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8月2日、今、世界で注目を集めるアートサイエンス領域を代表する6組が大阪府立国際会議場グランキューブ大阪のメインホールに集結。講演とシンポジウムを行いました。2017年度春からスタートしたアートサイエンス学科新設を記念した企画とあって、高校生や大学生から社会人まで幅広い層の聴衆が集まりました。
講演が行われた順に6組の顔ぶれをご紹介します。
ゲルフリート・ストッカー先生は、1979年からドイツ・リンツで続く、世界最大級のメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ」のアーティスティック・ディレクターを務めています。アートとサイエンスをつなぐコミュニケーター(仲介者)がこれからますます重要になるというお話をいただきました。
続く、国際電気通信基礎技術研究所の知能ロボティクス研究所所長を務める萩田紀博先生は、アートの語源にまでさかのぼりながら、ロボット業界のさまざまな事例についてもご紹介されました。
そして、マサチューセッツ工科大学のメディアラボ副所長を務める石井裕先生は、近年の研究テーマについても惜しみなく披露され、1年ですたれるといわれるテクノロジーの分野だからこそ、未来に向けてどういう視点を持つかが大切だというメッセージを送られました。
テクノロジーを駆使した表現で世界に知られるライゾマティクスからは、アートディレクターの木村浩康氏、プログラマーの塚本裕文氏が登壇。アートディレクターとプログラマーが二人三脚で制作を進めるライゾマティクスの活動紹介は、そのままアートサイエンス学科のひとつの理想を示しているようでもありました。
休憩を挟んでから、プログラマー、エンジニア、数学者、建築家など、さまざまな分野のスペシャリストから構成される”ウルトラテクノロジスト集団”として知られるチームラボを率いる猪子寿之先生が登場。さまざまな作品を紹介しながら、身体ごと空間に没入することで、現代人がつくりすぎている境界を曖昧にしていきたいという思いを語られました。
ひき続き、東京駅3Dプロジェックションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」が代表作で、大阪市中央公会堂でのプロジェクションマッピングなど、大阪芸大との数々のプロジェクトを手がけてきた村松先生から、インプットとアウトプットが融合した教育環境の重要性についてのお話をいただきました。
最後は、6組の講演者にアートサイエンス学科長の武村泰宏先生、Bound Baw編集長の塚田有那氏がファシリテーターとして加わり、パネルディスカッションが開かれました。アートサイエンスの可能性、アートサイエンス学科の教育と学生たちに期待することなど、多岐にわたるテーマでしたが、登壇者に共通するのは未来に向ける眼差し。記念シンポジウムのキャッチコピー「その一日は、かぎりなく未来だ」をまさしく体現するような時間が生まれて、アートとサイエンスが融合した、これからの表現の可能性を実感させられました。
アートサイエンスシンポジウムでは、バイオロジーや人工知能(AI)、アート、プログラミングなど、さまざまなベースを持つ先生方のお話を聞くことができました。
私は大学に入学するまでニュージーランドで暮らしていたので、英語でスピーチされたゲルフリート・ストッカー先生の講演が理解しやすく、現代社会の問題をアートサイエンスがどのようにして解決していけるかといったテーマのお話でした。講演ではAIの話題も出ていたので、シンポジウム後にストッカー先生が大学に特別講義で来られた際、「多くの映画やドラマでは、AIが恐ろしい存在として描かれています。そうしたネガティブイメージは、どうすれば変えていけますか?」と質問したんです。先生は、「ネガティブイメージではなく、未来からのメッセージとして描かれていると思えば、これからどうすればポジティブなAIをつくっていけるかを考えることができるはずだ」と答えていただきました。
NAKED Inc.やチームラボの作品は、ニュージーランドにいたときからInstagramなどでイベントの写真をよく見ていました。今回のシンポジウムで日本の企業だと知ってますます興味を持ちました。シンポジウムでも先生方がお話されていたように、アートサイエンス学科ではさまざまなことを学ぶことができます。私は、まだ本当にやりたいことが見つかっていないので、気持ちをいつもオープンにして、多くのことに挑戦したいと考えています。