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2020年で41回目の開催。大阪芸術大学オペラ公演『魔笛』 2020年で41回目の開催。大阪芸術大学オペラ公演『魔笛』

アートサイエンス学科, 舞台芸術学科, 音楽学科, 演奏学科
2020/05/24

41回目となる大阪芸術大学オペラ公演『魔笛』の公演(無観客で収録のみのかたちで実施)が、3月4日にNHK大阪ホールで行われました。


演奏学科が主体となり行われた今回のオペラ公演には、舞台芸術学科、アートサイエンス学科、放送学科、音楽学科の4学科の学生も参加。演目となる『魔笛』は、日本のオペラ公演の回数では常に上位に入る人気作です。

一般的なオペラ公演は、演劇と歌唱・楽器演奏によって構成される舞台芸術を指しますが、大阪芸術大学の公演はアートサイエンス学科によるプロジェクションマッピング、舞台芸術学科舞踊コースによるバレエダンスなど、従来のオペラの枠を超えた総合芸術大学ならではの演出が盛り込まれました。

プロが演出する華やかな舞台
本学の卒業生も講師として参加

オーケストラの指揮者を務めるのは、演奏学科 管弦打コース教授の大友 直人先生。大学在学中からNHK交響楽団の指揮研究員として活躍し、2004年から8年間、東京文化会館の初代音楽監督も務めました。国内に限らず、海外のオーケストラにも多く客演している著名な指揮者です。


本公演の演出を担当したのは舞台芸術学科 学科長の浜畑 賢吉先生。劇団四季でさまざまな舞台に出演し、ミュージカルスターとして最前線を走ってきた俳優であり、演出家です。


舞台を華やかに彩るプロジェクションマッピングは、アートサイエンス学科の川坂 翔先生(株式会社ネイキッド)が映像制作指導を行いました。プロジェクションマッピングによる演出は第39回の公演から開始され、オペラのイメージを覆す斬新な演出方法は大阪芸術大学ならではのカラーを感じることができます。


演者たちの声楽指導を行ったのは、東野 亜弥子先生、田代 恭也先生、辻川 謙次先生。3名は全員、大阪芸術大学の卒業生で、現在はプロの声楽家やピアニストとして、各方面で活躍しています。

モーツァルトが生涯最後につくったオペラ作品を学生たちの熱演で魅せる

「魔笛」はモーツァルトが一般大衆向けにつくった歌劇で、架空世界のエジプトが舞台の物語。王子タミーノの冒険物語が、メルヘンな雰囲気で描かれています。モーツァルトの楽曲が楽しめるのはもちろん、愛嬌のあるキャラクターたちの見せ場も多く、今までオペラを鑑賞したことがない人でも楽しめる作風が人気の作品です。


ある日、森に迷い込んだ王子タミーノは、肖像画に描かれたパミーナに一目ぼれします。しかし、パミーナは悪魔に囚われていて、彼女の母である夜の女王はタミーノに、娘を救出してほしいと懇願します。そこに、鳥刺し(鳥類を捕獲し、売り渡す職業)のパパゲーノが加わり、パミーナの救出劇が繰り広げられるのが、「魔笛」の簡単なあらすじです。


タミーノ、パミーナ、パパゲーノの3役は、劇全体を通じて見せ場の多い主要な役どころ。王子タミーノを演じたのは、大阪芸術大学卒業生で、現在は声楽家として活躍する磯本 龍成さん。 パパゲーノ役は演奏学科声楽コース在籍の安田 楓汰さん。これまでの公演でもパパゲーノを演じたことのある実力派です。パミーナは劇の前半、後半に分かれ、声楽コースの山中 日恵子さんと上野 舞さんが二人一役で演じました。

オペラの見どころといえば、各役者たちが単独で歌う「アリア(Aria)」です。アリアとはイタリア語で、特定の人物が独唱する曲のことを指し、登場人物の感情が強く動いた場面や、物語の山場となる場面で歌われます。『魔笛』のなかでも有名な、夜の女王のアリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」は、高音を自由自在に操る技術を要し、超絶技巧が特徴の楽曲です。


アリアは役柄によって曲調が異なり、パパゲーノのアリア「俺は鳥刺し」はパパゲーノの性格を表したかのような陽気な曲調。タミーノのアリア「なんと美しい絵姿」は、パミーナに恋したタミーノの心情を歌う優雅な旋律が魅力的です。

大阪芸術大学のオペラ舞台は声楽技術だけでなく演技も重視しているため、演者たちは細やかな演技指導を受け、舞台では見事に歌唱と演技を両立させていました。

 

そして、演者たちの歌声を際立たせるのが、演奏学科管弦打コース生を主とした「大阪芸術大学管弦楽団」によるオーケストラ演奏です。

本番中は、舞台の照明やプロジェクションマッピングの効果を生かすため、会場内は照明が暗くなっており、オーケストラの演奏者たちはこうした環境下で、楽譜を見なければいけません。また、何十人もが演奏に参加するため、常に神経を研ぎ澄ませながら、他の演奏者の奏でる音とのバランスをとる高い演奏技術が求められます。

普段の授業とは違う環境の中でも、大友先生の指揮に合わせハーモニーを奏でるオーケストラ。その音色は、舞台上の物語を一層彩り豊かに表現していました。

プロジェクションマッピングやバレエダンスなど、オペラの枠に捉われないさまざまな演出を総合芸術大学ならではの視点で取り入れ、「大阪芸術大学ならではの舞台」をつくりあげたオペラ公演。より良い舞台をつくりあげるために、ベストを尽くし本番に臨む学生たちの日々の積み重ねが存分に発揮された舞台となりました。

