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演奏学科 第42回オペラ公演 演奏学科 第42回オペラ公演

演奏学科
2021/10/12

大阪芸術大学だからこそ!
学科を超えたアートの結集

「大阪芸術大学 第42回オペラ公演」が2021年3月3日、大阪市北区のザ・シンフォニーホールで開催されました。

演奏学科 声楽コースの学生たちが、歌唱・演技における日々の学びの成果を発表するこの公演。演奏は、日本を拠点に世界レベルで活躍する指揮者である演奏学科 教授・大友直人先生の指揮のもと、学生を中心として構成されている大阪芸術大学管弦楽団、大阪芸術大学ウィンド・オーケストラ(吹奏楽)、大阪芸術大学合唱団によって行われました。

今年のオペラ公演は、「O.U.A.Presents 物語で紡ぐファンタジーオペラ 音の宝石箱」と題して書き下ろされたオリジナルストーリーで上演されました。脚本・演出を手掛けたのは、劇団四季出身のベテラン俳優・演出家である舞台芸術学科 学科長・浜畑賢吉先生です。

また舞台映像では、アートサイエンス学科講師・川坂翔先生(NAKED,INC.)の監修のもと、アートサイエンス学科の学生たちが映像制作・操作を担当しました。

モーツァルトが現代の日本に!?
ファンタジックな物語がスタート

物語は、モーツァルトが自身の故郷であるオーストリアの未来、2021年へのタイムトラベルを試みるも、何かの間違いで日本の大阪府河南町東山、つまり大阪芸術大学にたどり着くところから始まります。


モーツァルトは大阪芸大で演奏学科の学生たちと出会い、昨年のオペラ公演で自身作の「魔笛」が上演されたことを知ります。そして演奏学科の学生たちから、「私たちと一緒にオペラを楽しみませんか?」と提案され、快諾します。


モーツァルトは「愛と試練」をテーマとする歌劇を多く残しています。愛すること、つまり、生きることには試練が必要で、困難にぶつかってもあきらめずに乗り越えたときに未来は必ず拓ける、というものです。


 2021年は世界中に新型コロナウイルスの影響が広がりました。大阪芸大の学生たちもさまざまな制限のもと、芸術の探究を続けてきました。新型コロナという苦難(試練)をモーツァルトからのメッセージに重ね、これを乗り越えていこうという気持ちを込めて、第1部ではモーツァルトが作曲したオペラから代表的な歌曲が披露されました。





作曲:W.A.モーツァルト

●「魔笛」

●「フィガロの結婚」

●「コジ・ファン・トゥッテ」

●「ドン・ジョヴァンニ」





「魔笛」のワンシーンで、王子・タミーノと夜の女王の娘・パミーナが、タミーノの吹く魔法の笛の音に守られながら「炎」と「水」の試練に立ち向かいます。このシーンで歌われるソプラノとテノールの二重唱(No.21)では、モーツァルト自身がタミーノのパート(テノール)を歌います。

「炎」と「水」の試練をダイナミックに表現するプロジェクションマッピングが映し出されるなか、2人は進みます。笛を吹くモーツァルトの肩に後ろから手をそえるパミーナ。ときおり不安な表情をみせながらも、タミーノと魔法の笛の力を信じて前進します。若々しく力強いテノールとつややかで透明感のあるソプラノ。心地よくからみ合う2つの歌声は、困難を乗り越えようとする思いをのせて、会場全体に広がっていきました。

 モーツァルトが吹く魔法の笛の音はフルートの担当です。よく響く高音域で奏でられる旋律は、「2人が守られている」と聴く側に安心感を与える一方、ときには不安定な曲調にも変わり、2人が受ける試練の大きさが十分に伝わってきました。

世界をめぐるオペラ音楽の旅へ
日本のオペラも上演

第2部は、ミュージカルの名作「ウエストサイド物語」から「シンフォニック・ダンス」でスタートしました。

ミュージカルは、オペラやバレエをルーツにアメリカで誕生しました。このようにオペラは国を超えて発展し、垣根なく素晴らしい音楽・演劇と進化していきます。第2部はさまざまな国に広がったオペラをめぐる、音楽の旅としてステージが展開されました。





●フランス「ホフマン物語」(作曲:J.オッフェンバック)

     「ファウスト」(作曲:C.グノー)

●チェコ 「ルサルカ」(作曲:A.ドヴォルザーク)

●イタリア「ジャンニ・スキッキ」(作曲:G.プッチーニ)

● 日本  「夕鶴」(作曲:團 伊玖磨)





「鶴の恩返し」が題材となったオペラ「夕鶴」では、「与ひょう、あたしの大事な与ひょう」が演奏されました。

 かつては純粋な心を持つ“与ひょう”でしたが、金に目がくらみ、だんだん変わっていく姿に不安を募らせる妻“つう”(ソプラノ)の気持ちが表現されたこの歌曲。日本語の美しさを響かせながら、語りかけるように歌い上げる声は、聴く側を物語の世界に引き込んでいきました。

