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中之島に星空が浮かび上がる『OSAKA光のルネサンス2024』 中之島に星空が浮かび上がる『OSAKA光のルネサンス2024』

芸術計画学科
2025/03/10

冬の大阪の風物詩ともいえるイベント「大阪・光の饗宴」のコアプログラム「OSAKA光のルネサンス」(以下、光のルネサンス)が2024年12月14日から中之島エリアで開幕。芸術計画学科では毎年、バラ園で展示プログラムを開催しており、今回は「『星命』 〜中之島から広がる宇宙〜」と題した展示を行いました。にぎわいを重視した前回とは異なる方向性を打ち出し、独創性豊かな内容で来場者を楽しませました。

バラ園を星空に変えるために挑んだ工夫の数々

2023年の光のルネサンスでは、音響・照明を過去最大の規模で投入。テーマパークのように楽しませる演出で新たな方向性を打ち出しました。今回は、その経験を生かしつつも、「中之島のビル街に星空を浮かび上がらせる」というまったく新しいプランを1年生が考案。都会では見えにくい星空や宇宙をバラ園の中で表現し、にぎやかだった前回とは対象的に、じっくりと世界観に浸ることができる展示をめざしました。

大学にて「プロジェクト演習Ⅰ・Ⅱ」の授業内で担当毎に分かれて打ち合わせ

バラ園では開催日前から学生や教員が通い詰め、入念に展示の準備が進められました。当日は天候にも恵まれ、万全の体制で本番を迎えることができました。学生たちは音響や照明、バルーンなど、それぞれのセクションに分かれて機材の設置を開始。雨天時の展示も想定するなど、事前のシミュレーションを入念に行っていたことから、作業はスムーズに進められました。

運営は、3年生がプロデューサーとして全体を取り仕切り、2年生がディレクションなどクリエイティブ面を担当。前回も参加した学生や初めて携わる学生と経験の違いはありましたが、互いをサポートする姿勢を持ちながら作業にあたり、会場は少しずつ完成形へと近づいていきます。

音響・照明は毎年のように技術がブラッシュアップされ、学生だけで設営を行うにはハードルが高いのが実情です。特に今回は随所でLEDのストリングライトを使用するなど、専門知識を要する作業も数多くありましたが、テクニカル班は各分野のスペシャリストである教員のアドバイスを受けながら設営を進めていきました。風速計の設置や来場者の導線確認、立入禁止のサイン作成など、安全面への配慮もこれまでの経験を参考に、より高いレベルで取り組まれました。

音響・照明の担当毎に分かれ、担当教員の指示のもと設営を進めていきます

現場では作業をして初めて分かる気づきも多々あります。今回、月と太陽を表現するために設置される巨大バルーンは、学内ではフラットな場所で設置の練習を行っていましたが、バラ園では真下に溝があることから平行を保つことが困難に。学生たちは様々な備品を用いて設置位置を調節し、臨機応変な対応で不測の事態を乗り越え設営を完了させました。

日が暮れるごとに浮かび上がる星座の美しさ

すべての設営が完了し、いよいよ開場。薄暗くなってきた空の下、LEDの光が少しずつ星空を描き出し、来場者はそのきらびやかさに見とれながらバラ園を巡り歩きました。中央の巨大バルーンは数分間隔で暖色と寒色を入れ替えながらライトアップされ、中之島の星空に輝く太陽と月として存在感を放っていました。

 学生たちも緊張の面持ちでそれぞれの配置につきましたが、展示を楽しむ来場者を見ているうちに気持ちもほぐれ、徐々に現場の雰囲気に溶け込んでいきました。

展示のメインとなる星座は、黄道十二星座のうち8種の星座記号を園内の芝生に配置。バラ園全体を季節ごとに分け、春はおうし座とふたご座、夏はかに座としし座、秋はてんびん座といて座、冬はうお座とみずがめ座がストリングライトで制作されました。開場から1時間が経過することには日が完全に暮れ、LEDの光は、まさに夜空に輝く星座のように鮮やかさを際立たせていました。

 

音響面では春夏秋冬それぞれのセクションでスピーカーが設置され、春は鳥のさえずり、夏は波のせせらぎや花火など季節の風物詩となる音が流されました。歩きながら視覚と聴覚の両方で四季を感じられる工夫がロマンチックなムードを盛り上げていました。

順路の最後には、前回の展示でも設置されたクラゲのオブジェと新たに制作されたシャチのバルーンが登場。星空の一角で光の海を表現し、幻想的な世界観を生み出していました。

