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声優学概論 声はパッション!! 声優学概論 声はパッション!!

放送学科
2023/11/29

2023年10月22日、兵庫県立芸術文化ホールにて、「声優学概論 声はパッション!!」が開催されました。

放送学科声優コースの3年生、短期大学部 メディア・芸術学科声優コースの2年生にとって、これまでの学びを総括する大舞台。朗読劇からダンスまで、さまざまな演目が繰り広げられ、熱意あふれる学生たちのパフォーマンスが来場者たちの目を釘付けにしました。第2部のトークコーナーでは、大ヒットアニメ「シティーハンター」制作の裏側や、教授を務める声優陣から声優志望者へのメッセージが語られ、アニメ制作や声優業界について知見を広げる、またとない機会となりました。

叙情的な演技で
観客を引き込む朗読劇

第1部では冒頭から3作の朗読劇が上演され、トップを飾ったのは平野正人先生の脚本・構成・演技指導による『グスコーブドリの伝記』。宮沢賢治の原作を独自の解釈でアレンジし、両親や妹と生き別れた後、火山局の技師へとたくましく成長するグスコーブドリ(ブドリ)の物語をダイジェストで描きました。純粋な心を持つブドリを、はつらつとした演技で表現し、イーハトーブを冷害から救うために自らを犠牲にする姿は、気高い人間性を感じさせました。

続いて披露されたのは、日本の代表的なおとぎ話を太宰治がパロディとして再解釈した『御伽草子』の中の一説『舌切雀』で、佐藤正治先生が脚色・演出を担当しました。太宰作品の重厚なイメージとは裏腹に本作は明るい作風が特徴。「おじいさん」と呼ばれる世捨て人の主人公、「おばあさん」と呼ばれる主人公の妻、おじいさんに救われる雀のやり取りがユーモラスに表現され、終始けだるそうなおじいさんと短気なおばあさんのギャップが思わず笑いを誘います。太鼓やシンセサイザーなどの楽器演奏も物語の世界観に深みを与えていました。

短期大学部による『チリンのすず』は、渡辺菜生子先生が演出を担当。子羊だったチリンが母親を殺した狼・ウォーにあえて弟子入りし、愛憎入り混じりながら復讐を果たす様子がドラマチックに表現され、原作者・やなせたかしの「争いと報復は何も生まない」というメッセージを伝えます。『ちびまる子ちゃん』で渡辺先生と共演するTARAKOさんが冒頭の詩に曲を付け、劇伴のピアノも学生が編曲するなど、音楽面での演出にも力を入れていました。

松野太紀先生指導のアテレコ実習
エネルギッシュな『外郎売りパフォーマンス』

第1 部も佳境に入り、ステージは松野太紀先生の指導によるアテレコ実習へ。

大学内にある、学生の講義専用の為のプロ使用スタジオ、vs(バーサス)スタジオにて繰り返し行われたオーディション。その難関を勝ち抜いた選抜メンバーたちが、入れ替わり立ち替わりさまざまな登場人物たちに命としての声を吹き込んでいく。

そして、緊迫するストーリー展開を見事に演じ切った学生たちの熱演ぶりが、ご来場くださった皆様にも伝わったようでした。

いよいよ最後の演目となり、ステージで繰り広げられたのは、伊倉一恵先生の指導による『外郎売りパフォーマンス』。『外郎売り』は、アナウンサーや俳優の滑舌トレーニングで頻繁に使用される歌舞伎十八番の演目で、矢継ぎ早に繰り出される早口言葉に激しいダンスを組み合わせたパフォーマンスは、今や声優学概論の名物となっています。ステージングはすべて学生たちだけで考案し、幻想的なオープニングや、往年のヒット曲に『外郎売り』のフレーズを当て込んだ歌唱、さまざまなジャンルを網羅したダンスなど、めくるめく展開で観客を圧倒しました。