試練のなかでも変わらない芸術

物語は演奏学科の学生たちの演奏に感動していたモーツァルトのところに、タイムトラベルで行方不明となった彼を心配し、探しにやってきた妻のコンスタンツェが登場する場面を迎えます。ステージ上とステージ後ろの客席に、出演した声楽コースの学生たち全員が立ち、2人を見守るなか、モーツァルトはコンスタンツェに今回の旅で得た3つのことを伝えます。

最初に、自身の音楽が2021年でもさまざまな街で演奏され続けていること。次に、世界中の偉大な作曲家により数々の名曲が生み出されたこと。最後に、この大阪で才能ある多くの若者たちが未曽有の困難に立ち向かいながら、懸命に芸術の探究をしていること。そしてその結果、「時代や社会情勢が変化しても、芸術を愛する人々の心は変わらない。芸術は永遠に不滅だ」という考えに至ります。

そして「本当に心配をかけた」とモーツァルトがコンスタンツェに声をかけようとしたそのとき、「フィガロの結婚」の伯爵が伯爵夫人に謝罪する大詰めのシーンに切り替わります。ソプラノとテノールの二重唱で、真摯に謝罪の思いを声に託すモーツァルトと、素直に許す気持ちでつつみこむように歌うコンスタンツェ。そして、ステージ上の全員が歌い出します。


♫悩みの雲晴れ 憂いの雨去り

 よろこびの日差し 今ぞ輝く

 いざ友よ踊り歌え

 このよろこびに声あわせ

(作曲:W.A.モーツァルト、作詞(台本):ボーマルシェ、日本語訳:中川悌一)

 

その歌声はまるで、モーツァルトの〝困難にぶつかっても、あきらめなければ必ず未来は拓ける〟というメッセージを受け止め、現在、世界が直面している困難を試練として向き合い、必ず乗り越える、という決意が込められているかのようでした。そして、ステージ上の声楽コースの学生たちが会場中に高だかと声を響かせ、両手を広げて試練を乗り越えた大きなよろこびを表現しながら、物語はフィナーレを迎えました。


今年も複数学科のアートを結集してひとつの作品をつくり上げる、大阪芸術大学の総合芸術大学としての特徴が十分に発揮されたオペラ公演となりました。

演奏学科 管弦打コース/教授
橋爪 伴之 先生

今回の会場であるザ・シンフォニーホールのステージには、日本のオーケストラはもちろん、世界中の一流のオーケストラが出演しています。同じステージで、同じ空気感の中で演奏できるというのは、学生にとってものすごくよい経験になると思います。また、このような広くて響きのよい空間で演奏すると、自分が出す音の伸びとか、客席にどのように届いているのかが実感できます。このことが、学生たちの演奏技術の伸びにつながっていくと思います。
とくに今回は、リハーサル、ゲネプロ*、本番と、3日間にわたりシンフォニーホールで演奏する機会がありました。プロのオーケストラでもなかなかないことですから、出演する学生たちにとって、今後の成長の糧になると思います。
普段の授業では、トランペットの個人レッスンのほかに、吹奏楽やオーケストラを指導しています。どちらも演奏するうえで必ずやっておかなければならない曲があります。レパートリーを増やすといいますか、これらを通して学生が奏者としての経験値を上げていけるよう、教えています。
学生を指導するにあたっては、正しい方法で、正しいイメージを持って、合理的に練習をするということを心がけています。私自身が学生のときは「根性で吹け」というような風潮がありましたが、今は合理的に練習した方がレベルは上がりやすいと思います。

*ゲネプロ……出演者の演奏や演技だけでなく、衣装・照明・音響などすべてを含めた最終的な通しのリハーサルのこと

演奏学科 声楽コース/特任講師
東野 亜弥子 先生

今、その学生に何が一番必要なのか。そこをしっかり見極めてアドバイスするようにしています。
声楽の個人レッスンのほかに、日本歌曲研究の授業を担当しています。唱歌「故郷」のようにみんなが知っている曲、教科書にのっている曲から入りまして、もっと歌の技術が必要になってくる曲や、詩を語るという意味で朗読を通して日本歌曲というジャンルを深く学んでいくという内容です。
指導にあたっては、たとえば学生に対して発声のことを言ってあげるのがよいのか、それとも詩の情景を思い浮かべた方が伸びるのか、また具体的になにかを提示した方が分かりやすいのか、ということを、彼・彼女らの性格とか勉強のスピードとかを読み取って行うことを大切にしています。
今年はコロナの影響で、学生たちは本当に困難ななかで音楽の勉強をしてきたと思います。しかし、例年の授業や練習ができなかったから学生の技術が落ちたかというと全然そういうことはなく、むしろ意識が高くなった、と私は思います。制限されたからこそ、「じゃあ、音楽をもっと感じてみよう」「もっと詩を読み解いてみよう」という方向に目を向けていったと思いますし、飛沫防止のパーテーションがあっても、それを越えて歌声を届けようという気持ちが出てきたのではないでしょうか。
今回のコロナ禍で、環境に応じて柔軟にやっていく「人間力」を学生たちは音楽を通して身に付けたと思いますので、これらが収まったときにぜひ、それを生かしていろいろな道に羽ばたいていってほしいと思います。