演奏学科
橋爪 伴之教授

僕自身、大阪芸術大学の卒業生で、在学時にこの「魔笛」公演に参加したことがある、非常に思い入れのある作品です。
オペラは、オーケストラ、歌唱、楽器演奏、演技、その他の演出を合わせた総合技術で成り立っています。通常、音楽大学でオペラ公演を行おうとすると、校外にお力添えをお願いする箇所が出てくるものですが、大阪芸術大学の舞台は演出のすべてを学内でつくり出せます。第39回から、NHK大阪ホールをお借りしてオペラ公演を行っていますが、毎年どんどんレベルアップしているのが教員の立場から見てもよく分かりますね。

普段の授業では、例えば金管楽器は金管楽器のみのアンサンブル(2人以上が同時に演奏すること)が主なのですが、オペラでは歌唱と隣の人の演奏を聴きながら、他の楽器とのバランスもとるという、より複雑な技術が必要になってきます。大きなホールでオペラの演奏を行うことは、現場ならではの力をつける重要な第一歩になります。学生時代にこのような大舞台で演奏した経験は、今後プロとして活躍する上で、学生たちの味方になってくれると思っています。

演奏学科 講師/声楽指導
東野 亜弥子先生

今回の公演は主体となる演奏学科の学生以外にも、他学科の学生が積極的に参加してくれたおかげで、多くの人が関わる舞台となりました。学生たちにはたくさんの人と協力しあい、舞台を成功させる喜びを感じてほしいと願っています。
今の学生たちは、学年を超えてみんなで自主練に打ち込んだりと、学科全体でとても良い雰囲気なので、卒業生としても嬉しく思います。
この公演を最後に卒業する4年生も多く参加しており、このような大きなホールでの本番を経験していることは、今後の糧になると思います。今回の公演で体験した「大勢の人と舞台を成功させる喜び」を、音楽を通して次の世代にも伝えていってほしいです。
大阪芸術大学は学生にとても親身な先生が多く、今回の公演でもその教えを受ける学生たちの真面目な姿勢が感じられ、嬉しい気持ちになりました。若い世代には「音楽を学びたい」という気持ちを大切に、臆することなくどんどん才能を伸ばしていってほしいと思います。

演奏学科 管弦打コース4年
太田 翠さん

私はオーボエを担当しています。今回はオペラ公演での演奏のため、楽器の主張が強すぎると演者の歌を引き立てられませんし、弱すぎるとオーボエの音色の良さが分らなくなってしまいます。微調整にかなり労力を費やしましたが、技術面の向上につながったと感じています。
来場者は、特別な時間を過ごすために会場に来てくださっているので、演奏以外の小さなことでも失礼がないように心がけました。普段、水分補給に水筒を持ち込むのですが、今回はペットボトルに布を巻き、万が一倒れても音が響かないよう工夫するなど、舞台第一、来場者第一の考えを忘れないよう努めました。今後、プロとして色んな公演に参加することになっても、今回学習した細やかな気配りを忘れないように頑張りたいです。

演奏学科 管弦打コース4年
橋本 奈津美さん

演奏学科の声楽コースの学生とは合同授業などで関わる機会がありますが、今回の公演では普段あまり関わりのない舞台芸術学科の学生たちなどとも協力しあい、準備をしてきました。普段、どんな勉強をしているか知らない学生たちの努力する姿は、とても良い刺激になりました。
私はフルートを演奏していますが、「魔笛」はフルートのソロパートなど、見せ場が多くとても緊張しました。でも、大舞台の緊張感の中でも演奏を頑張れたのは、自分の自信にも繋がりました。社会にでてからも、今回の舞台で得た自信を胸に頑張りたいと思います。
私は4年生なので、もうすぐ大阪芸術大学を卒業しますが、高校生のころから演奏していた管楽器のことをしっかり学べた、とても実のある4年間だったと思います。今回の公演に限らず、4年間指導してくださった先生方には、とても感謝しています。

演奏学科 声楽コース4年
安田 楓汰さん

僕が大阪芸術大学の公演でパパゲーノを演じるのは、これで3回目になります。初めに演じた時は「パパゲーノはこういう役だ」という先入観に沿って演じていましたが、2回目からは自分なりにアレンジを加えて演技することができるようになりました。既成概念にこだわらないで、自分ならではの演技ができるよう、細かいところにも注意を払って演じました。

僕は元々、ミュージカルがしたくてこの学部に入ったので、オペラに関しては正直、「堅苦しいもの」という先入観があったんです。でも、実際に自分が舞台に立って、4年間で自分だけの演技を突き詰めていく中で、オペラの魅力が十分理解できたと感じています。公演や普段の授業で、歌と演技を融合させる技術を身につけられたのは、大阪芸術大学の声楽コースに通っていたから、できたことだと思っています。

演奏学科 声楽コース4年
上野 舞さん

2019年の夏に声帯を痛め、リハビリを重ねながら今回の公演準備を行ってきました。周りの期待に応えられないと悩むことも多々あり、「魔笛」の脚本と同じく、私にとっても試練の連続だった舞台だと感じています。

私は大学2年生のときに、転コースで声楽コースに入りました。楽譜も読めない状態でしたが、「大学生のあいだに、未経験のことにも挑んでみよう」という気持ちで声楽を始めました。声楽にのめり込み3年間勉強しても、自分の未熟さを思い知る場面も多く、もっと実力をつけたい気持ちでいっぱいです。そのため大学卒業後は、声楽の知識や技術をのばすために、大学院に進学する予定です。実際に自分が舞台に立って演じた『魔笛』の公演は、私に声楽の面白さを教えてくれた作品であり、「今後も声楽の道を歩みたい」と決意させてくれた、一番大きなきっかけだったと思います。大学院でより声楽を学び、「この人の声じゃないと、この歌曲は映えない」と聞き手に思ってもらえるような自分の声をつくりたいです。

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