レジェンド&フレッシュ声優陣による
劇場版『シティーハンター』制作エピソード

第2部では、伊倉一恵先生と、芸術計画学科教授で30年以上にわたって読売テレビのアニメプロデューサーを務めてきた諏訪道彦先生が登壇。伊倉先生が出演する『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が公開されたことを受け、制作時の裏話や、テレビアニメ版制作時のオーディションで伊倉先生と諏訪先生が出会った際の思い出が語られました。また、エンディング曲であるTMネットワークの『Get Wild』について、諏訪先生がどのような思いで小室哲哉さんに楽曲を発注したのか、そして、この曲を使った演出が当時、いかに画期的であったかというエピソードには、客席から感嘆の声が上がっていました。

このコーナーでは、声優コースの卒業生から祖山桃子さん、三野雄大さん、大槻丈一郎さんが登壇。祖山さんと大槻さんは『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』、三野さんが前作『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』に出演しています。作品について「両親が見ていたあの世界に入れる! という喜びと共に役柄に説得力を持たせられるように頑張ろうと思いました(祖山さん)」「音楽も含め、中学生の時からスタイリッシュな作品だなと思っていました。テストの時に思い切り演じたら、みなさんに覚えていただけて嬉しかったです(大槻さん)」「アニメ声優としての初めての仕事が『シティーハンター』でした。作中、第一声を出す役柄なのでとても緊張しました(三野さん)」と、それぞれに現場での体験や思い入れを話していました。

最後は『声優コースの今「トークセッション〜未来の声優たちへ〜」』と題し、真地勇志先生が司会を担当。教授陣から、学生や声優をめざす若い世代に向けたメッセージが語られました。「どんどん前に出て、喜怒哀楽のある人生を送って欲しい(真地先生)」「羞恥心がある人ほど声優の道をめざして欲しい(平野正人先生)」「心のアンテナを広げ、さまざまな作品を見て欲しい(松野太紀先生)」「みんなが抱く声優への幻想を一度リセットし、お芝居、表現をしっかり教えたい(佐藤正治先生)」「短大の2年は、あっという間。次年度からは、さまざまな授業を取れるようにして学びの可能性を広げたい(渡辺菜生子先生)」と、長年、最前線に立ってきたプロ声優からの熱いアドバイスに学生たちも聞き入っていました。

「声はパッション!」というタイトルが示すように情熱的なパフォーマンスが繰り広げられた今回の声優学概論。未来を担う人材の育成に注力する声優コースの今後に、一層の期待がかかります。

真地 勇志
放送学科 声優コース教授
真地 勇志 先生

声優学外論は、声優コースの3年生が、これまで積み重ねてきた学びを発表する総決算の場。めったに立てない大舞台でパフォーマンスができるということで、学生たちも毎回、想像以上の力を発揮しています。緊張感はもちろんありますが、先生方もリハーサルから「楽しんでいこう!」と声掛けしてくださっているので、とても良いムードの中で本番に臨めたと思います。公演後は学生たちが、みな一様に自信を付けたような印象を受けるので、本公演への取り組みが成長にもたらす影響は極めて大きいです。
声優コースは2011年に設立されて以来、4年制大学としては珍しい、声優に特化した教育の場として、多くの志望者を受け入れ、私の所属する青二プロダクションの「優れた声優は優れた俳優でもある」という基本理念に則って、人材育成に注力してきました。現在の声優業界では歌や顔出しでのドラマ出演を行う人も増えており、こういったマルチな活動にも対応できるようなカリキュラムを用意していますが、それに限らず自主的にレッスンを受けるなど、積極的な姿勢を持つことで将来の選択肢も増えてくるでしょう。大阪芸術大学は、アートやカルチャーを総合的に学べる環境にあるので、ぜひ、学科の垣根を超えた交流を持ち、成長の糧にしてほしいと思います。
声優は声で人を感動させられるという充実感に満ちた仕事である一方、第一線で活躍し続けられる人は極少数。芽が出るまでアルバイトをしながら続けているという人もたくさんいます。中には道を断念する人もいますが、サービス業や営業職など、職種は違っても、このコースで学んだ内容は、声を使う場面で必ず生きてきます。4年間の学生生活の中で、自分の声をどのように生かすかをじっくり考えてもらえたらと思います。