星座の輝きと季節を象徴する音で生命=星命の鼓動を感じさせた今回の展示。これまでの経験を最大限に生かし、星座の美しさに没入できる空間をバラ園に生み出したことで芸術計画学科のノウハウが、また一つ新たなフェーズへと移行しました。次回の展示でも、これまでにない斬新なアイデアの登場が期待されます。

芸術計画学科 客員教授
下平 稔典 先生

今回は「季節の星空を地上に」というテーマで制作がスタートし、「きらびやかな星空をどのようにしてバラ園に表現するか」というアイデアを具体化するため試行錯誤が重ねられました。ただ、学生たちがアイデアを具体的にまとめてくれていたおかげで例年よりも完成形をイメージしやすく、LEDを積極的に使用した前回のノウハウが生かされて、当初の想定よりもスムーズに準備が進められました。芝生に配置された星座がどの時期のものか知っていただくためにSEで季節感を表現するといった工夫が凝らされており、来場された方は歩きながら四季の移ろいを楽しんでいただけるかと思います。バルーンの数は大幅に減らし、中央に配置した巨大な球体を月と太陽のイメージにすることでテーマを際立たせています。学内での準備では苦労も多かったのですが、現場では学生たちがいきいきした表情で設置作業を進め、心から楽しんでいることが伝わってきました。現在、イベントの現場ではAIによる自動制御を演出に導入するケースが増えていますが、芸術計画学科では、あえてアナログな作業を学ぶことで学生たちに音響や照明の必然性を知ってもらうように努めており、マニュアルにこだわることでイベント運営のプロフェッショナルを育成したいと考えています。技術スタッフの苦労を知っているかどうかで統括の立場になった時の立ちふるまいは変わってくると思います。イベントプロデューサーには豊富な知識が求められるので、学生たちには今、必要でないと思うものでも将来なにかの役に立つこともあるので、あらゆる方面に興味を示して情報収集や体験に取り組んでもらいたいと思います。

芸術計画学科 2年生
塩路 遊旅 さん

昨年は自分たちのチームのアイデアが採用されたので、「OSAKA光のルネサンス」には並々ならぬ思い入れがあります。今回、僕はディレクターとして1年生が出してきたアイデアを開催できる状態に具現化するという作業を担当しました。芸術計画学科の演習でも特に規模の大きなイベントで、準備期間中はなかなか完成形が見えてこないという苦労もありましたが、無事に本番の日を迎えられて安心しています。展示方法は、「中之島のビル街に美しい星空を」というテーマに沿ってさまざまな角度から検討した結果、バルーン中心だった展示をLED照明に変えることで新しい方向性を打ち出すことができました。見せ方も星座や四季の移ろいといった世界観に入り込んでもらえるよう派手さを抑え、どの年代の方でも楽しめるように心がけました。先生方のサポートも本当にありがたく、導線管理からスタッフの配置まで、たくさんの現場を経験されたプロの技術を学ばせていただきました。僕は高校時代、演劇部に所属して演劇の全国大会の実行委員長を務めたのですが、笑顔で帰られるお客様を見ているうちに演じること以上にイベントの運営に興味を持つようになり芸術計画学科を志望しました。今後は、どのような形になるかは分かりませんが、やはり自分のルーツである演劇に関するイベントをプロデュースできればと思っています。

芸術計画学科 2年
田端 芹奈 さん

前回の「OSAKA光のルネサンス」では、一般スタッフとして参加し、お客様の誘導を担当していました。今回は企画の段階から関わっており、テクニカル班で照明チームのリーダーという役職に就いています。展示テーマが星空ということで、LEDで星座を作ったのですが、ストリングライトを使って一筆書きにするのが苦労したポイントです。中央に配置したバルーンは月と太陽をイメージしていますが、学科長である村上敬造先生から「地上から見上げたような色合いにしてみては」とアドバイスをいただき、少し青白い配色にしています。バラ園全体で展示が美しく表現されている様子を見るのは本当に壮観で、頑張ってきて良かったと思います。ただ、照明の切り替えに関しては微調整が必要なので、会期中に細かい部分をさらにブラッシュアップする予定です。私はもともと油絵をやっていたので美術方面の道も考えたのですが、コミュニティデザイン系のイベントが好きで運営の知識を学びたいと思い、芸術計画学科に進むことを決めました。イベントを作品として捉え、みんなで制作することや、緒方江美先生、中脇健児先生のようなファシリテーターとして有名な方々から教えを受けられるのは、芸術計画学科の大きな魅力だと思います。今後は、昔から大好きだった地元のイベントにスタッフとして関わり、地域を盛り上げていけたらと思っています。

Photo Gallary