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JAPAN WALLS 2022 in SHIRAHAMA JAPAN WALLS 2022 in SHIRAHAMA

デザイン学科, 建築学科, キャラクター造形学科 / イベント
2022/12/19

「JAPAN WALLS」は、街に子供から大人までが楽しめる壁画を描いていこうというアートプロジェクトです。ハワイのオアフ島カカアコ地区でスタートした現代美術イベントから始まったこのムーブメントは、アメリカ本土や日本、台湾など世界12のエリアへと拡がっていきました。日本で7回目となる2022年の開催地は昨年に引き続き、ハワイのワイキキビーチと姉妹浜提携フレンドシップを結んでいる和歌山の白浜町。2022年10月24日~29日に渡って開催されたJAPAN WALLS 2022 in SHIRAHAMAでの大阪芸術大学を卒業したアーティストたちの制作風景をリポートしていきます。

ロケーションに合わせ、光に向き合うことが2人に共通するテーマ

ライブペインティングと壁画制作を十数年に渡って手掛けるペインターデュオWHOLE9(ホールナイン)。人物や動物、植物などを具象的に描くhitchさんと、自然から受けたインスピレーションを抽象的なモチーフに落とし込むsimoさんの2人で1つの世界観を描き続けてきました。2人はデザイン学科の同級生です。

今回、WHOLE9が制作した場所は、港が見渡せる高台にある「ホステルのアサ」の北壁。そのため壁画は、常に逆光で見られることになります。そこでWHOLE9の2人は光を計算に入れて制作を進めていきました。例えば、hitchさんは描く壁面のロケーションに馴染むようにモチーフの影を前に落とし、simoさんは透過する光を意識してよりグラデーションをつけていきました。長年組んで仕事をしている2人が共通認識として持っているテーマは光。何を描いていても結局は光を描いているんだと、2人は語っていました。

逆光を計算に入れながら描いていくhitchさん
光の繊細なグラデーションの表現を得意とするsimoさん
影になってしまう逆光下でも印象的になるよう力強いひまわりを上層部にレイアウト

参加アーティストの中で唯一のギャグ漫画家

壁画を描くアーティストのなかで異彩を放っていたのがギャグ漫画家の石塚大介さん。キャラクター造形学科在学中に、黎明期のウェブ漫画サイトでの連載をスタートすることでギャグ漫画家としてデビュー。今はインスタグラムに活動拠点を移し、「がんばれ!田中みのるくん」の連載や企業案件などを幅広く手掛けています。

今回の「JAPAN WALLS」への参加は、まったく未経験の壁画という分野。しかし、学生時代からハングリーかつアグレッシブに漫画家になるという夢を追い求めてきた石塚大介さんにとって、ずっと残り続ける壁画は挑戦しがいのある領域でした。

現場となったのは5階建てのビルの最上層。美しい白浜の海を横目に自らが生み出したキャラクターと向かい合う5日間は石塚大介さんにとって貴重な時間だったようです。

メインキャラの「田中みのるくん」に筆を入れる石塚大介さん
じっくり見ているとギャグ漫画家らしい遊び心が見えてくるはず

自らの内面に向き合って生まれた独自の世界観を育んでいく

環境計画学科(現・建築学科)を卒業したeri2winさんはグラフィックデザインの仕事に携わった後、壁画やイラスト、ポスターなど幅広い分野に関わってきました。あるとき、ギャラリーのキュレーターを務める友人の勧めで、個展を開くことに。ワンテーマでの制作に打ち込むなかで、気づけば、クライアントありきの絵描きになっていたと自分の内面と向き合うことの大切さを痛感することになります。個展のための作品を生み出すなかで見出した「PORTAL」、つまり別世界への扉というテーマを真っ白な壁面にぶつけた今回の作品は、どこにもない風景、誰も知らない物語。白浜に行って感じとったからこそ生まれた絵となりました。JAPAN WALLSという大きな規模のアートプロジェクトに参加することで、eri2winさんは新たな自分に出会えたのかもしれません。

