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第16回 高円宮殿下記念 根付コンペティション 第16回 高円宮殿下記念 根付コンペティション

工芸学科
2025/04/04

2009年から毎年開催している「高円宮殿下記念 根付コンペティション」。第16回目となる2024年度は、大阪芸術大学グループから総勢193名224点にのぼる応募があり、厳正な審査を経て17名の入賞者が選ばれました。

これを記念して、12月5日~22日に、大阪芸術大学スカイキャンパスにて展覧会を実施。会期中の12月18日に、高円宮妃久子殿下のご臨席を仰いで表彰式が執り行われました。

日本独自の伝統文化「根付」の制作に、新たな感覚でチャレンジ

印籠や煙草入れなど提げ物を帯から吊るす固定具である「根付」は、江戸時代に流行し広く愛されてきました。明治以降、海外でもその芸術性が高く評価され、創作の場も国内外に広がっています。

大阪芸術大学では高円宮妃久子殿下を客員教授としてお迎えし、学生たちにご講義を賜っています。高円宮憲仁親王殿下とともに世界有数の根付コレクターとして知られ、現代根付作家育成にもご尽力なさっている妃殿下ならではのお話により、学生たちも根付を通じた日本文化の継承に関心を持つようになりました。


大阪芸術大学グループ(大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校)の在学生を対象として根付作品を募る「高円宮殿下記念 根付コンペティション」では、年々応募が増加。今回は193名224点と、人数・作品数とも過去最多となりました。10月23日に、高円宮妃久子殿下と根付師の高木喜峰氏、塚本邦彦学長をはじめ本学教員による厳正な審査が行われ、高円宮賞や学長賞など17名の入賞者が決定しました。

これを記念する展覧会を、12月5日~22日、あべのハルカスの大阪芸術大学スカイキャンパスにおいて開催。全応募作品とともに、高円宮家が所蔵される根付コレクション130点と、高円宮妃久子殿下が撮影された「旅する根付」の写真パネル21点が展示されました。


会期中の12月18日には高円宮妃久子殿下ご臨席のもと表彰式が執り行われました。高円宮賞を受賞した大阪芸術大学大学院 芸術研究科博士課程(前期) 芸術制作専攻 工芸領域 1年の北川暁子(きたがわさとこ)さんをはじめ、入賞者に表彰状や記念品が贈られました。


高円宮妃久子殿下からは「これまで多くの根付を集め研究をしてきましたが、その上でもあらためて見入ってしまうような、斬新なアイデアが盛り込まれた作品がたくさんありました。根付としての役割を果たせば素材や技法は自由で、創造の幅も広がります。これからも大阪芸術大学らしい新たなものに挑戦して、根付について少しでも広めていただけたら幸いです」とのお言葉を賜りました。


内覧会では、妃殿下が各作品の前で入賞者一人ひとりとお話され、作品に対するご感想やアドバイスを頂戴する場面もあり、学生たちは一言一言を深く胸に刻みながら、さらなる創作意欲を高めていました。

また入賞者たちは、高円宮家コレクションの貴重な根付の数々をじっくりと鑑賞。実際に手に取って拝見させていただきながら、精緻な作りや質感などを確かめ、美術工芸品としての根付の素晴らしさを体感していました。

高円宮賞

大学院芸術研究科博士課程(前期) 芸術制作専攻 工芸領域 1年生

北川 暁子 (きたがわさとこ)さん

高円宮妃久子殿下のご講義を拝聴して根付に興味を持ったのがきっかけで、このコンペティションに応募するようになり、3度目の挑戦で高円宮賞を受賞することができました。今回は冷たい触感のガラスと温もりのある木材という異素材を組み合わせて、手のひらの中でころっと転がるような、手なじみの良い根付を制作。最初のうちはどうしてもサイズが大きくなりがちでしたが、手の中におさまるサイズや握り心地をとことん追求して、思い描いた作品ができました。木彫りをする彫刻刀の研ぎ直しをプロにお願いし、作業のスピードや仕上がりの美しさが格段に上がって、道具の大切さを再認識できたことも自分にとっての収穫の一つです。

授賞式では、高円宮妃久子殿下とお話させていただく貴重な機会をいただき、大変光栄でした。制作意図をお伝えする前から、作品に込めた思いやこだわりを的確にご理解いただき、深い関心を持って審査してくださっていると感じました。「異素材の組み合わせが不思議。握り心地がとても良く、ていねいに仕上げてありますね」と評価してくださって、本当に感激です。また副賞として工芸学科長の山野宏先生のガラス作品をいただけたことも嬉しく、将来はガラス作家をめざしている私にとって、これからの活動に向けた力づけにもなりました。

高円宮家の根付や他の受賞者の作品を鑑賞して、発想のユニークさや素材使いにも刺激を受けました。次は粘土を使った作品にチャレンジしてみようかとイメージをふくらませています。

学長賞

工芸学科 3年生

吉岡 大地 さん

今回制作したのは、ホオズキをモチーフに、偽りやごまかしという花言葉から、嘘を焼く炎になるようにとの思いを込めて「火火着(ほほつき)」と名付けた作品です。コンセプトや構想を練ってネーミングまで落とし込む作業が最も難しく、かなり悩みました。金属を打ち出す鍛金で形を作り、透かしの部分には煮色仕上げという技法を取り入れて、あれこれ試行錯誤しながらなんとか完成。色にこだわり、酸化によって赤いホオズキが次第に落ち着いた色になっていくのが味になればと考えたのですが、思ったよりも変色が速く進んでしまったのは想定外でした。

高円宮妃久子殿下には気さくにお声をかけていただき、あたたかいお言葉をいただきました。「着想が素晴らしい。ホオズキなのでもう少し鮮やかな赤ならなお良かったですね」とお褒めの言葉とアドバイスをいただいて、大変ありがたかったです。

今回が初めての応募で、事務室から連絡を受けた時は「何か書類の不備でもあったのか」と思ったくらい、受賞できたのは本当に嬉しい驚きでした。このような形で認めてもらえたのも初めての体験で、今後につながる大きな自信とモチベーションになりました。本格的な設備が揃う大阪芸大で好きなモノづくりに打ち込むのはとても楽しく、サークル活動も含めて充実した学生生活を満喫しています。さらに技術を磨き経験を積みながら、これからも創作活動を続けていきたいです。