2月8日〜15日にかけての8日間、学生たちにとって4年間の集大成と言える「大阪芸術大学 卒業制作展2026」が開催されました。各学科主催の展示会では、独自の感性が際立つ作品の数々が披露され、キャンパス全体が鮮やかなアート一色に。趣向を凝らした学内イベントも行われ、活気あふれる卒業制作展となりました。
本記事では、優秀作品展、大学院修了制作展、大阪芸大グループ卒業制作選抜展、大学院博士課程修了作品演奏会・芸術制作専攻舞台領域修了公演を紹介します。
学長賞や学科賞など栄誉ある賞を受賞した作品を展示する「優秀作品展」が、芸術情報センターの展示ホールやアートホール、回廊ギャラリーで行われました。
作品はアートサイエンス、美術、デザイン、工芸、写真、建築、映像、キャラクター造形、文芸、放送、音楽、初等芸術教育と幅広いジャンル。それぞれの専門性を追求しつつも、既存の枠組みにとらわれない自由で独創的な創作に挑んだ受賞作品は、コースの垣根を越えた学びが得られる総合芸術大学ならではの成果です。
着眼点やテーマ、素材の選定や構成、細部へのこだわりなど、表現のスタイルも千差万別な作品群が一堂に会した会場には、卒業生や保護者、高校生などさまざまな年代の来場者が訪れ、受賞者から制作意図について説明を受ける姿も多く見られました。
美術学科 学長賞 「静かな時間」
油画コース・末竹 葵さん
はかなくも美しい色彩と形の移ろいを表現した空の絵。その一瞬にしか存在しない情景を切り取り、見る人の心に深い余韻を残す叙情性を湛えています。
デザイン学科 学長賞 「VELESTIAL」
プロダクトデザインコース・森 詞葉さん
今から30年後の空陸両用モビリティを構想したプロダクトデザイン。飛行時にはサイクロローター、地上ではメカナムホイールで駆動する様を動画で具現化し、リアルなイメージとして提案しました。
工芸学科 学長賞 「温象包懐」
陶芸コース・文野 芽さん
湯船に浸かることで心が安らぎ、悩みが和らぐことを、アフリカ象と浴槽をファンタジックに融合させることで独創的に表現。手捻りで生み出され、見る人を温かく包み込むような柔らかなフォルムが評価されました。
写真学科 学長賞 「Through it , Through her」
カク ウドウさん
自身のルーツを辿りながら、一年かけて撮影していった記録。故郷の山を背景にしたお母さんのポートレートがシンボリックに作品全体を印象づけています。
アートサイエンス学科 学長賞 データに存在感を与える「データの質量」
尾上 司さん
テクノロジーと芸術を融合させるアートサイエンス学科からは、実体を持たないデジタルデータに存在感を与えた個性的な作品が受賞しました。
放送学科 学長賞 「単身密着 平阪佳久 #世界一幸せな、売れない男」
制作コース・佐藤 凌平さん
入学時からドキュメンタリーを撮りたかったという佐藤凌平さんが、アーティスト・平阪佳久さんに単身密着。逆説的なタイトルで、生き方の新しい視点を提案した力作。
映像学科 学長賞 「マージナルにいる」
監督/西 琉羽玖さん、脚本/織田 香音さん・西 琉羽玖さん、助監督/礒沖 雅さん
アートホールのパイプオルガンの前で上映されていたのは、淡々と続いていく日常を描いた映像学科の作品。30名以上の学生がチームで挑んだ作品。
キャラクター造形学科 学長賞 「FLEET CAT WORLD COLLECTION」
フィギュアアーツコース・橋本 晃汰さん
架空のアニメをフィギュアとして展開した、商品企画にまで踏み込んだ卒業制作。オリジナルキャラクター全16種を細部にまでこだわって制作したフィギュア作品です。
建築学科 学長賞 「存在Xがディスコする場所」
梶田 寛太さん
回廊ギャラリーで展示されていたのは、記号化され希薄になっていく現代社会の人間存在が理屈抜きに解放される場を構想した意欲作。この作品は近畿圏を中心に20以上の大学が参加する合同卒業設計展「Diploma×KYOTO'26」に出品し第3位を受賞しました。