放送学科 声優コース卒業生
祖山 桃子 さん

前回に続いて卒業生として声優学概論に出演でき、たいへん嬉しく思います。学生のみなさんは、ダンスや歌のレベルがとても高く、現在の声優業界におけるアーティスト・アイドル活動にも対応できる才能を備えていることを実感します。また、上演された作品を通して先生と学生のみなさんとの意思疎通が見えてくるのも印象的でした。
みなさんの頑張りを見ていると、自分のデビュー当初を思い出します。当時は現場で体験するすべてが初めてで、仕事に慣れるまで本当に苦労の連続。アニメ作品では10〜30人でいっせいにスタジオに入り、自分のマイクの番号や位置を確認しつつ初めて見る映像にタイムを合わせながらセリフを言うので、新人だった自分にとっては緊張感この上なかったです。ナレーションの現場では番組の趣旨に合わせた語り口を用意しないといけないので、こういった部分は、それまでの人生経験が大きく役に立ってくるかと思います。そのためにも普段からのインプット作業は大事で、今、現役で学んでいる人たちは、面白いと思ったことにどんどん目を向けてほしいです。私は1〜2年生でほとんどの単位を取得したので、3年生からは他の学科の授業をよく聴講していました。自分の学科と接点がなくても興味が向けば足を運び、アイデアの引き出しを増やすことができたのは総合芸術大学という環境ならでは。4年間でさまざまなジャンルの芸術に出会うことができ、自分に合ったものを取捨選択することでおのずと進むべき方向性が見えてくると思います。
自分の今後の目標として、いろいろ思い描くことはありますが、今は1つ1つのお仕事にしっかり取り組むことで結果を出し、将来へのステップアップに繋げていきたいと思います。

放送学科 声優コース3年生
尾谷 香月 さん

私は中学生の時に下野紘さんの出演されている作品に触れたことから声優という職業があることを知り、高校時代に演劇部の活動で演技の楽しさを知ったことで、演じることを一生の仕事にしたいと思うようになりました。高校時代の経験と下野さんへの憧れから声優コースを志望。入学後は、役に対しての分析や感情の動きの重要性を、より深く知ることができ、これまで自分がムードで演じがちだったことを痛感しました。
今回の声優学外論では、朗読劇『舌切雀』と『外郎売りパフォーマンス』でリーダーを務めさせていただきました。『舌切雀』では太宰治の世界観を表現することに苦労し、全体的なスタッフワークについても余裕がないまま本番を迎えてしまったところが反省点です。しかし、大きな舞台に立てることで得られる良い緊張感はとても刺激になり、本番では、練習での積み重ねを最も良い状態で披露することができたと思います。将来は役者をメインに活動できればと考えていますが、そのためにも、まずは学年末の発表会で行う朗読や演技を、より高いレベルにまで練っていかなければと思っています。そして卒業公演は、これまでの学びを改めて振り返り、4年間の集大成にしたいと思います。

放送学科 声優コース3年生
阿部 夏奈 さん

高校生の頃に『ヒプノシスマイク』という作品でボイスドラマというジャンルに触れ、自分でもやってみたいと思ったことから声優という職業を意識するようになりました。そこから本格的に演技を学べる場を求めて声優コースに入学。授業では、セリフ一つ発するにしても躊躇して失敗してしまい、落ち込むことも多々ありました。しかし、「思い切ってやる」ということを念頭に置き、「とにかく楽しもう!」と思ってからは、少しずつ自分が思い描くような演技ができるようになってきたと思います。今回の声優学概論では、朗読劇『グスコーブドリの伝記』の主人公・グスコーブドリを演じました。オーディションで合格したときは嬉しさと不安が同時に押し寄せ、練習でうまくできない自分に悔し泣きしたこともありました。しかし、あきらめずに最後までやりきったことで、演技の上達だけでなく、参加した全員で舞台の楽しさを共有するという、とても大事な学びを得ることができたのも大きな収穫です。また、お客様に観ていただくことで良い緊張感が生まれ、これまでにない力を引き出すことができました。声優学概論への取り組みで演技に対する意識が大きく変わり、エンターテインメントの世界で生きていきたいという思いがいっそう強くなりました。