演奏学科 管弦打コース4年 フルート担当
村田 泰葉 さん

オーケストラのなかでフルートを担当しています。オペラでは、舞台と客席の間にあるオーケストラピットというところで客席側を向いて演奏しますので、私たち奏者からは演者の姿が見えません。演奏中は指揮を見ていろいろな判断をするのはもちろんですが、演者の息づかいとか気配を背中で察知しながらフルートを吹くということが今回、ものすごく勉強になりました。
ザ・シンフォニーホールで演奏して私が感じたのは、自分が「パンッ」て吹いた音が奥まで響き、ものすごく心地よかったことです。演奏していて楽しいのは、全体でもソロパートでも、自分の音を観客の方に聴いていただいているときや、指揮者とアイコンタクトをとるときで、それをこのような素晴らしいホールで出来るというのがとてもありがたく、幸せだと感じました。
管弦打コースには、どこかにおいての首席奏者であったり、第一線で活躍されている先生がたくさんいらっしゃいます。実際に現場で活躍・経験してきたからこそ知っている、「生の声」で教えてくださる先生方が圧倒的にそろっているこの環境は、私にとってとても魅力的だと思います。
常に周囲にアンテナを張りながら伸びやかに演奏する。その柔軟性や瞬時に判断する能力を、大学の4年間で身に付けることができたと思います。これらを味方に、卒業後はプロのフルート奏者として活躍していきたいです。

演奏学科 声楽コース2年 バリトン担当
芳賀 拓郎 さん

今日の公演に向けてずっと練習を重ねてきて一番印象に残っているのは、今年は新型コロナウイルスの影響で公演自体がなかなか決まらないなか、演奏学科の先生方のご尽力で、今日の本番を迎えられたことです。
僕はまだ2回生ですのでちゃんと舞台に立って歌ったことがなかったのですが、初めて立つ舞台、しかも日本で初のクラッシック音楽専用のホールとして建てられたザ・シンフォニーホールのステージを経験して感じたのは、さらなる向上心が湧いてきたことです。
この大阪芸術大学に入学した理由は、正直に言いますと、ただ「歌が上手くなりたい」ということだけなんです。今日は「フィガロの結婚」No.1,2に出演しましたが、No.2のなかで「リン、リン」と歌うところがあります。自分のなかでは、そこがすごく気持ちよく声が出て、よく響いていたと感じました。上手く歌えたのではないかと思います。
大阪芸術大学はいろいろな学生がいますが、どの分野においても自分のやりたいことができる「場」だと思います。僕自身、まだまだやりたいことをできていませんが、「歌いたい」という気持ちを強く持って勉強していきたいと思います。

演奏学科 声楽コース2年 ソプラノ担当
山田 結香子 さん

入学前ですが、私は大阪芸術大学のオペラ公演を観たことがありまして、そのときのキラキラした舞台にいつか自分も立って、歌ってみたいと思っていました。形や場所は違えど、大阪芸術大学のオペラ公演の舞台に出演することができ、信じられない気持ちと幸せな気持ちを同時に感じています。
もともとすごく緊張する性格で、気持ちのゆとりがなくなると思うように歌えませんでした。そのような悩みを抱えながら公演に向けて練習をしてきましたが、本番では、緊張していても歌うことを楽しんでいる自分に気づきました。緊張していても明るい気持ちで歌えましたので、自分の歌の最低ラインが底上げされたのではないかと思います。
声楽コースは、ほかのコースに比べて、違う学年の学生と関わる機会が多いです。学外公演の授業では、毎週毎週顔を合わせて一緒に練習していますので、先輩とも後輩とも自然に仲良くなります。とくに先輩の存在は大きく、同期だと悩みや迷いのレベルもだいたい同じですが、先輩たちはすでにそれを乗り越えた経験がありますので、アドバイスをくださったりします。そのような人間関係をつくれるところが、声楽コースのよいところだと思いますね。

演奏学科 声楽コース3年 ソプラノ担当
梅本 美穂子 さん

今年は新型コロナウイルスという大変な期間を過ごしましたが、一生懸命、私たち学生のことを考え、稽古や今日の公演につなげてくださった先生たちの存在は、本当にありがたいと思います。そのおかげで、私たち学生もお互いに励まし合って稽古を続けていくうちに、団結力というか絆が深まっていき、今日の本番を迎えることができました。
ザ・シンフォニーホールのステージに実際に立ってみて思ったのは、響きのすごさです。遠くの人に自分の声を届かせようと思うと変な力が入ってしまいますが、そんなに頑張らなくてもきれいに、いい響きで自分の声が響いているという感覚があり、とてもいい経験ができたのではないかと思います。
来年は4年生ですが卒業後の進路はまだ迷っているところです。声楽自体が好きかどうか分からない時期もありましたが、最近は、練習のなかで声楽の楽しさといいますか、もっともっと上手に自分の声を伸ばしていきたい、と考えるようになりました。自分の声がいいところに響いて、カァーッと舞台から観客席に広がっていく感覚や、観客の前で役を演じて、表現する楽しさが分かってきたのだと思います。これからも勉強を重ねて、自身の納得のいく方向へ進んでいきたいです。