背中を押し、「やるしかない」と自分に言い聞かせ、当日も「絶対にやる」という強い気持ちで本番に臨みました。すると、うまく吹けなかったところもちゃんと吹けることができたのです。もう本当に、悔いの残らない演奏ができました。このときに本番で吹く楽しさ、広いホールで自分の音を観客のみなさんに届けることのうれしさを知り、「もっとトランペットをがんばりたい」と思うきっかけになりました。
卒業後は、もっと練習してトランペットの技術を磨きたいと思っています。これと並行して、吹奏楽を通して得た知識や経験を吹奏楽を頑張る中高校生たちに、何らかの方法で伝えることが出来ればいいなと思います。

※メサイア/作曲: G.F.ヘンデル

演奏学科/管弦打コース4年/サキソフォン担当
久保 遥香 さん

練習で先生に言われたのは、「音を切るときは、はっきり切る」ということです。実際、本番のホールで吹くと、普段の練習と比べて余韻の響きが長かったので、先生のおっしゃったことを意識しました。メリハリのある演奏ができたと思います。
私のなかでは、I.ストラヴィンスキーの楽曲はほかの作曲家と比べて少し変わっているイメージがあります。曲を演奏するときは、「元気に」など分かりやすい表現が多いのですが、I.ストラヴィンスキーの作品は表現が難しかったです。指揮の先生からは「気味悪く」とか「ため息のように」という、ひと味違った指示がありました。楽しく演奏できましたので、うまく表現できたと思います。
今後もいろいろな表現を勉強して、演奏に生かしたいです。将来は喜怒哀楽のほかに、「恐れ」とか「焦り」なども聴いている方に伝えることができるような奏者になって、フリーランスで活動したいと考えています。
大阪芸術大学の良いところは、周りにとても自然が多いことですね。リラックスしながら自分の勉強に向き合えます。演奏学科の良いところは、先生と学生の距離がとても近いところです。演奏のレッスンで細かく見てもらえるのはもちろんですが、楽譜に書かれていることや演奏の技術について質問したいことがあれば、授業以外でも親身に答えていただけます。学びたいという気持ちに寄り添ってくれる先生がいるのは、とても心強いと思います。