壁画を1人で描くeri2winさんに地域の人々が声をかける場面も
別世界への扉というテーマで描いた壁画がエントランスを印象的に彩る

多様な想像力と表現力がスパークするSQUARE SPACES

昨年とは違う「JAPAN WALLS」の取り組みとして、壁画を制作する参加アーティストを含めた国内外のアーティスト100人の作品を展示するSQUARE SPACESがSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREのロビーにて開催されました。すべて同じサイズの正方形というフォーマットのなかに込められたアーティストの想像力と表現力の多様性が交錯する刺激的な展覧会です。WHOLE9や石塚大介さん、eri2winさんに加えて、卒業生のクリエイターチームの透明回線やアートデュオTHRREEがユニット作品や個人作品で参加していました。ギャラリースペースは旅行者や地元の人達で賑わっていました。ここで展示された作品は、2022年中はSQUARE SPACES のインスタグラムで公開されています。

100人のアーティストが描く多様な世界観が並ぶ様は圧巻
透明回線のUKICHIさんの作品「Fragile」
アートデュオTHRREEによる「Magenta」
石塚大介さんの作品「北極」

デザイン学科卒業生
WHOLE9(左:hitchさん、右:simoさん)

「JAPAN WALLS」のようなアートプロジェクトではアーティスト自身が壁画のモチーフやコンセプトを決めていきます。でもWHOLE9のスタンスは自分たちが表現したいスタンスをキープしながら、建築物の所有者さんや地域の人々との共通項を探し続けること。リモートでミーティングを重ねるなかで、壁面を提供してくれた「ホステルのアサ」では、同じ白浜町にある農園「すまいるふぁ〜む」の野菜を使っていることがわかりました。だから、そこで栽培されている不揃いだけど新鮮な野菜や力強く咲くひまわりをモチーフとして選ぶことに。壁画には、描くための約束事や守るべきルールがあるわけではありませんが、描いた場所に長く残っていくもの。だから、ロケーションを大事にして、その場所にフィットする絵を描き続けていきたいですね。

キャラクター造形学科卒業生
石塚 大介 さん

漫画を描き始めたころはケント紙にGペンで描いていました。ウェブ漫画サイトでデビューし、その後はインスタグラムがメインの活動の場。仕事では、ずっとデジタルツールを使って漫画を描いてきました。だから、塗料と刷毛で手描きする壁画は初心に帰るという意味でも有意義な経験だと思っています。壁画初心者の僕は、他の参加アーティストさんにスキルや表現力の面でかなわないと思っています。だから、キャラクターの持ちものやTシャツのロゴデザインなどで、ちょっとしたボケを振ってギャグ漫画家らしさを出していこうと思ったんですけど、すごく高い場所に描いたので、道行く人には気づいてもらえないかもしれません(泣)。みなさん、白浜に行ったら僕の壁画をじっくり見てくださいね。

環境計画学科(現 建築学科)卒業生
eri2win さん

壁画を描く一番の面白さは、大きな壁面いっぱいに自分の世界観を表現できることです。それが絵を描くワクワクするパワーの源になるんです。今回、「JAPAN WALLS」に参加したことで得た気づきもあります。白い壁を前に制作していると、白浜に住んでいる人たちが話しかけてきてくれたり、感想を聞かせてくれたりするのもすごく楽しい。地元で採れた果物を差し入れしてくれる方もいました。それと色々なアーティストさんたちと一緒に過ごせた楽しい時間も宝物。みなさん色々な才能を持っていて、私とはちょっと違う角度からこの世界を見ていて、すごく勉強になりました。ありがとう!MAX感謝です!

「JAPAN WALLS」クリエイティブディレクター
岡本 エミリ さん

昨年から開催地を白浜に移して2年目になります。テーマを「繋がる、広がる、舞い上がる」とした2022年は、昨年よりもはるかにパワーアップした内容になりました。壁画制作に加え、SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREのロビーで行った100人展「SQUARE SPACES」、最終日の10月29日に行われたタイルアートのワークショップやクロージングパーティ「WE WANT HAWAII」と盛りだくさんな内容でした。

大規模なアートイベントを開催するためには地域の人々の協力関係を維持し続けることが大切。その点で、白浜町の行政の方々やSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREさんのバックアップが得られているのは、すごく心強いですね。昨年に描かれた壁画を見て、自分のところの壁を提供したいという申し出もたくさんあって、昨年は5組だった参加アーティストを9組に増やすことができたのが、その証です。地域社会に融け込んだ息の長いアートイベントとして「JAPAN WALLS」を育てていきたいですね。