ほかにも、祖母との関係を半私小説的に描いた木原優璃さんの作品「すべてのイルカがピンクになりますように」が、文芸学科の学長賞を受賞。故郷、鹿児島に帰りたがっていた祖母の願いを、フィクションのなかだけでも叶えてあげたいという想いから生まれた作品です。
西アフリカの民族音楽を、楽器の制作プロセスから複雑なリズム体系まで網羅的に研究した「Roots & Loop」は、音楽学科の音楽・音響デザインコース、渡邊沙羅さんの作品。サンプリングした音楽を試聴できる点も評価され、学長賞を受賞しました。
初等芸術教育学科の学長賞は、小学校教育への接続という視点から就学前後の絵画教育を考察した「教育現場における自由な描画表現を妨げる要因の検討」。卒業後、保育者として子どもたちに関わる予定の篠原望希さんの卒業制作です。
学長賞や鍋井賞、ミネアポリス美術デザイン大学学長賞、学科賞に選ばれた優秀作品の数々は、4年間の学びの成果を結晶した完成度の高い力作ばかり。連日、多くの来場者が訪れ、作品の世界観に没入する姿が見受けられました。
■開催日時
2026年2月3日(火)~8日(日)
9:30~17:00
■開催場所
大阪市立美術館 天王寺ギャラリー
芸術文化学研究と芸術制作研究の二つの分野からなる大阪芸術大学大学院。実技と理論の両面から専門性を極めた大学院生による修了制作展が、大阪市立美術館 天王寺ギャラリーで開催されました。
大型の絵画や独自の技法を用いた平面作品、多彩な素材を用いた立体造形やインスタレーション、映像作品、CG、アニメーション、写真など多彩な作品が展示され、プロの表現者をめざす大学院生の高度な専門技術と独創性を披露。いずれも造詣の深さを物語る唯一無二の存在感を示しました。
2月7日には「修了制作展ギャラリートーク」が開催され、出品者自らが作品の背景や意図、手法などを解説。教員の講評も加えられ、訪れた人々は多大な関心を持って耳を傾けていました。
2026年2月25日(水)~3月1日(日)
大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校の3校合同の「卒業制作選抜展」が大阪市立美術館 天王寺ギャラリーで行われました。
出品されたのは、学長賞や学科賞などを受賞した49の優秀作品。大阪芸術大学の「優秀作品展」の受賞作品に加え、大阪芸術大学短期大学部からは、学長賞を獲得したイラストレーション専攻の門野響俐さんの「Gummy Town」、ミネアポリス美術デザイン大学学長賞を受賞した絵画専攻の西山栞央さんの「STAY THERE」など8作品が。大阪美術専門学校からは、塚本英世賞に輝いたコミック・アート学科・掛川颯太さんの「地獄の釜の蓋もあく」など6作品が展示されました。
美術に工芸、デザイン、写真、建築や音楽など多彩なジャンルの作品群は、いずれも試行錯誤を重ね磨き上げた技術や創造力など、学びの成果を形にした渾身の作品ばかり。未来のクリエーターたちが放つ、この瞬間にしか出会えない独創的な表現と熱量が体感できる活気に満ちた展覧会となりました。
2月11日に3号館ホールで上演されたのは、器楽・声楽・作曲の分野で専門性を磨いてきた修了生による「第28回大阪芸術大学大学院博士課程修了作品演奏会〜器楽・声楽・作曲修了生によるコンサート〜」。ピアノ、声楽、作曲の分野で研鑽を積んできた博士課程(前期)修了生の技術と表現力に、会場は称賛の拍手で包まれました。
また、2月17日には芸術劇場で、「大阪芸術大学大学院 芸術研究科芸術制作専攻 舞台領域 第28回修了公演」を開催。博士課程(後期)修了生が手がけた戯曲『満ち足りた日々』の朗読劇上演と、ほか2作品が発表されました。プロの現場に近い環境で実制作を行ってきた修了生が、その確かな専門性を存分に発揮しました。