本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

笑いの波 笑いの波

デザイン学科
2022/10/24

O Plus Vol. 7の表紙に用いたデザインは、笑いの波動とも言える、ギャグに焦点を当てその音や間、ニュアンスを含めたものにテクノロジーを反映させてビジュアルをつくろうという試みです。本誌のアートディレクター古平正義氏が木村浩康氏・塚本裕文氏と手がける特別プロジェクト。芸人が生み出し、声に発することでその場に新たな渦を起こすギャグの波形が、鮮やかな色彩のフラッグとなって生まれ変わります。そのエールは、2025年大阪万博へ向けてのものかもしれません。

今号第1特集のインタビューページの写真は、芸人さん達のいつもとちょっと違う姿を見せたいと思い、スタイリングを中心に注力した生身のビジュアルですが、表紙のデザインについては、笑いとは対極とも思えるプログラミングを用いて面白いデザインができないかと考えたものです。お笑いの中にある間や、少し不可思議な感じをビジュアルに反映させたいと思い、短いフレーズを素材にしています。文字にすると何でもなく見えたりするけれど、言い方やテンションで思わず笑ってしまい、強烈に印象に残るギャグや言い回し。その音を基に、笑いの特集号に相応しい見え方を探りました。

細かい波形のデータ(下図)を出発点に、足したり引いたりを繰り返してグラフィック化していく過程で、シンプルだからこそ難しい、お笑いとデザインの共通点が垣間見えた気がしています。

最終的には、キャラクター造形学科の新しい校舎でインスタレーションとして展開する事を想定しています。[古平]


毎年 O Plus ではデータを活用したアートワークを古平さんと共に作らせてもらっています。これまでは情報量が多く、複雑なデータをビジュアルとして吸着させるために注力していましたが、今年は少し違います。

笑うという人間に備わった当たり前の行為を、データを通して表現するにあたり、複雑なデータ構造にするのではなく、発声された声をありのまま可視化することにより、笑いに込めた動と静の工夫、躍動感、楽しさなどが浮かび上がりました。

ここで気付かされたのが“笑い“という単純明快な行為に重なるように、それを表現したビジュアルに必要なデータも簡単な形に最適化されていくということ。人の心、感性に近い部分を表すには複雑なデータは必要ないのかもしれませんね。[木村]



  • 音声の時間領域のグラフ
    数値を描画する際の時間間隔を様々に変えて試し、最終的に柔らかなカーブのデザインに落とし込んだ。

●古平正義(こだいら まさよし)アートディレクター/デザイナー。FLAME代表/大阪芸術大学デザイン学科客員教授。主な仕事に、パワーコスメ「oltana」ブランディング、「BAOBAO ISSEY MIYAKE」とのコラボレーション、「ラフォーレ原宿」広告・CMなど。


●木村浩康(きむら ひろやす)デザイナー。Rhizomatiks/Flowplateaux所属。東京造形大学卒業後、Webプロダクションを経てライゾマティクスに入社。最新のテクノロジーの知見を取り入れ、さまざまなデータを活用したテックドリブンなデザイン制作を行う。文化庁メディア芸術祭最優秀賞など多数受賞。