舞台芸術学科 エアリアルダンス実習 舞台芸術学科 エアリアルダンス実習
天井から吊り下げたティシューと呼ばれる布に体を巻き付けて舞う空中演技「エアリアルティシュー」。日本での認知度はまだ途上段階ですが、海外では芸術性の高さで人気を博し、シルク・ドゥ・ソレイユなど、さまざまなサーカスがパフォーマンスに取り入れています。舞台芸術学科では、客員教授・若井田久美子先生の指導のもと、エアリアルダンス実習を実施。4年の時間をかけて基礎から応用までじっくりと指導し、エアリアルパフォーマーを育成しています。2024年2月19日に大阪市・弁天町にあるアクションパーク大阪で2020年度入学生たちの最後の実習が行われ、学生たちは4年間にわたって積み重ねた技術を作品にして発表しました。
4年間培ったエアリアルティシューの学びを総括
今回、エアリアルダンス実習の会場となったアクションパーク大阪は、サーカススクール「いくらサーカス」が活動拠点としている施設。2015年からサーカスのパフォーマーを育成する場として事業を開始し、2020年にはダンスやスタントなど、アクションエンターテイメント全般を体験できる施設としてリニューアルされました。
実習には8名の学生が参加。指導を担当する若井田先生は、国内外で活動を展開するなど、2005年に日本初のエアリアル専門トレーニングジム(AADP)を東京錦糸町に設立。現役のパフォーマーでありながら後進の育成にも力を注いでいる。
実習の開始にあたり若井田先生は、「今期ラストの授業ということもあり、これまで学んださまざまなパターンを振り返りながら2グループで作品発表を行います。心残りがないよう頑張りましょう」と挨拶。全員で準備運動を行い、じっくり時間をかけながら体をほぐしていきました。エアリアルティシューは、アーティスティックなパフォーマンスでありながら強靭な体幹を必要とするなどアスリート的な素養も求められ、基礎体力作りは必須とされています。
アクションパーク大阪は学内のスタジオよりも高い7mの天井高を持ち、大阪でも屈指のエアリアルティシューの体験施設となっています。学生たちは5組のティシューをほどきながらその高さに見とれ、それぞれにパフォーマンスのプランを語り合っていました。
まずはティシューを使ったストレッチが行われました。学生たちは手に巻き付けた状態で体を浮かせ、床と水平に体を固定するなど、次々と高度な技を繰り出します。若井田先生は、それぞれのフォームを確認しながら姿勢の調整を行い、「ティシューは腰ではなく仙骨に合わせる」など、長年の経験にもとづいたアドバイスを送っていました。
基本的なストレッチが終わると応用段階に進み、足にティシューを巻き付けて上昇するなど難易の高い技に取り組みます。学生たちは4年間学んできたエアリアルの基礎を確認しながらコンディションを整えていきました。
基礎をひと通り振り返ると、いよいよ実践編に突入。ストレッチでは中段程度でとどまっていた上昇を一気に最上部まで登ることとなり、学生たちからは改めて高さに驚く声が聞かれました。
床にマットを敷いて安全対策が取られる中、学生たちは足元でロックしたティシューに気を配りながら次々に天井近くまで上昇。宙吊り状態での開脚や、2人1組になって手を繋いだパートナーを持ち上げるエアリアル・トラピス(空中ブランコ)などの大技も披露され、レッスン開始当初からは考えられないほどの成長ぶりが見られました。
ティシューをヒップロックさせた後、体に巻き付けて上昇し、回転しながら下降する技では苦戦する学生も多く、若井田先生が手本を披露。滑らかに最上段へと上昇し、下降まで鮮やかに展開する動きに学生たちも見とれていました。学生1人ずつの技の確認が完了すると作品発表に向けた最終調整が行われ、細かい所作も含めた演技の流れを全員で見直しました。
演技発表はBグループから開始。室内の照明がムーディーな色に切り替わり、『アメージング・グレース』の荘厳な曲調が流れる中、エアリアル・トラピスが始まったタイミングで全員が最上部に向けて上昇。空中での体の固定や座り状態での回転など、それぞれの得意技を披露しました。全体的にスムーズな流れを見せましたが着地に苦戦する場面も見られ、若井田先生からは「感動するところもあったが、後半に乱れが目立ちました」との指摘もありました。
休憩を挟んで発表を行ったAグループも息の合った動きで次々と技を披露。若井田先生からは「体にティシューを巻き付けるタイミングが少し遅かった」という指摘を受けましたが、4年間の成果をみごとに発揮しました。終了後は両グループのメンバーがそれぞれ課題としている技に再度取り組み、若井田先生からのチェックを受けていました。
最後は全員でレッスンの振り返りを行い、若井田先生からは「4年間、エアリアルを続けた自分を褒めてあげてほしい。この実習で身につけた技術がみなさんの武器になってくれたらうれしいです」という言葉が学生たちに贈られました。
海外ではすでにパフォーマンスのジャンルとして確立されているエアリアルティシュー。今後は本学からも日本を代表するパフォーマーが誕生し、世界を股にかけて活躍することが期待されます。
私は高校生の頃からダンスを本格的に学びたいと思っていたのですが、同時に音響や照明の知識も身に着けたいと思い、舞台について総合的に学べる大阪芸術大学への進学を決意しました。エアリアルティシューについては、授業を選択する際に存在を知って興味が湧き、受講することにしました。授業では見ること聞くことすべてが初めてで、自分の知らなかった世界の扉を開いてもらったような気持ちで取り組んでいました。最初は技術的にまったくついていけず、「自分はこの先やっていけるのか……」と思ったのですが、若井田先生が熱心に教えてくださったおかげで、できることが少しずつ増えていくのが楽しかったです。私が苦手としているポイントを的確に見抜き、重点的に教えてくださったことも成長につながった要因かと思います。先生がお手本として見せてくださる演技が本当に素敵で、毎回見惚れていたこともいい思い出です。学びを深める中で、ティシューを使って表現することの奥深さや芸術的な側面を知ることがでたのも良かったです。将来は、見て下さる方々に感動を伝えられるようなダンサーを目指しており、若井田先生から教えていただいたことを全面的に活かしていけたらと思っています。
私は、幼少時から続けていた体操競技の中にあるダンスの要素に惹かれて本格的に学びたいと思い、ポピュラーダンスコースへの入学を決意しました。入学後はさまざまなジャンルのダンスを学ぶことができ、自分にとってまさに理想の環境であったと実感しています。エアリアルティシューは高校生の頃にテレビ番組で存在を知って、いつか挑戦してみたいと思っていたのですが、入学後に若井田先生のもとで教えていただくようになって想像以上の難しさに驚きました。最初のうちは慣れない動作で毎回、体力を消耗しきっていたのですが、それ以上に楽しさが大きく、練習を重ねてスムーズに技を繋げられるようになったときは大きな達成感が得られました。今回のレッスンでも一緒に頑張ってきたみんなと1つの作品を作ることができ、とても感動しました。これも若井田先生が私たち1人ひとりに合った教え方を実践して、前向きに取り組める環境を作ってくださったおかげだと思います。卒業後、ダンスとどのように向き合っていくかは今後の生活環境によって変わってくると思いますが、さまざまなことに積極的に挑戦して「今がいちばん充実して楽しい!」と思える人生を過ごしていきたいです。